喉が…喉が痛い…
寺子屋に行くべくチルノ、大妖精、ぬらりひょんの3人は歩いていた。
「あっ…」
突然何かを思い出したように大妖精は声を出した。
「大ちゃんどーしたの?」
「そういえば今日テストがあるって慧音先生が言ってた気がする…」
「えぇ〜!!!」
チルノは大声をあげて驚いた。
「テストぉ?そういえばリクオもテストがあるから勉強しなきゃなんて言ってたのう」
ぬらりひょんはもちろん学校には通ったことは無いのだが、孫のリクオが中学生なのでテストという存在自体は知っていた。
「私全然勉強してないよ…他のみんなはやってるのかなぁ…」
「だいじょーぶだって!なんとかなるよ!」
1番なんとかならなそうなチルノが言っても言葉に重みがなさすぎる。
「ルーミアちゃんはともかく、ミスティアちゃんとリグルちゃんなら可能性はある…着いたら一応教えてもらおうかな…」
こう言っているが寺子屋にいるチルノ、大妖精、ミスティア、リグル、ルーミアの中の5人では大妖精が1番頭が良く、他に対し礼儀正しい。
「あたいの言ってることは無視かー!」ポカポカ
チルノは両手を大きく振り、大妖精にポカポカ当てる。
「痛いよチルノちゃん〜!ごめんってば〜!」
「ふぅ〜ん、お前らも案外苦労してるんじゃな〜」
のほほんと暮らしてそうな2人だが、思ったより苦労しているんだなとぬらりひょんは感じた。
「そうよ!あんたなんかより100倍はくろうしてるわ!」
奴良組の総大将で、魑魅魍魎の主となった男に言う台詞ではない。ぬらりひょんの百鬼がそこにいたら怒る者もいるかもしれない。しかしぬらりひょん自身は笑って聞いている。
「そうかもしれねぇな!ほらっ早く行こうぜ!」
立ち止まって話していたチルノと大妖精を急かしながらそう言った。
「う〜ん…これはさすがにキツイか…」
頭を悩ませながら考えているのは、寺子屋の先生をしている上白沢慧音である。筆を持って何かを書いているようだ。
ドタドタドタ
バタン!
「やぁ、慧音!遊びにきたよ!」
やってきたのは藤原妹紅。ぬらりひょんが竹林で倒れていた時に、永遠亭まで運んでくれた者である。慧音とは親しい仲で、よく遊びに来るのだ。
「妹紅か…まぁ座ってくれ。悪いがお茶を出す時間はないぞ」
「一体なにしてるんだ?難しい顔して」
目線も合わせてくれない慧音に向かって妹紅はそう言った。
「今日はテストなんだ。でもあの子達にちょうどいい具合の問題がなかなか作れなくてずっと迷っているんだ。簡単すぎるのも意味がないし…なかなか難儀しているよ」
「それくらいもっと気楽にしなよ。頑張りすぎるのは慧音の悪い癖だと思うな」
このようなアドバイスをもう何回したか覚えていない。しかし慧音はちっとも変わらないのだ。
「生徒のために頑張るのは先生としての義務だ。これくらい難なくこなさなくてはならん」
やれやれと妹紅は首を横にふる。
「……できた!!」
しばらくすると慧音が大声をあげた。半分寝かけていた妹紅もはっ、と起き上がった。
「ふわぁ…やっとできたのか。どれ、ちょっと見せてごらんよ」
「ん?いいぞ」
妹紅は慧音からテストを受け取り、その内容を見た。
「…あの子達にはちょっと難しすぎやしないか?大妖精くらいしか解けそうに無い気が…」
予想していたよりずいぶん難しい内容だった。
「これもあの子達のためだ!」
しかし慧音はこれくらいが丁度いいと判断したらしい。テスト返却後、チルノに頭突きが繰り出される未来が妹紅には既に見えていた。
「…まっ、慧音がそれでいいならいいけどさ!それよりずっと書いてて疲れたろ?お茶を淹れてくるからゆっくりしてなよ」
妹紅はずっとテスト内容を考えて、書いていた慧音が疲れただろうと思い、お茶を淹れてやる事にした。
「すまないな。本当は私がやる事なのに」
妹紅がお茶を淹れるべく部屋を出ようとした瞬間…
「…慧音。わかるか?」
妹紅は人里になにか違和感を覚えた。妖怪のかすかな力を感じたのだ。
「何かあったようだな…」
慧音は様子を見るべく立ち上がった。すると。
「慧音は座ってなって。…おそらく妖怪が人里を襲いにきたんだろう。私が行ってくるよ」
妹紅は慧音にそう言った。
「しかし…」
「じゃあ自分と私の分のお茶を淹れといてくれ。冷める前に終わらせてくるさ!!」
シュバ!
「お、おい!」
慧音の声はもう妹紅には届かなかった。妹紅は急いで声の聞こえる方へ向かった。
「何もなければいいが…」
少し前
「なぁ、寺子屋ってのはまだ着かねーのか?」
「もうすぐ着きますよ〜!人里自体にはもう…」
大妖精が言いかけている内に人間がこちらに走ってきた。ただ走っているのではなく何かから“逃げている”ように見えた。
「妖怪が襲ってきたぞーー!!」
「「「!!」」」
ガシッ!
