ぬらりひょんが幻想入り   作:破壊王子

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この小説はぬらりひょんの孫と東方Projectの二次創作です。

永遠亭のみんなって海のこと知ってるんですかね?


【第30話】海

ぬらりひょんが色々フランの事を説明した。吸血鬼といえど、特にここで何かしようとしているわけではない事を。

 

 

「へぇ〜!フランちゃんっていうんだ!かわいいね〜!」

 

「こ、こんにちは…」

 

ウドンゲは先ほど自分がぬらりひょんにされたように、フランの頭を撫でる。フランは意外と人見知りであるため、若干警戒しながらウドンゲを見つめていた。

 

ぬらりひょんは嘘偽りなくフランが吸血鬼だということを明かした。幽々子達には念の為に誤魔化していたのだが、永遠亭の者にはその必要はないと思ったからだ。

 

「で、永琳は?」

 

「お師匠様なら診察室で仕事してるウサ。呼んでこようか?」

 

ぬらりひょんの問いにてゐが答える。そして気を利かせようとしたが、ぬらりひょんは「構わないさ」と言って自ら永琳のいる場所へ向かおうとした。

 

「私ならここよ」

 

しかし部屋の入り口からひょこっと顔だけ出した永琳が答える。

 

「あれ?お師匠様、仕事中じゃなかったウサ?」

 

「あんだけ大きな声を出されたら…集中できないわよねぇ…ウドンゲ?」

 

ビクッと反応するウドンゲ。そのウドンゲに対し、永琳は冷徹な目で見つめ続ける。

 

「あー…わりいな。ワシらのせいなんじゃ」

 

うつむいていたウドンゲを気遣いすかさずぬらりひょんはフォローを入れた。永琳は、はぁ…と溜息を吐く。

 

「まぁいいわ。で、私に何か用でもあるのかしら?」

 

「おう。お主に聞きたい事があるんじゃが…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー説明中ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「海…ね」

 

「ああ。何処にあるのか、それとそこまでどうやって行けばいいのか教えてくれねえか?」

 

ぬらりひょんは幻想郷の『海』について永琳に訊いてみた。

 

「海ってなんですか?」

 

その会話中にウドンゲがそう言う。その問いに対し、ぬらりひょんは「はあ?」と声を上げた。

 

「海って言ったらあの海じゃ」

 

知っていて当たり前という言い方でぬらりひょんが答えるが、ウドンゲには〝あの〟という時点でよくわからない。

 

「てゐ知ってる?」

 

「知らないウサ」

 

ウドンゲのみならずてゐも知らないらしい。からかっているという様子もなく、本当に知らないようだった。

 

「おいおい…てこたぁ幻想郷に海は…」

 

「ないわね」

 

キッパリと永琳が答えた。うすうす感づいてはいたが、いざそう言われるとガッカリ感がすごかった。

 

「やっぱりかぁー。海が無いってどうなっとるんじゃここは…」

 

言ってる最中にぬらりひょんは思い出した。〝なんのため〟そして〝誰のため〟に『海』を探していたのかを。

 

 

「………」

 

ぬらりひょんは振り向いてフランの顔を覗いてみた。案の定ガッカリしており、目に浮かべた涙が今にも零れ落ちそうだった。

 

「…ごめんなフラン。幻想郷に海は無いみたいじゃ」

 

「………なんで無いの?」

 

そうぬらりひょんに訊くものの、本当にぬらりひょんがその答えを知っているとは思わなかったし、期待もしていなかった。ただ〝訊かずにはいられなかったのだ〟

 

「そいつぁ…ワシにもわからん」

 

そのまま思っていることを伝えた。それが最善だったわけではなく、それしかなかったからだ。

 

 

「………」

 

再びフランはうつむき黙り込んでしまった。周りにいた4人もどうしようもなく、ただただ黙り込んでいた。

 

その静寂の中、最初に口を開いたのは永琳だった。

 

 

「…フランちゃん。お姉さん知りたいんだけど…どうして海に行きたいの?」

 

