ゴブリン成長記   作:補う庶民

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17話

「ふぁあああ〜。眠いな……」

 

カチャカチャ カチャカチャカチャ

 

完全に暗い部屋の中。窓もなければ明かりを灯す道具もない。

部屋の内装はベットだけでそれ以外は何もない。

部屋の主は今起きたようで布団からかおをだした。

ドアの開く音がする。

 

「ノックぐらいしてくれないものかね……。 まぁ別にいいけどさ」

 

部屋に入ってきたものはなにも言わない。

 

カチャリ

 

「はぁぁぁぁぁー」

 

部屋の主は面倒臭そうにため息をはく。

 

「面倒臭いなぁー。何もしたくないなぁ」

 

はーっ、とまたため息をつく。

またドアが開く音がする。

 

「だからノック……、もういいや」

 

ボフッ

 

顔を枕にうずめる。

 

「好きにしなよ。どうでもいい。私は寝る」

 

それだけを言うと部屋の主は寝てしまった。

そして残った奴らも何も言わずに部屋から出て行った。

 

 

==============================

 

「やっぱ、熟練度が足りないからだよなぁ」

「基本的にそこらへんはゲームと同じ考えでいいと思うぞ」

「どういうこと?」

「レベル上げには経験値、スキルレベルには熟練度ということ。斎藤さんも『鑑定』使い続けたら上がったって言ってたじゃん」

「3からめっきり上がらなくなったけどね」

「今でも使ってる?」

「あ、忘れてた」

「これから魔物を見つけたら使って内容を教えてくれ」

「わかった」

 

杉元たちはレベル上げに対して色々相談し合っている。

その様子を見ている俺は頑張れと心の中で応援する。

兵士と魔術士は周りの警戒で忙しい。

 

「次は連携してやってみるか」

「俺が前衛、斎藤さんと畑中さんが後衛で杉元が遊撃かな」

「私のゴブリンはどうする?」

「あー……。俺たちがどうしようもない時に手伝ってもらうとか?」

 

えー。

 

「なんか不満そうな目でこっちを見てるけど」

「あいつも闘いたいのかな」

「レベルとかないくせにな」

 

俺にもちゃんとあるわ!

あいつら、魔物にはレベルとかのステータスがないと思い込んでるらしい。

そんなわけあるか。俺にもちゃんとあるから。

話せれば1番楽なんだが、あいにくゴブリンではグギャとかしか話せない。

文字も書けないし。ちくしょう。

 

「?????????!」

 

兵士が何か言ってきた。

 

「スライム!」

「定番だな」

「ドラ◯エと同じなのかな?」

「いや、凶悪な方だった。目みたいな核があって、それを酸性のジェルみたいなのを纏ってる。岡本のシールドバッシュは効かないから杉元の火魔法で焼いてくれ」

「分かった」

 

さっきのゴブリンのことがあってか慎重に行動する。

うんうん、良いことだ。

俺はベビーしか相手にしてなかったけど結構弱いから大丈夫だよ。

 

「とりあえず俺が前な」

 

岡本が前に出て盾を構える。

杉元も今度は槍を構えた。

その後ろで斎藤さんが火の玉を出しておく。

杉元と畑中さんはさらに後ろで様子を見てる。

 

スライムがあらわれた。

俺が見たベビーよりも大きい。

 

「これ、俺いらなくね?」

「……だね」

 

だが遅い。ベビーの頃よりは速いのは分かるがそれでも遅い。

斎藤さんが火の玉を飛ばす。

それだけでスライムはすぐに燃え尽きた。

 

「弱かったな……」

「そうだね……。あ、レベル上がった」

「俺たちも上がってる……パーティ共有なのか」

「あ、だから最大6人なんだ。ますますゲームっぽいな」

「でも初のレベルアップがこれって……」

 

俺のレベルは上がってない。

俺は来る前に少しレベル上げしたからなのかな。

 

『名前:高橋浩太郎

種族:ビルドゴブリン Lv5/40

HP :380/380 LP:4

MP :250/250

誓約:偽自

 

スキル

HP上昇(中) Lv2/5 毒耐性(中) Lv2/5

咆哮 置換 言語習得不可 』

 

あれ、LPが僅かだけど増えてる。

なんでだ?

