【更新休止中】Fate/ぐだ×ぐだOrder 〜要するにぐだこがぐだおを呼ぶ話〜 作:藻介
無課金のうちにはぐだおとぐだこ合わせて3体しかいないのです。えっちゃんよ、来ておくれ。
邪竜百年戦争オルレアン0~2
ー0ー
彼はいつも、背中ばかりを見てきた。
背を向け、剣を振るう者。
背を向け、槍を構える者。
背を向け、矢を放つ者。
背を向け、夢と希望で殴打する者。
背を向け、物語を紡ぐ者。
背を向け、毒を撒き散らす者。
背を向け、野生のままに駆けていく者。
そして、盾を地面に突き立てる者。
決して並び立つことはなく、無力さは募る。
それでもいいと、ある者は言った。
もうダメだと思った時手を繋いでくれた、それだけでいいと。
最後に彼女は言った。
もっと、貴方のお役に立ちたかった。
彼は嘆いた。
自分だって本当は、肩を並べていたかった。力になりたかった。君を守りたかった。
彼の嘆きはどこにも届かず、ただ、この広く冷たい世界に溶けてしまった。
ー1ー
「フォウ……? キュウ!」
んん……、何かに舐められている気がする。眼をそっと開ける。すると、視界は一面真っ白の何かフサフサした物に覆われていた。
雪? いや、それは室外のことだし。ていうか、これ前にもあった気がする。
「キュ、フウウ……?」
あ、また舐められた。これはひょっとしなくても。
「おはよう、フォウさん」
「ミュー、フォーウ! キャーウキャーウ!」
ですよね。
案の定、白い毛むくじゃらの謎のリス型生命体が顔に張り付いていた。
「ちょっとどいてね。今起きるから」
そう言うとフォウさんは言葉通り脇に退き、その隙に私は未だはっきりしない頭を強引に持ち上げた。
しかしこの謎の生命体、人語を理解しているのだろうか。なんかさっき素直にどいてくれたし。しかも確かフォウさん、カルデアを自由気ままにウロウロしてて滅多に人には近づかないってマシュが言ってたような。そんなのからのモーニングコールなんて、うーん、これは幸運ととるべきなのかな。
寝起きの頭を鈍く回転させる。そんな中、当のフォウさんは私の体の上で丸くなっていた。ああ、これは、暖を取りに来ただけか。
そう納得した時、フォウさんの耳がピクピク動いていきなり顔をドアの方に向ける。つられて私も同じ所を見ると、ドアが開き、そこから紫髪の少女が入って来た。
「先輩、おはようございます。一緒に朝食はいかがです……きゃっ!」
「キュウゥゥゥ……!」
フォウさんの胸元一直線ダイブ、マシュは尻餅をついた。
「ごめんなさいフォウさん、避けられませんでした。ですが朝から元気そうでなによりです。ですから、その……」
「フォウ?」
「どいてくれませんか? あの、そこは色々とまずいので…………」
マシュの今にも消え入りそうな声とは裏腹に、フォウさんは更に顔を擦りつける。うん、やっぱりこいつ知性がある。しかも中身は中々のどすけべ野郎だ。
これ以上可愛い後輩をセクハラの憂き目に合わせるわけにもいかず、布団から抜け出してフォウさんの首根っこをつかむ。するとフォウさんは「フォウ……?」と不思議そうに首を傾げた。
こいつ、しらばっくれやがった。
いや、それともまさか天然でやっていたのか。うーん、ますます分からん。
このままにしておくのも難なので、とりあえず解放してやる。するとフォウさんは何事も無かったかのように部屋を出て行き、どこかへ消えてしまった。
「ねえ、マシュ」
「……っ! はい、何でしょう?」
未だ尻餅をついたままの後輩に問う。
「私ってさ、女としての魅力ないのかな」
「………………。さあ、どうなん、でしょうね」
そう答えるマシュと私の目は虚だった。
「…………」
「………………」
「……」
「…………先輩」
「……何?」
「とりあえず、朝食にしませんか?」
「そうだね」
ー2ー
「先輩、昨晩はよく眠れましたか?」
食堂へ続く廊下を後輩と二人歩く。いつもなら常駐している職員の方やサーヴァントなんかとすれ違うのだけれど、今日は特に何の気配もない。
「あんまり、何かよく分からない夢を見た気がする」
「夢、ですか」
「うん」
正直、あんまりいい夢では無かったような。
「マスターは英霊と夢を共感することがあると聞きます。きっとその類いでしょう。一体、どなたの夢だったのですか?」
「うーん、それがあんまり覚えてなくて……。あ、そういえば、何かマシュっぽい人が出てた気がする」
「私……、ですか?」
「案外、マシュの夢だったかもしれない」
うん、多分そうに違いない。覚えてないのが少し残念だ。
「先輩が、私の夢を……」
「マシュ?」
「……っ! いえ、そんなことあり得ません」
あまりにも自信のある物言いに、疑問を覚える。
「私は正規のサーヴァントではありません。ですから、私と融合した英霊さんの夢は見ても、そこに私が登場するなんて考えられないことなんです」
マシュの意見はもっともなものだと思った。しかし、そうなると、あれは一体誰の夢だったのか。余計にややこしくなってきた。そんな中、一つ閃く。
「英霊なのか人間なのかはっきりしないやつなら、他にも一人いるじゃない」
「ああ、ルーラーさんですね」
