【更新休止中】Fate/ぐだ×ぐだOrder 〜要するにぐだこがぐだおを呼ぶ話〜   作:藻介

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先日、近所(十数駅先)のアニメイト行ってきました。
もうね、死ぬかと思いましたよ。危うく帰りの電車代がなくなるところでした。
取りあえずアポクリファ4巻までとウェイバー君の事件簿一巻だけ買ってきまして、現在読んでます。これで戦闘描写向上すればいいなあ。
さて、では今回もどうぞよろしくお願いします。


邪竜百年戦争オルレアン15~17

—15― Sideルーラー(ぐだ男)

 

「やっと会えましたね、先輩」

「うん、うん。会いたかったよ、マシュ!」

 互いに抱き合う二人。一方で敵は敵で動いているはずなのだから、本当はもう少し後にして欲しいのだが。

「取った」

 その予想通り、剣士――シュバリエ・デオンがマスターの背後に立つ。その剣は振り下ろされるが、残念ながら届かない。

「全く、君も甘くなったものだ。真似事とは言えスパイをやっていたのだから、伏兵の可能性くらい考えないのかなあ。――『死神のための葬送曲(レクイエム・フォー・デス)』!」

 突如、どこからともなく流れた荘厳な音で、その体に重圧がかかったからだ。

「この、悪趣味な騒音はっ!」

「やあ、初めましてシュバリエ。そして竜の魔女。ボクの真名はアマデウス・モーツァルト、君たちの敵で、そこの二人の味方さ。まあ、それでも」

 それでも、アマデウスの宝具で抑えるには限界がある。確実に一人、抑えきれないやつがいる。

「くっ、バーサーカー!」

 重圧に耐えながらジャンヌ・オルタが叫んだ。この中で唯一動けるのは理性の飛んだあれだけというのも読めていた。だから、餌を撒いておいた。

「Arrrrrrrrrrrrrrthrrrrrrrrrrrr!」

「!? バーサーカー、どこへ行くというのです」

 さて、そろそろいいか。

「きっと王様に会いにでもいったんだろうさ」

 困惑している様子のジャンヌ・オルタに言ってやった。

「あのバーサーカーならあり得る話だろう? なあ、竜の魔女」

「あなた、何者?」

 その言葉に、すこし笑みがこぼれてしまったのはご愛嬌ということにしておきたい。

「何者、か。全くこうなってくると、それを何度聞かれるのか、そっちの方が分からなくなってくるな」

「焼き殺されたくなければ、その口を閉じた方が賢明ですよ。さっさと質問に答えなさい」

「そうだな、熱いのはごめんだ。では手短に済ませよう。

 ――ご同輩、と言えばそれで足りるか?」

 どうやら言葉足らずに過ぎたらしい。わけがわからないという顔をしていて笑えて来る。

 と不意に、視界の隅に魔力の高まりが見えて三歩分後ろに飛んだ。見ればもといた場所は数えるのが馬鹿らしくなるほどの杭で埋め尽くされている。

「余を地に伏させ、その上戯言を弄する痴れ者が! この場にいることを後悔させてくれる!」

 やれやれ、狂化が入っているとろくなことにならないな。あの串刺し公、重圧お構いなしに今にも立ち上がろうとしている。

「マスター! 一度退くぞ。村のそばに足を待たせている。彼らに乗せてもらえ」

「分かった」

 マスターは相変わらず二つ返事で助かる。問題は、

「待ってください」

 あの白い方の聖女様か。

「話は済んでいません。私はまだ⋯⋯」

「こちらの目的はマスターの回収だ。残るなら好きにするといい。まあ、君が史実通り玉砕に意味を見出すような人間でないのなら、一緒に逃げることをお勧めするがね」

「⋯⋯⋯⋯分かりました。ここは貴女の言う通りにしましょう」

「賢明な判断だ」

 その一言を合図に各々走り出す。そうなればもちろん、アマデウスの宝具の重圧も消えるわけで、

「逃がすか」

 もちろん敵さんはすぐに追って来るだろう。まあそれでも、

「逃げるさ」 

 あらかじめクー・フーリンにもらっておいた、魔力のこもった植物の種。それを五つ投げつける。ルーンの刻まれたそれは、立ち上がったばかりの敵の足元で即座に芽吹き、一気に枝葉を伸ばして縛り付けた。

