【更新休止中】Fate/ぐだ×ぐだOrder 〜要するにぐだこがぐだおを呼ぶ話〜 作:藻介
少しリアルが忙しくて、書けない期間が続きましたが、なんとか復活できました。
本当、エロマンガ先生のマサムネの速筆が羨ましいです。
ではどうぞ。
ー9ー
この特異点に着いてからやったことをまとめれば、これ以外には何もない。
状況と敵勢力の把握。
そして、その中でもオレが担当したのは後者。もう少し具体的に話せばーーいつどの時代でも変わらずにーー気配遮断と真名看破の合わせ技で敵の素性を調べる、とまあ、そんな具合。
戻って来た時には、すでにあちら(カルデア)側との連絡も着いていて、まずはシフト時のエラーではぐれてしまったマスターとの合流を優先しろ、とのご達しだった。
「ーーーーそういうことだから、こんなところで風呂を展開してまで、油を売っている暇はないと思うんだがね」
「だーっ、うっせーな。言われずとも承知の上だっつーの。少しは余裕を持ちやがれってんだ」
「しかしな」
こうしている間にもマスターの身に何があるか分かったものでは無い。
一応、彼女の居場所はドクターがモニタリングしており、現在マシュとの三人で連絡も着いている。彼女のそばには一人サーヴァントがいるようだが、油断は出来ない。
「一つ聞いていいか?」
クー・フーリンが前髪を書き上げこちらを見る。
「なんだね」
「嬢ちゃんの心配をするのは、それがこの作戦の失敗に繋がるからか?」
「ああ、そうだが」
迷うこともない。即座に答えた。
「なるほど、じゃあ一刻も早く回収しないとな」
「だから、さっきからそう言っているだろう。何が言いたいのかさっぱり分からんぞ、言いたいことがあるなら、はっきりいったらどうだ?」
「じゃあ遠慮なく」
「変わっちまったな坊主。いや、フジマルリツカ」
「…………、どうして知っている」
「そう構えなくてもいい。簡単なことさね、座の記録を見ただけ、ただそれだけさ」
咄嗟に構えていた右手をお湯の中に戻す。
「まさか英霊になっていたとは、いや、あれだけのことをしたんだ、別に不思議でも何でもねえわな。
いや、それでも。余計に腑に落ちねえ」
獣のそれを思わせる目が、再びこちらに向く。
「てめえ、一体何者だ?」
何者か、か。さて、それは自分でも知りたいところではあるけれど。それでも、これだけは言っておこう。
「……、光の御子。君は冬木で彼女ーーマスターに言ったそうだな『お前には運命を掴む天運と、それを前にした時の決断力がある』と」
「……ああ、らしいな」
「私は、私には君はそんなこと、言ってくれなかったよ」
静寂がほんの少しの間、辺りを包む。それは互いを黙らせるのには十分に過ぎた。
一つの忙しない警告音が鳴るまでは。
ー10ー
「どうした、キリエライト」
敵感知のルーンによる警告音を聞いたオレとクー・フーリンは風呂から上がり、マシュとキャットと合流した。そして、彼女の視線の先には一人の女性。
前後ろ均一に仕立てあげられた修道服に身を包み、髪は長く、その手には杖を持っている。その風貌と人間とは一線を隔す魔力量、一見聖人系のキャスターのサーヴァントととれそうだが、彼女のそれはきっと仮面だろう。
聖人系サーヴァントが前に出る。
「そちらの方が、代表者で間違い無いですか?」
「いや、違うが。ライダーのサーヴァント、聖マルタ殿」
「私の真名をご存じとは、生前どこかでお会いしましたか?」
「いや、名乗り遅れて申し訳ない。私はルーラーのサーヴァント、真名をシェリングフォード」
「なるほど、あまり聞かない名前ではありますが、納得しました。真名看破スキル持ちならば、その解析速度も頷けます」
「お褒めに預かり光栄だ。
さて、こんな夜分に一体何の用かな?」
「では率直に言いましょう。我等が軍門に下るつもりはありませんか?」
少し、瞳が雲っている。しかし、それでも眼差しはまっすぐだ。嘘をついているようには見えない。
何かを言いたそうにしているマシュを制し、問を返す。
「というと?」
「私達はある目的の下、マスターに召喚されました。それに当たり、多くの戦力が必要になってくる。見たところ、あなた方ははぐれサーヴァントのようですが、それならば存在するだけで魔力がいるでしょう。幸い、私達のマスターの魔力は潤沢です。きっと貴女方にとっても悪い話ではないはずです」
なるほど、互いに利益のある取引、今のところ、受けない理由はない。
「一つ、聞いてもいいか?」
「どうぞ」
「その目的とやらはなんなんだ」
「……」
少し沈黙。そして口を開く。
「このフランスの破壊です」
隣でマシュが驚愕に顔を染めた。
「聖女マルタ、なぜ貴女がそんなことに手を貸しているのですか?」
「マスターがそう望んでいるからです」
「……っ!」
「サーヴァントがマスターに従うのは当然のこと、貴女も英霊なら、知っているはずです。いや、しかし、貴女の霊基は少し妙ですが」
言い返しそうになるマシュを再び腕で制する。
「それで、返答のほどは」
「もし断ると言ったら?」
「そのときは仕方ありません」
そう言って、マルタが杖を頭上に掲げた。
ーーとたん、岩のように何か巨大な物が降ってきた。
「これは、ドラゴン! しかし、これまでのワイバーンとは一線を隔す巨大さです」
「『
「軍門に下らないと言うのであれば、貴女方は私達の敵です。速やかに排除します。タラスク!」
