『使役されました。主人:斎藤知恵』
クラスメイトがいたことに混乱していたら俺は斎藤さんに使役されることになったようだ。
斎藤さんの近くには杉元もいる。
関が俺を見てにやにやしていると斎藤さんに
「なぁ、斎藤さん。スキル使って攻撃して見ていい?」
関がなんて言っているのか分かった。
日本語だ。
『言語習得不可』でも異世界の言語には聞かないようだ。
素直に嬉しいことである。
関が俺に木剣をむける。
関や斎藤さんはこのボブゴブリンが俺だと気付けるわけがない。
俺は攻撃でもされるのだろうか。
関の木剣が光る。
剣術スキルを持っているのだろう。
木剣を横に振ってきた。
俺は避けるのを忘れて当たってしまう。
『スキル:置換を発動します』
痛くも何ともない。
ステータスを表示する。
『名前:高橋浩太郎
種族:ボブゴブリン Lv1/15
HP :30/30 LP:1
MP :2/8
スキル
HP上昇(小) Lv3/5 毒耐性(小)Lv4/5
置換 言語習得不可 』
HPじゃなくMPが消費されてる。
どうやったら発動できるかわからないがMPが盾の代わりになるようだ。
ダメージをくらった様子のない俺を見て豪華な兵士とローブのお爺さんが話し始めた。
なんて言ってるかはわからない。
今度は豪華な兵士が剣で切ってくる。
普通に切られる。
「グギャァ!」
『名前:高橋浩太郎
種族:ボブゴブリン Lv1/15
HP :25/30 LP:1
MP :0/8
スキル
HP上昇(小) Lv3/5 毒耐性(小)Lv4/5
置換 言語習得不可 』
残ったMPよりも攻撃力の方が勝ったのだろう。
お爺さんが一言呟くと傷が治り、HPが全部回復する。
MPは治らなかった。
関は斎藤さんにお礼を言って戻っていった。
斎藤さんはお爺さんと話し始める。
「?????????????」
「つまり『置換』はある程度のダメージなら自分以外に『置き換え』ることができるんですね」
「???????????」
「盾役としてちょうどいいですね」
お爺さんがなんて言ってるかは分からないが斎藤さんのおかげで何となくわかる。
「すみませーん。私は召喚士なんですけど、召喚して見ていいですか?」
谷口さんが手を上げて言った。
「?????」
お爺さんが何か言っているが谷口さんの様子を見る限り許可を出したのだろう。
谷口さんが前に出てくる。
「召喚!」
谷口さんが唱えると魔方陣が出てきて、ある魔物が現れた。
耳が結構長く、周りが刃になっている兎だ。
「うおー、すげー!可愛い!」
谷口さん大興奮である。
確かに可愛いが耳が危ない。
「戦わせてみようぜ!」
不良グループも盛り上がる。
「可哀想だよ」
女子は否定的だ。
俺もできれば戦いたくない。
豪華な兵士が何かを谷口さんに言う。
「えぇ〜、でも……分かりました」
何が分かったのだろうか。
「斎藤さん、いい?」
「私はいいよ」
戦わなきゃいけないっぽいな。
クラスメイトが斎藤さんと谷口さんから離れていく。
「みみぴょん、いくよ!」
「ゴブリン、構えて」
みみぴょんと兎に名付けたようだ。
体が強制的にファイティングポーズをとる。
主人の命令には逆らえないようだ。
ボブゴブリンは言いにくいからかゴブリンって呼ぶことにしたっぽい。
「まるでポ○モンみたいだな」
「な」
離れたクラスメイトが口々に言う。
「?????」
兵士が真ん中に立って何かを言う。
「「はい!」」
「??、???????!」
「みみぴょん!頑張れ!」
「ゴブリン!」
兎が耳を構えて飛びかかってくる。
勝負が始まったようだ。
言葉がわからないせいで対応が遅れてしまう。
とりあえず石を探したが見つからない。
ちくしょう、俺の武器が!
兎はそのまま突っ込んでくる。
横に避ける。普通に避けれる速度だ。
避けられた兎はまた突っ込んでくる。
耳をぶんぶん振り回すが俺も何とか避ける。
「ゴブリン!攻撃して!」
どうやって!?
耳を振り回してるせいで攻撃しようにも隙がない。
ふと思いついて俺は地面を思いっきり踏みつける。
地面は割れなかった。
石の床だから破片でどうにかしようとしたが俺の方が弱かった。
ステータスを開く。
『名前:高橋浩太郎
種族:ボブゴブリン Lv1/15
HP :30/30 LP:1
MP :5/8
スキル
HP上昇(小) Lv3/5 毒耐性(小)Lv4/5
置換 言語習得不可 』
MPがある程度回復している。
ステータスを開いたまま俺も兎に突っ込んだ。
『名前:高橋浩太郎
種族:ボブゴブリン Lv1/15
HP :30/30 LP:1
MP :2/8
スキル
HP上昇(小) Lv3/5 毒耐性(小)Lv4/5
置換 言語習得不可 』
少しMP盾のおかげでどこも怪我をせず兎の眼の前に移動できた。
兎を思いっきり蹴り上げる。
兎は吹っ飛んでそのまま倒れる。
息はあるようだがもう戦えないだろう。
こっちもそれなりに修羅場をくぐってるんだ。
自慢げに斎藤さんを見る。
斎藤さんはちょっと引いた様子で俺を見る。
「みみぴょーん!」
谷口さんは兎に駆け寄った。
「ヒール!!」
兎を回復させる。
回復した兎は俺を見るとすぐに谷口さんに逃げる。
谷口さんは兎を抱き上げた。
「どうしたの?」
「ちょっとね」
急に俺に近づいてきた男子がいきなり俺の腰ミノを奪い取った。
「「「「「きゃー!!」」」」
女子は叫ぶ。
その男子はゴブリンに息子があるのか気になったのだろう。
だから腰ミノを取った。
答えはちゃんとついてる、だ。
俺の息子がここにいるクラスメイト全員に見られた。
急いで腰ミノを取り返し、身に付ける。
「サイテー!何してんのよ!」
「そーよそーよ!」
女子たちの大ブーイング。
男子も何とも言えない表情で俺を見る。
「ねぇ、切り落としましょうよ!」
誰かがとんでもないことを言い出す。
「それはダメだろ!」
「それだけはやめてくれ!」
男子が俺の味方になってくれる。
俺は股間を抑えて身を守る。
俺の腰ミノを奪った男子のせいで場が可笑しくなった。