一週間プロデュース~目指せパーフェクトコミュニケーション~ 作:シンP@ナターリア担当
「俺がその今日から来たプロデューサーってやつだ。用件を聞こうか?向井拓海」
「あいつから聞いたか。なら話がはえぇな。まず最初に言っておく、アタシはお前の言うことなんて聞かねぇからな」
「ふむ……君もそうなのかな?木村夏樹?」
「こっちは拓海のブレーキ役として来ただけさ。ま、様子見させてもらうよ」
「そうか、じゃあ改めて向井、大体察しはついているが、しっかりと理由を聞かせてもらおうか」
「一つ、アタシのプロデューサーはお前じゃない。二つ、見ず知らずの野郎に指図されるなんて虫唾が走る。三つ、まずはてめぇが気にくわねぇ」
「まぁ、そんなとこだろうとは思ったよ。本当は君みたいなのは最後に来るだろうと思っていたから、全員集まってから言いたかったんだがな……仕方ない。文香さん、後ろの子たちも連れてきてください。皆も少し待っててくれ」
「はい。それはいいのですが……」
「なんだぁ?ガキども使って煙に巻こうってんじゃねぇだろうな?」
「そんな気はさらさらないから安心してくれ」
まさに一触即発と言わんばかりの空気に、場にいる全員も口を開かなくなる。中には我関せずといった表情の人間もいるが……。と、文香が後ろにいる全員を呼んで来たところで、男性から口を開く。
「さて、今いる全員は集まったね。まずは最初に聞きたい。少しでも、ほんの少しでも私からプロデュースをされるのに抵抗がある人は手を挙げて欲しい」
「抵抗があるってどういう意味?」
「嫌だな~って思ったりすることだよ」
「そっか!なら大丈夫だよ!」
「ありがとう薫ちゃん。さてと……」
このプロデューサーの問いかけに手を挙げたのは18人の内4人。
「向井はさっきの通り、智絵里、橘さんの二人は男性や初対面の人が苦手だから、美嘉は、単純に男性との距離感が難しいから、かな?」
「あぁ……うん、そうなんだよね……なんかさ、急にそういうのが来ると……ね?」
「いや、それが普通だよ。気にしなくていい。さて、真ん中の二人だけど、これも仕方ないかもしれないね。女の子が初対面の、それもかなり年上の男にいきなり慣れろ。なんて無茶な話だ」
「そ、その……ごめんなさい!」
「わ、私は別にそういうのじゃ……ただ、まだ貴方を信頼できないだけです」
「うん、それも当然だろうね。で、向井。さっきの君の言葉への回答も兼ねて、ここで私から言わせてもらおう」
「なんだよ?命令は絶対だとでも言いてぇのか?」
「いや、逆だよ。もし、どうしても嫌だという子は、今回の企画から外れてもらって構わないよ」
「はぁ?」
「「えぇっ!?」」
「ちょ、ちょっと!そんなこと勝手に言っていいわけ!?」
「あぁ、これに関してはそちらのプロデューサーとも話し合った結果だ。その間の仕事は他の部署が回れば問題なく埋められるとのことだ」
「そ、そうなんだ……ど、どうしよう……」
「だったら決まりだな。アタシは……」
「だが、この企画から外れる場合、それは彼女の信頼を裏切ることになる。それでも良ければ。だけどな」
「え……?」
「あん?なんでそこであいつが出てくんだよ。こりゃアタシらとお前との問題だろうが」
「あぁ、そうだ。そして、それがどうしても無理だった時のためにと、彼女は特例を許してくれた。だが、これは君たちへの強い信頼と、期待があってこそだ」
「信頼と……」
「期待……?」
手を挙げた4人、そして、それを見守る全員に語りかけるように、彼の言葉には熱が篭っていく。この『熱』こそが、彼のプロデューサーとしての特筆すべき点なのだが、それを本人が気付くことは無いのだろう。そして、そのまま言葉を続けていく。
「そう。例えば、苦手な人や、慣れない人とのコミュニケーションを頑張ることで、様々なことに挑戦していく力」
「「っ!」」
「例えば、普段と違う環境で、その中でも自分らしさを保ち続けることで得られる、確固たる自信」
