前半主人公空気です。
「ほら、そこもちゃんと綺麗にして!はいはい口より手を動かしてー!」
ぬらりひょん達が紅魔館に来てから今日で2日目。今日は紅魔館の大掃除をしている。だから咲夜は皆に指示をして回っているのだ。
「なんであたい達がいる時にかぎっておおそうじするかな…かえってからでもイイじゃん!」
雑巾で窓を拭きながらチルノは愚痴をこぼす。その横で大妖精もハハハと笑いながら窓を拭いている。
「しょうがないよ、こんなに広いんだから3人でも多いうちにやった方がいいってことじゃないかな?」
「そんなこと言ったって〜!」
頭の弱いチルノでもさすがに理解はできているが、納得はできないようだ。そのチルノ達の元へ咲夜がやって来た。
「思ったより頑張ってるみたいね。感心感心」パサッ
咲夜が何かをチルノに被せる。
「…何よコレ」
「帽子よ。…新聞紙製のね。よくお似合いだわ」
プッと口を押さえながら咲夜は笑う。
「んが〜!あたいを舐めてるわね!アンタ!」
案の定チルノは飛び上がりながら怒った。
「チルノちゃん…怒っちゃダメだよ…プフッ!」
堪えながらも怒るチルノを抑制しようとしていたが、大妖精も結局吹いてしまった。
「大ちゃん!笑うな!全く笑えないよこんなの!」
「それより貴女達には他の場所を掃除してもらいたいんだけどいいかしら?」
「他の場所!?」
まだまだチルノは興奮している。
「そろそろ落ち着いて。…そうね、庭の掃除を頼もうかしら」
顎に手を当て、少し考えた後に咲夜は答えた。
「庭…ですか?でも結構綺麗に見えますよ?」
「一見そう思えるわよね。でも案外落ち葉とか色々落ちてる事があるのよ。だからお願いするわね」
最後にチルノが被っている帽子をポンッと叩いてから咲夜は行ってしまった。
「メイドめ〜!『こようきかん』ってやつが終わったらこうしてあげるわ!」
チルノは被ってた帽子を脱ぎ、ビリビリに破り捨てながらそう言った。
「…チルノちゃん、それまた掃除しなくちゃいけないんだけど。」
「あっ…」
「もうっ!」
2人は床に落ちたバラバラの新聞紙を拾いきったあと庭へ向かった。
「はぁ〜〜〜…いい天気ですね〜〜〜…」
庭で掃除をサボっていたのは美鈴だった。いや、横には箒とちりとりが置いてあったので掃除をしたあとかもしれない。
美鈴は寝転がりながらうとうとしていた。しかしいきなり向こう側から大きな声がしたのだった。
「コラーーーッ!サボるなーーーッ!」
「ひゃっ…ひゃいッ!」
声がした瞬間に美鈴は飛び起きた。
「ほんとに起きたねー!!」
「でしょー?あたいのいったとおり!」
「あ、あれぇ?」
美鈴は咲夜がやってきたと思っていたが、来たのはチルノと大妖精だった。2人で笑いながらこっちへ歩いてくる。
「なんだ…脅かさないでくださいよ。咲夜さんかと思ったじゃないですか〜!」
ヘナヘナと美鈴は膝から崩れた。
「サボってるのがわるいのよ!ほら、あたい達も手伝いに来たんだしさっさとやるわよ!」
なぜだかチルノは急にやる気になっていた。本当に気分屋な妖精である。
「でも庭の掃除はもう終わりましたよ?私が全部やっちゃいました」
「えぇ!?」
ブンブンと首を振り回しながら周りを見る。確かに落ち葉は全く落ちていない。
「1人でやったんですか?」
「はい。まぁこれが私の仕事ですしね」
GOODと親指を見せながら美鈴はドヤ顔していた。もう1つの仕事にもこれくらい誠意を見せてほしいものだ。
「え〜庭のそうじならメイドの目がとどかないとおもったんだけどなー」
チルノが妙にやる気になってたのは、庭なら咲夜の目をに気にせずに多少サボりながら掃除ができると思っていたからである。しかし庭の掃除が終わっている以上、また館内を手伝わなくてはならない。
「ふむ、なるほど。では花の水やりでもしますか?」
チルノの気持ちを汲んだ美鈴はこう提案してきた。
「水やりですか?」
「ええ、掃除ではないですけど水やりも立派な仕事ですよ」
やるわ!ともちろんチルノはこの提案をのんだ。水やりなんて簡単じゃん!と思っているのだろう。
「ではやりましょうか!まずは如雨露を取りに行きましょう!」
水やりをする事に決めた3人は、用具室に向かった。
キュッキュッキュッ
「はぁ…これで終わりか…」
ぬらりひょんは掃除ではなく、レミリアに電球の交換を任されていた。
「痛てて…首が変になっちまいそうだぜ」
先ほどレミリアからもらった替えるべき電球がある部屋の場所を書かれた紙をしまい込んだ。脚立から降り、ん〜っ!と一回背伸びをした。
「よもやこのワシがこんな雑用をさせられるとはのう…鴉天狗に見られたらなんて言われることか…」
フフッと笑いながらぬらりひょんは想像してみた。
〔総大将〜!!? 何をやっておられるのですか!貴方様はこの奴良組の総大将であり、魑魅魍魎の主なのですよ〜!!?〕
うんうん、こう言うに違いない。とぬらりひょんは笑いが堪えられなかった。
