ゴブリン成長記   作:補う庶民

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初めまして。
補う庶民と申します。
拙い文章ではございますが楽しんでもらえたら幸いです。


異世界転生
1話


俺は幸せ者だと思う。

 

外国みたいに戦争に巻き込まれることもなければ、飢餓に襲われることもない。

当たり前のようにいつもの時間に起きて朝ごはんを食べ、着替えて高校に行く。

電車に乗って座席に座り、鞄から単語帳を取り出す。

他の席ではガラの悪そうな人達やサラリーマン達が漫画やゲーム、スマホで暇を潰している。

 

自慢ではないが成績は十位以内をキープ出来る位には頭がいい。

文系だけど。

友達もちゃんといて、たまにカラオケとかに遊びにいく。

 

ガタンゴトン ガタンゴトン

 

「retain、strain、sensible、……」

 

昨日覚えた単語の復習をする。

春から夏に変わろうとしているのか、日差しの暖かさが心地良い眠気を誘ってくる。

単語帳から目を離し、眠気を覚まそうと欠伸をして目尻を揉む。

だが眠気が覚めるどころか、どんどん眠くなりウトウトしているといつの間にか眠ってしまった。

 

 

 

 

 

眼が覚めると俺は四畳一間の洋室にいた。

目の前には椅子と机とパソコン。

 

「え、どこだ?ここ」

 

周りを見渡してみる。

壁の色は白で床は木材のフローリング。

学校鞄が置いてある。何か盗まれた様な形跡はない。

なくなっているのは身に付けていた腕時計だけだった。

携帯の充電は切れている。服装も制服のままだ。

横には冷蔵庫が置いてあり、中には様々な缶ジュースが置いてある。

そして……

 

「……ドアがない」

 

どうやってこの部屋に閉じ込められたのだろう。

ドアも無ければ窓もない。脱出は不可能だ。

もしかして俺はまだ夢を見ているのだろうか。

頰をつねってみる。

 

「普通に痛い」

 

俺は誘拐されてしまったのだろうか。

誰が?どんなメリットがあって?

取り敢えず椅子に座りパソコンを起動させてみる。

 

しばらく待っていると画面にこう表示された。

 

『転生設定画面』

 

「……何だこれ。転生?」

 

取り敢えずクリックしてみる。

 

『転生先: 人間 魔物 』

 

まず人間を選択してみる。

 

『転生先: 人間 LP:100

 

人間、獣人、魔人などに転生できます。

スローライフを楽しむのも良し、世界中を

冒険するのも良し、自由な生活を過ごせる

ことでしょう。 』

 

戻って魔物を選択してみる。

 

『転生先: 魔物 LP:100

 

様々な魔物に転生できます。

人間とは違いLPは多めに消費します。

その代わり人間とは違いレベルマックス

まであげることにより様々な進化をする

ことが可能です。

全人類共通の敵であるため平和に生きて

いくことは諦めた方がいいかもしれませ

ん。

刺激的な生活を望む人向きです。 』

「なにこれ。ゲーム?」

 

俺は親の教育方針のせいで今までゲームをしたことがない。

親は何よりも勉学を優先する人だった。

 

「今何時だ?」

 

腕時計がないから時間を確認することができない。

 

「取り敢えずゲームでもやってみるか」

 

待っていればそのうち警察が発見してくれるだろう。

冷蔵庫からコーラを出して一口飲む。

 

「せっかくだから魔物にしてみようか」

 

『転生先: 魔物 で決定しますか』

 

Yesと選択する。

 

『魔物を選択して下さい。 残りLP100 』

 

色々な魔物が種族ごとに表示される。

種族の種類は豊富だがその中で選択出来るのは少なかった。

例えば、

 

スライム族

 

ベビースライム スライム

 

という様に基本的にベビーかどうかしか選べない。

進化を楽しむための配慮なのだろうか。

強キャラ無双とかしてみたかった。

ベビースライムを選択してみる。

 

『転生先:ベビースライム 消費LP:10』

 

戻って今度はスライムを選択してみる。

 

『転生先:スライム 消費LP:30』

 

また戻ってドラゴンを選択してみる。

 

『転生先:ドラゴン 消費LP:5000』

 

そもそもLPが足りないという事実。

ベビーの方でも3000と余裕で足りない。

 

「二足歩行がいいよな。人間も二足だし」

 

二足歩行する種族を探してみる。

だがそのほとんどがLPが足りず選択できない。

残ったのがゴブリンかオークである。

しかもオークはベビーしか選べない。

 

『転生先:ベビーオーク 消費LP70』

 

『転生先:ゴブリン 消費LP50』

 

「もうこれゴブリン一択じゃん」

 

ゴブリンを選択する。

 

『転生先:ゴブリンで決定しますか?』

 

Yesを選択する。

 

『スキルを設定して下さい。 残りLP50』

 

ズラッと色々なスキルが表示される。

剣術とかわかりやすいものからよくわからないものまでたくさんある。

しかもどれだけ下にスクロールしても終わりが見えない。

取り敢えず今あるポイントで取れるスキルを探してみる。

取り敢えず武器を使うスキルは取らない。

なくても大丈夫だろ。

魔法とかもある。ポイントが足りないけど。

 

「鑑定……おお、凄い便利そう。ポイント足りないけど」

 

飲み終わったので冷蔵庫からオレンジジュースを取り出す。

飲みながらどんどんスクロールしていく。

 

「マイナススキル? ほー、凄いな」

 

デメリットを背負う代わりにLPが少し増えるスキルもあった。

 

「お、これいいんじゃないか」

 

言語習得不可 獲得LP35

 

ゴブリンに言語もクソもないだろ。

武器装備不可とかは流石にキツイし。

いろんな飲み物を飲みつつ結局俺が選んだのは

 

言語習得不可 獲得LP35

HP上昇(小) 消費LP35

毒耐性(小) 消費LP40

 

合計75ポイント。

10ポイントでとれるスキルで欲しいものは特にない。

残りのポイントで欲しいスキルはない。

 

『スキル:HP上昇(小)、毒耐性(小)でよろしいでしょうか』

 

Yesを選択する。

 

『ステータスを表示します。

種族:ゴブリン

HP :14

MP :3

 

スキル

HP上昇(小) 毒耐性(小)

言語習得不可

 

これでよろしいでしょうか』

Yesを選択する。

 

『それでは転生します。ご健康とご多幸を心よりお祈りいたします』

 

と表示されると共に体に何か違和感を感じ始める。

下を見るとつま先からどんどん消え始めた。

 

「な、何だよ!これ!」

 

腰まで消えて椅子から落ちる。

飲みかけのオレンジジュースが床に溢れた。

体が消え、両腕も消え、顎も消えていく。

 

「た……え…」

 

口が消えて話せなくなり視界もどんどん暗くなっていく。

 

そして全てが真っ暗になった。




設定変更しました。すみません

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