「あ……」
「例えば、見ず知らずの相手からの言葉でも自分の力に換え、上へ上へと昇っていく、揺ぎ無い信念」
「……」
「彼女は君たちに、こんな力を持って欲しいと、いや……君たちならすでに、こんな力を持っているのだと、信頼している。期待している。だからこそ、見えるように逃げ道を作ったんだ。そんな目に見える自分の弱さに負けない。強い自分に、アイドルとして輝く自分になって欲しいから、ってね」
「プロデューサーさん……」
「でも、それでも、どうしても難しいことだってあるんだ。私はそれを、いくつも見てきた。だけど、そこで一度挫けかけた子達だって、また立ち上がってるのも何度も見てきたんだ。だから、私はここで君達がその選択をしても決して弱いなんて思わない。だから、好きに選んで欲しい。さぁ、どうする?」
諭すように、小さな子どもをあやすように、言葉を告げた男性。選択を迫られた4人は一様にうつむいている。皆それぞれ、思うところがあるのだろう。周りの子達も、それを見守っている。そして、真っ先に顔を上げ、口を開いたのは、美嘉だった。
「私さ、カリスマギャルとして売り出されてて、いろんな雑誌のインタビューとかでも、いろいろと得意げに話したりしてたの。でもね、赤の他人の男の人が近くにいるって環境って、今まで全然無かったの。だから……ううん、だからこそ!私は知りたい!それがどんな気持ちなのか!それがどんな私を作っていくのか!だから、こっちからお願い!」
「そうか……分かった。期待に応えられるような男性じゃあないかもしれないが、精一杯美嘉を成長させられるよう、頑張らせてもらうよ」
「うん!よろしくね、プロデューサー!」
「あ、あの……わ、私も。私も、頑張ります!まだ、男の人は少し苦手で、距離を取ったり、ビックリして嫌な思いさせちゃうかもしれませんけど……でも、あの人に……プロデューサーに、少しでも成長した私を見て欲しいから!だから……」
「ありがとう。その気持ちだけで十分伝わったよ。難しいかもしれないけど、ここから頑張っていこうね」
「は、はい!よろしくお願いします!」
「さて、残るは向井と橘さんだけど……」
「私は……さっきも言ったとおり、まだ貴方を信用していません。ですが……プロデューサーは、貴方を信頼して、私達のことを頼んだんですよね……」
「あぁ、同時に、君達なら上手くやれると信頼して、な」
「わかり……ました……。貴方のこと、少しだけ、信じてみます。言っておきますけど、全部じゃないですからね!少しだけですから!」
「分かってるよ。ほんの少しでも信頼してくれてありがとう。ここからもっと信頼してもらえるよう、全力で頑張るよ」
「はい。私に相応しいプロデュースをお願いします」
「任せてくれ。さてと……」
他の3人が全員企画への参加を決定し、最後に残ったのは、言い出した拓海だけとなった。だが、まだ決めかねているらしい。そこで彼はさらに言葉を続けていく。
「さっきも言ったとおり、逃げるように見える選択かもしれないが、それは決して弱いことじゃない。自分の道を貫き通すこと。それもまた、他には無い大きな強さだ。認めた人間以外は誰の指図も受けないという君の考えは、上に昇っていくうえで大きな武器になる。もしも何かで悩んでいるなら、聞かせてほしい」
「……。てめぇは……」
「ん?」
「てめぇは本当に、それでいいのか?アタシが企画から外れるって言っても、痛くも痒くもねぇか?」
「ははは、まさかここでこっちの心配をしてくれるなんて、やっぱり彼女から聞いてた通りだ」
「う、うるせぇ!いいから答えろよ!」
「まったく……そんなの……嫌に決まってるだろ!!」
「「きゃっ!」」
「「わっ!」」
「「「っ!!」」」
拓海の問いに、先ほどまでの諭すような口調から一変し、突如として今日一番の怒声のような声を上げる。あまりの衝撃に何人かは相当ビックリしてしまったようだ。