 

「どうしたの?行くよ」

 

斎藤さんに声をかけられる。

みんなはまた移動を始めたようだ。

今日でできる限りレベルを上げておきたいのだろう。

 

「グギャイ」

 

LPのこととかあとで考えよう。

この世界は一歩間違えれば死ぬ世界だ。

今はクラスメイトを守ることを考えよう。

 

そんなことを考えながら俺はみんなの後ろをついて行く。

 

 

 

 

それからは順調だった。

主にゴブリンを倒してまわった。

岡本が受け止め、畑中さんがホールで相手の邪魔をして斎藤さんと杉元でとどめを刺す。

安定している。

兵士と魔術士も問題ない様子で見守っている。

 

「おらぁ!」

 

杉元が剣でゴブリンのとどめを刺した。

 

「レベル上がった。これで8か」

「私は10だね」

「私も8だ」

「俺はやっと6になった。俺だけ遅くね?」

 

杉元はレベルが上がりずらいようだ。

俺は今のでやっと1上がった。

貢献度によって変わるのだろうか。

それにしては杉元は上がってない。

 

「?????????????」

「上位職の難点だな。ちくしょう」

 

上位職?職にも色々あるのか。

 

「???、???????????」

「ですね。帰りましょう」

 

お、帰るのか。まぁ、日も暗くなってきたからな。

 

「最初はやばかったけど、今はもう大丈夫だな」

「慣れたっていうこともあるよね」

「生き物を殺すことに慣れるってのもねぇ」

「あんまり衝撃受けなかったな」

「やらなきゃ殺されるって思うとそれどころじゃなかったからね」

「俺は腕折られたからな」

 

和気藹々と色々話しながら歩く。

みんな楽しそうだ。

俺は話せないことに寂しさを覚える。

 

「どうしたの?」

 

斎藤さんが聞いてくれた。

なんでもないと首を横に振る。

 

「なぁ、そいつに名前つけねぇの?」

「あ、そうだね。いつまでたってもゴブリンだとかわいそうじゃん」

「可愛い名前にしようよ!」

「ゴブリンに可愛い名前?」

 

俺の名前を決めてくれる。

高橋浩太郎は人間の時の名前だ。

ゴブリンとしての名前だったら俺もこいつらにつけて欲しい。

 

「五月雨ってどうだ!」

「厨二病かよ。無難なのでよくね?」

「それじゃつまんないだろ」

「プッチーとか」

「見た目を考えろよ」

 

うーん、とみんな悩んでいる。

それだけで嬉しくなってくるから不思議だ。

 

「私はナズナがいいなぁ」

 

斎藤さんがポツリと呟く。

 

「ナズナって花の?」

「うん。なんか語感いいじゃん」

「まぁ、飼い主が言うならそれでいいんじゃね」

「じゃあこれで決定!」

 

俺の名前はナズナになった。

 

『名前:ナズナ【高橋浩太郎】

種族:ビルドゴブリン Lv6/40

HP :420/420 LP:13

MP :280/280

誓約:偽自

 

スキル

HP上昇(中) Lv2/5 毒耐性(中) Lv2/5

咆哮 置換 言語習得不可 』

 

それによってステータスの表示も変わる。

俺はナズナ。ナズナになった。

 

 

きゃぁぁぁああああああああ!!

 

何処かから叫び声が聞こえる。

 

「ど、どうしたの!?」

「とりあえず行くぞ!」

 

さっきまでの楽しい雰囲気は消えた。

急いで叫び声が聞こえた方向に向かって走る。

意外と遠くない。すぐに着いた。

 

そこにあったのは

 

まだ息はあるようだが血まみれで倒れている、関悠人と田中里志。

未だに泣き叫んでいる、町田涼子と里中百合。

そしてまだ戦闘中だが限界が近い二ノ宮和彦と葛城秀水。

もう死んでいる兵士と魔術士。

 

不良グループが全滅しかかっていた。

相手は線は細いが両手剣を軽々と片手で振るっているゴブリンだ。

身長は俺より少し高い。

160くらいだろう。

 

腰には見覚えがある折れた剣があった。

 


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