「…本に書いてあったから」

 

パチュリーの本である。その本でフランは海の存在を知ったのだ。

 

「川や湖じゃダメ?海じゃなきゃ嫌?」

 

「うん…」

 

永琳が優しく問いかけるも、やはり海以外では満足できないようだ。

 

「そう…わかったわ。じゃあ…お姉さんが本当の事を教えてあげる」

 

さっきまで黙っていたフランがスッと顔を上げた。依然涙目であることは変わりないが。

 

 

「本当の事?」

 

「ええ。それは…幻想郷には本当は海があるってことよ」

 

「ホントか!?」

 

フランよりもぬらりひょんが先に反応してしまった。

 

「…本当?」

 

フランもぬらりひょんに少し遅れて反応した。

 

「もちろんよ。お姉さん見たことあるわ」

 

さっきから必要以上に〝お姉さん〟を連呼する永琳に、ウドンゲとてゐはツッコミたかったが、命が惜しいので心の中だけにしといた。

 

「どこで!?」

 

フランは『海』があるという事実を知って、ワクワクが抑えられなくなったのだろう。涙が溜まっていた目には涙が消え、光が灯っていた。

 

「うーん…それが問題なのよねえ。お姉さんもずいぶん昔に見たから忘れちゃったのよ」

 

「わ、忘れちゃったの?」

 

「でも大丈夫、安心して。ぬらりひょんがその海をきっと見つけてくれるわ」

 

急に言いだしたのでぬらりひょんは思わず「は?」と声に出してしまった。

 

「おいおい…ちょっと待て」

 

「見つけてくれるわよね?」

 

笑顔でぬらりひょんを見つめる永琳。凄まじいほどの威圧感を与えられ、首を縦に振らずにはいられなかった。

 

「ですって。よかったわねフランちゃん」

 

「うん!ありがとうぬらりひょん!」

 

「…礼には及ばんよ」

 

フランの弾けるような笑顔を見れたのでよかった…とぬらりひょんは前向きに考えた。

 

 

「でも吸血鬼って水に弱いんじゃなかったんですか?」

 

いい雰囲気だったのを、ウドンゲが空気を読まない一言で水差す。永琳が小さくチッと舌打ちしたのをぬらりひょんとてゐは聞き逃さなかった。

 

「そうだけど…」

 

またフランは暗い顔をする。ぬらりひょん、てゐ、永琳の3人はウドンゲの顔を睨んだ。

 

「ご、ごめんなさい…!」

 

「まったく…でもウドンゲの言うことも一理あるわ。 ………よし、これもお姉さんに任せなさい、フランちゃん」

 

確かに海を見つけたとしても、フランは吸血鬼であるがゆえ泳ぐことはできない。その事に対し永琳は何か考えがあるようだった。

 

「どうする気だ?」

 

「薬を作るわ。吸血鬼のフランちゃんでも、水に抵抗なくなる薬をね」

 

「んなもん作れんのかい?」

 

永琳は軽く言っているが、内容はとんでもないものだった。要するに、吸血鬼の弱点の1つを克服できるようになる薬を作ると言ったのだ。

 

「私は薬師よ?薬が作れる事がおかしいの?」

 

「いや…なんでもねえ」

 

薬が作れる事自体ではなく、そんな凄すぎる薬を作れるのかどうかをぬらりひょんは訊いたのだが…永琳にとってはそんな薬すらも簡単なのかもしれない。

 

「もしかしたらフランちゃんに合わない薬もあるかもしれないから、ちょっと診てみる必要があるわね。ウドンゲ、てゐ、フランちゃんを診察室に連れて行って頂戴」

 

「なに?注射するの?」

 

少しだけフランは不安になっていた。

 

「い〜え、注射なんて痛いことはしないから安心してね。じゃあ2人とも頼むわね」

 

「わかりました」

 

「了解ウサー」

 

永琳はフランを安心させ、2人に頼んだ。

 

 

「ところでフラン、海って?」

 

