キングダム別伝   7人目の新六大将軍   作:魯竹波

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第三十九話 軍略囲碁廉頗式 後編

僕の作戦はこうだ。

 

敢えて、敵の渡河を狙わず、弓兵7000を、盆地の自陣側の山に、麓に沿って伏兵として配置する。

 

残りの3000を、川の北側の自陣側に伏兵として置き、敵渡河がある場合に備える。

 

その3000の盾になるのが、騎兵2000だ。

 

更に予防線として歩兵5000を伏兵させた。

 

そして、歩兵10000を盆地においた。

 

これには大した意味合いはない。

 

残った騎兵8000、歩兵5000を本陣に置き、自らの主力としておく。

 

この計13000を、南側から渡河させるのだ。

 

つまりは、二面作戦である。

 

 

問題は敵が騎馬5000をどう使ってくるか…………。だ。

 

だが、まあ、予防線は張ってあるし、問題ないはずだ。

 

「では、開始じゃ。 まずは小童からだな。」

 

 

 

敵陣…………は。

 

弓兵5000がまるまるいない。  恐らくは河岸に伏兵しているのだろう。

 

だが、残念だがこちらは盆地の河岸からは渡らない。

 

そして、騎馬は意外にも2000が伏兵をしているようだ。

 

3000は河岸の北にいる。

 

こちらの弓兵を狙っているに違いない。

 

歩兵6000を動かし、渡河予測地点の南側を補い、半包囲陣形をとり、待ち構える。

 

 

そして、楽諒が本陣を盤面の南東、つまり僕から向かって右に移動させてきた。

 

面白い。 踏み潰してやろうじゃないか。

 

楽諒軍本陣には、歩兵8000がいる。

 

2000は伏兵だろうが、場所は読み取れない。

 

 

 

 

こうして、数回の順番が過ぎていった。

 

ついに、楽諒の伏兵していた騎馬2000が動き出したのだ。

 

騎馬はやはり総じて北に集中していたようで、歩兵5000に向かって攻撃を開始していた。

 

騎馬3000が先行してこちらの騎兵2000を攻めており、こちらの騎馬2000は1000に減少、敵の騎馬3000は2000に減少していた。

 

ここで僕は伏兵の弓兵3000を出現させ、弓兵の精度規定の弓兵の兵力の4割に照らし合わせて1200を葬り、騎馬を800に減少させた。

 

次の順番に回ってくると、楽諒は騎馬2000を待機させると…………。

 

伏兵してきた弓兵5000を総じて出現させていた。

 

渡河を狙うという読みは大いに外れて、北から騎馬5000を攻めさせる戦術を採ろうとしていたようだ。

 

味方の騎馬2000は葬られ、騎馬800が弓兵3000に向かって攻撃し、これを葬った。

 

騎馬2000の後続も川の中だ。

 

 

 

このままでは合流される。

 

まずい。

 

僕は直ちに伏兵5000の歩兵のうちの3000を騎馬800の横に出現させ、これを攻めて、壊滅させる。

 

そして、楽諒の騎馬2000が味方歩兵3000を葬った。

 

よし、今だ。

 

伏兵した歩兵2000を出現させ、川を下らせる。

 

本当は舟のはずだったのがケチのつけどころだったが。

 

こうして、騎馬2000を完全包囲する包囲陣形となり、騎馬2000は無力化。

 

かなりの損害を出しながらも、敵の主力の騎馬5000を葬ったが、その後、弓兵5000により、舟の歩兵部隊は壊滅。

 

 

北における勝敗は完全に楽諒に軍配が上がった。

 

 

 

 

 

 

 

戦争そのものは、南側から本陣部隊の13000を渡河させ、敵本陣8000を壊滅させた僕の軍が勝った。

 

弓兵5000を動かしてきたため、その分、騎馬5000も全滅したが、どうにか勝った。

 

楽諒軍の損害は騎馬5000、歩兵8000、計13000に対し、

 

僕の軍の損害は騎馬10000、歩兵6000、弓兵3000の計19000となって、楽諒軍よりも甚大だった。

 

だが、遊兵率(戦闘に参加していない兵の数)が桁違いだ。

 

僕の軍は弓兵7000、歩兵4000、計11000が参加していないのに対し、楽諒軍は北側に配置した伏兵の2000のみである。

 

実質、29000対18000という戦いだったのだ。

 

僕が攻める側で、楽諒が守る側なので一応勝利だが、同兵力なら間違いなく負けているところだった。

 

 

 

「やっぱり、倍だったから無理だった~。

いけるかもしれない~とは思っていたんだけど、一筋縄じゃいかないか。

項翼の猿とは出来が違うや。」

 

楽諒が残念そうに呟いた。

 

「ふむ、坊主のが巧い戦い方だったが、小童も己を知っていたので負けはせんかったという訳じゃな。

9才と初見の13才にしてはまあまあじゃな。

 

渡河を狙うなんて誰が引っかかるか分からんような戦術を採らんかっただけ、小童も坊主も褒めるに値するわい。

どっかの出来の悪い小倅とは訳が違うわい。 ヌハハハハハ」

 

 

 

 

 

 

こうして、人生初の軍略囲碁は終わった。

 

 

 

 


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