ゴブリン成長記   作:補う庶民
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2話

目が覚めると俺は森の中にいた。
見上げると翼が4枚ある鳥が空を飛んでいた。
なぜか目線が低くなっている。
俺の身長は175なのだが明らかに小さくなっている。1m位だと思う。
両手を見ると肌は濃い緑色で全体的に骨張っている。
しかもめっちゃ猫背。
身につけているのは布製の腰ミノだけ。
周りを見渡しても見えるのは木ばっかりで姿を確認できそうなものはない。

不意にさっきまでのことが頭をよぎる。

「グギィ。グギャギャ」

上手く話せない。
間違いない。俺はゴブリンになってしまった。
さっきまでゲームだと思って作っていたキャラクターは本当の自分の転生先だった。

呆然としていると不意に家族や友達の事を思い出す。
顔が真っ青になる。
どうしてこうなってしまったのだろうか。
決まっている。さっきまでいたドアのない部屋でゲーム感覚で始めたことだ。
どうやったら帰れるのだろう。
そもそも人間に戻れるのだろうか。
前を向くと4枚の翼を持つ鳥がかぎ爪をこっちに向けて勢いよく向かってくる。

「グギャギャギャ!」

急いで鳥から逃げる。
逃げながら思うことはただ1つ。
探して見つけるしかない。
人間に戻り、家族の元に帰るための方法を。
魔物は進化することができる。
いまはそれに賭けるしかない。
進化を繰り返せばもしかしたら人間に戻れるかもしれない。
俺はどうやってかこの世界に来てしまった。
スキル欄では魔法とかもある。
魔法で帰れるかもしれない。
だが魔物は全人類の敵だ。人間に戻らないとそこらへんもどうにもならないだろう
街を見つけても入れないだろう。

「グギィ、グギャギィ」

まだ希望はある。今できることを考えよう。
取り敢えず進化するためにレベルを上げる必要がある。
他には衣食住も揃えなくてはいけない。
衣は腰ミノでいいだろう。
服はあまり重要ではない。
食べ物……ゴブリンは何を食べるんだ?
普通に肉とか野菜とか?
ちくしょう、もっとちゃんと杉元の話を聞いとけばよかった。
住む場所もどうしようか。
木の上を見る。

「グギィ」

俺が乗っても折れないほど太い枝がそこら中にある。
そこで寝れば大丈夫だろう。
いつまでもくよくよしてたって何も状況は変わらない。
何をするにもまず行動するしかない。
まず食料を探そう。
そう考えて俯いていた顔を真っ直ぐに向ける。
目の前に緑の小人がいた。
俺と同じゴブリンである。
俺と違うところは刃こぼれが凄い剣を持っている。

「グギャギァ!」

俺はすぐに背を向けて走り出した。
後ろをチラッと見ると俺を追いかけてくる。
後ろを見ると追いかけてくる。
なんか叫んでいるがグギャとしか聞こえない。
だが俺の方が速く、そのうち振り切ることができた。

「ギャァ、ギャァ、ギャァ」

息を落ち着かせる。
体力のなさが半端無い。
すぐに息が切れる。
今の自分の体の状態を知りたい、そう思った瞬間、

『名前:高橋浩太郎 種族:ゴブリン Lv1/10
HP :12 LP:10
MP :3

スキル
HP上昇(小) Lv1/5 毒耐性(小)Lv1/5
言語習得不可 』

なんか表示された。
見覚えのある画面。さっきまで自分で作成したステータスだ。
目を引くのは言語習得不可。
多分これのせいでさっきのゴブリンの言葉が理解できなかったのだろう。
ちくしょう。選ばなきゃよかった。
これのせいで言葉を習得することが出来ない。
つまり相手が何を言っているか理解することができないと言うことだ。
ボッチよりもひでぇよ。
一生誰とも話せないのだろうか。
どうにかして失くせないかな。無理か。
………食料探そうか。


何が食えるのか全くわからないということにすぐに気付いた。
キノコを見つけても毒があるかどうかがわからない。
毒耐性は一応持ってはいるが(小)だからあまり期待できない。
そう考えると食べる気がなくなってしまう。

「ギィ」

どうでもいいけどゴブリンってガ行からしか話せないっぽいな。
草もどれが食えるか分からない。
手に持っている先が鋭い木の枝を見る。
最悪、韓流ドラマで見たように木を食べるしかない。
本当の最終手段だけど。
しばらく進んでいるとネバネバした物体を見つけた。
色は透明な緑色で中に目っぽいものが1つある。大きさは小さい
あれがスライムという奴なのだろうか。
多分大きさ的にまだベビーなのだろう。
食べられるのだろうか。
取り敢えず近づいてみる。
相手もこっちに気付いたようで近づいてくる。
するとすぐに食べられないことに気付いた。
液体の中にある葉っぱが少しずつ溶けていくのが見える。
あんなもの食べたら口の中から溶けてしまうだろう。
中にある目っぽいものはたべれるのだろうか。
初戦闘だ。少し緊張する。
持っている木の枝を構え、相手がどう動くかを見る。
………ノロノロと真っ直ぐにしか進んで来ない。
凄いおっそい。凄い警戒してた自分が馬鹿みたいだ。
木の抜けた俺は普通に歩いて相手に近づき、
鋭い先っぽで目っぽいものに刺す。
少し目っぽいものが振動して周りについていた透明な緑の液体がまるで力を失ったかのように目っぽいものから流れ落ちていき、地面に染み込んでいった。

「ギギャァ」

なんかグロいな。
枝に刺さってるものを見る。
これは食べられるのだろうか。
焼いた方がいいのだろうか。でも火がない。
木を使う方法があるが確かひもが必要だったはず。
枝に刺しっぱなしにして他の食料を探しにいく。

ベビースライムを見て俺は気が緩んだのだろう。
俺は自分の後ろについてくる大きな影に気づかなかった。