「あっ私も知りたい!フランちゃん行きながら教えて?」

 

「いいよ!海っていうのはねーーーーーー」

 

 

3人は仲良く海について話しながら診察室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ。お主には脱帽じゃのう。そんな凄え薬を作れるなんてな」

 

「水に抵抗をなくす薬のこと?それくらい簡単に作れるわ。もちろん永続的なものじゃないけどね」

 

短時間であってもそんな薬を作れるのは永琳の他にいないだろう。

 

「でも〝もう1つ〟は時間がかかりそうね」

 

〝もう1つ〟確かに永琳はこう言った。

 

「もう1つ…何のことじゃ?」

 

「決まってるでしょう。『海』のことよ」

 

 

ぬらりひょんは永琳がなにを言っているのかわからなかった。

 

 

「『海』…?どういうことじゃ?」

 

「やっぱりあの時わかってなかったのね」

 

ふぅ…と一呼吸置いてから永琳は口を開いた。

 

 

「さっきも言った通り幻想郷に海は無いわ。これは揺るがぬ事実よ」

 

「…お主、さっきは嘘をついたのか」

 

確かに永琳は先ほどフランに、『海』はあると嘘をついた。これも揺るがぬ事実である。

 

「ええ。私も幻想郷を全部回ったわけじゃないけど…まぁ99、9%は無いでしょう。今は(・・)ね」

 

この一言でぬらりひょん察した。

 

 

「お主…まさか〝海を作る〟つもりか?」

 

永琳の言っている事から考えられるのは、今はまだ幻想郷に無い『海』を作るということだった。

 

「できるかどうかわからないけど…やってみるわ。でもできたとしても時間がかかると思うわ」

 

永琳としてもこんな事は初の試みだろう。薬なんてそんな次元ではない。海を作るなどということは想像しただけでも頭が痛くなりそうだ。

 

「…ワシらからしたらそりゃあ有り難いぜ?でもそれがお主にとって何の得がある?」

 

確かに不思議である。永琳にとってメリットといえるメリットが少なすぎるからである。

 

「善意…といったら信じる?」

 

「…お主がそう言うならワシは信じる、が。それが〝真実〟だとは心から思えないのう」

 

ふーん…と軽い返事をする永琳。口元だけ若干笑っているのが気になった。

 

「じゃあ真実を言うわ。〝約束〟したからよ」

 

「あん?誰とじゃ?」

 

ぬらりひょんにはサッパリ分からなかった。

 

「さぁ…誰でしょうね。………さっそくさっき言ってた薬作りに取り掛かるわ。暇なら散歩でもしてきたらどう?」

 

 

意味深な一言を残して、フランが待つ診察室へ永琳も向かった。

 

 

 

 

「…ハッ、食えない女じゃ」

 

ぬらりひょんは永琳に言われた通りに散歩でもしようと外へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー数日前ー

 

 

 

 

月明かりが2人を照らし、真夜中であったが互いの姿をちゃんと認識できた。

 

 

「ねえ永琳」

 

2人で月を見ていると、唐突に輝夜が口を開いた。

 

「なに?輝夜」

 

「彼…また来るわ。永遠亭(ここ)に」

 

誰とは説明しなくても、何故か永琳にはわかった。

 

「…何故わかるの?」

 

「私が訊きたいわ。何故…かしらね」

 

 

「……」

 

再び2人の間には静寂が広がる。

 

 

 

「なんとなくだけど…彼は貴女を頼ってここに来ると思う。だから…」

 

「彼に協力してあげてね」

 

 

 

普段輝夜がこんなことを言うのは滅多にない。

なにを思ってこんな事を言ったのか少し気になったが…

 

 

「ええ、わかったわ」

 

 

 

なんとなく輝夜の成長を感じた永琳は、優しく笑いながら答えた。

 




はい、第30話でした。

余談なんですが、最近ポケモンのプラチナを始めました。中学生の頃にブラックをやって以来のポケモン…やっぱりポケモンは幾つになっても楽しいですね。

ではお疲れ様でした。

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