キングダム別伝   7人目の新六大将軍   作:魯竹波

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戦場面無いので、飛ばすというのもアリです。


第二章 江南遊学編
第二十六話 旅立ち


蕞はその後、何事もなかったかのように復興していった。

 

甘秋の父さん達も帰ってきて、大王様からの褒美も届いた。

 

一連の戦いで半数近く死んだとは言え、残った僕達はまだいきていかねばならないのだ。

 

 

 

 

 

 

そして僕は自分のこれからについて、ある決心を固めていた。

 

それは

 

「陳へいく」ことだ。

 

陳とは、郢陳。 つまり楚の都である。

 

陳には中華にいる数多の武官の中でも最高の戦歴を誇る名将・廉頗がいるからだ。

 

 

 

 

 

話は数日前に溯る。

 

僕等は南道を通り、蕞に帰還する際に竹という都市に泊まった。

 

その時、僕は信さんに、自分が将軍を目指す旨を話した。

 

「へへっ。 そうかい。 まあ、お前は頭も良いし、素質はあると思うぜ。

まあ、天下の大将軍は俺が譲らねえけどな。」

 

「……………。」

 

「まあ、そうガッカリすんなって。 」

 

「…………信さん」

 

「なんだ?」

 

「信さんが今まで出会った武将の中で、1番強い将軍って誰だったんですか?」

 

「ん?  そりゃあ勿論王騎将軍だな。

俺に、将来の目標…………いや、人生の指標を示してくれた将軍だ。

 

もう死んじまったけどな。 魏加っちゅう馬鹿に射られて、龐煖に討たれちまった。」

 

「では、今まで1番、恐ろしかった敵は誰ですか?」

 

「廉頗。」

 

「れ、廉頗?」

 

「かつて、天下の大将軍って呼ばれた連中はもうあらかた死んじまった。

最後の生き残りがその廉頗だ。

 

天下の大将軍だった王騎将軍は味方だったからこそ、その強さは頼もしかったが、廉頗は敵だ。

 

その分、その烈しい闘志や、山のような威圧感。

そりゃあそりゃあ恐ろしかったぜ。」

 

「なるほど…………。

その廉頗って人は、今、どちらに?」

 

「さあな? 山陽の戦いが終わった後、魏を出て楚に行ったらしいから、楚の都にいるんじゃねえのか?」

 

「ありがとうございます。」

 

「って、何でそんなこときくんだ?」

 

「廉頗さんに会いにいこうかなと」

 

「!!  お、お前、マジかよ」

 

「本気ですよ。」

 

普通なら、昌平君の軍師養成所に入るべきと考えるだろう。

河了貂さんや、飛信隊と同等の実力を有する楽華隊の蒙恬さんがそこの卒業生ということも知っていた。

 

だが、昌平君よりも、武将としての戦歴が長い廉頗将軍の方が、師と仰ぐには最適だと思われた。

 

中華統一に貢献できるような大将軍になるためには、廉頗将軍に学ぶのが手っ取り早い。

 

「………………まあ、廉頗も戦に出してもらえてねえから暇してるだろ。

案外、普通に会ってくれるかもな。

 

まあ、コレ持ってきゃあどうにかなんだろ」

 

信さんは僕に、一振りの曲刀を渡した

 

「こ、これは?」

 

「廉頗の四天王・輪虎が使っていた曲刀だ。

どうしても会ってくれねえようなら、コレを廉頗の屋敷に投げ込んでやりゃあ、流石の廉頗も会ってくれるだろ」

 

「あ、ありがとうございます!!」

 

なんで、信さんはこんなものを持っているんだろうか

不覚にも僕はそれを聞き忘れた。

 

 

 

 

 

 

 

と、こうして僕は廉頗さんに会いにいこうと思ったわけだ。

 

 

 

蕞に帰って三日目。 褒美の金品を持ち帰った後、僕は母さんにその旨を話した。

 

「お、お前、正気かえ?」

 

母さんは素っ頓狂な声をあげた。

 

「正気です。」

 

「楚は汗明と臨武君の二人の将軍を亡くして、反秦感情が、高まっていると思うわ

そんなところにお前を行かせ………」

 

「私は良いと思うよ 母さん」

 

父さんは僕に賛成してくれた。

 

「貴方まで!」

 

「覇の決めた人生だ。

それに、覇はもう子供じゃない。

 

独り立ちする時期が来たってことさ。

だから、親としては応援してやるべきじゃないか?」

 

「………………。」

 

母さんは少し考えて

 

「分かりました 行きなさい。」 

 

母さんは僕の陳行きを許してくれた。

 

「ありがとう。 母さん。

父さんもありがとう」

 

「ただし、ちゃんと帰ってくるように。

長江・淮河の水賊や楚人に虐められるようじゃ、将軍には到底なれないのだから。」

 

「あはっ  分かってるって

返り討ちにしてやるって」

 

 

 

そして、帰宅から5日後。 

 

 

僕は陳へ行くための支度を開始した。




陳=郢陳
楚の都。 現在の河南省淮陽県
旧都・郢(現・湖北省江陵県)が白起により落とされ、南郡と改められた際に遷都。

合従軍が敗れた同年(まさにこの物語の現在)、寿春を郢と改めて遷都した。


南郡は「三国志演義」で、周瑜が諸葛亮に出し抜かれた土地、寿春は袁術が本拠地とした場所でもある。

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