キングダム別伝   7人目の新六大将軍   作:魯竹波

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第四十六話 開戦の幕

著雍に着くと、河了貂さんに呼び止められた。

 

「ちょっといいかな?」

 

「何でしょうか?」

 

「章覇には、連れてきた100人に加えて200人を追加で預かって欲しいんだ。

戦場では何が起こるかわからないけど、ある程度の兵力が章覇の手にあれば、比較的楽な気がしたから。」

 

「分かりました。 流石に1000以上は厳しかったですが、300くらいならば。」

 

「うん、ありが………って信っ!」

 

「ルアアッ!」

 

何か信さんが同士討ちを起こしているようだ。

 

ガキィン!

 

矛が片手で弾かれた。

 

あの騎馬の若武者、何者だ?

 

「ちょっと止めてきます。」

 

「あ、うん、よろしく。」

 

今度は騎馬の若武者が槍で信さんを攻撃しはじめた。

 

速いには速いが、見切れない程でもなく、威力も信さんの矛には劣る

 

だが、洗練された技で、正確に信さんの急所を狙う鋭い攻撃だった。

 

 

 

っと、止めねば。

 

つい見とれてしまった。   今までにない戦い方をする武者だったし。

 

「何やってるんですか!」

 

矛を二人の槍と矛の交わった一点に叩きつける。

 

矛も槍も、程なく地に転がった。

 

周囲がざわつく。

 

「おい、何しやがる!」

 

「このバカに教育を施してやってるのを邪魔するな!」

 

双方睨んでくる。

 

「そんなことを言ってる場合ですか?!

喧嘩するなら、著雍を陥としてからやって下さい!」

 

「無礼者め

何様のつもりで若様に何を説教たれて……」

 

騎馬若武者側の爺が文句を言ってくる。

 

「だったら、アンタが止めるべきでしょう!

若様の守り役か何だか知りませんが、職務怠慢を他人の責任にするな!」

 

そう叫ぶと爺は怒りながらも怯む。

 

隣にいた何やら熟練した感じを漂わせている将校がニヤリと笑いながら、爺の肩に手をかけた。

 

「何をするか関常!」

 

「番陽副官。 今回はあの少年に理がある。

引き下がるべきだろう。」

 

「くっ。」

 

 

すると、背後から何人か騎馬がやってきた。

 

「さて、軍議を始めるぞ」

 

その大将は妙な髪型をしており、面白い顔をしている。

 

「誰です?」

 

河了貂さんに尋ねると

 

「うちの総大将の騰将軍だ。」

 

「そ、総大将でしたか。」

 

「うん。

という訳で、章覇は隊のとこに戻っていてくれるかな?」

 

「分かりました。」

 

 

 

 

 

 

程なく、河了貂さん達は戻ってきた。

 

「ったく王賁め 威張り腐りやがって。」

 

「けど、ホントにこれ、上手くいくかな?

三隊同刻に敵本陣を突くなんて。」

 

「どうなったのですか?」

 

思わず、尋ねると

 

「敵に3軍、計6万の援軍が入ったみたい。

しかも、かなりのやり手らしい。」

 

魏は七人の大将軍:魏火龍の最後の一人・呉慶を失って後、呉慶の息子の呉鳳明。 今回の大将以外に手練はいないはず…………。

 

ん?

 

 

 

 

 

確か、廉頗将軍は以前…………。

 

「儂は、魏火龍の墓に以前、行ったことがあるが、霊凰、紫伯、凱孟の三人の墓だけ妙であった。

 

大将軍の墓というのも、まあ他とは違う雰囲気を漂わせる代物であるが、その三人の墓だけはその雰囲気が無かった。

或いは他に本当の墓があるのか、生きておるのか。」

 

と言っていた。

 

もし、その魏火龍としたら?

 

 

 

ふと、最悪の予想が頭をよぎる。

 

「……………どうしたの?」

 

「いえ……………。」

 

「続けるよ。

そこで、敵の予備隊の連携の死角をついて、飛信隊、玉鳳隊、録嗚未軍の三隊で三日目の昼に魏の本陣を突くことになったんだ。」

 

「分かりました。」

 

「という訳で、第一段階として敵の前線の守備隊を叩くよ。

信と渕さんを中央に置いて、左翼を楚水、右翼に羌瘣。

オレは後方にて戦況を見守ろうと思う。

章覇はひとまず、最前線で敵を叩いて欲しい。」

 

「おう。」

 

「承知」

 

「わかった。」

 

 

とりあえず、様子見としてこの編成で敵に攻撃を仕掛けることとなった。

 

 

 

 

 

 


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