一週間プロデュース~目指せパーフェクトコミュニケーション~   作:シンP@ナターリア担当

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お次のお店は潜入捜査?~ペアで一緒に探し物~

 

 アイドル達とスタッフの多数が店の奥の制作スペースに入ってから早2時間が経過した。朝からの収録であるため時間に余裕はあるが、そろそろ次の場所への移動も視野に入れようかとスタッフと彼女が話し合いをしている。大勢の撮影スタッフがいるからか、付近は少し見物に来た一般人もおり、これ以上集まるようなら周りへの迷惑も考慮する必要があるだろう。そんな風に思い始めた頃、店の奥がにわかに騒がしくなる。どうやら無事に制作が完了し、カットが入ったようだ。そのまま3分ほど待っていると、スタッフ一同を引き連れてアイドル達が店の外へと出て来た。皆思い思いにいい表情をしており、制作はいい物が出来たようだ。

 

「あいたたた。やっぱり細かな作業は疲れちゃうねぇ」

「おかえりなさい。翔真さん。それに皆もね」

「ただいまでにゃんす!」

「スタッフの皆さんも、お待たせしてしまい申し訳ありません」

「プロデューサーさん、期待しとってや~?」

「フレちゃん的にもすっごく良いな~って思えるのが出来ちゃったんだ~」

「へぇ~。そこまで言うなんて楽しみね。期待してるわよ~?」

「おうともさ!さて、そろそろお次の場所に行きましょうかね」

「おや、次の場所も決まってるのかい?」

「いくつか候補は考えてあるのさ。一つ目はここから右に行った先にこれまた老舗の人形焼屋さんがあるからそこに行く」

「時間はそこそこ掛かったとはいえ、また食べ物ですか?」

「でもシューコちゃんおいしい人形焼食べてみたいな~」

「二つ目は逆に左の方に行った先にあるオリジナルのデザインの発注までやってる服屋さん」

「ん~、フレちゃんそっちも行ってみたいな~」

「アタシも服は見ておきたいねぇ。浅草独自のものもだし、オリジナルっていうのも気になるとこだよ」

「三つ目は骨董品を扱ってるお店が向こうの通りにあるからそっちまで足を伸ばす」

「んにゃにゃ。掘り出し物ゲットの大チャンスでにゃんすね?」

「確かに面白そうですね」

「んで、最後はそことはまた反対方向の通りにある雑貨屋さんかな~。普通の雑貨屋さんと違って、浅草らしさのある昔懐かしのものや、日本の伝統である和をモチーフにした物なんかが多くあるんだよね~」

「彩の3人的にはやっぱりここ行きたいんとちゃうん?」

「行きたくないって言えば嘘になっちゃうねぇ。さて、どうしようかい」

「いっそ全部いっちゃお~」

「そんな時間はございません」

 

 キャシーから出された4つの選択肢をについて、各々からいろんな意見や考えが出てくる。ぶらり旅の企画なのだからここまでしっかり決める必要も無いかもしれないが、折角案内役がいてくれるというのならそれを使わない手もないというものなのだろう。プロデューサーやスタッフにも適度に話を振りながらの議論が5分続いた結果、次の行き先は決定した。

 

「それじゃあそろそろ回しまーす」

「っと、収録もまだまだ続くんだから、無理とかはせずに全力でね!」

「また無茶なこと言わはんなぁ」

「簡単でにゃんす!いつも通りで大丈夫でにゃんすよ!」

「それはあなたくらい……」

「「?」」

「今回はそうでもなさそうですね」

「九郎さん。うちの二人がすまないねぇ……」

「それは言わないお約束。というやつですかね」

「ふふ、なんだか熟年夫婦みたいだよ」

「華村さんまでからかわないでください!」

「あらやだ奥さん、あのお二人アイドル同士なのに怪しい関係なんですってよ~?」

「や~ん。お熱いわね~」

「ほらほら、二人ともその辺にしとかんと九郎さんがほんまにおらんなってまうから」

「あ、あの~……」

「あ、はいはい。ほらあんた達。遊ぶのはまた後で、そろそろ撮影に戻りなさい」

「最初に種をまいたのはあなたですけどね」

「言うじゃない。それだけ言える気力があるなら心配ないわね」

「くろークンは強い子でにゃんすよ!こんなのへっちゃらでにゃんす!」

「さ、しまっていこうかい」

「「「おー!」」」

 

 てんやわんやとあったものの、なんとか撮影は再開した。どうやら選んだのは雑貨屋のようだ。彩として和のモチーフのものは押さえておきたいというのがやはり大きいのだろう。勿論あちらとの勝負に使えそうなものを探してというのもあるだろうが、だ。そうして街並みリポートしながら歩くこと数分でその店へと到着した一行だが、ここでまた問題が発生する。

 

