昨日召喚された部屋にクラスメイト達が集まった。
ローブを着たお爺さん——魔術師団長のステルさんが呪文を唱えている。
顔は真剣そのものだ。
部屋に描かれた魔法陣がまばゆいほどの輝きを放っている。
帰る人達が魔法陣の中に入る。
お爺さんの詠唱がより一層大きくなると魔法陣も目を開けていられないくらい輝く。
光が収まる頃には魔法陣の中にいた数人のクラスメイト達はいなくなっていた。
私は残ることにした。
杉元君が言ってたことが頭から離れなかったのだ。
「斎藤は残ることにしたんだな」
「まぁ、そうだね」
「……俺のせいか?」
「そんな事はないよ。今戻ったってめんどくさくなるだけだと思っただけ」
「そうか」
ステルさんが振り返って私たちに言う。
「皆さん。私たちのために残って下さり感謝の念に堪えません。本当にありがとうございます」
と深々に頭を下げる。
「頭をあげて下さい」
副委員長の服部くんが声をかける。
委員長は無口だから普段は副委員長が話す。
「俺たちがどれくらい役に立てるかわかりませんが、できる限り頑張って行こうと思います」
「爺さん、俺らに任しとけって」
不良グループもやる気満々のようだ。
おぉ、おぉ、とステルさんは感動して涙も浮かべている。
そんなに切羽詰まっているのだろうか。
「では移動しましょう。この世界について説明いたします」
会議室に案内される。
室内はよくニュースで見るような、中央に台座があり周りを机が囲んでいる豪華な会議室だ。
みんなそれぞれ椅子に座っていく。
「隣いいか」
「うん」
私の隣に杉元くんが座る。
ステルさんが台座に置いてある水晶に手を置くと上にでかいスクリーンが表示される。
スクリーンには地図が表示されている。
これも魔法なんだろうか。
「ではまずこの世界について説明します」
ステルさんが色々説明する。
まとめると、
・元々2柱の神が争っていた。聖神と邪神である。
・それを最上位神の創造神が見咎めてこの世界——ミラスイを作り、自分の眷族で決着をつけろとおっしゃった。眷族を使い相手を殺せという事である。
・上司の命令に逆らえるわけでもなく聖神は人族、邪神は魔物を生み出す。
・魔物は1体1体が強く、人族は数は多いが1体1体が弱い。
・魔物が優勢だったがそれを見た聖神が人族に『ステータス』を与えた。
・『ステータス』により人族はレベルを上げ、様々なスキルを使うことによって今度は人族が優勢になる。
・それにより邪神を追い詰めるに至ったがとどめをさせるほどの力を持つ人族が存在せず、封印するしかなった。
・封印したおかげて魔物は弱体化されたがそれでも魔物は脅威だった。魔物と人族が1対1で戦えば余裕で人族が負ける。
・だからいつしか封印した邪神が復活するかもしれない。
・そう考えた祖先が封印の鍵を3つに分けてそれを隠すためにそれぞれ国を作った。
「……とまぁ、こういう感じです」
「鍵ってどういうやつ?」
不良グループのリーダー格である関くんが尋ねる。
「わかりません」
「は?」
「鍵が何で出来ててどういう形をしているか、どの国にあるのかすら何も伝えられてないのです」
みんな唖然とする。
そんな話があるのだろうか。
先祖は何を考えていたのだろう。
「次は魔物について説明させて頂きます」
スクリーンに表示されてた地図が消えて今度は緑色の小人が表示される。
「あれはゴブリンかな」
杉元くんが呟いた。
「この魔物はゴブリンといい、魔物の中では最も弱いです」
ざわめきが漏れる。
「ですがそのゴブリンでさえ一般人だと殺されてしまいます」
「そんなに強いんですか」
「ええ。一般兵だと普通に倒せます。ですが魔物の強さにもピンキリありましてゴブリンでも一般兵が複数いないと倒せないこともあります。更に魔物は進化もするんです」
ざわめきが強くなる。
「これが異世界人であるみなさんを召喚させて頂いた理由の1つです」
「どういうことですか?」
「理由はわかりません。ですが聖神がいうには異世界人のステータスは我々のステータスよりも強いのです。
そして今度こそ邪神にトドメを刺すために皆さんに手伝って頂きたい!」
みんなのテンションがテンションがマックスになった。
体育会系は思いっきり叫んでいる。
時間を見ると結構時間が経っていた。
ノック音がなる。
「食事の時間になりました」
扉を開けて侍女が入ってくる。
「もうそんな時間ですか。では参りましょう」
それぞれ腹減ったー、とか言ってるのを聞きながら食堂に向かう。
ふと気になったので侍女に聞いてみる。
「肉ってもしかして魔物ですか?」
「はい。そうです」
「え!?」
周りのみんなも驚いたようだ。
「牛とか豚とかないんですか!?」
「牛も豚も魔物ですよ?」
「ええ!?」
食堂に着く。
この世界の食べ物に対して見る目が変わった。
美味しかった。魔物だとしても肉は美味い。
ちなみに今日の肉はツノシシという魔物らしい。
見た目はツノがある猪だという。
「美味いなぁ……」
「俺は焼いたスライムの目が特に好きだなぁ」
食感は完全にホタテだった。
みんななんとも言えないような顔をしている。
さっきまで人類の敵!という話を散々聞かされていたのに食べると美味しいのである。
ゴブリンはとても不味いらしい。
「次は戦闘訓練を行います。訓練場まで案内いたします」
騎士団長が兵士を連れて登場する。
立ち上がり、騎士団長について行った。