【更新休止中】Fate/ぐだ×ぐだOrder 〜要するにぐだこがぐだおを呼ぶ話〜 作:藻介
順当に行けば次はキャメロットの予定なのですけど、まだプロットすらできていませんし、モチベもまた別の物の方が高いので、今のところ未定です。
続きに関しては、長い目で気長に、尚且つ期待しないで待っていただければと。
それでも良ければ、どうかお楽しみください。
sideぐだ男
どうしようもない嵐が出来上がりつつあるのを、オレは見ていた。
直感する。あれは、自分一人ではどうやったって防げない。仮に奥の手があるとして、それを使ったとしても無理だ。
ゆえに、勝てる相手を探して手伝ってもらう。勝てなくてもいいから、せめてアレに負けなかった逸話のある誰か。
星の知識にアクセス。シュミレート。候補一、失敗。候補二、失敗。候補三、成功、だがその後のアフターケアに問題あり。
————そんなもの知るか。
どうせこの一撃に耐えなければ、フジマルリツカを殺す前にこちらが死ぬ。この一撃のその後こそが最大の好機。それさえ迎えられるのなら、もうなんだって構わない。
「……令呪を持って命ず。オレを依り代として顕現できる最高の霊基を以て、ここに現れろ。アルテラ!」
オレの隣に白いヴェールを纏った剣姫が姿を現す。その手に握られた軍神の剣は、今にも張り裂けそうなくらいに刀身を眩く輝かせている。
「召喚に応じ参上した。マスター」
「アルテラ。頼めるか?」
「いいだろう。貴様の覚悟、我が軍神の剣を以て成すとしよう」
「ありがとう」
オレもアルテラもそれ以上は何も言わなかった。何かを尋ねることもなかった。ただ、今目の前にあるどうしようもない災害を、自分たちの全てで迎え撃つと決めただけ。
星は記録にて語った。かつて、地上のどの神話体系も勝てなかった存在がいたと。文明という文明を焼き尽くし、神々のことごとくを打ち負かして軍神の剣を手に入れた後、星の光に倒れた巨人。のちにフンヌの大王として西方から破壊をもたらしながらも、草原をかけることを夢見た少女。
その来歴ゆえに、あらゆる神話体系に対して彼女はアドバンテージを持つ。だが、サーヴァントとして地上に呼ばれた彼女では、その力を十分には生かせない。けれど、手を伸ばすくらいなら、きっとできるはずだと信じて。
「重ねて令呪を以て命ず。アルテラよ、オレを通じて聖杯より魔力を汲み上げ、軍神の剣の真の力を解放しろ」
「了解した。
それは、たった一度の自爆宝具。地球の衛星軌道上に存在するもう一つの軍神の剣。そこから放たれる極高圧縮レーザーこそ、軍神の剣の本当の使い方。
端末であるアルテラの剣を座標として送り、ここに光の柱を立てる。
その炎がたとえアルテラ自身を焼き尽くすとしても。
「————軍神よ、我を呪え。『
sideぐだ子
光の柱、それは突然現れた。
こちらの攻撃を阻むように壁となってそそり立ったそれは、今度は剣として、正面から襲い来るエアの風撃を斬っている。
それは圧巻の一言。今私の目の前で、かつてこういうことがあったのだと、その二つは激しく語り掛ける。けれど、今回は完全な再現とはいかないらしい。
エアの風圧が、徐々に光の柱を押しのけている。このままいけば、あと十秒もしないうちにルーラーに届くだろう。
そう考えてから、十秒、それと五秒かそこら経っていたかもしれない。光の柱は、だんだんと細くなって、ついに消えた。三割ほど勢いを削がれたものの、人一人圧し殺すには十分なエアの斬撃がルーラーがいた場所に炸裂した。
目を焦がすほどの閃光。それに目をつむったほんの数瞬のうちに、吹き飛ばされるような爆発音と突風が私の体を襲う。それに必死に耐えて、やっとのことで目を開ける。いまだ土煙に覆われるそこには、きっと何も残っていないはずだと、ここにいる誰もが思い、晴れるのを待つ中。
————それは、何も残っていないはずの土煙の中から現れた。
「……城壁?」
質感はなかった。ネロの黄金劇場のように、そこに実際にあるのではない。光が集まって、それを象っているような、そんな感じ。現れる箇所すべてが透明でとても頑丈そうには見えない。そんなものが、エアの爪痕にそそり立っている。
「伏せろ! 雑種!!」
「え」
王様のいつになく張り詰めた声がする。
とっさに振り返った私の眉間に短刀が向けられていた。
sideぐだ男
「一手、足りなったか」