「まぁ、この人数は無理だよね~」

「というかカメラさんすら無理そうですね」

「こんなけ所狭しと物があったら無理やろうね~」

「すみませんねぇ……なにぶん趣味でいろいろと集めておりましたらこうなりましてなぁ」

「いやいや。店長さんは悪くないよ。さて、それよりもどうしたもんかねぇ」

「こないだ使った小型かめらクンはどうでにゃんしょ?」

「わーお。それ面白そ~う。フレちゃん持ちた~い」

「精密機器なのでゲストさんに持たせるわけにはいきませんから。責任を持って私が持ちます」

「あぁ~!そう言ってくろークンまた独り占めでにゃんすね!?ずるいでにゃんす!」

「スタッフさんからの指示ですから」

「ボーヤはそれよりもいろいろ見て回る方が向いてるんだよ。適材適所ってやつさ」

「あ、ねぇねぇ。男子チームと女子チームっていうのも味気ないし、ここは男女ペアで3組に分かれて珍しい物探しでどーだい?」

「お?ええや~ん。ほな、がんばろなー九郎さん」

「はい。頑張りましょう」

「ちょいちょーい!!そんな勝手はお母さん許しませんよ!」

「誰がおかんやねん」

「ペアは厳正なくじ引きによって決めたいと思います!カモーンスタッフちゃん」

「はは~」

「わーお。スタッフさんノッリノリ~」

「こちらスタッフさんが後でお弁当食べるようのお箸に1~3の数字を2セット書いたものでございやす」

「ほんと、うちの子が勝手行ってごめんなさい」

「いえいえ」

「で、これを男子チームと女子チームに1つずつ引いてもらって、同じ数字同士で組むというわけだ!」

「分かりやすくていいねぇ」

「はぁ……ここまでやったんなら拒否は出来ませんね。分かりました」

「こらこらくろークン。女の子に対して失礼でにゃんすよ?」

「分かってます。誰と組んでも精一杯やりますよ」

「それじゃ、レッツくじびきた~いむ!」

 

 こうして唐突に始まったペア分けだが、勿論の事ながら簡単なルールなので数秒の内に決着は着いた。そして現在、肩を落とす男女が一人ずつ、ニコニコした顔の男女が二人ずつという状況になっている。言わずもがなだろうが、肩を落としているのが周子と九郎、残りが4人だ。周子の持つ割り箸には1、男性側で1を持っているのはキリオ。九郎の手には2の割り箸があり、その対の2はフレデリカの手の中にある。そしてキャシーと翔真の箸には3の数字が書かれていた。これには双方の保護者である彼女も苦笑いをするしかない。そして組み分けが終わる少し前から撮影は再開されており、ここはテロップで入れない事情を流す予定だそうだ。

 

「これ細工とかしてたりしませんよね?」

「むむ!往生際が悪いでにゃんすよ~!」

「そんなに言われたらフレちゃんかなし~い」

「お~よしよし。かわいそうなフレちゃんや」

「分かってますから。本気で嫌なら最初から一緒にやってません。よろしくお願いしますね。宮本さん」

「やたー!よろしくね~くろちゃ~ん」

「ちょっ!近いですから!変な噂とか出たらどうするんですか!」

「あぁ、気にせんでもええよ。この子どこでもこんなんやからお茶の間の人らもそういうんじゃないってわかったはるやろし」

「そういうもんなのかい?」

「そうなんじゃない?」

「ささ、これ以上遅くなっちゃうとお日様があくびしちゃうでにゃんす!早速探し始めるでにゃんすよ~!」

「うちも行こ~っと」

「アタシたちも行こうかい」

「ラジャー!そんじゃおっちゃん、少し騒がしくしちゃうかもだけどごめんね」

「いやいや。少しくらいにぎやかな方が嬉しいからね。ゆっくり見てっておくれ」

「それじゃ、くろちゃんも一緒に、シャルウィーダンス?」

「踊ってどうするんですか。でも、せっかくのお誘いですからね。行きましょうか」

「ん~。ちゃんと乗ってくれるとこ、素敵だよ~。さ、れっつごー!」

 

 小型カメラを持った九郎も店内へと入り、先ほどまで静かに客を待つだけだった店の中は急に騒がしくなる。スタッフの2名ほどがカメラ等の機材を持たずに私服姿でカメラには映らないように中に入り、問題が無いように気をつけているので、この間にと彼女はいろいろと思案を巡らせる。突然の勝負となった765プロの二人のこと、現在別の場所で仕事をしているであろう6人のこと。レッスンをしているであろう皆のこと。そして迎えるライブのこと。この短い期間で今までと違う新しいことがいくつも起きてるなぁ等と思ってふいに表情が緩むが、それと同時にこれがいかに大変なことかというのも考えてすぐにその表情を引き締める。そして一度頭を振るとカバンの中からメモ帳とペンを取り出して何かを書いていく。書かれたものを見てみれば、それは今日の仕事内容に関しての記述だった。報告も大切な仕事の内なので、忘れないように適度にメモにしているようだ。

 

「おお~!これは中々のものでにゃんす~!」

「猫柳さん、少しうるさいですよ」

「くろちゃん怒んないで~。ほら、うちわであおいだげる。ぱたぱたー」

「フレちゃん、それ売りもんやから勝手したあかんて」

「ふふ、にぎやかで楽しいねぇ」

「ですなぁ。お?おっちゃん、これってもしかして?」

 

 中から聞こえる皆の声を聞いて、また表情が緩むが、今度はそれを引き締めたりはしない。今だけは楽しそうにしている彼ら彼女らの気持ちを一緒に考えたいと思ったようだ。他のスタッフ達も和やかな雰囲気でカメラで映されるモニターを見ている。この和やかな空気はここからしばらく続き、彼らが店から出て来たのは、入ってから30分も経ってからだった。

 


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