ぬらりひょんは仕事が終わったことを報告するためにレミリアのもとへ行こうとした。
「…なんだ?」
ぬらりひょんは下の方から何か違和感を覚えた。
「……」
目を瞑り集中した。そして疑いだったものが確信に変わる。
「何かいるな…レミリア達は知らねえのか?それとも…あっ」
ぬらりひょんは先ほどレミリアに言われたことを思い出した。
ー少し前ー
〔これを替えてくればいいんじゃろ?じゃあ行ってくるぜ、〕
早速行こうとするぬらりひょん。レミリアは一旦ぬらりひょんを止める。
〔ちょっと待って、この地図を持っていくといいわ。迷わないようにね〕
〔地図?ん〜、これ見てもよくわかんねえな…〕
ぬらりひょんは頭を悩ます。どっちかというとぬらりひょんは行き当たりばったりタイプなので、地図を見たりするのはあまり得意ではないのだ。
〔わからなかったらそこらへんの妖精メイドに聞けばいいわ。…それと地下にはいかないように〕
〔ん?地下なんてあったのか。なんでダメなんだ?〕
黙りながら真剣な目でレミリアはぬらりひょんを見る。ぬらりひょんもそれにつられて真剣な目で見ていた。
〔…貴方には関係のない話よ。さぁ、行って頂戴〕
〔…へいへい、行ってくるぜ〕
「確か…んな事言ってたのう」
あの時はレミリアのただならぬ雰囲気を感じ取り、あえて追求しなかったのだが気になることは気になっていたのだ。
「〝関係ない〟…か。本当にワシに関わって欲しくないのか、それとも…」
考え込んでいたぬらりひょんだったがすぐに顔を上げた。
「ヘッ、とりあえず行ってみるか。話はそれからだぜ!」
決意したぬらりひょんは地下に向かった。
「…ここか」
ぬらりひょんは地下にやってきた。目の前には地下にあるたった1つの部屋があった。
いきなり正面から入ると警戒されると思い、ぬらりひょんは考えた。
「よし…」
そう呟いた瞬間、ぬらりひょんは廊下の薄暗い闇に消えた。
「まだあるのーーー!?」
チルノと大妖精、美鈴の3人は紅魔館の庭の水やりをしていた。
「まだまだですよ?あと半分はありますね」
水やりなんて楽勝だとチルノは思っていた。確かに楽なのは楽なのだが…
「こんなに多いなんてきいてなかったわ!」
そう、紅魔館の庭はとても広いので、水やりをする花の数が尋常ではなかったのだ。
「お嬢様はお花が好きなんですよ。だから大量に植えているんです!」
美鈴はどこか嬉しそうに言った。
「確かにお花は可愛いですもんね!幽香さんが好きになるのがわかった気がします!」
ボトッ
大妖精が答えた瞬間に美鈴は持っていた如雨露を地面に落とした。
「ゆ、幽香って…風見幽香ですかッ!?」
大声で美鈴が言ったので2人とも指で耳を塞いだ。
「うるさいわね!あたりまえでしょ、ほかにだれがいるのよ!」
た、たしかに…と口に出す美鈴。
「幽香さんがどうしたんですか?」
「いや彼女がどうこうっていうより…貴女達彼女に会って何もされなかったの?」
美鈴が急にオドオドし出した。
「確かに最初は手荒い歓迎でしたけど…とても優しかったですよ!」
「そうそう!かくれんぼも一緒にやったしね!」
「か、か、かくれんぼ?」
にわかに信じられない事だった。他の妖怪や人から恐れられるあの風見幽香が優しいと…?かくれんぼをしたと…?
美鈴は1つの可能性を考えこう言った。
「まさかその時には彼も一緒に?」
「彼?…ああぬらりひょんさんですね!勿論いましたよ!」
美鈴の考えは当たっていた。
「(やはり彼が原因ですか…確かに面白い方ですけどあの風見幽香までも?いやその前にお嬢様も彼に対して何かを感じていた…)」
「めーりんどうしたの?」
下を向いて何かを考えていた美鈴の顔を覗き込みながらチルノは言った。
「えっ、いや、なんでもないです!さっさと終わらさせましょう!」
「(ぬらりひょんさん…貴方は一体…)」
ーフランの部屋ー
「……」
フランは1人で人形遊びをしていた。いや、遊びというより人形を〝壊している〟だけなのだが。
「昨日来た人…今なにしてるのかな…咲夜に殺されちゃったかな…気になるなぁ…」
昨日来た人、というのはチルノと大妖精の事である。
「それにしても…なんだか楽しそうね」
紅魔館がワイワイとみんなで掃除していた事を地下にいながらフランは感じ取ることができていた。もっとも楽しくしているものはごく少数であると思うが。
「お姉様も…咲夜も…パチュリーも…こあも…美鈴も…みんななにしてるのかな…」
か細く小さい声で呟いている。
「外に…出たい」
「出してやろうか?」
後ろの方から聞いたことのない声が聞こえた。フランはその声がした方向に振り向く。
「…だれ?」
ふぅーとキセルをふかしながらその声の主は座っていた。
「ワシはぬらりひょん。そう…〝自由な妖〟じゃ」
はい、第18話でした。
ぬらりひょんとフラン…正に正反対といった2人ですね。はたして彼女は外に出られるのでしょうか。
ではここで終わります。お疲れ様でした。