ぬらりひょんが幻想入り   作:破壊王子

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この小説はぬらりひょんの孫と東方Projectの二次創作です。

結局更新が1ヶ月先になってしまった…


【第37話】河童

 

 

 

「う〜…暑いわ。暑すぎて溶けちゃいそう…

帽子があってよかったわ」

 

 

フラン、永琳、ウドンゲの3人は、ぬらりひょん達より先に永遠亭を出ていた。

今日は雲一つない空。太陽の陽がガンガン照っていて、それがフランには多少キツそうであった。

 

 

「頑張ってフランちゃん!もうすぐそこよ!」

 

 

ウドンゲが手に持っていたハンカチでフランの顔を拭いてあげた。

確かに自分や永琳に比べて、吸血鬼のフランは太陽の光に弱いとわかった。

 

 

「……わぁ!」

 

 

無言になったフランだったが、人里を抜けた所で思わず声が出た。

目の前には太陽の光が反射し、キラキラと輝いている川があった。

 

 

「入っていい?ねえ入っていい!?」

 

 

川に勝るとも劣らない程にキラキラしているフランの眼。フランは永琳に許可を得ようとする。

 

 

「ええ、いいわよ」

 

 

もちろん止める理由のない永琳は、笑顔で許可を与えた。

フランは「やったーッ!」と歓喜しながら川の近くまで走っていく。

 

 

川の側まできたフランは一度止まった。靴を脱いだのだ。

靴下も一緒に脱ぎ、スーハースーハーと深呼吸した後、川の中へ入った。

 

 

「ひゃん!つ、冷たいわ!」

 

「川だから当たり前よ…って!本当に冷たいわね!」

 

 

フランに続いてウドンゲも川に入る。

自分が思っているよりだいぶ水が冷たく、長い耳がピンッ!とたった。

 

 

「どう?フランちゃん。身動きは…」

 

 

 

 

「あはははは!凄い!凄いよ!

ほらっ!ほらほらほら!!!」

 

 

 

 

フランは浅瀬をバチャバチャと音を立てながら駆けていく。服が多色濡れても全く気にしていない。

 

ゆっくり歩いてきていた永琳もようやく川の付近に着いた。ウドンゲが川へ入る前に置いたバスケットの中から、ピクニック用のレジャーシートをひいて「よいしょっ」と腰を下ろした。

 

 

 

 

見る限りフランには全く問題なかった。

つまり永琳の作った薬の効果が完全に発揮されているということだ。

 

 

「…全く問題ないみたいね。やっぱり師匠は凄い……って!?コラやめなさい!」

 

 

水に入れる事が嬉しいのか、それとも遊べるのが嬉しいのか、はたまた両方なのかはわからないが、とにかく嬉しいフランは両手で川の水をすくい、ウドンゲにピチャピチャとかけてイタズラをする。

 

 

「ほんとに吸血鬼って水が苦手なのー?

私は全然へっちゃらだよー!!!」

 

 

ウドンゲがさりげなく水をかけようとするが、フランは華麗に全部かわす。

さらにクルクル回りながらウドンゲを煽るような目で笑いながら見つめる。

 

 

「むぅ〜…そんなにお調子にのると川の水に足を取られちゃうよ!」

 

「へっへーん!私そんなドジじゃな───」

 

 

 

 

 

 

「全く…師匠の薬が効いてるからいいものの…

フランちゃん聞いてる?」

 

 

ウドンゲは濡れたスカートをパタパタとはたく。その際下を向いていたのでフランの様子を確認できなかった。

 

 

 

 

「………」

 

 

 

「ねえ!…あれ?」

 

 

返事が聞こえなかったのでウドンゲはフランの方を向いた。が、そこには居たはずのフランがいない。

 

 

「ウドンゲ!」

 

 

異常に遅かれも気づいた永琳がウドンゲを呼ぶ。

ウドンゲは永琳の方を見ると、永琳が川の奥の方を指差していた。

しかしもちろんそこにはフランは居ない。

 

 

「師匠?」

 

「水面を見て!」

 

 

永琳の指差している先にはフランがさっきまで被っていた帽子が浮かんでいた。それに水面にブクブクと泡が出ていた。勘の鈍いウドンゲもさすがにどういう事か理解できた。

 

 

「な、なるほど!」

 

 

 

しかしおかしい。

 

さっきフランがいた場所とは離れているが、こんな浅瀬で溺れる筈がない。フランが自ら潜った可能性もあるが、さすがにあの格好のまま潜ることはないだろう。

 

