ぬらりひょんが幻想入り   作:破壊王子

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この小説はぬらりひょんの孫と東方Projectの二次創作です。

最近は暑くて暑くて何もする気が起きないです…


【第48話】天人と吸血鬼

 

青髪の少女が右手を前に出すと赤、いや紅い色の剣が出現した。見た目はフランの持つレーヴァテインに酷使しているが、レーヴァテインほどの威圧感は曝け出していない。むしろ静かに紅く染まっているのが逆に緊張感を持たせてくる。

 

 

「これはね、緋想の剣(ひそうのつるぎ)といって…まあ私の所有物のみたいなものよ」

 

「緋想の剣…?」

 

 

 フランはこれもパチュリーの本で見たことがある。『緋想の剣』とは天界に存在する、天人にしか使えない剣。しかし具体的な能力などは記されていない為、あの剣はどんな攻撃力を誇るのか、どんな防御力を誇るのかなどはフランには何もわからない。

 そして今まであの少女が天人だとは半信半疑だったが、今それが完全に確信に変わった。しかしそうだとしたら何故天人がこんな所に居るのかという、新たな疑問も生まれる。

 

 

「何を惚けているの?構えなさい。まあ構えても無駄だろうけど」

 

 

 少女はスタスタと簡単にフランに近づいていく。が、先程のようにヘラヘラと無防備にではなく、自分への絶対の自信が感じ取れる表情だった。フランも『レーヴァテイン』を右手に握りしめ、少女か近づいてくるのを待つ。

 元からそんなに離れてはいなかったので、2人の距離はすぐに目と鼻の位置まできた。お互いの剣を相手へと伸ばしたら届くくらいに。

 

 

「……」

「……」

 

 

 お互いが見つめ合う。どちらの瞳も真紅の色をしていて、まるで鏡を見ているようだった。あくまで瞳だけだが。

 

 

「安心しなさい、殺しはしないわ。この剣で最初に殺すのはアイツって決めてるから…まあ不可抗力で死んじゃったらそれは軟弱な自分を恨みなさい」

 

「…私は吸血鬼と言っているでしょう?天人サマは記憶力が低いのかしら?」

 

 

 フランが『天人』という単語を出すと、少女は多少驚いた表情をする。自分の正体を知られているとは思っていなかったのだろう。しかしあの言動からして普通の者ではないということは誰でもわかる。

 

 

「なぁんだ…知ってたの?なら冥土の土産に名前も教えてあげる。

 

 

 比那名居天子(ひななゐてんし)。アンタの生涯の内、最初で最後に聞く天人様の名よ。過ぎたる光栄を身をもって知りなさい!」

 

 

 殺さないと言っておきながら冥土の土産と言ってしまう天子。なんとも語彙力が乏しい天人だが、フランはそれに突っ込むつもりはない。目の前にいる天子と威圧感を身をもって感じているからだ。頭はあまり良くなさそうではあるが、実力は本物だと魔力の大きさ、濃さをみれば容易にわかる。

 

 

「せやッ!」

 

「ッ!!!」

 

 

 まずは天子から仕掛けた。

 

 持っていた『緋想の剣』を薙ぎ払うように振り回した。当然フランも『レーヴァテイン』で防御するが、その瞬間驚愕する。しっかりと防御したつもりだったが、10メートルほど後方に吹き飛ばされてしまった。あの細腕からこんなに威力のある一撃が放たれるとは、フランは全く予想していなかったのだ。

 

 フワッと浮いたフランは地面に足をつけると、すぐ目の前まで来ている天子の姿が目に入った。追撃だ。

 同じように剣をブンブン振り回す天子を、フランはあえて受けようとはせず、躱していた。

 

 

「フンッ!ちょこまかと!」

 

 

 薙ぎ払うような形から、今度は突き刺すような攻撃へと変えてきた。だが攻撃が単調である為、疾い攻撃であろうともフランの動体視力と身体能力をもってすれば簡単に躱すことができた。

 

 次は振り下ろし、その次は振り上げ、そしてその次はまた薙ぎ払いと攻撃がワンパターンだ。

 攻撃とは相手の裏を読み、巧みに相手の隙を突いていくものであるが、天子はそれが全くできていない。フランも人の事はとても言えないが、正直言って自分よりも戦い方が拙い、とフランはこの数分でそんな印象を受けた。

 

 

「やあああッ!」

 

「んぐッ…」

 

 

 色々考えていたフランは少しだけ戦いに集中力を欠き、再び天子の一撃を受けた。身体ではなく剣で受けたのだが、先程のようにまた飛ばされてしまう。恐らく天人という種族の潜在能力だろうと考えられる。

 

 

「フフ…簡単に吹っ飛んじゃうのね。吸血鬼は身体能力が高いとは聞いたことあるけど…それも下界での話か」

 

「…ッ!」

 

 

 天子の皮肉にムッとしたフランは連続で弾幕を打ち込む。相手に向かってまっすぐ飛んでいく高速の弾だ。軌道は単純だがいかんせん量が多く、これほどあれば1つは当たるはずと意気込んで放ったのだが────

 

 

