キングダム別伝   7人目の新六大将軍   作:魯竹波

10 / 50
既におわかりかと存じますが、蕞防衛戦の間の主人公はチートキャラです。
第2章からはチートが封印されます


第十話 蕞防衛戦三日目 

三日目を迎えた。

 

「足引っ張ったら承知しねえぞ ガキ」

 

「精一杯頑張ります!」

 

「ふっ」

 

 

 

序盤。飛信隊は押し込まれた。

 

疲れが出てきているのだろう。

 

田永さんも動きが鈍い。

 

「疲れてるんですか?」

 

「舐めんな」

 

とかえしてくるものの、やはりかわらない。

 

この状態を立て直すには……………蕞の民こそ重要だろう。

 

僕は田有隊の民兵を鼓舞することにした。

 

河了貂さんから、配下を鼓舞するコツは教わっている。

 

「民兵の皆さん、 よく聞いてください

蕞の主力は南壁の飛信隊、そして東壁の麃公兵かもしれない。

しかし、この蕞の戦の主人公は誰か?  

 

僕たち、蕞の民だっ!!

 

飛信隊の皆さんは強い  けれど、この戦はそれだけじゃ勝てない!

僕たち、一人一人がっ!  やらなくちゃいけないんだ!

 

秦国を

未来を

家族を

子孫を

 

そして現在を守るために! 

 

蕞の民の力をっ  趙の侵略者に叩きつけてやろうっ!

 

みんな 僕に続けっ!」

 

「「「「うぉおおおおっ!!」」」」

 

蕞の民の士気は再び立ち上がる。

 

ガキだから………と言う感情がなく、皆が付き従ってくれるのはうれしいことだ。

 

多分、傅抵を倒したからだろうな…………。

 

飛信隊士の受けもちの場所は崩れつつあった。

 

しかし、

 

「まだだっ!  まだやれるよな?

おまえらならヤれるだろ?!

蕞の民兵や趙兵に、飛信隊を見せつけてやれっ!」

 

飛信隊・信も鼓舞に回る。

 

「立てっ! 立ち上がれ皆っ!」

 

「まだ終われないだろ?!  」

 

蕞の民も各地で勝手に鼓舞に回る。

 

 

 

 

こうして蕞守備兵は気力を取り戻す。

 

「それっ! 押し返すぞっ! 突撃っ!」

 

僕はいつの間にか号令までかけていた。

 

「「「おおおーっ!!」」」

 

拠点を固めた趙兵に突っ込む。

 

趙兵の拠点はたちまち崩壊していく。

 

 

 

「つか、すげえな 章覇ってガキ。」

 

「ああ。  飛信隊・信にゃあ劣るかもしれんが、初陣だし、まだ13らしい。

そこであそこまでやれるのは大した奴だな」

 

飛信隊士さんからそんな声が漏れているのが聞こえた。

 

 

確かに戦が嫌いな13の少年がここまでやれるのはおかしいとしか云えない。

 

つくづく、僕は将軍とかに向いているのかもしれないな…………。

 

自分がこの戦を通じて変わりつつあることを自覚しながらも、僕はこんなことをこの時、初めて考えた。

 

 

 

 

僕はふと、大王様のいる南壁の高楼を眺めた。

 

大王様の側近が驚愕の顔で周囲を見渡している。

 

民兵の士気の爆発は、蕞の四方に伝播しているようだった。

 

 

 

 

 

そんな中。

 

「いでっ!」

 

田永さんの腕を大きな矢が貫いた。

 

「田永さんっ!」

 

「くっ 気にすんな

いででっ 」

 

矢を抜きにかかるが、如何せん力が入らない。

 

矢のせいである。

 

「ガキ。  悪ぃがしばらく指揮を頼むぜ。

援軍が必要なら、あいつに頼め。」

 

田永さんは渕さんを指さした。

 

「分かりましたっ」

 

「おい。 てめえらっ 俺が戻ってくるまでの間、このガキに従えっ!

ガキだからとか抜かしたら承知しねえぞっ!」

 

そう言って田永さんは手当の為に降りていった。

 

 

と、次の瞬間。

 

「うっ!」

 

階段に繋がる部隊が一気に押し込まれた。

 

「どうする 章覇っ!」

 

民兵が僕を見る。

 

どうすれば…………蕞の民兵に最小限の………。

 

考えろっ

 

 

ふと、一日目の尾平さんのいた辺りの陣形を思い出した。

 

「偃月状に陣形を組めっ!

半包囲する!」

 

「「任せろっ!」」

 

偃月状の陣形により、階段に近い中央は敵の攻撃を受け流す。

 

「左、右の兵士は、内側に敵を押し込めっ!」

 

「「おうっ!」」

 

左右が敵を中央に押し込んで完全包囲すれば、蕞の兵士の主な武器は槍。 

間合いが長い分、こちらの損害を最小限に抑えて敵を殲滅出来る。

 

殲滅したら

 

「左右の兵士は散開!」

 

再び次の趙兵を絡め取る。

 

 

 

だが、いつか限界が来る。

 

「章覇っ  こっちにも盾兵が来たっ! 」

 

飛信隊・信の方に向けられていた盾兵はこちらにも来た。

 

「火を持ってくるように伝えてっ!」

 

弓兵の近くには、矢を運搬する子供達がいる。

 

 

「持ってきたぞっ」

 

「弓兵に、火矢を、盾兵に向かって射るように伝えてくれっ」

 

盾まで全て鉄で出来た部隊なんて王の近衛兵くらいしかいないはず。

 

この趙兵達の持つの盾の中央部は木で出来ている。

 

故に火矢で燃える。

 

「うわっ 火だっ」

 

盾で自らを囲んで密集している盾兵軍団の中にも火矢を射こませる。

 

「あっつっ!」

 

「散れっ 散れっ」

 

散った盾兵は最後、蕞の兵士の槍に突き立てられた。

 

そうして僕達の部隊は、敵にうまく対処していく。

 

 

 

 

田永さんは結局、骨をやられたみたいで、翌日に復帰するとのことだった。

 

だけど、日が暮れるまでの間、僕達は無事に持ち場を守り抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。