ゴブリン成長記   作:補う庶民

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14話

日が暮れると俺は城の地下にある牢屋に入れられた。

牢屋の中はランタンとトイレ代わりの桶しか置いてない。

兵士がランタンの中に見覚えがある石を入れる。

これはゴブリンとかの中にあった石だ。

この世界では魔物の中にある石——魔石を使うことで生活するようだ。

 

他の兵士が山盛りのパンを持ってきた。

パンを牢屋に入れた後、鍵をかけられる。

パンを食べる。固かった。

個人的には硬いのが好きなので満足だ。

今までは生肉とよくわからない野草とキノコぐらいしか食べられなかったのに比べると豪華になったものだ。

炭水化物は最高だな。

 

「グギィ」

 

クラスメイトのことを考える。

みんなで邪神とかいうやつを倒すそうだ。

出来るのだろうか。みんなはまだ実感が薄いのかもしれない。

死ぬかもしれないとちゃんと分かっているのだろうか。

俺の正体をクラスメイトに知らせるつもりはない。

俺は地球では行方不明扱いのようだ。

ゴブリンになってると知られたくない。

怖いのだ。どう言う反応されるのかが。

想像するだけで震えが止まらない。

パンをやけ食いする。

日本語はわかると言うことで字が書けることにも気づいたが、日本語を使うと気づかれるかもしれない。

俺はただのゴブリンとそして振る舞うしかないんだ。

 

俺は寂しさや悲しさを抱くと共に久し振りにクラスメイトに会えたことに安心感を覚えていた。

 

 

 

 

 

次の日。起きると目の前には山盛りのパン。

補充されていた。

相変わらず硬いが美味い。

食べ終わる頃に斎藤さんが迎えにきてくれた。

牢屋から出て斎藤さんについていく。

周りにいる兵士と仲良く話している斎藤さんを見ると自分の正体について話したくなる。

 

今日は城から出て協会に向かうらしい。

なぜか俺も連れていくようだ。

協会に向かいながら斎藤さんは俺に色々話しかけてくる。

祭司のトップは王様らしい。

この世界について色々話してくれた。

教会の中に入る。

奥にとても大きな女神像が置かれている。

 

「これが聖神」

 

斎藤さんが呟く。

みんな呆けた顔で女神像を見上げる。

魔物の俺からしたら聖神は敵になるらしい。

だが、俺はいつの間にか聖神に祈っていた。

 

俺の正体がバレませんように。

みんな無事に地球に帰れますように。

 

周りを見るとみんなも目を瞑り、静かに祈っていた。

 

『誓約:偽自 を誓いました。』

 

誓約:偽自?クーフーリンとかのやつだろうか。

ステータスを開く。

 

『名前:高橋浩太郎

種族:ボブゴブリン Lv1/15

HP :50/50 LP:8

MP :20/20

誓約:偽自

 

スキル

HP上昇(小) Lv3/5 毒耐性(小)Lv4/5

置換 言語習得不可 』

 

スキル以外のステータスが全部上がってる。

LPも増えていた。

誓約を破ると酷い目に遭うと言われている。

偽自、つまり自分の正体がバレてはならないということだと思う。

聖神に感謝を述べる。

気付くとみんなは教会を見学していた

いくつかグループに分かれて移動している。

そこら辺の人に話しかけてたりして楽しそうだ。

俺は椅子に座ってみんなが戻ってくるまで聖神像を眺めながら待つことにした。

 

しばらくして城に戻る。

訓練場に行き、クラスメイトたちは戦闘訓練をする。

斎藤さんのスキル、『使役』によって俺は斎藤さんの命令に逆らえない。

例え聞こえなくても体は斎藤さんの命令に従ってしまう。

戦闘訓練中たまに体が勝手に動くことが多々あったので間違いない。

俺もその辺の兵士と戦ったりした。

いつもと調子が違う。

より素速く、力強く、動体視力も上がっている。

誓約によるものなのかレベルも上がってないのに戦闘面で大幅に強化された。

誓約が破れたときにどうなるか、怖くて仕方ない。

 

今日は街から外に出された。

今は俺がいてもあまり出来ることはない。

だから閉じ込めておくよりも外に出しといたほうがいいと考えたのだろう。

運が良ければ進化して帰ってくるかもしれないと考えているようだ。

俺を他のゴブリンと見分けるために腕輪をつけられる。

なんの変哲もないただの腕輪だ。

斎藤さんの名前が日本語で彫られている。

俺は森に向かった。

森に入ると近くを飛んでいたフォーバードが俺に突っ込んでくる。

俺は石を拾って突っ込んできたフォーバードの頭にむかって思いっきり殴る。

これだけでフォーバードは絶命した。

死体の中にある魔石を取る。

これを貯めて斎藤さんにプレゼントすれば褒めてくれるだろうか。

湖に行って地面を掘り、魔石を埋める。

目印に不自然に見えないように木の枝を突き刺しておく。

 

斎藤さんに教わった。

この世界には冒険者と言われる人たちがいるそうだ。

最初に来たときにあった4人組もそうなのだろう。

ギルドに所属していて、調査、落し物探し、魔物討伐などの様々な依頼で動く何でも屋みたいなものだそうだ。

依頼がないときは魔物を狩って魔石を集めて売ることで生計を立てるらしい。

冒険者にはランクがあり、こなした依頼の質や量、売った魔石の希少度や量によってランクが上がる。

つまりランクが高いほど強いと考えていい。

そんな奴らに目印がバレたら奪われるに違いない。

出来れば遭遇すらしたくない。

 

俺はレベルを上げながら、魔石も集めることにした。


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