イビルアイの到着がおくれたら   作:N瓦

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内容的には類似した二次創作多いけど書いてみたくなったので書きました。




番外編 〈バハルス帝国〉
バハルス帝国 皇帝陛下


 

「はぁ。」

 

 

 

 

 

 

ジルクニフは大きなため息をつく。今週…いや、今月入って何度目のため息だろうか。

以前は「死ね!糞野郎が!」とストレスから大声を出すことも少なくなかったが、今となってはその気力も無い。

 

原因はアインズ・ウール・ゴウンだ。

 

闘技場で法国と同盟を結ぼうと密会しようと動いたが、それは全てあの憎きアインズ・ウール・ゴウンの掌の上であったらしい。蠢動の証拠も恐らく奴は持っている、とジルクニフは考えている。

 

 

「はぁ…。」

 

 

さらに重いため息をつく。

自分は何一つとして間違った行動はしたつもりはない。歴代の皇帝でも自分は最優であると自負している。

だがアインズ・ウール・ゴウンの英智と智略が人間のそれを遥かに凌駕していただけであった。故に皇帝は属国化以外の道は途絶えたのだ。この数ヶ月で全てが覆った。

 

闘技場で確かに属国化の意を伝えた。

しかし恐らく自分は皇帝の地位から降ろされ、処刑されるのだろう。もしかしたらアンデッド化させられ、永久にあやつり人形として操られるのかも知れない。

どの道不幸な未来しか訪れまい。

 

魔導王の策略に絡めとられた自分は恐らく、世界一不幸であると考えていた。

 

 

と、そこへノック音が聞こえた。

 

「入れ。」

 

「失礼します。」

 

秘書官のひとりがやって来た。長い挨拶をしそうな秘書を手を振って止めさせる。

 

「私はここのところ疲れているのだ。長い話は聞きたくない。お前なら分かるだろう?端的に用件を話してくれ。」

 

「はい…陛下。

魔導王閣下が魔導国に帰国したそうです。属国化の件について魔導国に直接来るよう話がありました。」

 

 

以前、草案を魔導王宛てに送付したものの返答の内容を要約すると

「魔導王は現在ドワーフ王国に直接外交をしに行っているため、帰国後連絡する。連絡の後、魔導国に来るように。その際に草案の件も含めて属国化に関する話をする。」

ということであった。

 

「ふぅ。魔導王が帰ってきてしまったのか。俺はどうなることやら。

 

おいおい。そんな顔をするな。お前達なら上に誰が就こうと帝国の運営を完璧に補佐できると俺は信じてるぞ。」

 

ジルクニフの様子を見た秘書官は悲しそうな顔をした。この顔は属国化を願い出てをしてから何度も見た。四騎士も秘書官もみな、同じ顔をする。

ジルクニフは彼らから信頼されていると改めて痛感した。演技ではこんな顔はできないだろうから。

 

 

ナザリック地下大墳墓に訪れるのは二度目であった。前回は謝罪という形で呼び出された。今回は、属国化…。この短期間で大きく変わったものだ。

前回同様、馬車は六台に加えて周囲の警戒をする者もいる。

一台目にはジルクニフ、秘書官、ニンブル、バジウット、レイナース、フールーダの高弟が乗っている。

 

「お前達、恐らく属国化にあたって俺は皇帝を辞めされられるだろう。理由はお前らの想像通りだ。奴は、俺が法国と裏で繋がろうとしていた事を多分知っている。

 

皇帝からただ退位させられて奴の手が届く範囲から追い出されるだけならまだ良い方だ。だが生かしておくとなるとまた俺が裏で何かをする可能性が1%でも残ってしまう。

だから処刑されるかも知れないし、アンデッド化させられて奴の人形として奴隷のように永遠に働かされるかも知れない。

もしかするとデスナイトにさせられて帝国の警備に使われるかもな。ははっ。」

 

 

馬車にジルクニフの乾いた笑いが響く。

 

 

「陛下!私は陛下かどうなろうと、最後までついていきます!!」

 

「いや、ダメだ。皇帝としてそれは許さない。

………いいかお前達。皇帝として私から最期の頼み──いや、命令がある。」

 

馬車の中が静まる。

ジルクニフは全員の顔を見渡し、優しく微笑んで言葉を続ける。

 

 

 

 

「お前達は俺がどうなろうと、帝国を大きく、偉大なものにしてくれ。俺の遺志を継げ。

俺が言うべきなのはそれだけだ。」

 

 

「陛下!俺は陛下に拾われた身だ!陛下がいないと…俺は…」

 

「私はっ…まだ恩は返しきれていませんっ…。」

 

 

四騎士の三人から抗議の声が上がる。レイナースは意外だったが、ジルクニフには恩義は感じていたのだろう。

 

 

「お前達……。そんなお前達だから私は安心して、私がいなくなった後の帝国をお前達に預けられる。よろしく頼んだぞ。

 

さて、そろそろ着く。

魔導王陛下の前では静かにしててくれよ?お前達が殺されてしまってはなんの意味も無いからな。」

 

ジルクニフは心の底から馬車に乗る皆に笑いかけた気がした。決して作り笑いではなく、彼らの恩義を感じて心から笑えた。

 

 

 

 

 

"墳墓"とは名ばかりのナザリック地下大墳墓に到着して、馬車から各員下車した。

前回同様、ユリ・アルファを始めとした絶世の美女が揃っていた。今回はメイドが6人いた。

 

「お待ちしておりました。ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス皇帝陛下。」

 

「確か…ユリ殿と言ったかな。」

 

「はい。

アインズ様の御準備は終わっておりますので案内致します。ではこちらへどうぞ。」

 

「了解した。お前ら行くぞ。

 

(ついに来た。バハルス帝国皇帝として最期の仕事。最期だからこそ俺の人生全てを見せてやる!!)」




ハゲに効くマジックアイテムとかあるんですかね( )

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