握り締めた短刀の感触が右手から消え去る。なんのことはない、その右腕ごと切り取られただけなのだから。
当の昔に忘れてしまった痛みに叫ぶ暇なんてもうない。右腕の次は右脚、ついで左脚に左腕とまどろむうちにだるまにされてしまった。防ぐための盾も、置いてきてしまったのだから仕方がない。
「それなりに、きつく縛りつけたはずだったのだがな」
動けないオレに、黄金鎧の彼は語った。
「オレが、天の鎖なんてたいそうなモノに、くくられるような立派なヤツじゃなかったってだけさ。気にすることはないよ、英雄王」
「戯けが。貴様のような雑種が我らに気を遣うな。貴様は、今に生きる者すべては弱いが、王であり、英雄たるものが守るべき財貨である。守られることを良しとしろ、とは言わぬ。だが、守られることを厭うべきではなかった。それが貴様の全ての敗因と知れ。フジマルリツカ」
全く、本当にその通りというしか
「今は消えるがいい。あれの令呪の通り、エアで斬られる光栄をその身に刻んで眠れ」
永遠にも感じられる一瞬が何度も過ぎて行った。肉を混ぜ切られる感触。そのうちにひどく懐かしい思い出を垣間見る。
ウルクの賢王の信頼を得るために、様々な労働に身をやつした日々。砂漠に荒地に山地、ある時は徒歩であるときは
どれも苦しかったけれど、どのどれもにやりがいがあって、その多くの瞬間、隣に彼女がいた。
その悲しみも、苦しみも、全てを彼女とともに愛していた。
それを、もしかしたらその先まで、もう一人の私は歩めるのだろうか。
————ああ、それは、なんて羨ましい。
一つの永遠がそこで幕を閉じた。
sideぐだ男(カルデア)
何かが、ちろりと首筋の後ろをかけて行った気がした。
「ん。どうした」
ぼうっとしていたらしい。ともにマスターの部屋を後にしていたバラの皇帝、ネロ・クラウディウスがそんなオレを気遣ってか、ありがたくも声をかけてくれた。「なんでもない」と返して、先を急ぐ。
その先から、四つ足で廊下を走ってくる影を見つける。
「キャット。そんなに急いでどこに行くんだ?」
「キャットも歩けば尋ね人にエンカウントする。ナイスタイミングなのだな、ご主人」
「えっと、つまりオレをさがしていたと?」
「正確にはご主人だけではない。カルデア中を走り回ってはありとあらゆるサーヴァントたちに伝令して回っている所なのだ。ゆえに、そこな皇帝を探していたともいえる。」
相変わらず容量を得ない会話を繰り出すキャット。
「で、何を伝えて回っていたんだ?」
「うむ。いつもなら話を急く男はモテないぞ、などというところだが、今はことがことなのでやめておこう。自重、キャット覚えた。まあ五秒後には腹のニンジンとともに消えることなどどうでもいい。ご両人、一度しか言わないのでよく聞け」
その狂言回しの末に、キャットは語った。
「ご主人のご主人、藤丸立花嬢が目を覚ました。繰り返す、藤丸立花が目を覚ました。ふっ、一度しか言わないと言ったなあれは嘘だ」
最後まで聞くヒマもなく、オレたちは来た道を引き返した。
数分後、到着したマスターのマイルーム前は、知らせを聞いたサーヴァントたちでごった返していた。ジル・ド・レェ卿にカリギュラ帝、フェルグス・マックロイに聖女ジャンヌ・ダルク。その他大勢に混ざって、珍しい顔があった。
「こんなところで君に会うとは思わなかったよ。天草四郎時貞」
「それはこちらも同じですよ。シェリングフォード・ホームズ。同じルーラークラスのよしみとして、あなたの人となりは把握していたつもりだったのですけれどね」
「それは天地がひっくり返ってもあるまい。我らがお互いを完全には理解できる日など、永遠に来やしないよ。今だって、ここにいるのは一体どんなたくらみあってのことなのかと、疑っているほどだ」
「とんでもない、などと言っても、その疑いは晴れないのでしょうね。今回は完全に、一部の淀みもなく、マスターの体を慮ってのことだったのですが。オオカミ少年の気持ちが骨身に沁みて分かるという物です」
「オオカミ少年の自覚がある時点でどうかと思うがね」
軽口を叩き合う。探偵と犯人の関係は、ほんの少しのしがらみさえなければこんな感じなんだろうか、と思考の隅で考えていると、閉まりっぱなしだったドアが開く。
中から出てきたのは、快活そうな印象を与える緋色の髪をたなびかせた少女。このカルデアのマスター、藤丸立花。
