一週間プロデュース~目指せパーフェクトコミュニケーション~   作:シンP@ナターリア担当

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勝負に情けは無用なり~目指せ満点クイズ道~

 

「あ……」

「あ……」

「「圧倒的だぁぁぁぁ!!」」

「第2試合が始まって早数分」

「1セット目でやや優勢かに見えたみのりにーちゃん」

「だがしかし!返しの比奈ねーちゃんがまさかの全問正解のヨイショ!」

「快挙だな」

「続く第2セット比奈ねーちゃんが選択側!得意なジャンル選んでこちらも全問正解!」

「みのりにーちゃんもケンコーしたけど残念ながら一歩届かず」

「健闘な」

「なんと2対0の状態でみのりにーちゃんのターンに!1ターン目で出遅れちゃったのは、痛いんじゃな~い?」

「いやぁ。まさか10問の内3問も被って、他のも簡単なのばっかりが出るとは、我ながら運がないなぁ」

「ぐ、偶然っすよ!それにほら、3度目の正直ってよく言うっスから!」

「2度あることは3度あるとも言うよね~」

「さぁさぁ3度目があるのか無いのか四の五の言わずに!」

「2枚目顔でクールに1発、決めちゃいなYO!」

「はは、ありがと。うん、今ので緊張もほぐれたし、頑張るよ」

 

 そう言いながらコントローラーを操作してジャンルを選ぶみのり。先ほど説明の通り、現状は比奈が圧倒的に優位という状況だ。何もみのりが手を抜いたり、スタッフが何か細工をしたというわけでもなく、運も含めた実力で、比奈が圧倒しているだけである。まぁ勿論クイズなのでちょうど運よく持ってる知識の部分が出題されるというのもよくある話ではあるのだが、今回はその運がかなり偏ったとも言えるだろう。ちなみにそれぞれの選んだジャンルが、みのりが懐メロイントロクイズ。文字通りイントロから曲が始まり、制限時間内に答えるというものだ。比奈が選んだのは漫画。こちらもそのまま、漫画に関する各種問題が出題された。そんな背景を語っている内に、どうやらみのりがジャンルを決めたようだ。

 

「よし、これにしよう」

「ほほう、これは意外や意外。この追い詰められた土壇場、一番得意なアイドルを選ばず」

「みのりにーちゃんが選んだのは自然ジャンル!元お花屋さん的には見逃せない所だけど、自信はアリアリかな~?」

「花以外の問題も多くあるだろうけど、少しでもやりやすい方が良いからね」

「本音は?」

「アイドル問題は最後に持っていけば絶対に勝てる自信がある」

「素直でよろしい」

「自然っスかぁ……文系はまだいいんすけど、理系が苦手なんでちょっとキツイっスねぇ……」

「みのりにーちゃんこれは正解を引いたか~!?勝ち星を稼ぐ大チャーンス!」

「さぁさぁ、気合入れて~」

「「スターット!!」」

「よし!」

 

 そしてみのりが選んだ自然ジャンルで第3セットは幕を開けた。3問目で少し首を捻っていたみのりだったが、6、7、8、9問目と、花に関するクイズが続いて一気に得点を稼ぎ、結果は10問中9問正解という中々の好成績を残した。

 

「いやはや、亜美達には全然分からん問題ばかりでしたなぁ真美さんや」

「そうですなぁ。コーコーセイの仕組みなんて聞いたことすらありませんでしたなぁ亜美さんや」

「光合成だね」

「というかそれ小学校の理科で習うからな」

「「??」」

「こらそこ。顔見合わせて知りませんみたいなポーズ取るな」

「まぁまぁそんなどうでも良いことは置いといて!」

「続いてお返し、比奈ねーちゃんのターンだぜ!」

「ここまで連続で全問正解で来てる比奈ねーちゃん」

「苦手ジャンルと言えど、幸運の女神様が転がり込んでるのかもよ?」

「なんだろ。頭の中で茄子さんが転がってるイメージが……」

「止めて、想像しちゃったじゃんか」

「ヒナ!頑張ってー!」

「ピエるん、比奈ねーちゃん敵なの分かってる?」

「ピエールはこういうやつだから良いんだよ。それに、相手が強い方が燃えるしな」

「同感。強い相手を倒してこそ、だよね」

「おお……やるか分からない第3試合に向けてメラメラと闘志をたぎらせておられますなぁ……」

「この闘志を生かすも殺すも比奈ねーちゃん次第!」

「さぁ比奈ねーちゃん!」

「「レッツゴー!!」」

 