真相を確かめるべく、ウドンゲはそこへ近づこうとした。

 

 

 

その刹那。

 

 

 

 

「『禁弾「スターボウブレイク」』!!!」

 

 

 

 

 

「なっ!なっ!…わああああ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

ウドンゲは驚いて水の中で尻餅をついてしまった。それもその筈だ。

川の中から色鮮やかな弾幕がウドンゲのすぐ横を通ったのだから。

 

 

 

 

「ゲホッゲホ…! はあ…はあ…な、何!?」

 

「いやこっちの台詞なんだけど…」

 

 

 

凄い勢いでフランが水中から飛び出してきた。浮かんでいた帽子を手に取り深く被った後、何かに警戒しているように辺りをキョロキョロと見渡した。

 

今出てきた弾幕はフランのだろう。なぜ急に弾幕を撃ったのか、なぜ水の中に潜ったのかと聞きたいことは山ほどあったのだが、ウドンゲからしたら全身がビショビショになってしまったことの方が大問題だった。

 

今更慌ててももう遅いとわかったウドンゲは開き直って背泳ぎの格好をしながらプカプカ浮かんでいる。

 

 

 

 

「な、なんだお前は!?

いきなり弾幕をかますなんて頭おかしいのか!?」

 

「あら…誰かしら」

 

 

川の中から変な少女が出てきた。永琳はその少女に見覚えが無かった。

 

少女は全身青色の服で、緑の帽子、そして大きなリュックを背負っていた。おそらく人間ではないだろう。

 

 

 

「あー…誰ですか…?」

 

 

先程からずっとプカプカ浮かびながら空を見ているウドンゲが顔も合わせずに問う。ウドンゲは俗にいう『一度失敗すると全てがどうでもよくなるタイプ』なのだろう。

 

 

 

「いやせめて目線くらい合わせようよ…」

 

 

少女がウドンゲにツッコむ。しかしウドンゲはあいも変わらずプカプカ浮かんでいるだけだ。

 

 

 

「……そこの。ちょっとこっちに来なさい」

 

 

少女に興味を示した永琳が手招きしながら呼んだ。何か気になることがあるのだろう。

 

 

 

「フンッ 私はあんまりヒマじゃあないん───」

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

ほくそ笑みながら断ろうとした少女。しかし永琳が〝断らせなかった〟

いつの間に持っていた弓で、少女の顔からおよそ5センチくらい離したところへ矢を放った。

 

 

「いいから…はやくいらっしゃい(・・・・・・)?」

 

 

「……は、はい…」

 

 

永琳の威圧感に気圧(けお)された少女はゆっくりと永琳に近づいていった。

気圧されたのは少女だけではない。フランや放心状態のウドンゲすら冷静になる程、永琳の威圧感は凄まじいものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な…なんでしょうか…」

 

「そうねぇ…何から聞こうかしら」

 

 

永琳は永遠亭から持って来た組み立て式の椅子に座りながら足を組んで少女を見下ろしている。

一方少女は正座をして小さくまとまりながら、永琳を恐る恐る見上げていた。

 

 

「し、師匠?さすがにそれは…」

 

「何?別にとって食ったりしないわよ。

貴方も楽にしていいわ。ただ聞きたいことがあるだけだもの」

 

 

助かった…と言わんばかりに少女は表情を崩した。同時に正座も崩し、体操座りをしながら口を開く。

 

 

「とりあえず自己紹介をするよ。

私は河城にとり。河童だよ。気軽ににとりと呼んでくれ。 …正直あんなイタズラでここまで怒られるとは思ってなかったよ」

 

「イタズラ?」

 

 

永琳が聞き返すと、フランが「あーーー!」と声を上げる。

 

 

「やっぱり貴方だったのね!貴方のせいで死にかけたわ!」

 

「あんたらが騒がしいからだろ?それにちょっと脅かしただけじゃないか!」

 

 

2人の中でどんどん会話が進んでいく。もちろん永琳とウドンゲは何が何だかわからずに取り残されていく。

 

 

「…フランちゃん。それににとり、正確かつ簡潔にあった事を説明してくれないかしら」

 

「うんいいよ。あのね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー少女達説明中ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…なるほどね。つまりにとりが川で泳いでいたら、川の中で騒がしくしているフランちゃんがいた。

にとりとしてはそれを良く思わなかったから、フランちゃんの足首を持って水中に引っ張るイタズラをしたってことね」

 

 

