【更新休止中】Fate/ぐだ×ぐだOrder 〜要するにぐだこがぐだおを呼ぶ話〜 作:藻介
いやあ、この一か月も大変でした。
月初めにパソコン買って、気持ち新たに頑張ろうと思ったら間違えてFGOのデータ消してしまって、マテリアルからストーリー見れないし、復旧用のナンバーも迷惑メールフォルダにあってなかなか見つけられないし(運営さん本当にありがとうございました)。
そんなわけで、ところどころ脱線していたりしますが、どうか暖かい目で読んでもらえると幸いです。
P.S.
水着マリー、あとすり抜けで不夜キャス引けました。
ちなみに福袋はジュナ男が来ました。ジャックちゃんたち四人でお茶会したかったなあ。
―12―
「これは、酷い」
そう言ったのは、果たしてジャンヌか私、どっちだっただろう。
この臭いを私は知っている。
むせかえるまでに濃密な『死』の臭いだ。
炎は泣くように燃え盛り、家は死んでしまったかのように崩れ、その合間を縫うように死体が無造作にばらついていた。
そしてそれを、
「ギャアアアアアアアアア!!」
ワイバーンたちが貪っている。
「やめなさい!」
ジャンヌががれきの中へと飛び込んだ。旗の先でワイバーンを突き刺し、払い、刺す。そうしているうちにワイバーンはどこかへと飛んで行ったが、今度は、庇った死体が起き上がり、ジャンヌを襲い始める。
そのことごとくをまた、ジャンヌは薙ぎ払い、死体へと還していく。
ふと、死体が持つ一つのナイフが彼女の脇腹を裂いた。
空中を飛ぶ、数滴の血。
それでやっと、私は我に帰った。
すぐに礼装に記録されている治癒魔術をかける。
「ありがとうございます、立花」
私に対する気遣いだと、すぐに分かった。
ジャンヌは、あの傷をさほど気にしていなかった。起き上がる死体のする攻撃は全て受け止め、その上で全てを土に還そうとしていた。だから、きっとどれだけ傷を負ったとしても、彼女は止まろとしなかった。そう思える。
それが、ジャンヌ・ダルクという、ルーラーとしてではない彼女の在り方だから。
なのに、ジャンヌはその傷を癒した私にお礼を言った。それはきっと、彼女が、私がマスターとして、魔術師として未熟だと知っていたから。知っていたから、私がこういう場に不慣れだと承知で、単身で飛び込み、そして私が正気に戻り魔術を使ったときに、それを感謝という形で褒めた。
未熟な私を、慮って。
それが今はただ歯がゆかった。
辺りが静寂を取り戻す。戦闘が終わったようでジャンヌが戻ってきた。
「お疲れ様でした」
「お疲れ様」
のど元まで出かかっていた悔しさを飲み込む。
「一応、もう一度治療しておこうか?」
「はい、ありがとうございます」
傷は思ったほど深いものはなかった、しかし数が多い、できなくはないけど多少時間がかかりそうだ。
「しかし、どうしましょう」
「なにが?」
「合流です」
そうだ、突然のことで忘れていたけど、私たちはここでマシュたちと合流する予定だったんだ。辺りを見渡す。がれき、死体、ワイバーンの肉片、刃こぼれした包丁に所々で小さく上がる火。とても待ち合わせに向いているとは思えない。
「うーん。どうしようか」
「一度、あちらと連絡をとるのはどうでしょうか?」
それがよさそうだ、入れ違いになっても後が面倒だし。腕に巻き付けている通信機を起動させる。そうしてロマンと通信しようとした時、
『————今すぐそこからはなれるんだ!』
いつもの弱弱しさのかけらもない、ロマンの声が聞こえてきた。
私とジャンヌはそれに少し驚きながらも聞き返す。
「何があったの?」
『多数の未確認サーヴァント反応がかなりの速度でそちらに向かっているのが確認できた。合流を果たせていない今、単騎でいどむのは無謀すぎる。今すぐそこから退避してくれ。合流はその後だ!』
なるほど、それはまずい。治癒魔術をかけたとはいえ、ジャンヌはまだ戦闘が終わったばかり、無理はさせたくない。
