ぬらりひょんが幻想入り   作:破壊王子

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この小説はぬらりひょんの孫と東方Projectの二次創作です。

1週間くらい丸々眠っておきたいです。


【第17話】忠誠心

 

 

 

 

 

ー人里ー

 

「それと…じゃあそれももらえるかしら?」

 

咲夜は八百屋で野菜を買っている。レミリアは人参が嫌いなので小さく刻んで食べさせようと考えているのだ。

 

「いつも買ってくれてありがとうね〜」

 

「ここの野菜は新鮮で美味しいわ。また買いに来るわね」

 

「まいどあり〜」

 

店員に手を振りながら店を後にする。

 

「おーい、まだ買うのかよー」

 

ぬらりひょんは荷物持ちをしている。咲夜が何件も何件も寄るのでいい加減飽きてきたのだ。

 

「はぁ…貴方荷物持ちでしょ?文句言わないの」

 

 

「あ、咲夜さんだ。こんにちは〜」

 

「咲夜さん久しぶりですね〜」

 

里の人間は咲夜を見かけると一声かける。美人なメイドということで男性からも女性からも人気があるのだ。

声をかけられた1人1人に手を振って咲夜は応えてあげている。

 

 

「……ふぅ〜ん」

 

さっきまでずっと真面目な顔をしていた咲夜が、里ではずっとニコニコしていたのでぬらりひょんはなんとなくからかってやることにした。

 

「…何よ」

 

「随分と人気者なんだな」

 

ニヤニヤしながら咲夜に言った。

 

「フン、何であれ友好的であることがいいに決まってるでしょ」

 

確かに人里で友好的であるに越したことはない。

 

「(主以外はツンツンする性格かと思ったけどそーじゃねえみたいじゃの。敵以外は普通で敵には容赦ないってことか。あれ?じゃあワシは敵…?」)

 

ぬらりひょんは咲夜の性格を分析していた。

 

「ほら、まだ買うものあるからさっさと行くわよ」

 

「へいへーい」

 

ぬらりひょんは軽い返事をしながら咲夜について行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい…あいつだ…」

 

ヒソヒソと何かを話しながら何者かが2人の後をつけていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢さん、ちょっといいかい?」

 

商人のような人が急に話しかけてきた。

 

「なにかしら?」

 

「お嬢さん綺麗だねぇ。こんなのはどうだい?」

 

商人は咲夜にネックレスを勧めてきた。高価そうには見えないがとても綺麗なものだ。

 

「綺麗ね…でも買うものは決めているから結構よ」

 

一瞬心を奪われたが、自分には必要ないものだとすぐに感じ、柔らかく断った。

 

「そうかい?お嬢さんには絶対似合うと思ったんだけどなぁ」

 

「主も待ってると思うからそろそろ帰るわ」

 

「苦労してるんだな…よし!じゃあタダでこれをやるよ」

 

商人はこの綺麗なネックレスをタダでくれると言ってきた。内心欲しいと思っていた咲夜には断る理由が無かった。

 

「本当…?じゃ、じゃあ有り難く頂こうかしら…」

 

咲夜は商人からネックレスを受け取った。

 

「ちょっとつけてごらんよ」

 

「でも…いえ、わかったわ」

 

ここでつけるのはどうかと思ったが、タダで貰った手前これくらいの言うことは聞こうと思った咲夜はらその場でネックレスをつけてみた。

 

「おお!お嬢さん綺麗だよ!よく似合ってる!」

 

「そ、そうかしら…」

 

そして少し照れながら後ろを振り向く。

 

「どう?」

 

 

ぬらりひょんに対して言ったつもりだったのだがそこには誰も居なかった。

 

 

「……」

 

「あいつ一体どこにッ!…ネックレスありがとう。私は荷物持ちを探すからこれで」

 

「あ、ああ…」

 

咲夜は少し怒りを覚えながら、ぬらりひょんを探しに向かった。

 

 

