【更新休止中】Fate/ぐだ×ぐだOrder 〜要するにぐだこがぐだおを呼ぶ話〜 作:藻介
終わらないメンテの暇つぶしにどうぞ(ま、これ見る人が何人いるのかってもんですけどね)。
人造人間は修羅場の夢を見るか
アテンションプリーズ。
弊ぐだおの一人称は「私」ですが、ノンケです。
(ただし変態でないとは言ってない)
雪吹きすさぶカルデアの朝、廊下で組んずほぐれつしている女性が二人。
かたや足の先から爪の先、髪の毛の一本に至るまで真っ黒な毒娘。
かたや制服の上に郷里でよく見かける呉服屋で売ってそうなパーカーを着こんだ、片目の隠れた眼鏡っ娘。
というか、後者は私の後輩だった。
起き抜け早々の珍景に虚ろを突かれ、ただただ呆然と立ち尽くす私に後輩が必死の抵抗の末、手を伸ばす。
「せ……先輩、たすけて、助けて……ください」
その時、私の中の変なスイッチが入る音がした。そして無意識にかつしっかりと、右手を天高く突き上げる。
「令呪を以て命ず!」
「タマモキャット! 鮭のほぐしとご飯三杯山盛りをここに!」
「了解だワン!」
どこからともなく現れる赤い和服に身を包んだ狐耳の少女。もはやネコなんだかイヌなんだかキツネなんだか分からない彼女、その手には光輝く白米の山とみごとに脂の乗った鮭、そのほぐし身。
それらが放つ芳香に我慢出来ず、ここが廊下であることも忘れて箸とお椀を引ったくり、一言。
「いただきます」
そこからはまさに狂乱。目前の光景を見て、鮭を乗せ、白米を頬張る。また目の前を見て、鮭を取り、ご飯を口へ。
稀にそこへキャットがお代わりという名のエクストラアタックを挿し込む。
ああ、ご飯が進む、進む、進む。
生きてて良かった。というか、人類史がまだ残ってて良かった。初めてレイシフトしたあの日から今日まで、生き残れて本当に良かった。
うちにも女神様は数名いらっしゃるけど、これは誰に感謝すべきだろう。いやむしろ、ここは全員に感謝すべきだろうか。ありがとう、特に豊穣の女神様辺り。
おや? もう二杯目もなくなってしまった。よし、これで最後の
「……いい加減に、してください!!」
その声が響いた時目にしたのは、白亜の城に突き飛ばされて共に宙を舞うキャットと静謐の姿、そして顔面近くに迫る熱々のご飯と鮭だった。
「いやはや、、まさか
「できるわけ無いじゃないですか。アレは先輩特攻宝具です」
そのわりには若干二名ほど巻き込まれていたような。
「そもそも朝の事は、先輩が招いたことでもあるんですからね」
はて何かしただろうか。
改めて食堂へ行く手前、中からとうに持ち直したキャットーー対私宝具というのはあながち嘘でもないかもしれないーーが腕を振るい、ここまでいい臭いが漂って来ている。
既にかけつけ二杯を食べている身の上、「ご主人はおあずけだワン」とか「報酬にニンジンをいただこう!」とか言われそうなので、ここでマシュの話を聞いておくのも悪くないかもしれない。
「まず最たる原因は、先輩の夜の過ごし方にあります」
あちゃー、そこからか。これは耳が痛い。
それはもう随分と前、このカルデア、ひいては人類最後ーーにしてはいけないのだけれどーーのマスターになってから、一月が過ぎた頃だった。
当時、うちには問題を抱えた三人のサーヴァントがいた。
一人はバーサーカー、タマモキャット。マシュの次に契約してくれたサーヴァントで、初期の頃はかなりお世話になった。その後再臨素材が中々集まらず今では前線から身を引いているが、炊事洗濯に種火集めと、このカルデアを縁の下から支えてくれている。
二人目は言わずと知れたヤンデレバーサーカー、清姫。オルレアンで出会ってから、彼女のために使った令呪は数知れず。平行世界の先輩達曰く、まだまだ甘い、らしい。
最後に三人目、うちでは数少ないアサシンの一人、静謐のハサン。通称静謐の。生前、触れた生き物は全て死んでいったという彼女の生い立ちを聞き、思わず抱きついてしまったばかりか、その時の反応の余りの可愛さに、当時残っていた聖杯を全て使ってしまった事は後悔していない。
事件はある日の夜、以上の三人がこんなことを言い出したことから始まった。
「ご主人、今日から一緒に寝ないカ?」
「
「主、その、今夜、お側にいてもいいですか?」
その時感じたことを率直に言おう。
貞操の危機。
いや、キャットと静謐は良いよ。キャットはモフモフ温かいし、静謐は本当にそばで寝てるだけでなにもしてこないし。でも清姫は明らかに既成事実作ろうとしてる目だよね!?