 持って数十秒、それでも、英霊になったこの霊基(身体)なら十分だ。

 振り返り際にジャンヌ・オルタの悔し気な表情が見えた。うん、まあこれくらいならいいか。

「またな、ご同輩。どうか、お前の本当の望みが叶うことを祈っておくよ」

 

 

―16― sideぐだ子

 

「お帰り、セイバー」

 騎乗動物――ヒポグリフなんて初めて乗った、今も次元跳躍酔いで吐きそう――に乗ってたどりついた森の中の野営地に、一人遅れてアルトリア・オルタが帰ってきた。その彼女にルーラーが声をかける。

「ああ。貴様には悪いことをした」

「気にしなくていい。それより、どうだった?」

 何のことだろう? ルーラーは時々こうだ。周りを置いて行って自分だけの世界で自分だけにしか分からないような話をする。

ダヴィンチちゃんが言うにはマスター、もとい魔術師や探偵なんてそんなものだ、とのことらしいけど。今は私もマスターなんだから、少しは分かるようにしてもらってもいいのに。

「問題ない、むしろスッキリしたぞ」

「へえ、そりゃよかった。君らは一度、河原でタイマン張るくらいしたらいいんじゃないかとか思っていたんだが、思ったよりうまくいったみたいで安心したよ」

「だから、⋯⋯そのな、今回の供物は⋯⋯⋯⋯」

 不意にアルトリアの顔がほんのり紅くなった。

「ああ、ハンバーガーなら大丈夫だ。すぐ用意しよう」

 そう言ってどこかへ行こうとするルーラーの礼装の袖をアルトリアがつかんで、

「いや! ⋯⋯よい」

「え?」

「だから、よいと⋯⋯⋯⋯いらないと、言っている」

 顔を紅くして俯くアルトリア、呆気にとられてぽかんとしているルーラー。ほうほうほうほう、これはこれはこれは。口の端が自然と緩むのが自分でも分かった。

 と、呆けていたルーラーがいきなりアルトリアの肩をつかんだ。さすがのアルトリアもこれには驚いたようで一瞬びくっと肩を震わせ、紅い顔を上げる。

「アルトリア」

「な、な、な、なんだ!?」

 うわー、盛大に噛んだ。あんな挙動不審なアルトリア初めて見た。いやまあ、分からなくもないけど。さてどうなるのかなあ。

 

「どこか、霊基(身体)の調子でもおかしいのか?」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯は?」

 え?

「いやだって、君が、あの魔力炉心が胃袋と直結している君が、その上戦闘から帰ってきた後にハンバーガーいらないって言いだすなんて、余りにもおかしいだろう。あれか、ランスロットに何かやられたのか? 隠し宝具、カルンウェナンでも持ってて、それを腹部に一発食らったのか? だから」

「――――――卑王鉄槌、極光は反転する。」

「待てセイバー! なんでいきなり宝具解放しようとしている!」

 いやまあ、当然でしょうよ。

「愚か者の戯言になど聞く耳は持たぬ! 唐変木を飲み込め、『約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガーーーーン)』‼」

「なんでさーーーーーーーーーーー!」

 黒い息吹、それはまさに逆鱗を触られた竜の怒りの一撃。それに巻き込まれる無数の木々と唐変木(ルーラー)

 うん、えっと、なんというか。

 彼のことを理解するのは、まだ先でいいやと思いました。

 

 

―17―sideルーラー(ぐだ男)

 

 感想。死ぬかと思いました。

 セイバーの宝具の真名解放に――正直、ばかすか撃つのはやめてほしいのだが――周囲の森もろとも巻き込まれる、その直前、マシュがその射線上に入ってくれなければ、たぶん今頃はカルデアの個室に死に戻りしていたところだっただろう。

