キングダム別伝   7人目の新六大将軍   作:魯竹波

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力量不足で廉頗とヒョーコーさんの口調が完全には書き分けられないという………。

まあ、もう当作ではヒョーコーさん死んでますけど。



第三十二話 廉頗

「こ、小娘…………?」

 

僕は女の子の方を振り向く。

 

女の子は驚くや、

 

「まさか、将軍直々に?」

 

と叫んだ

 

「こんなもん、儂には肩慣らしにもなりゃあせんわ。」

 

大男はそう吐き捨てた。

 

「わざわざ済みません。」

 

「まったく。 このお転婆娘が。

つくづく大したタマだわい。

 

つくづく奴の息子娘はそろいも揃って父親に似とらんな!」

 

 

 

「それもそうですね。

廉頗将軍。」

 

女の子がそう告げた。

 

え?

 

あの、大男が廉頗将軍?

 

「え、今なんて……………。」

 

素っ頓狂な声を上げてしまった。

 

「ん?

何じゃ小童? 」

 

「遥々、秦から将軍に会いに来たそうです。

話だけでも聞いてあげていただけませんか?」

 

女の子の言葉に対して廉頗将軍は至極、意外そうに、

 

「なんじゃ、

うぬは、兄貴達にも都の貴族の腑抜けの若造共にも良い顔しないくせに、コイツには偉く良い顔をするではないか。

もう色気づいたか」

 

廉頗将軍の言ってることの意味がまるで分からない…………。

 

「な、何言ってるんですか

道中、助けてもらった恩は返さねばならないので、将軍に引き合わせただけですから!」

 

若干、ムキになってる女の子。

 

「あ、そうだ将軍。

この方の曲刀を探してあげてくれませんか?

曲刀で助けてもらったのですが、私が捕らえられた時に賊に奪われてしまって。」

 

「どんな奴だ? 小童。」

 

廉頗将軍は聞いてきた。

 

「かつて、輪虎将軍が使っていたソレ………と聞きました。」

 

「り、輪虎の刀じゃとぉ?!」

 

廉頗将軍は叫んだ。

 

「輪虎の曲刀をどうして貴様が持っておる?!」

 

やべえ 怒らせてしまった…………のか?

 

「ひ、飛信隊の信さんに、譲ってもらい………ました。」

 

熊のように大きな体躯から発せられる威圧感は、何倍にも増大しており、一歩も動けない。

 

膝も笑いかけており、全身の震えを抑えて、どうにか廉頗将軍の顔を見据えて、そう言葉を絞り出すのがやっとだった。

 

李牧も大将軍級の人物ではあるが、李牧は相手の腹の内を探るような雰囲気がある人物で、威圧感とはまた違う雰囲気の武将だった。

 

大将軍のその威圧感を直に感じるのは今回がはじめてだった。

 

「ふん。  そういうことかい。

 

 

飛信隊の信……………あの小童、先輩ぶりおって。

10年早いわ。」

 

廉頗将軍はそう笑みを浮かべながら呟いた。

 

「おい、小童。」

 

「は、はい。」

 

「あの飛信隊・信はな、六将の王騎の矛を受け継いだ奴じゃ。

 

奴は未熟な身にてありながら、中華統一をして、儂らの時代の伝説を塗り替えるとほざきおった。

全く、とんだ大バカ者じゃわい。

 

……………じゃが、あ奴はそんなんでも王騎の意志を受け継いだ男じゃ。

王騎の意志を継いだ者に、廉頗の弟子が負けるだなんて事は許さんからな。

もし、貴様が儂に教えを乞いたいと言うのであれば、あ奴を超える将になってもらうぞ

 

儂のところは厳しいからな、覚悟しておけ。」

 

 

…………なんか認めて貰えたようだ。

 

「は、はいっ! ありがとうございますっ!」

 

「よかったね。」

 

女の子が笑いかけてきた。

 

「うん ありがとう。」

 

助けとけば返ってくると思って助けたんだけど、まさかここまで大きく返ってくるとは、思いもよらなかったことだ。

 

「あ、そうだ、 貴方の名前は?」

 

女の子は名前を聞いてきた。

 

「章覇って言います。  貴方の名前を伺ってもいいですか?」

 

「ん、そうだね。

 

私は項玲。

楚の大将軍:項燕の娘だから、廉頗将軍とは顔馴染みなの。

よろしくね」

 

…………………え?

 

「って、えええええ?!

武家って、大将軍のことかよ!?

 

てっきりどっかの士族の娘かと思いきやまさか大将軍の娘とは思いもよらなかったよ!」

 

誰が大将軍の娘がこんな巷にいると考えるだろうか?

 

「あはっ 驚いてる驚いてる♪」

 

「そりゃ驚くわ!」

 

と話してると

 

「おい、小童。

小娘といちゃついてないで早うはじめるぞ。」

 

「「いちゃついてません!」」

 

「全く、息も揃っておるとは………。

早速だが、小童…………」

 

と、次の瞬間。

 

 

 

 

 

 

「と、殿ッ! 大変ですぞ!

あり得ないモノが見つかりましたぞ!」

 

甲高いような奇妙な、先ほど叫んでいた声の男は、頭頂部が禿げたような奇妙な髪型をした大男だった。

 

「輪虎の刀か?」

 

「と、殿ッ、なぜそれを………」

 

「介子坊。

その刀の今の持ち主はその小童じゃ。」

 

「こ、このガキでございますか?」

 

「ああ。  その小童は今は儂の弟子じゃ。」

 

「なっ!  正気ですか 殿ッ!」

 

「輪虎はかつて、死んだ妹を庇いながら飢え死にかけていたところに儂と出会った。

そして、そんな輪虎の刀の今の持ち主が儂の前に現れたのじゃ。

これもまた、運命と思わざるを得ないだろうが。

 

まあ、もっとも。

王騎の矛を継いだ小童…………飛信隊・信と、この廉頗の弟子。

二人が競い合って、どのような時代を創っていくのか、見たくなったのもあるがな。」

 

「は、はァ…………。」

 

「よろしくお願いします。」

 

「フンっ!」

 

介子坊さんは否定的な様だ。

 

だが、とにかく、こうして僕は廉頗将軍の弟子となったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




項玲
紀元前255年生まれ(主人公と同い年)

大将軍・項燕の娘。 
オリジナルキャラ(ヒロイン候補でもある)。

活動的で好奇心が強い。 


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