「な、なんだよ!急にでかい声出しやがって!」
「す、すまない。だけどな、これだけは言わせてもらう。俺は出来ることならここにいる全員を、この部署の全員をプロデュースしたい!どこまで出来るかは分からないが、仕事だからなんて理由じゃない。君達と向き合って、ともに成長したいからだ!俺のこの気持ちに、言葉に、嘘は無いと誓ってもいい!」
「……んだよ……」
「くっ、ふふ……あっはははははは!」
彼の熱い言葉に、拓海が黙り込んだかと思えば、堪え切れなかったかのようにどこかから笑い声が上がる。その発信源は……夏樹だった。
「イヤー!最高だよアンタ!拓海、賭けはアタシの勝ちみたいだな」
「木村?というか、賭け?」
「んだよ!もうちょっとだったのに急に熱くなりやがってよ!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。事情が飲み込めない」
「簡単に言や、今日の晩飯の賭けに黙ってアンタを使ったってことさ。内容は、アンタが『熱い人かどうか』だ」
「夏樹の奴は熱い方に、アタシはそうじゃないって賭けたんだよ。あそこで諦めてくれりゃあ勝ちだったのによ」
「な……それじゃあ始めっから?」
「半分くらいは本気だったぜ?でも、流石に世話になってるあいつに泥を塗るような真似はしねーよ」
「なんだよ……驚かさないでくれよ……」
「悪いね。それよりも、あの熱くなった時、口調が『私』じゃなくて『俺』になってたよな?やっぱりそっちが本当のアンタなんだろ?」
「さぁてね、初対面から人のことを試してくるような奴に、そう簡単に全部見せると思うなよ?」
「やっぱりアンタ、かなりロックだな。気に入ったよ。アタシのことは夏樹って呼んでくれていいからな」
「アタシも拓海でいい。というか、苗字で呼ばれるのは気持ちわりぃんだよ。分かったな!」
「あぁ、分かったよ、夏樹に、拓海だな。さて……皆、さっきは急に大声出したりしてごめんな。ビックリさせちゃったな」
「ほんとにビックリしたわ。貴方、結構熱い人だったのね」
「そなたの言葉は、しっかりと届いたのでして~」
「瞳を持つ者の魂の言霊によりて、我が魂は打ち震えている!」
「プロデューサーの言葉に感動したんだって!みりあも頑張っちゃうんだから!」
「あはは、皆、ありがとね。さて、急に集めちゃったりしてごめんね。後はまた全員揃うまで好きにしてくれていいからね」
「「はーい!」」
この言葉を皮切りに、ある者は先ほどのように奥の談話室へ、ある者は外の空気を吸いにいったようだ。そして、プロデューサーを含めた数人が入り口談話室で待つ形となった。
「で、なんで薫ちゃんは膝の上にいるのかな?」
「だって~、さっき雪美ちゃんの後は薫って言ってもん!だから乗ってるの~!」
「そういえば言ってたような……」
「あ、あの……次は……い、いえ!なんでもないです!」
「千枝ちゃん……乗りたい……?」
「だ、大丈夫ですから!」
「やっぱり通報した方が……」
「これで私が悪いと言われるのはとても悲しいな」
「ふふ、プロデューサーさんは、小さな子に好かれやすいのですね」
「子どもに好かれるのは、優しき心の持ち主という証拠でして~」
「さっきあんなに熱かった人とは思えねぇな」
「ほっといてくれ。さてと、そろそろ誰か来る頃かな?」
「全員集まると、事務所が狭くなっちゃいそうですねっ!ふふっ!」
「確かにそうかもね。……と、言ってる間に本当に誰か来たみたいだ」
椅子に座る男性の膝の上で薫は足をぷらぷらと振って楽しそうにしているが、彼がごめんねと一言謝ってから降ろすと、渋々といった感じだが隣の椅子に座る。彼女も子どもではあるが、そのあたりはきっちりと分かってるのだろう。そして、外からは足音と共に話し声や笑い声が聞こえる。今度は4人分だろうか。そして、ノックへの返事の後に扉が開き、ぞろぞろと部屋へと入ってくる。