高高度の跳躍、最高点まで達しこちらへと回転で勢いをつけながら落ちてくる。きっとあれを食らえば、いくら英霊であるこの体ももたないだろうな。
隣でマシュが宝具開放の準備をする。
しかし、そんな必要はなかった。
「『
別の、暴竜の黒い咆哮がタラスクごと吹き飛ばしたからだ。
マシュとマルタが不意に起きた出来事に口をポカンと開ける。そんな中、咆哮の主は何もなかったように、黒い鎧をガシャガシャと鳴らしながら歩いてくる。
「ふむ、さすがは聖書に名高き鉄鋼竜。聖剣の一撃をもってしてなお耐えるか」
「ナイスタイミングだセイバー」
これには私も思わずサムズアップ。
「一体どこから、気配も何もなかったはず……、いえ、森の中しかあり得ない。けれど、森にはアーチャーがいたはず」
「む、ああ、あれか、あのケモミミの。弓をまともに使うアーチャーとはまた珍しい物を見た。それなら、先程剣の錆びにしてきたところだが」
「それこそあり得ません……、だって彼女は」
「ギリシャ神話における森林戦闘のスペシャリスト、アタランテ、だろう?」
少し口を挟ませてもらった。
「確かに森で彼女を相手に戦うにはセイバーは不向きだ。けれど、もう一人スペシャリストがいれば話は別。やってくれ」
音もなく、林の合間から一本の矢が打ち込まれる。死角から打ち込まれたそれは、こちらに気が向いていたマルタに命中する。痛みに顔を歪めながらもマルタは飛んできた方向へ杖を掲げ魔力弾を発射。しかし、もうそこには誰の存在もない。
「これは……」
「『
何もなかった空間から、緑色の男が現れる。
「全く、うちの大将は無茶言ってくれやがる。あの騎士王のフォロー、かなり骨が折れやしたぜ」
「ありがとう。でも、もう一仕事してもらうよ」
「あいよ。我が墓地はこの矢の先に……森の恵みよ……圧政者への毒となれ。
隠(なばり)の賢人、ドルイドの秘蹟を知れーーーー
ーー『
詠唱とともにロビンの弓から無数の枝葉が延びる。それらは一直線にマルタへと向かい、捉えようとする。
マルタは魔力弾を発射、そのいくつかを撃ち落とし退避を図るが、途端苦痛に顔を歪めた。この機会を逃すまいと枝が巻き付き、そして、爆発した。
ロビンフッドの弓「祈りの弓」はイチイの木でできている。この木でできた武器を持つことは、森の賢者ドルイドにとって森との繋がりを示す。これにより、彼は弓を介して自然現象に介入することが可能になる。この場合彼が扱ったのは毒素の増幅と流出、そしてその毒を火薬として瞬間的に爆発させること。予め、マルタには行動阻害系の毒矢を撃っておいた。よって、現在彼女は動くことすらままならないはずだ。
「クー・フーリン、キャット、今だ! 畳み掛けるぞ!」
「了解なのだな。味わうがいい『燦々日光午睡宮酒池肉林』‼」
「おう、よく分からねぇがのってやる! 『
ー11ー sideぐだ子
朝だ。
昨夜、マシュと連絡が着いた。曰く付近の適当な町で落ち合おうとのこと。それならばとジャンヌが情報収集も兼ねて、オルレアン周辺の街ラ・シャリテはどうかと提案、それに落ち着いた。
「おはよう、ジャンヌ」
「おはようございます、立花。昨晩はよく眠れましたか?」
「お陰さまで。ジャンヌも疲れてない?」
「大丈夫です。サーヴァントは肉体的疲労とは無縁ですから」
うーん、その辺りまだあんまり納得いってないんだけどな。マシュだって、冬木でそういうのの一つ二つは見せてくれていたし。まあ本人が大丈夫って言うんなら、大丈夫なんだろうけどさ。
「どうかしましたか?」
「いや、何でもない。じゃあ行こうか」
「ええ」
ラ・シャリテは今いる辺りから山を一つ越えた辺りにあるとジャンヌが言っていた。それを聞いて、私はかなり遠い道のりだと思ったけど、ジャンヌ曰く、フランスの山は日本で言うところの丘に相当するらしく、そう高い物ではないとのこと。本当に険しい山は隣国との間にそびえ立つ山脈のことだそうで、遠目に見せてもらった時には本当に驚いた。
マシュも、これを見ていてくれているかな。
彼女は本物の青空を見たことがないと、そう言っていた。私は今回のレイシフトでそれだけは叶えてあげたいなと思っていた。
けれど、その空には不自然な光の輪。
これではあの純粋なマシュはきっと勘違いしてしまう。本物の青空にはこのように大きな光の輪が浮かんでいる、みたいな。それはいただけない。
本当に、鬱陶しいことこの上ない。
そんなことを考えている内に、丘の頂上が見えて来た。あれを越えれば、ラ・シャリテは目の前だそうだ。
陰鬱な考えは今は忘れよう。今は一刻も早く、マシュ達と合流することが最優先だ。色々なことを見せてあげるには、それからでも遅くない。
そう意気込んで、越えた丘の先に見えたのは
見るも無惨に燃え盛る、街の輪郭だった。
森の中、マルタ戦の少し前
アタランテ「全く、こんなところで倒れるとは、つくづくついてない。結局、二大神に祈りを捧げることもなく終わってしまうなんて」
セイバー「なるほど、確かに不遇だな。だが安心しろ、貴様の信奉する女神ならばここにいるぞ」
アルテミス「ヤッホー! アタランテちゃん元気ー?」
おりべぇ「なわけねえだろ、てめぇの目は節穴か?」
アルテミス「わー、ダーリン辛辣ー。でもそんなダーリンも大好き!」
アタランテ「(゜□゜;)?????」
セイバー「ほれ、遠慮なく信奉するがいい。ほれほれ」
ロビンフッド「(苦労してるな、あっちも)」