ぬらりひょんが幻想入り   作:破壊王子

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この小説はぬらりひょんの孫と東方Projectの二次創作です。

今年初の投稿です。皆様あけましておめでとうございます←遅い


【第42話】2つの光

 

 

 

 

 

 

 

「こんなに月も紅いから…本気で殺すわよ!」

 

 

「…は?」

 

 

 

左手を腰に置き、右手でぬらりひょんをビシッと指差しながらフランがそう言った。表情は嬉しさの反面、若干気恥ずかしさが混ざっているように思える。

 

だが残念な事に今日の月は薄い黄色。誰がどう見ても〝紅〟には見えない。

 

 

 

「何言っとるんじゃお前」

 

 

「フ、フフフ…! 1回言ってみたかったのよ!」

 

 

 

誰の真似なのかは言わなくてもわかっているが、当の本人はこんなキザなセリフを真顔で言えるのだから凄いものだ。

フランは、縁側に座って月を見ていたぬらりひょんの横にちょこんと座った。

紅くはないが丸くて綺麗な月だった。そして薄く細い光を放っている。吸血鬼であるフランにとっては、月は太陽のような存在なのかもしれない。

 

 

「ご飯美味しかったね〜」

 

 

永遠亭に住むウドンゲ、てゐ。そして客としてきているフラン、紫、にとりは先に食事をし、永琳とぬらりひょんの2人は治療があるので後に食事をとった。

その後ぬらりひょんは風呂などを済ました後、やる事もないので縁側で涼んでいたのだ。

 

 

「ん〜 まあそうだな」

 

 

片手にお猪口ちょこを持ったぬらりひょんが答える。顔は少し赤く、酔っているように見える。

どちらかというと月よりぬらりひょんの方が紅い。

 

 

「ねー!明日から『海』を探しに行くんでしょ?楽しみだね!」

 

 

 

「はぁ?海は幻想郷(ここ)には無…」

 

「その通りよ。だから早く寝た方がいいわ」

 

 

酔ったぬらりひょんがうっかり本当の事を言ってしまいそうになったが、間一髪の所で急に2人の間に現れた紫に救われた。紫は風呂に入っていたらしく、髪を結い、黒い寝巻き用の服を着ている。なんだか大人の女性の雰囲気があった。

 

 

「ぬらりひょん様。お酒も程々に…ね」

 

 

「……! お、おう…それにしても何でも知ってるんだなお主…」

 

 

恐らく永琳に事情を聞いたのだろう。

おかげでなんとか思い出した。こんな調子でこの先本当に大丈夫なのかと紫は頭を抱える。

 

 

「もう少ししたら寝ようかな…今はなんだかここに居たいの」

 

 

「……」

 

 

『海』を探すといっても元々そんなものは存在しない。なのでぬらりひょんとフランは永琳が造る『擬似の海』が出来るまでブラブラし続けるだけである。

 

しかし495年間地下にいたフランにとっては、それだけでも貴重な時間だ。ぬらりひょんはフランに存分に楽しんでもらいたいと思っている。レミリアの言う通り、フランはまだまだ子供なのだから。

 

 

 

「フランちゃん、幻想郷は広いわ。そう、物凄くね。

だから海は探そうと思って探せるものじゃないと思うの」

 

 

 

紫の言葉を、フランは相槌を打ちながら聞く。このようなコミュニケーションの1つ1つすら経験だ。

 

 

「だから貴方が行きたい場所へ行くのがいいわ。楽しそうな場所へ行って、それで更に海もあったら嬉しさが2倍でしょう?」

 

 

「うんうん!」

 

 

紫の言い方は非常にわかりやすく、興味をもたせていた。子供への接し方がよくわかっている。話の内容だけではなく、笑顔で話す事によって更に会話を盛り上げることができる。

紫が聞いたら怒るかもしれないが、側からみたらお母さんに見える。

 

 

「ふーん…」

 

 

そんな紫をぬらりひょんはニヤニヤしながら見つめる。「な、なんでしょう?」と紫も顔を赤らめながら照れていた。

 

 

「なんでもねえさ。それよりフラン、海以外にお前が行きたい場所ってどこだ?」

 

 

「行きたい場所……」

 

 

珍しく頭を悩ませる。ムムム…と顔を歪ませながら考え込むフランが微笑ましかったのか、ぬらりひょんと紫は顔を見合わせる、

そして何か思いついたのだろう。フランは「あっ!」と声を上げる。

 

 

「山!山に行きたい!」

 

 

今日は川で遊んだので次は山!という発想になったフラン。実に単純だが、良いチョイスと言える。

 

 

「えぇ〜…山ぁ?」

 

 

「嫌なの?」

 

 

ぬらりひょんはあまり良いと思わなかったのか、先程のフランのように顔を歪ませる。

山は疲れるから嫌なのだ。主に坂道が。

 

しかしフランの為だ。精神的には老いた体に鞭を打つべきだと考えた。

 

 

「うんにゃ、ワシも山は大好きだぜ。 紫、なんか地図みたいなの後でくれねえか?」

 

 

ぬらりひょんは紫に地図を求めた後、お猪口を置いた。いい加減にしておかないと朝起きるのが大変になると思ったからだ。ぬらりひょんは鬼ほど酒に強いわけではない。

 

 

「もちろん構いませんが… それなら山までお送り致しましょうか?」

 

 

紫は、移動時にこの『境界を操る程度の能力』をよく使っているが、これは本当に便利な能力である。

勿論戦闘でも強大な力を発揮し、対処法も並の妖怪どころか大妖怪ですら思い浮かばない。いや、思い浮かんでも実行をさせないのが八雲紫だ。

 