 尻もちをつきながらそんなことを考えていたらマシュからマスターが呼んでいると伝えられた。何でも、今後の方針を決めるとのことらしい。すぐに腰を上げて向かう。 

たどり着いてみれば、どうやらオレで最後だったらしく、マスターとオレを除いた彼女のサーヴァントたち(私のサーヴァントたちにはひとまず座に戻ってもらった)、そしてこの特異点で出会った同じくサーヴァント、アマデウス、マリー、そしてジャンヌ・ダルクが野営用の火を囲っていた。

「すまないマスター、少し遅かったか?」

「ううん、大丈夫。今から始めるところ」

 言葉通り、彼女はさして気にしていないような顔をしている。ただ、マスター含め、周りの面々に好奇の目で見られているような気はしたが。

「それじゃあ、始めよう。まず、来てすぐで悪いけどルーラー、敵勢力の情報を整理して教えてもらっていいかな?」

「ああ、構わない。

 オレが確認した時の、敵サーヴァントの数は八騎。うちライダーとアーチャー、バーサーカーはこちらで倒した。だから、残るはセイバー、ランサー、キャスター、アサシン、そして黒いジャンヌ・ダルク、こちらのジャンヌ・ダルクと区別するために、仮にジャンヌ・オルタと呼びたいのだが、他の者はそれで構わないか?」

 周りの反応をうかがう。マスターとそのサーヴァントたちはともに異論なし、マリーとアマデウスも同じく、そして最後にして本命、だいたいの予想はついていたものの、やはりジャンヌ・ダルクは他とは違い納得のいっていない表情をしている。

 そしてこれもやはりと言うかなんと言うか、そんなジャンヌの心の内を察してかマスターが一人、自分の意見でもないのに異を唱えた。

「私は納得がいかない。ルーラーの使うオルタっていうのが『別側面』っていう意味だっていうのは、ロマンから聞いてる。私にはどうにもあのジャンヌがそういう風には見えない」

「なるほど、とは言えないが一理あるな。我々がアレと接触していた時間はほんのわずか、マスターとこちらにいるジャンヌの方が彼女を理解しているのは自明だ」

「なら」

「だとしても」

 言い返そうとしたマスターの言葉に言を被せ、反論を押しつぶす。

「だとしてもだ。なんと呼べばいい。その案が無いというのなら」

「ねえねえ貴方」

 と思えば、さらにそれに被せてくる者がいた。マリー・アントワネットだ。

「ヴィ・ヴ・ラ・フランス! 貴方、いえ貴方では不便ねどうしましょうか」

 このままでは、オレの呼び名についても考える羽目になりそうなのでこちらから提案する。

「ボンソワール。オレのことはルーラーで構わない、マリー王妃」

「あら貴方、フランス語も嗜んでらっしゃるのね! もしかしてこちらの英霊なのかしら?」

 大輪の百合のような笑みをこちらに向け続ける。それに対しオレは肩をすくめ謙遜した。

「いや、オレはしがない探偵に過ぎない三流の英霊。残念ながらフランスの出ではないし、あいにく誇れるような出典を持っているわけでもない」

「あら、そうなの? まあいいわ。私のことはマリーでいいわ。雇われのルーラーさん」

「分かった。ではマリー」

「はあい。何かしら?」

 相変わらず白百合の笑みは崩れない、それどころか尚増していくそれは正直まぶしい。

「マリー、君は何か、オレに聞きたいことがあったのではないのか?」

「そうね、そうだったわ。ではお言葉に甘えまして遠慮なく。敵から逃げる前にルーラーさん、貴方は黒い方のジャンヌのことを『ご同輩』と呼んでいた気がしたのだけれど、それはいったいどういうことかしら?」