数日眠りっぱなしだったとは思えないほど、しっかりと一人で歩いていた。一先ず、その様子に安心。
「話がある。付き合ってくれる? ルーラー」
「いいとも」
かけよるサーヴァントたちに断りを入れて、オレとマスターは自動販売機の辺りまで歩いて行く。
「この辺りでいいだろう。人払いなら十分だ。何も、本当に自販機まで行くこともあるまい」
「だね。じゃあ遠慮なく」
互いに足を止めて、向き合った。
「ルーラー。あなたも私を殺したい?」
そう切り出された辺りで、なんとなく察していた。
「向こう、監獄塔で、別のオレにでもあったか?」
「うん」
「そしてその様子では、随分と過激な手段をとったらしい」
「みたいだね」
「まあ、こちらのオレとしては、その手もあったか、というのが正直なところだ」
そう聞いて、身構えるマスター。
「落ち着け。最初の質問に答えるなら、無論、オレにも君への殺意はある。ただ、それとオレがやろうとしていることを天秤にのせた時、殺意の方に傾かないだけだ」
マスターは首をひねる。
「とにかく、オレは君に何かをする気はない。監獄塔にいたオレと、ここにいるオレとでは目的こそ同じだが、手段は全く違う」
「……つまり、今ここに立っているルーラーにその気はない、ってこと?」
「そういうことだ」
「…………」
「……」
「………………はぁぁぁぁ」
心底安心したという溜息がマスターの口から吐き出された。
「何はともあれ、お疲れ様、と言っておこうか。マスター」
「うん。ありがとう」
本当に脱力してしまったらしい。その場に座り込んで天井を見上げている。そんな彼女の手を取って立たせた。
「そういう危ない橋を渡るなら、護衛の一つくらいつけてほしいと、これで何度目になるのだろうな」
「でも誰にも聞かれたくなかったんでしょ?」
「まあ、そうだが。それにしてもだな、……いや、止めておこう。今この場は、マスターの厚意に感謝しておくさ」
二人してマイルームへと引き返す。
「ねえ、もう一つ聞いていい?」
「いいぞ。なんだ?」
「その、ルーラーのやろうとしていることってなんのか、教えてくれる気ある?」
「それがあると、マスターは本当に思っているのか?」
「ううん。絶対教えてくれないって思ってた」
「それならいい」
こう引き際をわきまえてくれるようになったのも、最近のことだ。実に都合がいい。
「それがマシュの為なら、私には何もとがめられないから」
……前言撤回。こういう鋭くて妙に鈍いところ、オレに似てきて大変不愉快。思わず足を止めてしまった。
「そこまで知っていて二人きりになったのか、頭痛がしてくるな」
「今すぐ私を殺しとく?」
「……いや、止めておく。むしろそこまで知ってくれているなら、これからやりやすくなるだけのこと。とがめられないのだろう?」
「そうだね」
そこまで言って、再び歩き出す。
「マスター。こちらからも聞こう、君にとって、マシュ・キリエライトはなんだ?」
「マシュ? 大切な後輩だけど、それ以外にある?」
「ああ。オレにとって、いや、私にとって、その背中はもう手の届かない場所にあるものだ」
道の先から大勢の人影が見えてきた。その中にマシュの姿もある。
「せめて、後悔だけはしないようにな」
マスターの背中を叩いて、彼女を待つ人たちの中へと促す。溶岩水泳部の面々に絡まれているようだったが、まあ、マスターなら大丈夫だろう。そう安心して自室に戻ることにする。
その背後で、四つ足の足音がした。キャットだろうか。
「お疲れ様、と言いたいところだが、これから部屋に戻るところなんだ。できれば紅茶を入れてほしい」
そう言いながら振り返ってみても、そこには誰もいなかった。いや、視界に映らなかっただけで、足元に
————白い毛玉。どことなく、あの花の魔術師を彷彿とさせる襟巻をつけている。
「フォウ?」
オレの足元をすり抜けて、マスターのもとへと駆けていく。彼女の肩に乗るとその顔をペロリとなめていた。その小動物を伴って、彼女たちはマイルームへと入っていく。
「アレは、……何だ?」
誰にも答えられず、その問いは廊下の奥へと消えた。
別シリーズを誤投稿していた件を報告してくれた方、本当にありがとうございました。
こちらは続くのかどうか未定で、向こうもほとんど終わりかけですけど、またよろしくお願いします。