内容は6巻に相当。
「転移ができないだと!?何らかの手段で封じられているのか!?
ならここからそう遠くない。《
一体何が起きてるんだ!」
イビルアイに先程、ガガーランから緊急事態の時のみ使うマジックアイテムによる信号が届いた。
渡した時は、「こんな物使う時は来ない」と笑い飛ばしていたにも関わらず使ったという事実は見逃せない。彼女の性格から考えて、信号を送ってきたという事は最大級の緊急事態なのだとイビルアイは確信した。
そこで蒼の薔薇としての依頼の中でガガーランとティアが担当していた場所を思い出し、転移の魔法を使おうとした所、魔法が妨害されてしまったのであった。
よって《
「あの建物か!」
イビルアイが目的の建物を発見し、壁を突き破って突入しようとした途端、逆に内側から一人の人間が壁を突き破って吹き飛んできた。
「ぐえっ。
って、ガガーラン!お、おい!しっかりしろ!」
吹き飛んできたのはガガーランである。飛行中のイビルアイは彼女を受け止めたが、彼女の腹部には大きな穴が空いている。
「ぐっ…ハァハァ。イビル…アイか…。
やめろ、お前でも…奴には勝てねぇ…。」
「仲間にここまでしたやつを前にして逃げるわけないだろ!」
「ふん…相変わらず…の…馬鹿野郎……だな…。」
そう言ってイビルアイを見たガガーランは目を閉じた。
「おい!おい!
……くそ。待ってろ。仇はとってやる。ラキュースに後で蘇生させるぞ。」
息絶えたガガーランを
イビルアイはガガーランが飛んできて空いた大穴を睨む。中から南方で着用されるスーツという服を着る男がこちらを見ていた。仮面を着けているため素顔は窺えない。
その男を確認すると穴から部屋に入り、男と向き合う。
「ッッッ!!! (なんだこの叩きつけるような威圧感は!!!)」
そして身を以て確信する。その男はイビルアイが250年生きてきた中でもブッチギリの化け物である事を。
ガガーランの言った通り、自分では勝てないと弱気になってしまうほどの圧倒的強者の圧力が全身を押し潰そうとする。
よく見るとその男は尻尾がはえていて、明らかに人間では無かった。
(悪魔…か?)
「おや。新しい顔ですね。私はヤルダバオトと申します。以後、お見知り置きを。」
「聞いたことが無いな。」
「そうですか?
ところで……先ほど殺したそこの彼女と私が殴りとばした彼女が『お前よりも強いやつがもうじきお前を倒しにここに来る』と仰っていたのですが、貴方がその"私より強い人"で、合っていますよね?」
「……殺した彼女、だと?」
「えぇ。本当に殺さないよう手を抜いたのですが。申し訳ありません。
後ろにあるじゃないですか。今となってはただの焼け焦げた肉塊ですけどもね。」
ヤルダバオトなる悪魔はそう言って、後ろを振り向いてどうぞ、と言わんばかりの仕草をする。仮面の下は笑っている気がした。
振り返ると、数m後方に焼死体らしき黒いモノが確認できた。
そしてブチ切れた。一瞬で頭の血が沸騰する、そんな感覚に陥る。イビルアイは仲間が殺された事もだが、ティアを、仲間を"ただの肉塊"と侮辱された事に、煮えたぎる怒りを抑えきれずに爆発した。
「────おまえェェェェ!!!!ふざけるなァァァァァァ!!!!!!!《魔法最強化・結晶散弾》!!!!」
♧
「悪魔の諸相:豪魔の巨腕」
「《
膨れ上がったヤルダバオトの腕に殴られて吹き飛ばされ、床でバウンドし、空中で数回転した所で止まる。
「派手に飛びましたね。もうお終いですか?」
「ハァハァハァハァ……。くそっ。魔神を遥かに超越した魔神王…とでも言うのか!?」
イビルアイの攻撃はヤルダバオトに一切通用していなかった。圧倒的なレベルの差が原因だろう。
やはりここまで強い存在は生きていて会ったためしがなかった。200年前に討伐した魔神など比較対象にならない。ヤルダバオトと同格が存在するなら
だがイビルアイは退けない。隙を見せたら、即座に殺られる。仲間のためにも退かない。
だから文字通りの"決死の覚悟"でヤルダバオトに挑み、打ち倒す覚悟を決めた。たとえ自分の命の灯火が消えようとも。
「行くぞヤルダバオト!!!お前をここで倒す!!!
(私は『国堕とし』と伝説に謳われる女。私が殺られたら他にヤルダバオトを止める者はいない。
ならばその名にかけて貴様はここで食い止める!!)」
ヤルダバオトへと踏み込もうとした。
その時──
「何!?」
突然ヤルダバオトは大きく飛び退いた。
そこへ轟音とともに屋根を突き破り、降り立った者がいた。着地の衝撃を吸収するために身を屈めている。
見ると漆黒のフルプレートと真紅のマント。加えて両手には鎧同様に漆黒の大剣がしっかりと握られていて、月の光が反射して輝いて見える。
(漆黒の英雄…!アダマンタイト級冒険者のモモンか!)
こんな窮地にも関わらず、その漆黒は引き込まれるほど美しく輝き、その紅は全てを焼き尽くす灼熱の炎を連想させる。
そして彼は静寂と共に、ゆっくりと立ち上がる。まるで山のような力強さを感じる。
圧倒的な強さを持つヤルダバオトでさえ息を呑む。
そして漆黒の戦士は言い放つ。
「それで……私の敵はどちらなのかな?」
以下の流れは書籍と基本同じです。
モモンはヤルダバオトを撃退し、英雄になり、イビルアイはモモンに恋心を抱きます。
きっとhappyend!きっと!