「――――――」

 それを聞くか。

「同輩、というと、同じ仲間や親しい人のことを指すと思うのだけれど」

「だとするとルーラーは知ってるの? あのジャンヌが一体どういう存在なのか」

 そう口にしたのはマスターだった。さすがに勘が鋭いがこういうときだけは勘弁してほしい。

「――――――ああ、知っている」

「だったら」

「だが、言うことはできない。もしどうしてもというのなら令呪を一画――」

「分かった。なら令呪を以て命――――」

「待て待て待て待て待て待て! 一体君は何をしようとしている!」

「え、だって令呪使えって」

「物の例えだ。こんなくだらないことで使おうとするな」

 そもそも使えとまでは言っていない、というより言えてない。思わず眉間の辺りを押さえてしまう。

「くだらないことじゃない」

「いいや、くだらない。そんなことよりも、今は今後どうすべきかを考えるべきだろう。そちらの方がこの場における正しい答えだ」

「いや違う、彼女がなんであるのか、彼女の望みがなんであるのか、それが分かるまで私は彼女とは戦えない」

「正気かマスター。例え君が戦わないとしても、向こうは問答無用でこちらを襲ってくる。今は細工がうまく功を奏してなんとか足止めできているが、それも一日ともつまい。時間がくれば彼女はきっと君を、そこの聖女ともども殺しに来る。君は君自身の死が人類という種の死であることをまだ理解していなかったのか?」

「そんなこと分かってる!」

「ならば! ならばこそだろう! 今のこの一瞬をもっと有意義に活用すべきだ。それにな、もし仮に争わない選択肢があったとして、どうやって彼女の望みを叶える? 聖杯、万能の願望器にでもなるつもりか。そんなの、全てをすくいとるなんて、不可能に決まっている」

「ルーラーだって願っていたじゃない、彼女の本当の望みが叶うことを。私にはまだそれが何なのか分からない。私は、分かりもしないモノを、知りもしないで諦めるなんてことしたくない!」

 だからそれが不可能だと言っている。何かを望めば、その見返りは望んだものに返っていく。そして誰か他人の幸せを望めば、その見返りは救われた誰かではなく、その幸せを願った自分にやってくる。だから、破綻しているのだ、誰かのために何かを為すという行為は。こんな少女にまで、そんなことをさせることが正しいはずがない。

 ――――だからそんなこと、オレがさせない。

「君は他人のことを考えすぎだ。それではいずれ身を滅ぼす。君は、君自身のことだけを考えろ。分かるものだけを追い求めろ。それで世界が救われる」

「それでも私は――」

 

「はいはいお二人さん、そこまでだ」

 

 白熱した(自分ではそうは思っていなかったが)会話が木製の杖で遮られた。その持ち主に目を向ける。

「なんの真似だ、キャスター。今オレはマスターと話している。要件なら後にしてくれ」

「そっくりそのまま返すぜ、てめぇこそ何してやがる。俺たちは今、今後どうするかについて話をしようとしてんだ。私情なら後にしろ」

「⋯⋯確かにその通りだな。すまない」

「分かればいい」

 言い終えると、杖の矛先は今度はマスターに向かった。

「嬢ちゃんもだ。確かに敵さんが何モンなのか知ることは悪いことじゃねえ。だが、そのために自分を犠牲にしたら元も子もない。ちったあ周りを頼れ。お前を心配しているやつはたくさんいるんだからよ」

 周りを見渡すマスター。きっと彼女の眼にはここにいる全員の真剣で、温かな感情が移っていることだろう。そうして順番に見つめ、マシュの後、最後に向かったのは驚くことにオレの方だった。

「⋯⋯ルーラーも?」

 心配しているのか、ということだろうか。ならここはどちらにしろ、

「ああ」

 そう、答えるしかない。

「そう、ならごめんなさい」

「ああ、こちらこそ」

 罪悪感が気持ち悪い。しかし、それが正しい答えであるのならオレはそうする。オレはもとより、それだけの存在なのだから。

「代価ではないが、せめてもの罪滅ぼしとしてオレに答えられるだけのことは答えよう」

「それは、別に令呪を使わなくてもということ?」

「ああ」

 もとより、マスターにそんなもの使わせる気はなかったのだが。

「なら教えて、あのジャンヌは何なの」

「彼女は、とある男の願いから生まれた存在だ」

 

 

――――そして、このオレも。

 




ルーラーのマテリアルが解放されました。

・属性 中立/善/星
・性別 男
・出典 創作
・地域 不明(多岐にわたる)

宝具により本来持ちうる以上に多くのスキルを保有している。
貧乳はよい文明。

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