イビルアイ可愛い。
ところでサーバルちゃんみたいに
イビルアイに「すごーい!」「うわー!」「うれしー!」「ももんさまと わたしは しんでるフレンズなんだねー!」とか言ってほしい気がしなくも無いですね。
「も、モモンさま、ほんとに私と一緒にエ・ランテルをまわっていただいても良いのですか?」
「もちろん。何度も言っているだろう?イビルアイは心配性なのか?
では、商店街を見て回ろうか。魔導国の商店街はどこも活気があって私はその雰囲気が好きなんだ。」
アインズは隣をちょこちょこと、ぎこち無く歩く仮面の少女に向かって苦笑い──もちろんヘルムの中は幻影の顔だが──をした。
ラキュースの無茶振り(?)でイビルアイの思うところを感じ取ったモモン、つまりアインズはイビルアイとエ・ランテルの大通りを2人で歩く事にした。
ふと隣を歩く少女を見る。彼女を見る度に疑問に思う。
「なぜ10~12歳程度のこの少女がここまでの戦闘力を持っているのか」という事だ。
前々から疑問に思いつつも一度も質問した事が無かったのでこの機会にアインズは質問を投げかけた。解答によってはナザリック強化計画に役立つかも知れない。100年後に現れるであろうプレーヤー対策としてナザリック強化計画は常に行う必要がある。
ついでにイビルアイの緊張が解れてくれれば、という目的もあった。
「せっかく2人なのだから君に聞きたいことがあったんだ。前から思っていたのだが良いか?」
「ん、ああもちろんだ」
「イビルアイ、なぜ君はその若さで
『
「───え゛っ」
緊張が和らいでくれればと思って質問したが、その内容が悪かったのかイビルアイは硬直し、立ち止まってしまった。
「イビルアイ、ど、どうした?
(緊張を解こう思ったら、まさか逆に不味い質問だったとは!! 地雷をこうも簡単に踏み抜いてしまうとは!……流石にこの質問は迂闊だったか!!)」
「うがががががががが───」
「落ち着け!落ち着くのだ!とりあえず広場のベンチに座ろう!!!」
イビルアイもおかしくなったが、それを見たアインズもまた精神の沈静化が起きた。
とりあえず広場が近かったため、その中の空いているベンチのひとつまでイビルアイを連れていった。ただしイビルアイは動く気配が微塵も無かったため、アインズはイビルアイをお姫様抱っこをして運んだ。
「あわわわわわ あわあわあわっっ」
♣
モモンと(ほぼ)デート(と言っても過言では無い)をしていると、突然質問が飛んできた。
知られたくない秘密「イビルアイは国落としと呼ばれている吸血鬼の張本人で、つまりはイビルアイ=アンデッドであるという事実」の核心に迫る質問である。
なぜ『
いやあるはずがない。多分偶然だろう。
先程は驚きのあまり日常生活でなかなか無いリアクションが出てきてしまった。さらに思考も身体もフリーズした。
動けずに棒立ちしていると、突然お姫様抱っこをされて、もう一段階深くフリーズしてしまった。
今ではベンチで2人きりで座っている。
「むーーーーーーーーー。(これはモモンさまには、事実を伝える時が来たって事かな。ヤルダバオト戦の時に運命の出会いを果たしてから随分年月が経ったから信頼関係も築けたはず。)」
イビルアイはモモンにだったら秘密を知られてもいいと考えている。いやむしろ知って欲しいとも思っている。
モモンという人物を、人格を、愛しているから。信頼しているから。
「(ふぅ…そろそろ落ち着いてきたぞ。)
あ、あの、モモンさま、その質問の答えはどうしても知りたいですか?」
「あ、いや。イビルアイは言いたくなさそうであったから大丈夫だ。無理には聞かないさ。
好奇心から聞いてしまった私の愚行を許して欲しい。申し訳ない。」
「いやいや!そんな!モモンさまにだったら……私はお話したいです…。
でも一つだけお願いがあるのだ…。」
「なんだ?言ってみてくれ。」
「指輪のマジックアイテムを一つだけ買って欲しい…です。ダメ…ですか?」
イビルアイは今、アンデッド探知を阻害する指輪を装備している。
しかしモモンへのカミングアウトをきっかけにして指輪を外し、モモンから新しく指輪を貰い、それを装備しようと思っていたのだ。ちなみに原則として、指輪のマジックアイテムは片手に一つである。
「確か、指輪のマジックアイテムを装備しているはずだが。それはどういう効果なのだ?それ以上の物がもし売っていれば良いのだが。」
「それは…今は言えません。すみません。