兎にも角にも、紫はその便利な能力でぬらりひょん達を送ろうと提案した。

 

 

「バーカ。それまでの道のりが良いんだろう?ワシらは頂上(てっぺん)になんか用があるわけじゃねえんだ。ただ道中を楽しみたいってだけよ」

 

 

その通りだ。

確かに紫の能力は便利だが、それを使えば道中までの時間を省いてしまう。フランにとっては無駄な時間などない。全てが大切な記憶となるのだ。

ハッと気づいた紫は思わず口を手に当てる。

 

 

「も、申し訳ありません…」

 

 

「謝んなって。自分の意見を堂々と言ってんだから胸を張りゃいい。例えそれがズレてたとしても関係ないさ」

 

 

そう言われても紫はまだシュンとしている。大人の女性の雰囲気とはうって変わり、少女のような顔をしていた。

 

 

「ワシの百鬼ってんなら、ワシの唇を奪おうとするくらいの気概を見せてみろ。まぁやすやすと奪わせやしねぇがな」

 

 

「くッ…くちッ…唇ぅ!?」

 

 

勿論冗談なのだが、紫は顔を真っ赤にして照れる。体温はドンドン上がり、その紫をみたぬらりひょんとフランは指差して笑う。

冗談と知った後もパタパタと手で顔を扇いでいた。奴良組の百鬼である雪羅(せつら)がみたら鼻で笑いそうな光景だった。

 

よほど効いたのか、そのまま紫は用意された寝室に向かっていった。その足取りはフラフラとしており、大変危なっかしい。

 

ぬらりひょんとフランもその後すぐに各々の寝室に向かい、その日を終えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

 

「………グハッ!」

 

 

腹が痛い。

 

凱郎太(がいろうた)にやられたダメージがまだ残っていたのか?と一瞬ぬらりひょんは思った…が、その類の痛みではなく。

 

 

 

 

「朝だよ〜!」

 

 

 

 

既視感のある光景だった。自分が寝ている布団の上にフランがダイブしていたのだ。フランはもう着替えており、髪の毛もバッチリだ。 白玉楼の時とは朝のテンションが全く違う。朝から元気な吸血鬼がいたものだ。

 

 

 

「…もうちょお〜っと優しく起こそうなフラン」

 

 

「このくらいが丁度いいのよ!」

 

 

前のチルノを思い出したぬらりひょん。そういえば別れた後チルノと大妖精は大丈夫だったのだろうか。いや、恐らく慧音にこってりと絞られたことだろう。

 

 

「……あー、フラン。山に行った後、次はワシの行きたい所に行っていいか?」

 

 

「? 勿論いいよ! とにかく着替えてご飯ご飯!」

 

 

チルノ達のことを思い出した後、他にもう1人の妖怪を思い出したぬらりひょん。彼女も元気にやっているだろうか。

 

 

 

とりあえず朝の支度を済ませ、朝食をとった。その後身支度を済ませ、とうとう永遠亭を出る時間が来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よしそろそろ行くかな」

 

 

「気をつけてくださいね。また昨日みたいな妖怪が出るかもしれませんし…」

 

 

ウドンゲが玄関まで見送りに来てくれていた。横にはてゐも居る。

 

 

「アレ?フランは?」

 

 

てゐが不意にそう言う。すると数分前には側にいたフランがいなくなっていた。靴があるのを見ると、外には行ってないと思われる。

 

 

「フランちゃんどこ行ったのかな…私探して来ます!」

 

 

永遠亭の中をウドンゲが探しに行こうとしたその瞬間、廊下の向こうからフランが歩いて戻って来た。

安心したぬらりひょんだったが、すぐにフランの様子がおかしい事に気づく。

 

 

「フランどうしたんだ?」

 

 

「帽子…無くなっちゃった…」

 

 

 

フランはずっと帽子を探していたのだ。しかしいくら探しても見当たらない。

そもそも2人の鬼と対峙していた時にすでに被っていなかった。あの時はもう陽が照っていなかったから気がつかなかったが、もしかして川に忘れてきたのかもしれない。

 

 

「あー…まぁ傘があるしいいじゃねえか」

 

 

「傘だったら片手ふさがっちゃうもん…」

 

 

仕方ないと思ったてゐが、自分の麦わら帽子を持ってきてあげようと自室へ向かおうとしたが、永琳がこちらへ向かって来ていたので足を止めた。

 

 

「はいフランちゃん。ここでプレゼントがありまーす」

 

 

「帽子?」

 

 

「帽子よりもっといいものよ。噛まずに飲んでね」

 

 

永琳はポケットから何かのケースを取り出した。そしてそのケースから薬を取り出し、フランの口に入れた。

フランは首を傾げて不思議そうな顔をしている。永琳はまたニコニコしながらフランを抱っこして外へ出ようとしている。陽がガンガンに照っている外へだ。

 

 

「お、おいちょっと待てよ!」

 

 

「師匠!?」

 

 

ぬらりひょんとウドンゲの静止を聞かずに、永琳はついに外に出てしまった。

フランはずっと目を瞑っていたが、永琳の声と共にゆっくりと目を開けてみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

眩しい。まともに直視できない。顔に熱を感じるが、苦しいとは全く思えない。むしろ心地よい温かさだ。

 

 

ああ…これが太陽なのね(・・・・・・・・)

月とはまた違う光に、フランはそう見惚れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、第42話でした。

変な所で終わってしまいすいません。
次から2人は山に向かいます。

ではお疲れ様でした。

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