 

 

 

「ふんっ、さすがに吸血鬼の元で働いてるだけはあるみたいだな…だがそれも今日までだぜ…ヒッヒッヒ!」

 

商人は悪い笑い方をしながら何処かへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワイワイガヤガヤ

 

「(ふぅー、荷物持ちも楽じゃねえな。…ん?)」

 

次の店に寄っている途中にぬらりひょんは広場で何かが行われているのを見つけた。

 

「(…ちょっとくらいいいか」)

 

チラッと前にいる咲夜をみながら少しずつ離れていった。

 

 

「ハハッ、なんとかバレなかったな。ところで何があってんだ?」

 

ぬらりひょんはその広場に近づいていった。そこでは手品をしたり、短い劇をして人々を楽しめていた。いわゆる見世物小屋である。

 

「見世物小屋か…」

 

ぬらりひょんはなんともいえない気持ちになった。なぜかと言うと自分の妻であった珱姫が見世物小屋が好きだったの思い出したからである。

 

「ちょっと見ていくか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの馬鹿…一体どこに行ったのかしら…」

 

商人と別れた後、咲夜はぬらりひょんを探していた。

 

「見つからないわね。先に帰ったのかしら?」

 

ぬらりひょんの性格からして黙って帰るとはとても思えなかったが、何処を探しても見つからないため、咲夜は先に帰ろうとした。しかしその瞬間にすごい人だかりがあるのを見つけた。

 

「…まさかね」

 

ないと思いつつその人だかりに近づいていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イイゾー モットヤレー!

 

「何かの見世物かしら?すごい人気ね」

 

何かが行われていることはわかるのだが、すごい人の数でなかなか見ることができない。

 

「ん?咲夜さんじゃねえか、久しぶりだなぁ」

 

「どうも。ところでこれは何があってるの?」

 

人里の知人が話しかけてきたのでこれが何なのか聞いてみた。

 

「みての通り見世物さ!あのあんちゃん面白いんだぜ?」

 

「あんちゃん…」

 

何となくいやな予感がした咲夜は、人ゴミをかいくぐって前の方に出た。そして咲夜は見た。

 

「これは…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが奴良組直伝の傘回しじゃー!!!」

 

 

壇の上で見世物をしていたのはぬらりひょんだった。誰かから借りた傘でリンゴを3つほど転がしていた。

 

おぉー! すげーぞ兄ちゃん!と歓声が湧き上がる。ぬらりひょんは見世物を見ていたのだが、どれもつまらないと思い、自分がやり出したのだ。

ぬらりひょんの見世物はどれも華があり、人々の心を奪っていった。

 

「ハハハハハッ!面白えか?もっと笑え!もっと盛り上げろ!ハハハハ…ハ…?」

 

笑いながら傘を回していたぬらりひょんだが、急に何かに気づき手を止めた。手を止めた瞬間にボトッボトボトッ…っと傘からリンゴが落ちた。

 

「……」

 

「さ、咲夜?」

 

真顔でぬらりひょんを見つめていた咲夜は何も言わずに振り向き、帰っていった。

 

「おい待てよ咲夜!」

 

「次の芸まだかー?」

 

「はやくしろよー!」

 

「あん?」

 

咲夜を追おうと壇上から降りるが、客が邪魔をして中々行かせてくれない。

 

「咲夜絶対怒ってたな…」

 

「あんた咲夜さんのコレかい?」

 

客の1人が小指を見せてくる。

 

「まじかよ!咲夜さんがこんなやつと…!」

 

「お前一体咲夜さんの何なんだ!」

 

広場が突然慌ただしくなってきた。

 

「まじーことになっちまったな…こうするか!」

 

ぬらりひょんは再び壇に上がり大声でこういった。

 

「おめえら!最後の芸をみせてやるぜ!ちゃーんとみとくんじゃな!」

 

「なんだ?何する気だ?」

 