ルーラー、真名をシェリングフォード・ホームズ。先日召喚に応じてくれたサーヴァント。自分を出来損ないの英霊と呼び、戦闘は彼がせずに、召喚した他のサーヴァントに任せるという変わった戦い方をするサーヴァント。
「ドクター曰く、彼は生前聖杯戦争のマスターで、その時契約した英霊を呼び出すのが彼の宝具の能力みたいです」
「へえ、生前がマスター。ていうことは私の先輩にあたるわけか」
「はい。ですが、なぜかそう呼ぶことを断られてしまいましたが」
うーん、フォウさんもフォウさんなら、彼も彼ってところか。本当に謎が尽きないな。
「そういえばルーラーの宝具だけど、名前がよく分からないんだよね」
「え、そうなんですか?」
「うん、正確に言うと宝具だけじゃなくてステータスも。とにかく全体にもやがかかったみたいで、何とかスキルとステータスのランクは分かったけど。本人に聞いても教えてくれないし」
「本当に、不思議な方ですね」
「うん」
本当に、よく分からないやつだ。
そうして、何でもない会話の果てに食堂の前にたどり着く。しかし、その日の食堂は少し妙だった。いつもより何やら騒がしい。
いや、数多の英霊が集うこのカルデアに静かな時なんて、それこそ会議中か夜の間くらいしかないけれど、それでもこの騒がしさは異常だ。何か、常日頃の喧騒とはベクトルが違う気がする。こう、野生的な意味で。
マシュと視線を合わせる。どうやらマシュも、同じことを考えていたらしい。お互い同時に息をのみ食堂へ足を踏み出す。
するとそこではーー
ーーお代わりというフレーズがそこかしこから連呼されていた。
「これは、一体……」
事前に計ったように棒立ちになる私とマシュ。そこに青いフードを被った男が近づいてきた。キャスターのクー・フーリンだ。
「よお、嬢ちゃん。お前いつの間にあんな料理上手な英霊呼び出したんだ?」
身に覚えがない。というか、ルーラーを呼び出してから、召喚は控えていたはずだけれど。
ふと厨房を見る。そこでは狐耳の少女が目にも止まらぬ早業で、食材をさばいていた。知らない。あんなサーヴァント、私知らない。
そんな中、こちらに気づいたのかその見知らぬサーヴァントが、近づいてきた。
「おお、これが今回のご主人のマスターであるカ。であれば、他の者共よりも一層栄養のあるものを用意しよう。何せ、我らは特段魔力を使う故ナ」
そう言って、狐耳の少女は厨房へと戻って行った。うん、やっぱり知らない。あんな理性がどこかに吹き飛んだような子、私知らない。しかも、今私何を見た? 彼女、エプロンの下に何か着てたっけ。え、あれがいわゆる、裸エプロンというやつですか?
余計に混乱する私。そんな私に近づく影がもう一つ。
「おはよう。今日は早いな、マスター」
首をその声のする方向へ向ける。ボサボサの黒髪に青色の瞳。ルーラーだ。
「ん、どうした。鳩が豆鉄砲食らったような顔をして」
いや、多分全ての元凶はお前だよ。
「あの、ルーラーさん。彼女は一体?」
代弁ありがとう、マシュ。
「ああ、彼女は……」
「よくぞ聞いてくれたナ。そこな盾娘!」
説明しようとしたルーラーの会話に割り込み、例の狐耳の少女がマシュのそれに負けず劣らぬ胸を張る。
「我こそはオリジナルの愚行より生まれし野生のキツネ、タマモキャット。趣味はご主人に尽くすこと、主にー、
家事的な意味でー。さあ、キャット自慢の滋養強壮特盛りメニュー、冷めぬ内に召し上がれ、ご主人のマスター」
そうして強引に席につかされプレートが寄越された。
「あの、キャットさん」
「キャットでいいゾ、ご主人のマスター」
「じゃ、じゃあキャット、これは?」
目の前のこれは、どう見てもそこまで滋味溢れる物に見えないのだけれど。むしろ、ケーキ?
「うむ。朝から重い物は食べられないと思ってナ、リンゴと長芋をベースにしっとりとしたケーキにして見た。ハチミツヨーグルトもあるゾ」
へえ、結構美味しそう。
「い、いただきます」
私がキャットに出された料理を色んな角度から見回している一方で、何やらマシュがルーラーを責めていた。
「ルーラーさん、朝食を用意していただいたのはありがたいのですが、カルデア内での宝具の使用はできるだけ控えてください」
「ああ、すまない。そういえば魔力はここの電力から来ているのだったな、であれば、節約するのも無理はない。すぐに引っ込めよう」
ええ、引っ込めちゃうんだ。まあしょうがないか、ルーラーはああ言ってるけど、実質私からも何割か持ってかれてるし。総量が減るのはいいこと。
でもせっかくだから、このケーキの感想くらい聞いてからキャットには帰ってもらおう。
「ぱく」
その後の記憶が、私にはありません。
気づけば、私はキャットの手を取っていて、目の前にはトマトのように赤くなった彼女の顏があって、周りのみんなはまるで信じられない物を見たように固まっていて。
その沈黙はドクターにアナウンスで呼び出されるまで続き、道中、マシュは口を聞いてくれませんでした。
ぐだこの最後の言葉を聞いた各々の感想
クー・フーリン「嬢ちゃん、本当に女か?」
カーミラ「う、頭痛がする」
ぐだお(下手したら、生前のオレより男らしかったんじゃ)
マシュ「先輩、最低です」
キャット「キャ、キャットの純情が〜‼︎」
*三月末の小説新人賞応募の為、しばらく投稿がストップします。