キングダム別伝   7人目の新六大将軍   作:魯竹波

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第十二話 蕞防衛戦五日目 前編 両雄の共闘

蕞防衛戦も五日目を迎えた。

 

「……………。」

 

蕞の民兵達はそろそろ限界に近づきつつある。

 

僕も眠気とだるさを少し覚えていた。

 

「こりゃあ、まじーな。」

 

飛信隊士さんの一人がそう呟いている。

 

 

 

 

そして開戦時刻を迎えた。

 

 

「………………え」

 

何もないのに勝手に倒れていく兵士達が出てきた。

 

限界がついに来てしまったのだ。

 

 

 

そして趙兵による一方的な虐殺が始まった。

 

飛信隊士さんたちも怠さを隠せないでいる。

 

「おい、章覇 てめえはガキのお守りをしとけ。

ここは俺らが引き受けてやっから。」

 

田永さんがそういったので、僕は少年兵が多い部隊のところに向かった。

 

 

 

「おう ガキは元気か」

 

少年兵に趙兵が槍を突き刺そうとしていた。

 

拙い 間に合わない…………?!

 

 

 

次の瞬間

 

「くっ!」

 

大王様が剣を振るって敵を斬る。

 

「んだてめっ!」

 

「がはっ!」

 

相次いで敵を斬り伏せていった。

 

「まだ逝くなっ! 

意識を保てっ!

 

戦いは終わっていない!」

 

「「「おおーーっ!!」」」

 

蕞の民兵は息を吹き返す。

 

 

 

 

「だ………いや、殿っ!

早く戻ってください!」

 

衛兵達は大王様のことを「主」と呼び、僕達蕞の皆は殿と呼んでいた。

 

「悪いがこの戦況ではそうもいかない。

章覇といったな。 ここは任せたぞ」

 

大王様はそういうや、部下を引き連れて次の拠点に向かっていった。

 

 

「と、殿っ!」

 

「ガキ! てめえは逝っとけや!」

 

襲ってくる趙兵の喉笛を的確にかっ裂く。

 

 

 

「こいつ、筋が速いっ!」

 

「ぐぎゃっ!」

 

趙兵を40人は殺しただろうか。

 

丁度、渕さんがきた。

 

「大事ありませんか 援軍が必要でしょう。

信殿に言われて来ました。」

 

少年兵と大人民兵が60人にまで減少していた、僕が今いる拠点を心配して来てくれたのだ。

 

「ありがとうございます。」

 

「貴方は少し休んでください。

年端もいかぬその身体で連戦は疲れるでしょうし。

しかもこの拠点は少年兵が多い。

貴方にかかる負担も自身の想定よりも大きいはずです。」

 

「分かりました。」

 

僕は休息に入ろうとした…………が

 

妙な胸騒ぎがする。

 

「…………父さんか? 」

 

丁度大王様は東壁に程近い南壁左翼、沛浪さんが指揮を採る方に向かっていた。

 

大王様も心配だし、向かってみることにした。

 

 

 

 

「邪魔だよっ!」

 

趙兵が度々邪魔してくるのを切り伏せながら進むと

 

「あっ!」

 

大王様を見つけた。

 

大王様の護衛は20人程まで減少していた。

 

少年兵の多い拠点にちらほらそれらしき人影も見える。

 

少年兵の拠点に少しずつ置いてきていたのだろう。

 

だが、流石に20人程という数は少なすぎる。

 

数の足しにもなれば……………。

 

向かうことにした。

 

 

 

 

「ぐはっ!!」

 

運悪く流れ矢が衛兵を貫いた。

 

大王様は無防備になる。

 

すると、待っていたかのように趙兵の一小隊が大王様に向かって突撃してきた。

 

「殿っ!」

 

僕は急いで大王様の元に向かう。

 

 

そして敵の隊長が大王様に肉薄する。

 

それを大王様は自ら隊長を袈裟懸けに斬った。

 

 

 

「趙万。 今だっ!」

 

隊長は大王様に抱きついた。

 

息絶え絶えの隊長ごと、その趙兵は大王様を槍で突き刺しにかかる。

 

 

 

……………槍は隊長を突き抜け、大王様の腹を貫いてしまった。

 

大王様はうずくまる。

 

「ぐっ!」

 

「「「だ、大王様っ!!」」」

 

 

 

大王様が蕞にいることがバレた?!

 

「番陸。

そのキンキラの首を斬れっ!」

 

「オオッ!」

 

槍の兵士は傍の剣兵に命じた。

 

 

「「や、やめろぉおお!!」」

 

 

 

 

 

 

そして、丁度、僕は大王様の元に辿り着いた。

 

「させっかっ!」

 

「何してやがるてめぇら!」

 

僕は大王様を斬ろうとした剣兵を。

 

脇から現れた飛信隊・信が槍兵をそれぞれ斬り伏せていく。

 

 

 

 

 

「やるぞ章覇っ!」

 

「はいっ!」

 

「何だ貴様らっ!」

 

次々と駆けつけてくる小隊を飛信隊・信と僕は切り伏せる。

 

大王様という叫びを聞いたためか、次々に現れる。

 

「やらせっかよ!」

 

「通すわけにはいかないっ!!」

 

「主っ!?」

 

護衛も何人か戻ってきた。

 

「がはっ!」

 

「ぐぶっ!」

 

 

趙兵は為す術もなく飛信隊・信、僕、或いは衛兵の餌食となっていく。

 

 

 

 

寄ってきた200近い趙兵は壊滅した。

 

 

「政っ!」

 

飛信隊・信が駆けつける。

 

大王様はどうにか目をあけ、

 

「騒ぐな………。」

 

腹から出てくる血を抑えながら、息絶え絶えに大王様は呟いた。

 

 

「おい。 衛兵。 それと章覇もだ!

政を連れて高楼にいけっ」

 

「「オオ!」」

 

「はいっ!」

 

僕は衛兵と一緒に大王様を高楼に運び上げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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