(自分は吸血鬼だと告白する時に教えるべきだ。モモンさまから新たに頂いてから言うんだ。)」
「ふむ。そう言うなら、とりあえずアイテムの効果は論点から外そう。だがその指輪よりもここで買うアイテムの方が有能なのか?」
「有能とかではなくてですね…」
「君は歴戦のアダマンタイト級冒険者だ。ここで売っている指輪なら自分で買えるだろうし、きっといま装備している指輪より弱いだろう。それでも良いのか?」
「──────。」
イビルアイは言葉が詰まる。
モモンからすれば、イビルアイの意図で効果が隠された指輪と普通に売っている指輪──もちろんそれなりにはアダマンタイト級に相応しいものであろうが──を交換するようなものだ。
わざと効果を隠したのだから有名ではない、しかし有用な効果を持つ指輪であるとは推測できる。つまり「現在装着している指輪>>購入する指輪」であると考えるのが普通だろう。
そこでモモンに「その姿勢は冒険者として如何なものか?」と婉曲的に言われたのだ。
確かにアンデット探知阻害の指輪は珍しいマジックアイテム。
そもそも需要がないため作られることはほとんど皆無。この商店街で売っているマジックアイテムはきっと、今までのイビルアイからすればアンデット探知阻害の指輪より価値は低いものだった。
しかし魔導国には多種多様な種族が暮らしている。アンデッドである事は気にする必要は無いのだ。
そしてこのモモンからこの質問が投げかけられ、カミングアウトのきっかけを得た。
だから、もうその指輪はイビルアイにとって必要な物では無い。必要"だった"ものなのだろう。
「───この指輪は今の私には必要な物では決してありません。
だから………だからモモンさまから指輪のマジックアイテムを頂けたのなら、きっとそれは私にとっても大切な御守りになるんだろうって。そう思ったんです」
イビルアイがそう言うとモモンは少し考える仕草をして、
「なるほどな。イビルアイが自分で決めたのなら、希望通り、指輪のマジックアイテムをやろう。
ただ、俗物的な売り物はアダマンタイト級の御守りとしては、いささか物足りないだろう?」
「え??」
モモンは笑いながらそう言うと、唐突に
「私がたまたま持っていたマジックアイテムのなかで指輪のものがあったからそれをあげよう。これはなかなか有能なのだが、戦士である私には合わないのだ。
効果は『魔力量15%上昇』『リキャストタイム短縮』『付与ダメージ10%上昇』『物理・魔法耐性8%上昇』いうものだ。さらに、御守りに相応しく『
イビルアイに有効に使ってもらえるならこの指輪も喜ぶだろう。」
そう言うとモモンはイビルアイに指輪を手渡す。指輪には青色の宝石が埋め込まれていてとても綺麗であった。
「あ、ありがとうございます!大切にします!
(15ぱー、がどれくらいか分からないけれどもモモンさまがくれた指輪!きっと超高性能に違いない!)
それにしても…こんなに高性能なマジックアイテム頂いてもよろしいのでしょうか?ナーベさんは装着しないのですか?」
「私にとってはもちろん不要なアイテムだ。だが、ナーベに関しても問題ない。彼女は別のマジックアイテムを装着しているためキャパが無いのだ。気にしなくても良い。
……あぁ、一つだけ言わせていただくと決して不要なアイテムを処分ついでに渡した訳では無い。イビルアイに使って欲しくて渡しただけだ。勘違いはするなよ?」
モモンはヘルムの下で笑っていた気がした。
「(こんな指輪を私にくれるなんて……。頂いた指輪をつけたらモモンさまに秘密を知ってもらおう。私の口から伝えるんだ。)」
イビルアイはかつての十三英雄と蒼の薔薇メンバーしか知らない自らの秘密を自分の口で伝えることを決心する。モモンに畏敬の眼差しを向けつつアンデッド探知対策の指輪を外した
途端、モモンに腕を掴まれた。
「えっ?」
「なるほど……そうかそうか。イビルアイの強さの理由が分かったよ。」
イビルアイとしては予想外の言動であった。アンデッド探知対策の指輪を外した途端「腕を掴まれ」て、「強さの理由を理解」された。
つまりそれは─────
「イビルアイ、君は
指輪の効果…転移後の世界ではこれくらいが高性能扱いされそうですがどうでしょう?建設的な意見があれば、とても参考になるので感想欄にお願いします。
ちなみにナーベが装着しているマジックアイテムとは魔力探知阻害の指輪ですね。フールーダの前で外して「なっ!」「あ、あり………」「第八位階の証明だと…いうのか?」ってなったアレですね。