そして君たち、何を人の部屋で戦争始めようとしてるのかな。嫌だよ、こんな聖杯戦争。後に残るのは血まみれ毒まみれで、その上焼け野原になったマイルームだけだよ!
容易に想像のついた戦争結果に身震いを覚えつつ、私は二つの条件付きで彼女らの提案を受け入れることにした。
一つ、三日に一度の交代制(ちなみに順番は宝具の撃ち合いではなく、じゃんけんで決めた)にすること。
二つ、寝ている間、私はカルデアのシステムで女性の姿になっておくこと。さすがに既成事実を作られるのはまずい。
以降、分け入ってくる者もなく、たださすがに毎日はきついので、一人だけで寝させてもらえる日を一日作り、結局四日組みのローテーションで今朝にいたる。
で、まあ昨日は静謐の日だった訳だが。
「そもそもあの日、マシュと男性サーヴァント連中に念話で助け呼んだのに、誰も来なかったんだけど」
「当然の結果です。先輩はまず自分が男であることを改めて自覚すべきです」
う……、それを言われるときつい。
確かに、日頃マイルームで性別変更システムを使って女装を楽しんだりしているけれど。
あっ、まさか。ダヴィンチちゃんとレオニダスと理想の肉体追究同盟結んでることがばれたのだろうか。もしくは、平行世界の先輩から借りてきたヴラド公を引き留めて、服(女物)を見繕ってもらっていたことの方だろうか。
ダメだ。思い当たる節が多すぎる。これ以上追究されたらさすがにまずい。
「で、今朝何があったんだ?」
我ながら中々に苦しい言い逃れだ。
「静謐さんが抱きついて来たんです」
思わずため息一つ。マシュが少し怪訝な顔をした気がするが、そこは華麗にスルー。
「何で?」
「分かりません。……ただ」
その時、辺りに漂っていたマシュの怒気がどこかに吹き飛んで、何か物悲しさのような感じに入れ替わった気がした。
「寝惚けたような声で、“ありがとう”と、言っていた気がします」
「へえ、何でだろうね」
「ホッホッホ、それは恐らく、静謐めが己の毒を打ち消してくれているのが、マシュ殿のおかげだと知っていたためかもしれませんなぁ」
「「うわぁっ!」」
突然私たちの背後に、仮面を顔に張り付けた男が現れる。
「呪腕先生、いつからそこにいたの」
「さあ。ずっと最初からいたのかもしれませんし、今さっき来たのかもしれませんぞ」
ああ、本当アサシンの気配遮断スキル怖い。キャメロットの時敵に回さなくて良かった。
「あの、呪腕さん。それは一体どういうことでしょう」
「おや、私の聞き違いでしたかな。確か魔術師殿の対毒スキル(仮)は貴方の盾の加護によるものだったのでは?」
「あ、はい。そこは分かっています。でも……、
でもこの盾は、元はギャラハッドさんの物で、私の物ではない。だから本来はその感謝はわたしではなく、彼に向けられるべきだと思うのです」
「なるほど、自分が感謝される道理はないと」
マシュが静かに頷く。
「では、“代理”というのはどうですかな」
「代理……ですか?」
「そうです。そものこと、私のように人から山の翁になった者共はともかくとして、あやつは生まれたその時から、いやもしくは、生まれる前から山の翁になった者。一度山の翁となった者は生涯、死んでも暗殺のためにしか関係を築くことはできませぬ。だからーーー
ーーーだから、代理でもいい。戦いが終われば記憶の奥底に沈んでしまうような関係でもいい。その感謝を受け取って、どうか、あやつの初めての友になっては下さりませんか」
「ーーー! はい!」
笑顔でマシュが走り出す。その背中に迷いは微塵も感じられなかった。
「はて、行ってしまわれましたな。マシュ殿に静謐の居場所を教えそびれてしまいましたが」
「大丈夫だよ、きっと」
「ほう、同族の勘、というやつですかな」
「あ、知ってたんだ、そのこと」
「ええ、情報収集はアサシンの十八番ですから」
やれやれ、できるだけ皆の前では伏せておきたかったんだけど。やっぱり、アサシンのサーヴァントには、それこそ殺されても敵いそうにないな。
