キングダム別伝   7人目の新六大将軍   作:魯竹波

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まさか推薦までされるとは…………。

この回の不自然さに、読者様の数が減らないことを祈ります。


第四話 秦王・嬴政 後編

「秋、無礼よ座りなさい」

 

「甘秋っ」

 

周囲の大人が甘秋を止めにかかる。

 

「構わん 勇敢な少年よ そなたの名は何という?」

 

「甘仁の子、甘秋っ!

お父は函谷関で戦っていて…………だから、お父はお母や妹たちをオイラが守れって…………

 

だから、お母や小さい妹を、敵国の奴隷になんかさせないっ!」

 

「秋…………。」

 

甘秋は普段は臆病な性格で、いつも僕だったり友達だったりの傍にいる。

 

この甘秋の勇気に、甘秋のお母さんは涙ぐんでいた。

 

そして、甘秋をよく知る僕も、驚き、そして甘秋のこの発言に奮起を促された。

 

 

 

 

僕は甘秋よりも年上で、甘秋よりも強いはずだ。

 

戦が怖い? 嫌い? それは誰だってそうだろう

 

なのに僕より幼い甘秋が戦うと決意しているんだ。

 

逃げずに覚悟を決めるべきだ。

 

目を背け考えようともしなかった、国が滅べばどうなるかという未来と、そして今直面している現実から逃げてはいけない。

 

この時、既に僕は普段のそれとは全く異なった思考回路で物事を考えていたように思える。

既に秦王の檄の影響を受けていたのかも知れない。

 

 

「大王様!  章界の息子にして甘秋の従兄の章覇です!

甘秋や大王様と共に戦います!」

 

 

僕は立ち上がって叫ぶ

 

 

「敵は李牧だ  

咸陽を攻める余力を残すために蕞の住民全員の命は、降伏すれば間違いなく保証される

 

しかし、その後はどうなる?

秦が滅んだ後の各国に秦が分配されたなら、この蕞は、楚に分配されるだろう

 

楚人は誇り高いと聞く。

秦人を蔑む楚の連中は間違いなく、僕たちを虐げ、いたぶり、憂さ晴らしと称し虐殺し、生き残った者たちにも絶望という未来しか残されていないだろう

 

つい先程まで降伏するとどうなるか 僕にはわからなかった 

けどそうではなかった わからないのではなかった

僕は考えようともしなかったんだ!

けれど、今は違う!

 

僕は逃げない そして戦う! 目の前の現実と!

 

家族を、未来を、現在を、そして国を守るために」

 

この言葉を話しているのは果たして自分なのか?

考えてもいない言葉が滔々と口から出てくることに僕は凄く驚いていた。

だが、それはうわべを取り繕った言葉でもない気がした。

これもまた、僕の本心なのではないか?

 

そして周りの皆の闘志の炎が少しだけ増した気がした。

 

 

 

秦王はこの展開に少し驚いたようだった。

 

だが、その表情をすぐに引っ込め、

 

「甘秋に章覇。 そなた達勇敢な少年達と共にこの地にて戦えることを誇りに思うぞ!」

 

やはり秦王はこの蕞で戦う気だったようだ。

 

「いけません!  大王様は咸陽にお戻りくださいっ!」

 

「我々でなんとか!」

 

蕞の住民達は全員で止めにかかるが。 無駄だ。

 

この秦王の決意は変わらない

 

「戻る気は無い

俺はこの地に、秦の命運を握るこの戦場に一人の秦人としてそなた達と共に血を流すために、戦うためにこの地に来たのだ。

 

どうか、俺に遠慮しないでくれ」

 

秦王はそう言葉をしめた。

 

 

その直後

 

「呉孟の子、呉印です! 大王様と共に戦います!」

 

「岳明の子、岳広も戦います!」

 

甘秋が作った波は伝播していく。

 

「西去です! 片腕を昨年の戦で喪いましたがまだまだやれます!」

 

「黄邦の子、黄春です 女ですが弓矢くらいならばうてます!」

 

そして次々に戦いに名乗りを上げていく。

 

「皆、立てっ!

立ち上がれっ!」

 

「蕞は戦うぞっ!」

 

「「「うぉおおおおーーーっ!」」」

 

秦王・嬴政  なんと凄い王だろうか

 

降伏に傾いていた蕞を  一気に抗戦に傾けてしまった。

 

僕は思った。  この大王の下でなら僕は戦える。

 

いや、戦いたい!  と。

 

体内に凄い熱気・闘志が宿るのをひしひしとその肌に感じていた。

 

この大王は間違いなく後世に名を残すだろう。

 

「皆、心の準備は整ったか!」

 

「「「「オオーッ!!」」」」

 

「530年続いてきた秦の存亡をかけた戦いだ!

必ず祖霊の加護がある!」

 

「これまで散っていったものたちも必ず背を支えてくれる!」

 

「「「「「オオ!!」」」」」

 

「最後まで戦うぞっ 秦の子らよ。」

 

「我らの国をっ  

絶対にっ

守り切るぞっ!!」

 

「「「「「「ウオオオオオオ!!」」」」」」

 

そして、僕の中には憧れの気持ちも芽生えていた。

 

1人の人間が30000の民の心を打ち、変えたその姿に。

 

武者震いはやはり止まらない。

 

高揚感が僕たちを支配する。

 

烈しい力が体の奥底から迸り、こみ上げてくるのを感じた。

 

 

だが、それ以上に、僕の心は大王様に1人の人間として強く憧れる気持ちに支配されていた。

 

 

 

 

 

 

 




原作と少し文言が違います。

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