ゴブリン成長記   作:補う庶民

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18話

「グギャァァァァァ!!!」

 

『咆哮』で注意をこっちにむける。

 

「ギィィィィィィ!!!」

 

あいつも俺を見るとさっきまで戦っていた二ノ宮と葛城を無視して俺に向かって走ってくる。

まず俺がしなくてはいけないことはみんなを逃がすための時間稼ぎだ。

持っていた鉈を相手に投げる。

持っている両手剣で普通に弾かれるがその隙に近付いて殴る。

両手剣の腹で拳をいなされ、腹を切られる。

『置換』のおかげでHPも減らないし傷もつかない。

 

「ゴブリンガーディアン!スキルを使うレアモンスター!『属性付与』を使うって出てる!」

 

斎藤さんが叫ぶ。

 

「そいつは剣術スキルも持ってる!『スラッシュ』使ってきたんだ!スキル持ちは希少じゃないのかよ!」

「おい!俺たちは逃げるぞ!」

「ナズナを置いて行くの!?」

「しょうがないだろ!あいつの足止めができるのはナズナしかいない!」

「でも!」

「関とかヘタしたら死ぬぞ!」

「……ごめん。絶対に後でまた戻ってくるから!」

「武器とか置いとけ!運ぶのに邪魔だ!」

 

みんなはそれぞれ不良グループを担いで逃げていく。

この場には俺とゴブリンガーディアンしかいなくなった。

 

「ギィ」

 

ニヤリと相手は笑う。

あいつ、わざわざ待っていやがった。

落ちてた両刃斧を持つ。

さっきまで葛城が使っていたものだ。

斧は俺よりも長く、刃も厚い。重さもそれなりにある。

刃に血が付いてないことから相手の強さが伺える。

両刃斧を両手で持って上段に構える。

ゴブリンは両手剣に手をかざす。

すると剣が火を纏った。

あれが『属性付与』なのだろう。

そして剣を中段に構えた。

 

唾を飲み込む。

何処かから鳥が羽ばたく音がした瞬間、

一瞬で俺の目の前に移動して刺してくる。

以前戦った頃よりも断然速い。

これが『スラッシュ』なのだろう。

『置換』のおかげで傷1つつかないがかなりMPが削られた。

急いで振り下ろすが避けられてしまう。

ゴブリンガーディアンがスキルで横薙ぎの一撃を放ってくる。

斧で受け止められたが柄が切れてしまった。

斧をすぐに捨てて敵の攻撃を受けないように捌いていく。

上から、下から、右から、左から。

様々な方向から飛んでくる斬撃をできるだけ最低限の動きで対応する。

少しぐらいミスしてもいい!MPがある限りダメージを受けることはない!

ゴブリンガーディアンは飛び上がる。

叩きつけるように振り下ろされた両手剣を両腕で受け止める。

足が地面にめり込んだ。

両手剣の刃をそのまま掴んて投げ飛ばし、その上に拳を叩き込む!

やっとの攻撃チャンスだ!重ねて殴る!

 

「グギャァァァァ!!!!」

 

顔を中心に狂ったように殴り続ける!

たまに肘で打ち、頭突きをする。

だが途中で腹を蹴られて距離を取られてしまった。

ゴブリンガーディアンは所々血が流れ、体もけっこうボロボロだがまだまだ余力がありそうだ。

俺は逆に体に傷こそはないが体力的にもう限界が近い。

一撃一撃全力で殴り続けたのだ。

今倒れてない自分を褒めてあげたい。

 

『MPがなくなりました』

 

しかもMPが切れてしまった。

 

ゴブリンガーディアンがさっきと同じスキルで俺に近付き、一撃を入れる。

 

ブシュッ

 

「グギャア!」

 

横腹を斬られる。

痛い!熱い!斬られたところから焼けた肉の匂いがする。

遅れて拳を振るうが当然あたらない。

急いで拳を引き戻し顔面めがけて後ろ回し蹴りを見舞う。

蹴り上げた足を掴まれる。

そして横薙ぎをしてくるが掴まれた足を軸に思いっきり飛び上がることでその一撃を避けてもう片方の足でかかと落としを頭に叩き落とした。

ゴブリンガーディアンが手を離してしまい受け身を取れずに倒れるが急いで立ち上がりまた殴りにいく。

とにかく接近して『スラッシュ』を使わせない。

あのスキルは速すぎて避けることもガードすることも出来ない。

MPがない今では一番の脅威になる。

運良く落ちてた剣を拾う。

多分関あたりが使っていたのだろう。

なんの変哲もないただの片手剣だ。

ゴブリンガーディアンと鍔迫り合いになる。

ゴブリンガーディアンがスキルを発動させる

それだけで俺は吹っ飛ばされてしまう。

そして『スラッシュ』で俺の目の前に現れてその手に持つ両手剣を俺の左腕目掛けて振り下ろす。

筋肉の断裂音、そして骨までも切れる音が聞こえる。

だがそこで止まった。切り落とされることはない。

まだ繋がってるがなんの役にも立たない。

むしろ邪魔になるだけだろう。

痛みで心が折れそうになる。

無理やり立ち上がり、睨み合う。

ゴブリンガーディアンはまた両手剣に手をかざす。

 

「ギィ」

 

火がさらに燃え上がる

俺も剣を構える。

半分切れてる腕は放置だ。指一本動かせない。

ゴブリンガーディアンは下段に構え、今度は普通に歩いて近づいてくる。

だがそれでも俺の体は反応できない。

せいぜい睨むことが限界だ。

体がもう限界なのだ。

相手もわかっているのだろう。

あいつは俺よりも力強く、見切れないほどのスピードを持つ。

そして俺が使いたくても使えない『剣術』、『属性付与』を持つ。

もともと勝てる戦いではなかったのだ。

ゴブリンガーディアンはまた何か俺の知らないスキルを発動させる。

右から切り上げ、左から袈裟切りして右薙ぎ、そのまま体を回して両手剣を上げて振り下ろされる。

切られるたびにできる傷が『属性付与』による火で焼かれていく。

 

「ギィ!」

「グギャァァァァ!!」

 

全身あっちこっちが焼き切り傷だらけ。

膝を地面についてしまう。

 

「グギィ……」

 

持つ剣を支えにして立ち上がる。

ゴブリンガーディアンも構える。

ゴブリンガーディアンの両手剣が輝きだす。

またスキルを発動するのだろう。

 

『HP :12/420

MP :0/280 』

 

HPももう殆どない。

これで俺は死ぬのだろう。

 

「????????????????」

 

何処かから声が聞こえる。

相変わらずなんて言ってるかはわからない。

ゴブリンガーディアンが上を見る。

俺もつられて見上げる。

 

そこには鎌を持ったガーゴイルが飛んでいた。

 

「ギィィィィィィ!!!」

 

ゴブリンガーディアンが何か叫んでるが俺はあいつがなんて言ってるか分からないからなんの反応もできない。

ガーゴイルもそのことに気づいたのだろう。

いろいろ話しかけてくるが何1つ理解できる言語はない。

この世界の全ての言語は俺は理解できない。

だが、

 

「????——これナらわかるカ?」

 

あいつは日本語を喋った。


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