「おはようございます皆さん」
「おっはよ~!」
「おはよ!今日も一日、元気大作戦だよ!」
「おはよ~。あれ?そこの男の人ってもしかして?」
「やぁ、おはよう。楽しそうな声が部屋まで聞こえてたよ。君達はフリルドスクエアの4人であってたかな?」
「え?どうして私達のこと……」
「はは~ん。これは私達も、ずいぶんと人気者になっちゃったかな~?」
「んなわけないでしょ。えっと……今日からお世話になるプロデューサーさん、で良かったですか?そう、私達はフリルドスクエアであってますよ。えっと、こっちから順に……」
「最初に挨拶した肩甲骨くらいまで髪の君が綾瀬穂乃香。確かぴにゃこらたが好きなんだっけ?次に挨拶したパッツンヘアーにパーカーの君が喜多見柚。しっかり人気者にはなってるから、安心していいよ。それから、次に挨拶したお団子ヘアーの元気な子が桃井あずきちゃんだね。私の予習大作戦も、なかなかのものじゃない?そして最後になっちゃったけど、茶髪にショートヘアーの君が工藤忍。穂乃香と同じく、このフリルドスクエアの結成当時からのメンバーで、皆のまとめ役。どうかな?」
「「おお~!!」」
「か、完璧です……」
「すごい……」
やはり、初対面の人間に自分の名前だけでなく、内面や気に入っている部分などを当てられると、人は驚くものだろう。彼女達も勿論例外ではなく。あずきや柚に至っては興味津々といった様子だ。穂乃香と忍はその人への興味よりも驚きの方が勝っているのか、ただただ呆然としている。
「すごいすごい!予習大作戦大成功だよ!あ~あ、私も予習して来れたらな~」
「まぁまぁ、これも君達のプロデューサーのおかげだからね」
「なるほどね~。ところでさ、なんで私達の中であずきちゃんだけ『ちゃん付け』だったのかな~?さてはあずきちゃんの事狙ってるとか~?」
「え?えっ!?」
「大人をからかうんじゃありません。穂乃香も、そんなビックリしたリアクションしない。単純に見た目というか、雰囲気からかな?他の3人……特に同い年の柚よりは子どもっぽく見えちゃってね」
「あー!ひっどーい!こうなったらあずきの大人っぽさを知ってもらうために、お色気大作戦で……」
「だから止めなさいって。そういうのでムキになるのも子どもっぽいってこと。そうでしょ?プロデューサーさん?」
「さすがまとめ役。ま、そういうことだよ。でも、どうしても嫌なら呼び捨てにするけど、どうだい?」
「う~ん……別にいいや!特別扱いみたいで嬉しいし!それに、どうせなら実力で呼ばせたいし!目指せ、呼び捨て大作戦!だよ!」
「あ、あの……私は逆に、少し恥ずかしいので苗字で呼んで欲しいんですけど……」
「よし、分かった。綾瀬は苗字呼びだな。他の二人は大丈夫かな?」
「私はこのままでいいよ~」
「私もこれでいいかな。あんまりいろいろすると大変だろうし」
「ん、ありがとう。さて、また談話に戻ろうか?」
「あー!薫また膝に乗るー!」
「あ、あの……」
「おやおや~?ちびっ子達にモテモテですな~?」
「なんでか知らないけど懐かれちゃってね」
「むむ!知らない内にモテモテ大作戦だね!」
「楽しそうでございますですね~」
「ほんとね。うちのプロデューサーも似たようなものだけどね」
「あいつはあれでかなりロックだしな。向こうでも大丈夫だろうさ」
「うちの連中が迷惑かけてなけりゃあいいけどな。さてと……そろそろいいかな?」
「ん?どうかした?」
フリルドスクエアの4人とも無事に打ち解け、また話しに戻ろうとしたところで、彼の口から待ったが入る。というのも、彼はこの会話の中でどこかおかしいところを見つけたようだ。そう……いつの間にか、一人増えているのだ。
「あずきちゃんの後に喋った君、いつの間にいたのかな?」
「「……」」
「……」
「……あ~。ライラさんのことですか~」
