キングダム別伝   7人目の新六大将軍   作:魯竹波

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第二十八話 水賊 来襲

舟が長江に入ったその日の夜。

 

舟はある港に停泊して、船頭の方々も眠りについていた。

 

合従軍が秦を攻めた際に、秦滅亡後に備えて商業進出を企んだ商人、或いは戦に備えて楚に逃げ込んでいたのが秦へ帰る商人で、港には30隻くらいの舟が停泊していた。

 

「…………んん」

 

辺りが騒がしく、異様に明るい。

 

松明をつけたかのような明るさだ。

 

 

 

甲板に出ると

 

「な、なっ!?」

 

そこでは

 

「うらぁあああっ!」

 

「きゃあああっ」

 

略奪、暴行、殺戮。

 

とても言葉では表せないような凄惨な行為が行われていた。

 

数多の船が燃えていて、その火が明るさの原因だったようだ。

 

水賊の来襲だ。

 

つかさず、僕は、信さんにもらった曲刀を握りしめた。

ちなみに矛は流石に目立つので持ってきていない。

 

水賊は大きな舟しか狙っていない。

 

金目のもの、金持ちからしか盗らない主義なのか、或いは…………。

 

と、その時。

 

「死ねやクソがキャ!」

 

水賊の一人に見つかった。

 

年上だけど、敵はまだ若い奴だった。  

10代後半に見えるそいつの足を狙う。

 

足を両断すると、即座に脳天をかち割った。

 

 

「ギャアッ!」

 

男は死んだ。

 

 

「あ、おい洪猛っ!」

 

仲間らしい奴らがこちらに気づいてきた。

 

降り懸かる火の粉は振り払わねばならない。

 

 

 

僕は奴らに向かっていった。

 

「ぐへっ!」

 

「いぎいっ!」

 

伊達に戦は経験していないようだ。

 

曲刀を使うのは初めてなのに、自然と身体が動く。

 

 

 

 

 

 

 

こうして水賊を何人か斬り殺したところで、僕はあることに気づいた。

 

そう。

 

現在いる場所がまるで分からないという事態になっていたのだ。

 

路銀とかは懐の中にあるけども、食料とか替えの衣服とか置きっぱなしだ…………!!

 

水賊を斬ってるうちに本来の舟から結構遠ざかってしまった。

 

なんとも情けな…………

 

 

 

 

「貴様っ! この方を誰と心得……」

 

「おい、婆…………やめぬか」

 

どっかの金持ちが襲われてる。

 

助けとけば、どっかで返ってくるかもしれない。

 

ふと見れば、反対側の舟で15才?くらいの商人風の若者が召し使いの老婆を支えているが、どうにも若者は華奢過ぎる気配を漂わせている。

 

「ギアッ! お、お嬢様! はよお逃げを」

 

「婆っ!  って何バラしてんの!

バラしてどうするのよっ!」

 

……………しかも召使いの老婆、最後に男装ってバラしちゃってる。

 

なんとも愚かな…………。

 

「ガハハッ! お前、女だったのか。」

 

「卑劣な賊め!」

 

女とあれば……………殊に丸腰とあっては、助けぬわけにはいかない。

 

「これでも食らえっ」

 

曲刀を横にして、回転させて投げた。

 

「さぁ観念してかね……………」

 

スパンと首が宙に舞う。

 

首は川底に沈んでいったが、曲刀は幸いにも川には落ちずに済んだ。

 

 

 

 

だが、次の瞬間

 

ビシッ

 

 

「ぐっ!」

 

どこからか矢が飛んできた。

 

それが肩に刺さる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

矢には妙な薬が塗ってあったようだ。

 

 

 

途端に睡魔が襲ってきた。

 

 

 

 

 

「……………妙な刀ね。」

 

その男装した商人風の娘が、曲刀を拾ったところで、僕の意識は深い眠りへと落ちていった。

 

 

 

 

 


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