ぬらりひょんの一言により慌ただしかったのが一気に静まり返る。

 

「へへッ、行くぜ!」

 

 

 

 

 

 

「〝明鏡止水〟」

 

 

「…え!?消えた!消えたぞ!」

 

「何処へいったんだ?どんなタネが…」

 

タネなどある筈がない。広場にいた全員がぬらりひょんに“畏”を感じてしまっただけなのだから。

 

その後、再びぬらりひょんが現れる事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

咲夜は無言で帰路についていた。いつもより鋭い目つきであるのは恐らく誰が見ても一目瞭然であろう。

 

「よう、咲夜さん」

 

「…貴方は」

 

咲夜の前に先ほどの商人が現れた。ニヤニヤしながらずっとこちらを見つめている。

 

「何の用かしら?」

 

「冷てえじゃねえか。せっかくネックレスをプレゼントしてやったってのによお」

 

ザッザッザ

 

ゾロゾロと男たちが咲夜に近づいてきているのは目で見なくても簡単にわかった。男たちは咲夜を囲むように陣取った。

 

 

「何のつもりか知らないけど…死にたくないならさっさと消えた方がいいわよ。いま私は素敵な気分ではないの」

 

男たちを睨みながらナイフを取り出す。向かってくればすぐにナイフを投げられる態勢だ。

 

「偉そうにしやがって…知ってるぜ、お前吸血鬼に仕えてんだろ?俺たちはなぁ…その吸血鬼をぶっ殺しにきたんだよ。だからそのためにお前を利用しようってんだ」

 

男たちは咲夜がレミリア、つまり吸血鬼に仕えていることを知っていた。そして相手の目的がわかった咲夜はフフッと軽く笑みを浮かべた。

 

「…遺言はもういいかしら?じゃあ死んでもらうわ!」

 

咲夜は男たちにナイフを投げた!…つもりだった。

 

「…!? 身体が…動かない…?」

 

ガクッと咲夜は膝をついて倒れ込んだ。

 

「ハーハッハ!ようやく痺れ薬が効いてきたようだなァ!」

 

「痺れ…薬…?」

 

「お前には心当たりがあるだろぉ?」

 

「…っ! くっ!」

 

聞いた後、咲夜は瞬時に震える手でネックレスを外した。

 

「もう遅えよ!この痺れ薬はなぁ、効き始めるまでに時間がかかる上に効いてる時間も短え。でもこれをつけた部分が肌に触れるだけで効果を発するイカしてるモンだ!」

 

男たちは痺れ薬をネックレスに大量につけ、そのネックレスを咲夜につけさせることで効果を出そうとしていたのだ。そして咲夜は見事に身体が動かなくなった。

 

「今だ、アレをかけろ!」

 

「ヘイ。」

 

シュー!

 

「ゲホッ…ゲホッ…なに…を…?」

 

「睡眠ガスだ。しばらく眠ってな咲夜さんよ。」

 

「こんな奴らに……!……お…嬢様…」

 

バタッ

 

咲夜は倒れ込んでしまった。

 

 

 

 

「へへへッ!やりましたね兄貴!」

 

「これでこいつを囮にして吸血鬼をぶっ殺せるな!」

 

 

ハハハハハと男たちの汚い笑い声が聞こえる。しかしその笑い声から1人だけ唸り声になった。

 

「ぐはぁっ!」

 

ドタッ

 

 

「なんだ?どうした!」

 

 

 

 

 

「おいてめえら…ワシの連れに何をする」

 

「!? てめえは…!」

 

1人の腹に蹴りを浴びせた後にそう言った。現れたのはもちろんぬらりひょんである。

 

「さっきこいつといた奴ですよ!」

 

咲夜を指差しながら下っ端が言う。

 

「なんだ、てめえも咲夜みてえに」

 

 

「黙れ外道ッ!てめえ如きが咲夜の名を口に出すんじゃねえ…」

 