「ジャンヌ、行こう」
「待ってください」
その一言が私とロマンの動きを止めた。
「その中に、ルーラーのクラスのサーヴァントの反応はありましたか」
『いや、こちらで確認できたのは数だけだ。その数五騎、だから早く撤退を』
「――いえ、撤退はしません」
ジャンヌがはっきりと口にする。
『何を言っているんだい? このままじゃ君だけでなく、立花ちゃんまで』
「分かっています。ですが、私は問わねばならないのです。これらの惨状を生み出したのが私だというのなら、その真意を。なぜこんなことをするのか。本当に、これが私の望んだことなのかどうか」
最初からそうだった。いや、少なくとも私にはそう見えていた。彼女には迷い等、みじんもないのだ。
確かめたい、理由を知りたい、話をしたい。
より多くを救おうとした自分の、より多くを滅ぼしたいと願っているであろう側面を、理解したい。
そして、赦したい。
それはきっと、彼女がルーラーとして召喚されなかったから、一人のジャンヌ・ダルクという少女として召喚された彼女自身の、わがまま。
なら、自分がどうするかは決まっている。
彼女の仮のマスターとして、そして、そうである前に————
「ドクター、私も残るよ」
『立花ちゃんまで何を』
「確かに怖いよ、ここで死ぬかもしれないしね。いや、そんな単純なことじゃないんだったけ。私一人が死んだらその時点で作戦は失敗して、人類全部が死ぬんだったね。でも、いまは、今だけはそんなこと、どうでもいい。今は、私はジャンヌのマスターで、それ以前に彼女の友達だから」
横でジャンヌが驚いていたような気がした。
「友達だから、友達のわがままには付き合う」
ロマンはとても驚いていた。でもすぐに笑って、
『わかった。君がそこまで言うのなら僕はもうなにも言えない。そのかわり、絶対に生き残ること。マシュたちにも急ぐように伝える。いいかいもう一度言う、それまで絶対生き残るんだよ、これは命令だからね!』
そこで通信が切れた。静寂が再び戻ってくる。そこで一つ私は思い出した。
「ねえ、ジャンヌ」
「はっ、はい、なんでしょう」
なぜかジャンヌの顔が少し赤くなっていた。
「さっきは勢いで『友達』なんて言っちゃったけど、迷惑じゃ⋯⋯なかった?」
そう、ブラフもいいところだ。あのジャンヌ・ダルクの友達だなんて、一般人の私はなんて身の丈に合わないことを言ってしまったのだろう。
「い、いえ、迷惑だなんて」
「いやでもすごく驚いてたし」
「いや、その、それは、ちがって⋯⋯、じつは私、友達だなんて呼ばれたの初めてで」
「へ?」
「確かに、生前戦友とよべるような人はいました、もちろん、家族も。もしかしたら、どこかの聖杯戦争ではそのような関係になるような人はいたのかもしれません、覚えていませんが。でも、今ここにいる私を友達と呼んでくれたのは、あなたが初めてだったんです」
「そう、そうだったんだ」
「だからあの時、私は驚いていたと同時に、とても、そう、——うれしかったんですよ」
そう言った時の彼女はとてもきれいに笑っていた。まるで向日葵のように。
「そう、なら、よかった」
私も、それに負けじと全力で笑った。
その一本一本が星の聖剣の一振りに相当する光の環。
その下で二つの向日葵が咲いている。
一方で、そこからそう遠く離れていないところから黒い蔦が、それらを押しつぶそうと迫っていた。
それでも、それがわかっていても、向日葵は決して太陽からめを背けようとしない。たとえ、いずれ向くべき方向が違えるとしても、今だけは、同じものを互いに見つめていると信じているから。
蔦はずんずんと、向日葵に近づいていく。
—13—
刺突、斬撃。
それらを旗でいなし、逆に切り払うことで距離をとる。
最中迫る魔弾は、振った勢いのまま旗を地面に突き立てそれを支えに空中へ退避。そのまま体を一回転させ迫るワイバーンたちを同時に足蹴にし、これまた距離をとる。