「あはは!何処を狙ってる?」

 

 

 ────全て躱された。

 

 

 持っていた剣で弾幕を払いもせず、たった1つにも当たらないまま完全に避け切った。いや、天子からすれば剣で払い落とすよりも避ける方が簡単だったのかもしれない。

 

 これが天人の身体能力だ。パワーそしてスピード、どれも一級品だ。天子はそれを上手く生かしきれてはいないとはいえ、非常に驚異的な力である。

 

 

「…アンタの攻撃なんか当たらないっての。うん…つまらない、つまらないわね」

 

「つまらない…?」

 

「ええそうよ。もう飽きたわ…終わらせてあげる」

 

 

 右手に持っていた剣を、天子は高々と上げた。そして今日1番の笑顔、いやこれは笑顔と呼ぶにはあまりも邪気が含まれすぎている。そんな顔をしながらフランを見る。

 フランもこれからどんな攻撃が襲ってくるのかわからないので、こちらも今日1番の警戒をしながら身構えている。

 

 

「貴方、今日の天気わかる?」

 

 

 藪から棒に天子はそんな事を口にした。急な質問にフランは一瞬動揺したが、すぐに上を向いた。確認する為に。

 空はいつの間にか曇っていた。山に入り始めた頃には既に曇りになっていたのだ。

 

 

「曇り…それが何?」

 

「フフフ…私ね、見た目通りに賢いの。知識量も豊富でこんな事まで知ってるわ。

 

 

 吸血鬼は太陽の光に弱いと!」

 

 

「…!!!」

 

 

 吸血鬼の弱点。

 

 それはいくつかある。吸血鬼は身体能力が優れた種族だが、その分弱点といわれる部分も多く、完璧な存在とは言い難い。その吸血鬼の中で最大の弱点と言われているのが〝光〟。そう、太陽の光だ。天子は偶然にもその事を知っていたのだ。

 

 

「さあ!内側から燃え尽きなさいッ!」

 

 

 天子の威勢のいい声と共に、上空の雲が消えていく。そして光り輝く太陽が現れた。山にいる2人には太陽の光を嫌という程浴びせられる。天子にも暑いと思わせるくらいに。

 

 これで終わった。あの妖怪は干からびる、と、

 

 眩しくて前がよく見えない天子だったが、そろそろ天候を元に戻そうとした。

 

 

 すると信じられない光景が目の前にあった。なんと吸血鬼のフランが何食わぬ顔でそこで立っていたのだ。それも天子をほくそ笑むような顔で。

 

 

「はッ……はぁ!?」

 

 

『聞いてたのと違う!』と思っているのは口に出さなくても表情を見ればわかる。いや、正解なのだ。吸血鬼は太陽の光に弱い、それは事実だ。

 

 

「私には効かないわ。えーりんから貰った薬を飲んでいるもの」

 

「く、薬…?」

 

 

 そう、運が良かった事にフランは永琳から貰った薬を飲んでいた。これは太陽の光と水に抵抗を無くす薬だ。こんなものを数日で作れるのは永琳以外この世に存在しないだろう。

 

 

「〜〜〜!あーっ!全く!癪に触る妖怪ねアンタは!」

 

「貴方が勝手にイライラしているだけでしょう?」

 

 

 フランが呆れながら突っ込むも、それすら天子にはイライラの種となってしまう。

 頭を掻きむしっていた天子はまた『緋想の剣』を握りしめ、鋭い目つきでフランを睨む。

 

 

「じゃあこれなら…どう?」

 

 

 天子の持っていた『緋想の剣』が燃え出した。決して炎を纏っているわけではないのだが、紅い光を帯びている。

 

 

「これも緋想の剣の能力…〝相手の弱点を突く〟ものよ!吸血鬼って弱点が多いんでしょう?その全てを薬とやらでカバーできているとは思えないわ。まだまだ残された弱点は大量にあるはず…フンッ!この剣はもはや吸血鬼キラーと言っても過言じゃないわね」

 

 

 フランには弱点を突くというものか具体的にはわからないが、斬られたら大変な事になるというのはわかる。防ぐ手立てもない。フランに出来るのは〝やられる前にやる〟事くらいだ。

 

 

「きゅっとしてドカーン…きゅっとしてドカーン…」

 

「…は?何?命乞い?」

 

 

 急に下を向いてブツブツ言い出したフラン。天子はフランが何を言っているのか理解できない。

 

 

「きゅっとしてドカーン…きゅっとしてドカーン…うん、大丈夫。手加減できる。大丈夫、大丈夫」

 

 

 フランは右手を閉じたり開いたりを繰り返している。その時の表情は何かを決心しているようにも見えた。

 

 

「どうでもいいけど…本当に終わらせるわよ。私の剣で幕を下ろすわ」

 

「ええ…終わらせましょう。私の能力で!」

 

 

 右手をグッと前に差し出し、不気味な眼をしながらフランは能力を発動した。

 




はい、第48話でした。

この話で2人の戦いは終わらせる予定だったのですが、時間の都合上次へと引き伸ばしになりました。申し訳ないです。

ではお疲れ様でした。

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