2人の説明は全く簡潔ではなかったため、永琳が聞いた情報をもとにまとめたのだった。ウドンゲはここでやっと理解が追いついた。

 

 

「イタズラってレベルじゃないわ!ぜーったい殺す気だったわよ!」

 

「おいおい!あのくらいで普通死ぬ筈ないだろ…大袈裟だな」

 

 

確かに〝普通〟ならばあんな浅瀬で死ぬ筈はない。しかしフランが〝普通〟ではない事ににとりは気づいてなかった。

 

 

「…フランちゃんは吸血鬼よ。一歩間違えていたら本当に死んでいたわ」

 

「…えっ?」

 

 

さすがのにとりも永琳の一言で顔色が変わる。事の重大さをちゃんと理解しているようだ。

 

 

「そうよ!死ぬところだったんだからね!」

 

 

薬を飲んでいなければ本当に死んでいたかもしれない。そう考えるとさっきのフランは大袈裟どころか軽いくらいだ。

 

 

「ごめん。私が悪かった…」

 

 

にとりは深々と頭を下げる。それを見たフランはニッコリとしながらにとりの肩をポンポン叩く。

 

 

「大丈夫だよ!それより一緒に遊ぼ?」

 

 

寛大なフラン。にとりが心から謝っている事に気付いているからだ。

 

 

「本当にごめんよ。そして一つ聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

 

「ちょうど良かった。私も貴方に聞きたいことが他にもあるのよ」

 

 

にとりと永琳、この2人はまだお互いに聞きたいことがあったらしい。

しかしそんな2人を無視してフランがニトリの手を引っ張り、川に行こうとする。

 

 

「ちょ、ちょっと!?」

 

「そんなの後後!先に遊ぼ!」

 

 

グイグイにとりの腕を引っ張るフラン。細腕の割に力強いのでにとりは踏ん張りきれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あん?誰だそいつ」

 

 

背後から聞き慣れた声がする。この声はーーーーー

 

 

 

「っ! ぬらりひょん!遅……」

 

 

フランはにとりの腕をパッと離し、すぐさま振り向いた。

 

そこには思っていた通りぬらりひょんがいた。しかし、ぬらりひょんだけ(・・)ではなかったのだが。

 

 

 

「この子が…吸血鬼?」

 

「ああ。フランってんだ。ほら挨拶しろフラン」

 

 

 

フランが振り向いた先には、黒く長い髪をした、綺麗な女の人をお姫様抱っこしているぬらりひょんの姿があった。

フランは目をパチパチさせながらぬらりひょんを不思議そうに見る。

 

 

「………」

 

「ん?どうしたフラン。お腹でも痛いのか?」

 

「…っこ」

 

「は?」

 

「抱っこ」

 

 

フランは途切れ途切れの話し方をするので、何を言ってるのか理解できない。

 

 

「ゆっくり話してみな」

 

「なんでお姫様抱っこしてるの…?」

 

 

ハッと輝夜が気づく。そして急にバタバタし始めた。

 

 

「お、降ろして!」

 

「なんじゃ今更。ほらッ」

 

 

「なんでこんな所に降ろすのよ!永琳のいる所まで運んで頂戴!」

 

 

砂利の上に降ろされた輝夜が不満を言う…が、ぬらりひょんは輝夜を無視してフランに構う。4、5歩進めば永琳達のいる所に行けるからである。

 

 

「もういいわよ!自分でっ…!」

 

 

輝夜はスッと小ジャンプをして永琳、ウドンゲのいるシートに着地できた。

そしてウドンゲにパラソルを差すように指示して、グダッと倒れ込んだ。

 

 

「…椅子、座る?」

 

 

どこか楽しげにしてる永琳をみた輝夜は、恥ずかしそうにしながら体育座りをして視線をずらす。

 

 

「いらない!…というかなんで鈴仙ビショビショなのよ!」

 

 

プリプリと怒る輝夜。その輝夜を見ながら永琳とウドンゲはクスクスと笑っている。

 

 

 

 

「よーっし……じゃあワシも久方振りに水遊びするかな」

 

 

ん〜っと身体を伸ばすぬらりひょん。本当に川で遊んだりするのは久し振りである。息子の鯉伴(りはん)が幼い頃に一緒で遊んで以来である。

 

 

 

 

「(誰なんだこいつらは…)」

 

 

 

次々と現れる謎の者達に、にとりは全くついていけないのだった。

 

 

 

 




はい、第37話でした。

展開を進めよう進めようと思うほど、思った通りにいかないものですね。

ではお疲れ様でした。

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