遭遇した五騎の敵性サーヴァント。いまだ全員の真名は不明だけど会話内容からクラスだけは分かった。
今ジャンヌを襲っている二騎、貴族らしい立ち居振る舞いをする壮齢の男性ランサーと妙齢の女性アサシン。傍観に徹している黒いジャンヌと流麗な顔立ちをした女性セイバー。そして、戦闘には直接参戦しないまでも、異様な狂気をはらんだ魔力をあたりに垂れ流している騎士甲冑のバーサーカー。
その内、アサシンの正体は知っている。伝説の女吸血鬼カーミラさんだ。よくアルテミスとメディア先生とでババ抜きやポーカーなんてやってる。賭けの対象に二人の血を狙っているらしいが、勝てた試しはない。たいがい、幸運EXのアルテミスの圧勝で終わるから。
閑話休題。
これだけの戦力差、正直、数分時間を稼ぐので手いっぱいのはずだ。しかし、ジャンヌは上手く耐えている。
次の攻撃を読み、躱すための行動をとる。躱しきれなかった傷は私が癒す。
ただそれだけなのに、敵が焦っているのがよく分かる。このままいけばきっといつか対話の機会が巡ってくる。
ふいに、敵ランサーが舌打ちをした、とおもえば、魔力が高まっているのが見て取れる。まずい、宝具を使う気だ。カーミラさんが距離を置いたところをみると、きっと全体攻撃の類。それで気づいてしまった。
——ランサーの狙いは私だ。
ジャンヌ同じように感づいたみたいで、すぐにこちらに戻ろうとしている。けど、何も分かっていないワイバーンたちが、宝具の射線上でジャンヌの行く先を阻んだ。
——どうする?
ジャンヌだけなら耐えられる。ジャンヌが私のところに来てくれれば、一緒に躱せる。けれど、私だけではどうにもできない。どうする、どうすればいい。
「やめなさい」
突然ひびいた声。それが乱戦状態だった場をたった一声でおさめた。一言一句、声質まで同じ言葉、なのに込められている感情がまるで違う。間違いなく、これはジャンヌの声じゃない。
「さっきから見ていれば何ですか、あんな小娘相手に。少々どころか、大分遊びが過ぎますよ」
「聖女、余はたった今から本気を出すところだったのだ。それを止めたのは貴様だろう」
「その方の意見に耳を貸すのは癪ですが、そうですわね。わたくしも宝具を開帳すれば、こんな小娘の生き血など、すぐに抜いて差し上げらます」
「まて、その娘の血は余のもの。例え貴様であろうと渡しはせぬぞアサシン」
「いえ、わたくしがいただきますわ、ドラキュラ伯爵。例え先達にあたる方でも、お譲りすることはしません」
「余をその名で呼んだな、血の伯爵夫人。よかろう、貴様との決着、ここでつけてくれる」
「喜んでお受けいたしますわ。元よりあなたのことは気にいらなかったのです。その命、ここで頂戴することにしましょう」
「やめなさい」
また、同じ声が響いた。今度は呆れと、多くの怒りを含んでいる。
「あなたたちはやはり遊びが過ぎます。ここは私と、そうですね、セイバーが出ます。あなたたちは下がっていなさい」
ここだ。
ジャンヌに目配せする。どうやらあちらも同じ考えらしい。
「その前に、一つ聞くべきことがあります」
こっちにいる方のジャンヌが口を開いた。
「あなたの目的は何なのですか?」
「は」
一瞬黒いジャンヌの顔が呆気にとられたように固まる。でもすぐに、
「あははははは、ははっ、ははははは!」
高らかに、とても愉快そうに、なにか信じらない物でも見たように笑いだした。
「ああ、みてジル、⋯⋯ああ、ジルは来ていないのでしたね。とても惜しいこと。あれは何も理解していない。あなた、本当に
「何を言っているのです」
「だから、貴女はなにもわかっていない、そういっただけよ聖女様。まあそれだから聞いてきたのよね。いいわ教えてあげる。私はね、復讐するのよ、このフランスに」
なぜだろう。
私にはそれが、酷く空っぽに聞こえてしまった。
