時は少し遡り………………。
李牧軍が撤退して程なく咸陽に勝報がもたらされた。
肆氏「で、伝者よ……………も、もう一度、申せ…………」
伝者「はっ! 李牧軍、撤退!
李牧軍は蕞より全軍撤退いたしました!
我が軍の勝利です!」
昌平君の目は大きく見開かれた。
次の瞬間
「「「「うぉおおおおおおっ!!」」」」
呂氏陣営・大王陣営問わず、朝廷は大歓声に包まれた。
ただ4人を除いて。
4人とは、呂不韋、李斯、※成キョウ、そして昌平君である。
李斯と呂不韋は自陣営の絶対性に翳りが生じることを悟り、成キョウはやりおったなという思いにとらわれていた。
そんな中、昌平君は1人、伝者の元に駆け寄った。
昌平君「伝者よ。
大王はどのようにして敵を退けた?」
伝者「はっ 詳しいことは分かりませんが李牧軍の兵糧を焼きうちにしたとのことです。」
昌平君「………………!!
つまり、敵の戦力が咸陽を落とせない程に減った訳ではないということか。」
伝者「??」
昌平君「そうか。
黄龍、行くぞ」
黄龍「はっ!」
昌平君は大殿を出て行こうとする。
「まて。」
そんな昌平君を呼び止めるものがいた。
李斯だ。
昌平君「李斯か……………どうした?」
李斯「どうしたもこうしたもあるものか!
明日から、明日から大王陣営の力が強まってしまうのだぞ!!
お前も今後の対応策を考えろ!」
昌平君「…………李斯。 この戦はまだ、終わってはいない。
お前から相国にそう伝えておけ。」
李斯「?! ま、待て昌平君っ!」
そう言うと昌平君は大殿から出て、武装しに出たのであった。
そうして、今、昌平君麾下、千の兵士が蕞に到着したのである。
政「昌平君。 よく来てくれた。
礼を言うぞ」
昌平君「………………。」
蒙毅「先生っ!」
蒙毅が昌平君の元に駆け寄る。
政「それで、昌平君。
そなたはどういう算段でここに来たのだ。」
その時。
昌文君「昌平君が来たと?」
壁「何故…………」
昌文君と壁が入ってきた。
昌平君「丁度良い…………話すとしよう。
大王。
李牧軍の動きはやはり撤退を目的とするものではありません。」
昌文君「?!」
壁「な…………なっ?!」
政「それくらいは無論、知っている。
李牧軍はただ兵糧を失っただけにすぎない。
そして、李牧軍には兵糧を回収する方法がある。
南道の諸城から兵糧を回収するという方法が。
つまり、戦はまだ終わってはいない。」
昌文君「だ、大王様っ?!」
昌平君「おっしゃる通りです…………が、大王。
それだけではありません。」
昌文君「な、なんじゃと。
ま、まだ何かあるというのか昌平君っ!!」
昌平君「ああ。
大王。
李牧の真の狙いは……………南道の玄関口・武関を開けることだと思われます。」
昌文君「な、なんじゃとぉ!!」
「「「「ええっ!!」」」」
驚きがその場を支配した。
※キョウ=虫+喬 変換で出てきませんでした…………。