とてもさっきまで見世物小屋で芸をしていた者とは思えない。ぬらりひょんは男たちに対し怒っていた。

 

 

「な、なんだこいつ…」

 

「やばい…だろ…」

 

リーダー格が怯んだのを見て他の男もぬらりひょんを畏れる。

 

 

「…チャンスをやろう。3つ数える間にここから消えれば手は出さん。消えなければ…ワシがてめえらを消す」

 

 

ゾクッ…ゾクッ…

 

ぬらりひょんの低く小さい声がかえって畏ろしい。

 

「1つ」

 

「兄貴…!」

 

「2つ」

 

「あ…あああ…」

 

「…3つ」

 

「うわああああああああッ!!!!!」

 

 

 

 

「フンッ…」

 

ぬらりひょんが3つ数えたその刹那、男たちは悲鳴を上げて立ち去っていった。場には倒れて眠っている咲夜とぬらりひょんだけが残された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ん」

 

「目が覚めたようじゃの」

 

「ここは…」

 

咲夜は目をこすりながら周りを見た。

 

「っ! あの男たちはっ!?」

 

「ワシが追っ払った。…危機一髪だったのう」

 

「追っ払った?…というかなんで私は貴方におんぶされてるのかしら」

 

冷静になった咲夜は自分がおんぶされていることにようやく気付いた。ぬらりひょんは咲夜をおんぶしながら紅魔館へ帰っている途中であった。

 

「あのままにしとくわけにもいかんじゃろ?…それより悪かったのう。買い物の途中に見世物なんかして」

 

一応罪悪感を感じていたぬらりひょんは咲夜に謝った。顔は見えないが恐らく反省しているのだろうと咲夜は感じた。

 

「それはいいわ。…それより人里へ向かってくれないかしら」

 

「ん?なんでじゃ?」

 

「あいつらを殺しに行くのよ。貴方にやれとは言わない、痺れさえ切れたら私があいつらの息の根を止めるわ」

 

「……」

 

黙り込んだぬらりひょん。何も言わずにどんどん歩いて行く。

 

「聞こえなかったのかしら?人里へ向かって頂戴」

 

「あんな奴らのためにお主が手を汚すのか?」

 

「そうよ。お嬢様を侮辱した罪は決して許されるものではないもの」

 

「はあ〜…」

 

いい具合に座れるような倒木を見つけたぬらりひょんはそこに咲夜を座らせた。

そしてキセルを取り出し、一服しながらこう答えた。

 

「悪りぃが…そいつはできねえな」

 

「なんですって?」

 

「ワシがレミリアなら…そんなことされても何も嬉しくないのう」

 

「貴方とお嬢様は違うわ」

 

「そりゃ違うじゃろうな。レミリアはあんなゴミ共を相手にしないだろうからな」

 

「…え?」

 

咲夜の顔つきが先ほどとはうって変わる。

 

「あんな奴らのために時間を使うなら早く帰ってこい、レミリアならそう言うと思うぜ?構うだけ時間の無駄ってこった」

 

「……」

 

「なっ?帰ろうぜ咲夜」

 

 

 

「はぁ〜……もうこんな時間ね。はやく帰って夕食の準備をしなきゃ」

 

ぬらりひょんの説得により咲夜は帰ることに納得した。上手く言いくるめられた気がしたが何故だか悪い気はしなかった。確かにレミリアならそう言うと思ったからである。

 

「じゃあ帰るか!ワシも腹減ったしな!」

 

 

「…ん」

 

「え?」

 

咲夜は無言で両手を広げる。

 

「…身体が動かないから歩けないんだけど?」

 

それを聞いたぬらりひょんはハハッと笑顔になった。

 

「そうじゃったのう!…ほれっ!よし行くか!」

 

 

 

再び咲夜をおぶったぬらりひょんは紅魔館に向かって歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、第17話でした。

見世物小屋って実際は結構エグいことやってたんですよね…調べて少し後悔しました。

ではここで終わります。お疲れ様でした。

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