—14―
「それは違う」
気付けば、口が勝手に喋っていた。
「何、あんた」
黒いジャンヌの鋭い視線がこちらを指してくる。それでも口は閉じない。
「ジャンヌが、そんなことを望むはずがない。そんなことを望むジャンヌが、ジャンヌであるはずがない」
「何よ偉そうに。あんた、その女のこと、私のこと、何も知らないくせしていい加減なことを言わないでちょうだい」
「それでも――」
それでも、私の見て来たジャンヌはそうではなかった。確かに、私が見てきたのは彼女のほんの一側面だけなのかもしれない。例え誰にも助けられなくても、誰かを助けようとして、逆にその助けた誰かに傷つけられようとも、彼女はいつだって、前を見ていた。つらい過去もそこにあった思いも受け止めて、それ以上、だれも泣かなくて済むように全力を尽くしていた。だから――
「――だから、そんなジャンヌが復讐なんて望むはずがない!」
「⋯⋯う」
「だから、あなたはジャンヌじゃない! ジャンヌがそんなこと考えるはずない! あなたはだれなの!?」
「⋯⋯う、うるさい、うるさいうるさいうるさい、うるさい! 何なのよあんた! 私は、わたしこそが本物、そこにいる、ただ過去から目を背けているだけのまがい物なんかとは違う! 私が、本物のジャンヌ・ダルクなのよ!」
「じゃあ、貴女の望みはなんなの? あなたが本当にジャンヌ・ダルクだというなら、貴女が本当にやりたいことは何なの!」
黒いジャンヌが頭を抱え、目に見えてうろたえ始める。それをまっすぐに、今度は私が見つめ返した。
「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい! 消えて! 私の前から、いなくなって! ファフニール!」
と彼女が頭を抱えていたうちの一方の腕を、天高くつき上げた。と同時に辺り一面が巨大な影に覆われる。状況がうまく呑み込めない中、そばにいたジャンヌが声を上げる。
「上です!」
そこには、これまでのワイバーンとは桁違いに大きな、黒い竜がそそり立っていた。
「これは⋯⋯!」
「ファフニール、焼き払いなさい! 全て、私の邪魔をする全てを、私の目の前にある全てを、私を否定した、全てを!」
膨大な熱量と魔力を肌で感じる。それら全部があの巨大な竜に集まっているのがわかる。
「いけない!」
ジャンヌが私の前に出た。直後、集まっていた熱量が竜の口から放出される。
「我が旗よ、我が同胞を守り給え、『
ジャンヌの旗から出る絶対守護領域、それに弾かれ、竜の息吹はこちらに届かない。それでも、
「⋯⋯くっ、このままでは、持たない⋯⋯⋯⋯!」
ジャンヌは不完全な状態でこの特異点に現界している。そうなると、もちろん彼女の宝具も劣化しておかしくない。それにこうも連続して攻撃されては。
ピシッ。
ジャンヌの話だと、この宝具で受けたダメージはそのまま旗に蓄積されていくらしい。だからもちろん、多用は厳禁だし、連続的な攻撃を受け続けるような状況には相性が悪い。
ピシ、ピシシ⋯⋯。
まずい、このままじゃ、本当に持たない。何か、何かないのか。この絶望的な状況を覆せる何かは――
「『
突然、ジャンヌの守護領域の上に上塗りされる形で、障壁が張られる。そうして合わさった二つの守護領域は力を強め、迫りつつあった炎を押し返し逆に竜に衝突させた。
「大丈夫ですか?」
ふわりと振り返る紫の髪。ああ、
「先輩」
「ようやく会えたね、マシュ」
ドクターがぐだことの通信を切ったころ
ロマニ『急いでくれ、早く彼女たちと合流するんだ」
アマデウス「どうしたんだいマリア? さっきからだんまりとして」
マリー「いえ、何でもないの。ただ」
アマデウス「ただ?」
マリー「私の初めて(のジャンヌ・ダルクとお友達になる機会)が奪われた気がして⋯⋯」
アマデウス「な、なんだってー!」
ルーラー(何を受信したんだこの王妃様は)