その間の抜けた言葉に驚きを通り越して呆れが出てくる。子供達は笑っているようだが……。金髪に褐色の肌の少女……自分でライラと名乗った少女は未だにポカンとした表情だ。
「そう、そのライラさんがいつからいたんですか?」
「おお~ライラさんの名前をご存知なんですね~。もしかして、始めましてじゃないのですか?」
「始めましてであってますよ。プロデューサーさんから聞いてたから知ってるんです。それで、いつからいたんですか?」
「そうなんですね~。始めまして、ライラと言います。ところであなたはどなたですか?」
「あ、私は今回企画で臨時にプロデューサーになった者で……」
「あっはははは!全然話が進まねぇや!やっぱりライラのペースに持って行かれちゃアンタでも無理か!」
「ライラさんは、とても自由な方ですからね」
「ライラー!もう!待っててって言ったのに置いてくなんてひどいゾ!」
話が一段落する間もなく今度は空いた扉から一人入ってくる。黒いショートカットにライラと同じく褐色の肌、ホットパンツ姿がとても似合う活発そうな子だ。
「あぁ、ナターリアさん。ごめんなさいですよ。皆が楽しそうだったのでつい行ってしまいましたです」
「もういいゾ!皆もおはよう!あれ?その人だれダ?」
「おっと、私は今日から一週間、君のプロデューサーだよ。よろしくね、ナターリア」
「おお!そうなのか!よろしくナ!プロデューサー!」
「っ!」
「「きゃっ!」」
「「おおーー!!」」
挨拶が終わるや否や、彼女……ナターリアはプロデューサーに抱きついた。いきなりことに彼は慌て、わたわたとするばかり。悠貴や千枝のような純粋な子は恥ずかしいのか目を背け、興味津々な子達は逆にどうなるのかとしっかりと見ている。が、彼もこのままではダメだとすぐにナターリアを引き剥がす。
「ちょ!ちょっと落ち着いてくれナターリア!」
「ん~?どうしたんダ?挨拶のハグしてるだけだゾ?」
「そ、それは誰にでもやってるのかい?」
「ん~ん。プロデューサーが、誰にでもはダメだって言ってたゾ。やるなら私か、うちのアイドルの子だけにしなさいって」
「じゃ、じゃあなんで私に……」
「ん?だって、今日からプロデューサーだロ?プロデューサーになら良いんじゃないのカ?」
「全員がそうじゃないんだよ。と、とにかく、私にはやらないようにね!」
「う~ん……プロデューサーは、ナターリア嫌いカ?」
「そんなことないよ。だけど……」
「じゃあいいナ!ナターリアもプロデューサー好きだから、好き同士なら問題ないゾ!」
「そ、そうじゃなくて!だ、誰か助けて!」
「ナターリアちゃん。日本の男性は、ハグが少し苦手なんです。だから、出来れば止めてあげてくださいませんか?」
「ん~。フミカがそう言うなら分かったゾ!フミカはアタマいいからな!」
「た、助かった……ありがとう、文香さん」
「いえ、こういうのはその……他の子も慣れてないでしょうから……」
「あっ!そ、その……な、何も見てないですからっ!」
「ねぇねぇ!どうだった?ナターリアちゃんのハグ、気持ちよかった?」
「みたいですね……とりあえず面白がってた数人はレッスンのメニューを増やすから覚悟しておくように」
えぇ~!とか、横暴だー!なんて声も聞こえてくるが彼は知らん顔。ちなみに後で文香が言うには、ライラはフリルドスクエアの皆が彼の言葉に驚いてる時に普通に入ってきていたようだ。言い出そうとしたが、盛り上がっていたのでタイミングがなかったとのこと。
さてと、と後ろから聞こえる不満の声を聞き流しながら一息つくと、またも廊下から声が聞こえる。3人ほどの声だが、今度もまた内側に聞こえるほどの声で、また疲れることになるのかな。などと彼が思っていると、ノックがすることもなく扉が勢いよく開かれる。
「さぁ皆さん!かわいいボクが来てあげましたよ!一日の始まりにこのかわいいボクを見られるなんて、皆さんはなんて運が良いんでしょう!さぁ!存分に喜んでください!」