「おい、アンタ待ちな!妖怪っていうのはどこだ!」
ぬらりひょんは男の肩を掴んで聞いた。
「もうすぐそこだよ!お前らも早く逃げなきゃ襲われちまうぞ!」
ぬらりひょんがの手を払いのけ、また男は走って行った。
「ようかいだとー!これはあたいたちのでばんだ!大将のあたいに2人共つづけー!」
「妖怪…ぬらりひょんさん、どうします…?」
大妖精が心配そうな顔をしながら見てきた。
「…決まってんだろ。さぁ、お前ら行くぜ」
「〝妖狩り〟だ…!」
ぬらりひょんたちが走って向かうとそこは妖怪たちでいっぱいになっていた。
「やっぱりか…んな事だろうたぁ思ってたぜ!」
「大妖精、チルノ!お前らはここで…」
ぬらりひょんが2人に向かって呼びかける…途中で何かに気づいた。
「ち、チルノちゃん!!?」
いつの間にかチルノは消えていた。そしてぬらりひょんたちとは別の方向にチルノは居て、妖怪たちにこう言い放った。
「ようかい共よ!このさいきょーのあたいがあいてよ!ぜんいんまとめてかかってきなさい!」
チルノをみた妖怪はどんどんチルノに近寄っていく。
「ち、チルノちゃん何してるのー!?」
「いや待て大妖精!…チルノが何かしてるぞ!」
ぬらりひょんはチルノの方をじっと見た。よく見るとチルノは何かを小さく指差していた。
「人じゃ!あそこに人がいるぞ!」
チルノが指差している方向には人間が隠れていた。
「チルノちゃん…まさか人間を助けるためにわざと囮に…?」
「大妖精!お前は人間に妖怪が近づかないように見張っててくれ!ワシは奴らを倒す!」
「は、はい!」
大妖精は返事をしながら人間の元へ向かった。
「しつこいわね!」
チルノは妖怪たちの攻撃を避けながら攻撃の隙を見計らっている。
「グァァ!」
「!!」
相手との距離を誤ったチルノに妖怪の攻撃が当たる瞬間…
「《無回転ヤクザキック》!!」 バァン!
「ガァァ…」
バタン
「ぬらりひょん!」
「へっ!流石だな大将!見直したぜ!」
「な、なんのことかしら!」
チルノは惚けているがぬらりひょんにはちゃんと分かっていた。
「大将を戦わせるわけにはいかねえな…後はワシがやらせてもらうぜ!」
「ふ、フン!しょうがないわね!ゆずってあげるわ!」
「ありがとよッ!」シュンッ
ザザッ
妖怪たちの前にぬらりひょんは1人で立っている。
「痛い目を見たくなけりゃ…ここから消えた方がいいぜ?」
「フン!1人で向かってるとは馬鹿なやつだ…やってしまえ!」
一匹の合図で全員がぬらりひょんに攻撃を仕掛けてきた。しかしぬらりひょんは避けるどころか反撃するそぶりも見せない。
「諦めたか!哀れな奴よ!」
「ヘッ…!」
シュウン…
攻撃が当たったと思った瞬間…煙のようにぬらりひょんは消えた。
「な、なんだぁ!」
『鏡花水月』ぬらりひょんの得意な技である。
「ワシに勝とうなんざ…400年はえーんだよ!!!」
「よし!これにていっけんらくちゃくね!」
人里を襲ってた妖怪はぬらりひょんによって全員倒された。倒された妖怪は覚えてろよ!と言いながら何処かへ逃げてしまった。
「さすがぬらりひょんさんだね!…チルノちゃんもかっこよかったよ!」
「だ、大ちゃんがいってるいみがわかんないな!」
照れているチルノに大妖精は満面な笑みを向けていた
「確かあそこらへんに…お、いたいた」
ぬらりひょんは先ほど隠れていた人間の女の子を助けに行った。
「……」ガクガク
「ったく…それ!」
「!?」
下を向いてまだ妖怪が去って行った事に気付いてない女の子を、ぬらりひょんはお姫様抱っこした。
「ほら!もう悪い奴らは…」
「よ、妖怪ー!!!キャーーー!!!」
「え?」
ボコォ!
「ぐはっ…」
ぬらりひょんはバタッと背中から倒れた。そんなぬらりひょんに見向きもせず女の子は逃げていった。
「ぬらりひょんさーん!!!」
大妖精とチルノはぬらりひょんに駆け寄る。
「だ、大丈夫ですか!?」
「あの人間め〜!せっかくたすけてやったのに…!」
「いてて…ワシは大丈夫じゃ。あの人間も…あれだけ元気なら大丈夫じゃろう!」
笑いながら立ち上がるぬらりひょん。なんだかそんなぬらりひょんがおかしくて2人も笑った。
すると聞き覚えがある声が聞こえた。
「アンタ達なにやってるの?」
ぬらりひょんはこの声の主を知っていた。
「ん?なんじゃ霊夢か」
買い物袋を引っさげた霊夢がそこに立っていた。
はい、第10話でした。
人里を妖怪達が襲う…ありきたりな展開ですがどっかでみたことあるよなぁ!(宣伝)
ではここで終わります。お疲れ様でした。