キングダム別伝   7人目の新六大将軍   作:魯竹波

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第四十七話 凱孟

そして開戦の火蓋が切られた。

 

「楽諒。 決して深入りするなよ。

お前はまだ11才だから、かなり不安だ。」

 

「分かってるよ 章覇兄ぃ。」

 

「なら良いんだ。 行こうか。」

 

「うん」

 

僕は騎馬を駆り、敵の前線に突撃を敢行する。

 

 

 

いい調子だ。

 

魏兵は豆腐を斬るかのようにスパスパと斬れていく。

 

左翼、右翼も……………いや。

 

左翼に何か近づいてる。

 

味方の首が飛んで波が出来ており、かなりの強敵だ。

 

おそらく、楚水さんでは力不足だろう

 

「直下兵300、左へ回るぞ!」

 

「「「オウ。」」」

 

「オイ。大将。 ありゃあ避けた方が良いんじゃないかい?」

 

喬英が尋ねてくる。

 

「いや、左翼の指揮系統…………楚水さんのところにもう到達しつつある。

左翼の指揮系統が崩壊する前に行きたい。

 

もっとも、僕がこの全軍を率いていたなら間違いなく左翼は下がらせるけどね。」

 

といってもまだ百人将でしかないのだからその様な芸当は出来ないが。

 

「あいよ。」

 

「楚水さんを救い出すぞ!」

 

「「オーッ!」」

 

左翼へと軍を進めた。

 

 

 

 

 

ー一一一(視点:凱孟軍軍師・荀早)一一一ー

 

「こりゃあ、拙い」

 

凱孟様が突出している。

 

それを受けて左翼の部隊がこちらに向かっている。

 

右翼も化け物みたいな副長がいるし、今こちらに向かってきている最先鋒も相当やる。

 

だが、最先鋒は隊長ではないようだ。

 

報告よりも刃が速いが、威力が報告に少々劣る。

 

「凱孟様ー 止まってくださいよー」

 

「ガハハ黙れ荀早! 盛り上がってきたではないか!」

 

14年ぶりの戦に、凱孟様は大興奮だ。

 

「ん? なんか強そうな奴がきたぞ」

 

最先鋒の敵がこっちに来たようだ。

 

先頭にいるのはまだ少年だ。

 

……………若い。

 

15~17くらいだ。

 

だが、あの強さは一体…………。

 

「やあああっ!」

 

少年は矛を凱孟様に叩きつける。

 

決して軽くは無い一撃だ。

 

「ふんぬおおお!」

 

凱孟様は更に強烈な一撃を叩き込む。

 

少年は吹き飛ぶだろ……………?!

 

耐えた?!

 

「やはり、生きていたのか 魏火龍・凱孟!」

 

「儂が活躍した時代、そちはまだ幼子とも呼べぬ年の筈。

何故、儂の名前を知っておる。」

 

凱孟様の攻撃を捌きながら少年は答える。

 

「僕は廉頗将軍の弟子・章覇だ!

いざ、尋常にその首を貰い受ける!」

 

廉頗の弟子……………なるほど。

 

恐ろしい敵だ。

 

最先鋒の後続も続々とこちらに向かってきている。

 

凱孟様には悪いが残された時間は少ない。

 

「何じゃあ、廉頗本人ならいざ知らず、弟子如きが出しゃばるでないわ!」

 

「寝言は倒してから言え! わざわざ大将自ら首を差し出して、バカな奴!」

 

「正解。」

 

「荀早!」

 

凱孟様は底無しの阿呆だ。 だからこそ俺や兄貴(・・・)のような軍師が必要なのもあるけれど。

 

けど、俺は凱孟様のその底無しの単純さは好きだ。

 

だからこうして軍師をやってる。

 

「フッ。 その言葉、後悔するなよ。

貴様の師匠・廉頗でさえ、この儂との一騎討ちを避けたのだからな!!」

 

「正解。」

 

「な、なにっ!」

 

少年に動揺が走る。

 

「賢い廉頗や王騎は儂との一騎討ちを避けた。

だから、そちはバカ者だ。

儂との一騎討ちをしにのこのこと出てき寄ったのだからな!

 

そちは飛信隊・信を殺る前の前菜には悪くない。

儂自ら葬ってやることに、感謝するんだな!」

 

「……………。」

 

少年は矛を構えた。

 

 

 

 

さて、敵の後続は………本隊と覚しき部隊までこちらに来つつある。

 

拙いな。

 

だが、その分、右翼と左翼の間にはそれなりの隙が出来ており、簡単に抜けそうな弱兵や疲れ切った兵が目立つ。

 

!!   あ、あれは…………。

 

目線の先に少女を見つけた。

 

「精鋭をあの隙に突っ込ませる

ついてこい」

 

「ハッ!」

 

この一撃を見舞えば、飛信隊は瓦解する。

 

この戦、貰ったな…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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