「そのこと、他の皆には?」
「安心なされよ。無論、誰にも伝えてはおりませぬ。ただ、気づいてらっしゃる方は若干名いるようですが」
やっぱか。無駄に勘が鋭いなうちのサーヴァント連中。
「ささ、我々も食堂に参りましょう。いつまでもこんなところにいるわけにはいきますまい」
「そうだね」
止まっていた歩みを、再び始める。
「そう言えばさ、さっき友だちがどうとか言ってたけど、先生は友だちいたの? 山の翁になる前は普通に暮らしていたんだから、一人二人はいたんじゃない?」
「そうですな、その頃の記憶はもうとっくに摩耗しておりますゆえ、まあはっきりとは申せませぬが、仮にいたとしても、きっと捨ててしまったはずでしょう」
「何で?」
仮面の下の表情がどこか渋くなるのを感じた。
「必要だったから、ですかな。
魔術師殿、言ってはならぬことだと思いますが、私は静謐めが羨ましいのです。私が友を捨て、人を辞めてまで欲した全てを、あやつは最初から持っていた。確かに、あやつは何も得ることはできないのでしょう。それでも私は、何も失うことのなかったあやつが羨ましいのです」
「……そうか、なら」
なら、私がやれることは一つだ。
「私と、友だちになってくれないかい」
ハサン・サッバーハ、山の翁になるために人としての全てを捨てた男。でも、その生き方はとてもーーー
「私は山の翁としてのきみの最初の友だちになりたいんだ」
とても、人間らしいと思った。でき損ないの私なんかより。
しばらくの沈黙。後、男の笑い声。
「失礼。これほどまで笑ったのはいつ以来ですかな」
「そう、けっこういつも笑っている印象があったけど」
「これは一本とられましたな」
再び、男の笑い声。
「それで答えは」
「ああ、そうでしたな。それは答えるに及びません」
「え、じゃあーーー」
「残念ながら、私は魔術師殿と友人になることはできませぬ。そものこと、私と貴方は元より
「……そう、か。そうだよね、ごめん。変なことを言ってしまーーー」
「ーーーそれでも、それでもいつか、我々山の翁が不要となった時には、慰みに一杯付き合ってくださらぬか」
その返答に思わず男の顔を見返す。
私を見下ろす顔はやはり読み取れない。その顔のまま不自然に長い右腕で私の頭を撫でる。
その時、
ーーー先輩は男としての自覚が足りないんですーーー
もしかして呪腕先生、私を女だと見ているんじゃ。そんな万が一にもあり得ない懸念が浮かび、急ぎ先生の右腕を頭の上からどかす。それにこの腕たしか宝具じゃなかったけ。え何、殺す気ですか。今度はそんな邪推が私に先生から距離をとらせた。
「魔術師殿?」
二三歩ほど先行していた私を先生が呼び止める。
「わかった。その時は就職難だろうとなんだろうと、愚痴を言い合おう」
私の返答にきょとんとする山の翁。でもすぐにいつもみたいな雰囲気を纏って、「ええ、お願いします」と返してくれた。
そしてまた、私たちは歩き出す。そしていつの間にか食堂までたどり着いた。とそこで、不意に私の負けず嫌いな一面が顔を出す。
「そう言えばさ、先生は私が無用な勘違いをしてるって言ったよね」
「ええ」
「先生も一つ、“無用な勘違い”をしていることがあるよ」
そう言って私は食堂の一角に近付く。そこでは女性サーヴァントたちが、一同に食事をとっていた。メンバーはマシュ、キャット、清姫、そしてーーー
「彼女はちゃんと自分で何かを得ることができるよ」
ーーー静謐だった。
「はは、これはまた、一本とられましたな」
男の笑い声が雪に閉ざされたカルデアに響いた。
後日
ぐだお「バラはちょっとどうかと思うけど、百合は結構いいと思う。というわけで」
シャララーン(性別変更する音)
ぐだお?「マシュ〜、ハグしよ〜」
マシュ「センパイ最低です」
ぐだお(がーん)
マシュ「全く、するならそのままでいいのに」(小声)