そろそろ冬も終わりですね。
チルノたちとかくれんぼをすることになったぬらりひょんは目を瞑りながら100数えていた。
「98〜99〜100!」
「よっし!じゃあいくか!」
100数え終わったぬらりひょんは歩きながら2人を探していた。
「それにしても意外と広そうじゃな。こりゃあ骨が折れるかもしれんなぁ」
「……」
〔お父さーん!鬼ごっこしよーよ!〕
〔ん?いいぞい!じゃあワシが鬼をやるから鯉伴はさっさと逃げな!〕
〔うん!〕
〔ハァハァ…ここまでくれば…〕
〔ほりゃ!〕タッチ
〔うわっ!いつの間に!?〕
〔今度は鯉伴が鬼じゃ!〕
〔よーし!〕
〔そっちは行き止まりだよお父さん!〕
〔そうみたいじゃな〕
〔よしタッチだ!〕
〔あっ…〕
シュウン…
〔ハッハッハ!まだまだ甘いのう鯉伴!それじゃ2代目として認める訳にはいかねーな!〕
〔お父さんずるいよ〜!〕
「……」
ぬらりひょんは昔のことを思い出していた。もう何百年も前のことだ。今のように息子の鯉伴が小さい頃にはよく遊んでやっていた。
「鯉伴…またどこかで会えるといいのう…」
「そして……」
「…よし!もっと真剣に探してみるか!」
最後に何かを言いかけたぬらりひょんであったが口には出さなかった。
「う〜ん…どこにかくれようかなぁ…」
「何で私を連れていくの!?同じとこに隠れたら見つかるのも一緒になっちゃうよ!?」
「いいの!大ちゃんはあたいといればいいんだ!」
大妖精は、はぁと息を吐く。だがチルノの振り回されるのはいつものことなのでもう慣れっこになっていた。
「でもチルノちゃん、早く隠れないと…多分もう100数え終わってるからそろそろぬらりひょんさん来ちゃうよ?」
「わかってる!」
「……よし!あのヒマワリのとこにしよう!」
チルノが指差している先には大きな向日葵がたくさん咲いていた。遠くからだと見つかりにくいかもしれないが、近くから見たら丸見えであるところだ。
「えぇ!?あそこ!?」
「大ちゃんはやく!」
「わ、わかったから!引っ張らないで〜!」
「……え?」
「見つからねえな…やっぱこの広さだと結構大変だな」
ぬらりひょんは苦戦していた。本気になれば簡単に見つけるのことができるとは思っていたが花々が邪魔になっているのもあり、中々見つからないからだ。
「こんなことなら鬼ごっこにしとけばよかったかもしれんな…」
「!!!」
「あっちかッ!!」シュンッ!
ぬらりひょんは2人の居場所を感じ取った。正確には恐らくチルノと大妖精に向けているであろう“殺気”を感じ取ったのである。
「間に合えッ!」
「う、うぅ……」
「大ちゃん!!」
「あらあら…大丈夫?」
彼女は風見幽香。この太陽の畑を主に活動範囲としている妖怪。そして先ほど大妖精がいっていた“怖い妖怪”と噂されている者である。
自分で攻撃しておきながら大丈夫?などと言う幽香に向かってチルノは睨みつけた。
「アンタがやったんでしょ!いきなり何するのよ!」
「こんなところまでくるなんてお客さんかと思って軽く挨拶しただけよ。妖精ってやっぱり非力なのね」
「このッ!」
チルノは問答無用で殴りにかかる。しかし。
「うふふ…そんなんじゃ生まれ変わっても私に攻撃を当てることはできないわね」
幽香は楽々とかわしていく。元々幽香は身体能力が非常に高い妖怪なので妖精のチルノの攻撃などに当たるわけはない。
「ほらほらもっと頑張って?」
「くっ!!」
「《氷符「アイシクルフォール」》」
冷気が幽香を襲う。
「ふふ、それが精一杯かしら?大したこと……」
「!!!」
「な、なに?」
幽香は後ろを振り向き、何かを見つめている。
「……」
幽香はチルノによって凍ってしまった向日葵を見つめていた。凍ってしまった向日葵に触れると向日葵はバラバラに砕けてしまった。
「ど、とんなもんだい!あたいを甘く見るからいけないんだ!」
チルノは腰に手を当てて威張るようにそう言い放った。
「向日葵はね…寒さに弱いの」
「貴女程度の力なら人間や妖怪にはほとんど無害…でも花には有害なのよ」
幽香の言葉にどんどん凄みが増していく。
「有害は…消すッ!」
幽香は先ほどとは比べ物にならないほどの殺気をチルノに向けていた。大好きな花を無残な姿にされて我慢できなかったのだ。
「ひっ…」
一方チルノも幽香の本気の殺気を向けられて腰を抜かしてしまった。
幽香は一瞬で間合いを詰め、傘でチルノを突き刺しにきた。
「チルノちゃん!!!」
大妖精も叫びも虚しく傘がチルノの体を貫く…その瞬間。
ガキィンッ!!
鉄と鉄が擦れ合うような物凄い音がした。するとそこには左手でチルノを抱え、右手に刀をもったぬらりひょんが立っていた。
「てめぇ…何やってんだッ…!」
「………」
「いい顔ね…」
幽香は不気味な笑みを浮かべながらそう言った。
はい、第7話でした。
幽香をどうやって怒らせようと考えた結果こうすることに決めました。その結果後半の大妖精の空気っぷりが凄かったですね。
では8話でお会いしましょう、お疲れ様でした。