イビルアイの到着がおくれたら   作:N瓦

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番外編 〈スレイン法国〉
スレイン法国 こんにちは


 

 

「糞!糞!勝てる訳ないだろぉぉ!」

「うわぁぁぁ!!だずげでぇぇ!!」

「うぎゃぁぁぁぁぁ!!」

「1体で1国すら滅ぼす死の騎士(デスナイト)が最低800体、魂喰らい(ソウルイーター)が最低400体だと!?」

「おぼぁぁぁおぉぉぉ!!!!」

 

 

現在、スレイン法国とアインズ・ウール・ゴウン魔導国は戦火を交えている。

数は法国は30万人、対して魔導国はたった1500体。量だけで考えるなら法国の圧勝だろうが、質が圧倒的に違う。法国の戦力は人間だが、魔導国の戦力は死の騎士(デスナイト)などのアンデット。

1体で小国を滅ぼすとも言われる戦力が1500であり、加えて彼らは疲労を感じない。人間に勝てるわけが無い。勝てないとわかっていても、戦うしか道はない。

 

前線で戦った陽光聖典などは既に滅ぼされた。

 

それでも彼らが希望を捨てないのは、法国の切り札たる漆黒聖典がまだ残っているからである。

 

 

 

 

 

 

 

──事の発端は約半月前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我が魔導国は種族関係無く繁栄が約束された理想郷。民の生活は保障され、平和な暮らしであることも明白である。にもかかわらず、愚かなスレイン法国は我々を批判する。この国を愛する私は断じてこれを看過できない。故に愚劣さの対価として、我々は彼らに正義の鉄槌を下すことに決定した。」

 

 

それは魔導国から法国への宣戦布告を意味した。

 

 

 

 

 

 

人類最後の守り手であるスレイン法国。過激な表現をすれば排他傾向が極めて強い人類至上主義国家。

 

突如として現れた大魔法詠唱者(マジックキャスター)アインズ・ウール・ゴウン。彼が王となり、スレイン法国を取り囲むようにゴブリン、エルフなどのみならずアンデッドとも共存している愚かな人間が暮らすアインズ・ウール・ゴウン魔導国が成立した事は、彼らからすれば決して見逃せる事態ではない。

この時はまだ元王国・帝国以外の国と魔導国と単に属国という関係であった。故にそれらの国へ暗に批判をした。批判をしてしまった。

 

しかし充分過ぎるほどの暮らしを手にして、魔導国に依存し始めた彼らからすればその批判は空虚なもの。

そしてそれは短絡的な行動であった。いずれ魔導王の怒りを買い、ついには戦争へ発展した。

 

スレイン法国も覚悟していなかった訳では無い。

いつかはぶつかるだろうと思っていた。彼らの志すところからすると、恭順は有り得なかった。

もちろん六色聖典、特に漆黒聖典と神人、奥の手"絶死絶命"(番外席次)。彼らがいるから勝利への希望があると思い込んでいた。

 

 

しかし現実は違った。

 

開戦し、アンデッドの軍勢に漆黒聖典を除く陽光聖典と火滅聖典をぶつけた。死の騎士(デスナイト)魂喰らい(ソウルイーター)相手に『序盤は様子見』などと悠長なことは言ってられない。気付いたら軍の大半がゾンビ化されている可能性もあるのだ。優勢を許せば、指数関数的に被害は広がるだろう。

 

 

 

アインズは法国にプレイヤーの影を見た。六大神である。であるならばプレイヤー以外は誰であろうと雑魚兵は即座に刈り取るべきだとアインズは判断した。

 

アインズにとっては、いくら陽光聖典などがしゃしゃり出ても死の騎士(デスナイト)と比べると驚異でもなんでもなく、時が経つとその命は次々と刈り取られていた。

 

 

そして今、法国は漆黒聖典そして番外席次の投入を余儀なくされていた。

 

 

 

 

漆黒聖典と傾城傾国(ケイ・セケ・コゥク)を装備した魔法詠唱者、そして番外席次"絶死絶命"が最前線に送られた。一刻も早く戦況を覆さないと、無限にゾンビが増え続け、そう遠くない内に法国は負ける。

 

そうして漆黒聖典を投入するや否や、勢いは傾く。

主に神人たる"漆黒聖典"(第一次席)"絶死絶命"(番外席次)の2人が素早く死の騎士(デスナイト)達を討ち滅ぼした。とある屈強な男が戦斧で死の騎士(デスナイト)と互角以上に渡り合う。とある男はギガントバジリスクを数体引き連れ空から攻撃を行う。

 

彼らの戦線参加は法国の勝利への希望であり、士気向上にも大きく繋がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしアインズ・ウール・ゴウンに刃向かったニンゲン共の希望など長くは続かない。

 

突然、"それ"は天より現れる。

 

まるで彼らの望みを打ち砕くように。

 

"それ"は空を覆う雲を割り、法国の軍勢の後方へと重力に引かれて、一直線に落ちていく。

 

戦場にも関わらずそこにいる全員が例外無く足を止め、その様子を眺める事しかできなかった。

 

凄まじい衝突の衝撃で大地がえぐられ、衝撃波が広がり、人だったナニカが飛び散り、大地が赤く染まり、地面が波打つ。

 

被害は10万を軽く超える。

 

"それ"、とは天文学者が十数年に一度観測するものであり、都市部に落ちようものなら厄災どころの話では済まないものである。

 

 

 

──つまり隕石だ。

 

 

 

「な、な、なんだぁぁ!?!?」

「隕石が降ってだと!!!?」

 

 

突如落ちてきた隕石に呆気を取られ、前線の者達が後ろを振り向いてしまった。

たまたま戦争を行っていた所に、たまたま隕石が降ってくるものか。

きっと誰かが落としたに違いない。もちろん彼らとて、犯人は分かっていた。

 

そして気づけなかった。

再び前を向き直したらそこには天変地異すら自在に操る「死」が佇んでいた事に。いつからいたのだろうか。

 

その「死」は、ニンゲンにまるで興味が無いかのように、飛んでいるギガントバジリスクを睨み、指差す。

 

 

 

「……私を上から見下ろすか。不敬では無いのか?〈内部爆散(インプロージョン)〉」

 

 

 

と魔法の発動と同時に伝説級モンスターとして知られるギガントバジリスクの命は容易に刈り取られた。まるで赤子の首を捻るかのように。

内部から爆散したギガントバジリスクの血肉が法国の軍に降り注ぐ。生臭い匂いが一気に拡散される。

 

いや、今はそれよりも「死」が現れた事への驚愕が誰もが隠せない。

 

 

なぜここに───

 

 

 

「何故ここにアインズ・ウール・ゴウンがいる……!?!?」

「暇つぶしを手伝ってくれ。見てるだけだと暇なのだよ。」

 

 

 

 

戦場に王たるアインズ・ウール・ゴウンが直接乗り込んできたのだ。

 

 


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