 今度は比奈が答える番だ。とは言うものの、わずか4問目で既に2問を間違えてこの段階で既にみのりが勝つのが決まってしまった。とはいえルールはルール。最後までやらなければならない。比奈はしきりに「こんなん習った覚えないっす……」「木なんてどれも同じじゃないっスか……」等とボヤキながら答え、最終的には先ほどまでの快進撃はどこへやら、半分の5問正解するのがやっとという体たらくだ。10問が終わり、先ほどまでと違って明らかに疲弊しており、見かねたスタッフ達によって休憩と相成った。

 

「うぅ~……だから理系は無理だって言ったんスよ~」

「比奈さん……私でもまだ分かる問題あったぞ?」

「まぁまぁ、仕方ないって。それに、まだこっちがリードしてるしさ!」

「みのり凄い!あんな難しいこと知ってて、エライ!」

「まぁ、これでも元花屋だし。あのくらいは知っておかないと怒られちゃうからね」

「専門的な知識って、やっぱり大事っすよね。どこで役立つか分かったもんじゃないですし」

「だな。みのりさんの場合、トーク番組なんかでもこういう一面を出せるっていう強みになってるしな」

「ねぇねぇ、次の比奈さんのターンだけどさ……」

「……おぉ!それ良いな!」

「でしょ!?」

「でもなんというか……良いんスかね?」

「ん?作戦会議か?」

「あ!プロデューサーさん!ねぇねぇ、ゲームってさ、勝つためだったら相手が不利になることって全力でやるべきだよね?」

「ん~?そうだな。ゲームの範囲内でって意味でなら、その通りだろ。ゲームで勝つためにコントローラーの線を抜いたり、直接攻撃したり、なんてのが無ければ良いんじゃないか?」

「ほらほら!プロデューサーさんもこう言ってるしさ!」

「そうだぜ、荒木さん。どんな時でも全力でってのがゲームをやる上での鉄則だ。油断や手加減は、相手に失礼だ」

「うっ……わ、分かったっス」

「それじゃそろそろ再開しますんで、準備のほう、お願いしまーす」

「あ、はーい!よし皆、ちょうどこの辺が折り返しになるだろうし、頑張れよ!」

 

 彼の言葉に各々返事をしながら所定の位置へと戻っていく。比奈だけは未だにどこか浮かない表情をしているように見えるが、それもなんとか戻し、今はいつも通り……よりは少しだけ気合が入ってるであろう顔つきをしている。ように見える。そしてそのまま双子もスタッフとの話を終え、位置に着いたところで撮影は再開される。

 

「さぁさぁさっきの失態から立ち直りたい比奈ねーちゃん、選ぶのはどれかな~?」

「もう決めてるっスよ。それは……これっス!」

「な、なんと比奈ねーちゃん!」

「ここでみのりにーちゃんの一番の十八番、アイドルジャンルを選んだ~!」

「なるほど、そう来たか」

「そ。こっちが選んで先にやる以上、被るクイズが出る可能性もあるから、中途半端なのは選べない。かと言って、それで万が一にでも負けた場合、相手は絶対に得意なジャンルを残してるのを知ってる。だったら、ここを落としてでも良いから得意なジャンルを残しながら、相手の得意なジャンルを消す!これがうちの作戦だよ!」

「さなさな説明サンクスだぜぃ」

「にゃるほど、これは考えましたなぁ」

「それに、比奈さんだってアイドルなんだ、もしかしたら、があるかもだしな」

「まぁ、全問正解できなかった時点で負けなんで頑張るしかないっスね」

「これ俺にも若干プレッシャーだよね?」

「大丈夫すよみのりさん。みのりさんがアイドルに関するクイズを間違えるわけありませんから」

「うん。恭二。それもプレッシャーだから」

「さぁ心臓バクバクのみのりにーちゃんを尻目に」

「比奈ねーちゃんのパクチーの一発!」

「バクチっスかね?」

「「スタート!!」」

 

 ダメで元々、と軽い気持ちで始めた比奈のターンだったが、これが思いのほか良い方向に転がったか、同じ事務所の仲間の問題も多く出たのもあり、正解数は9問とかなりの好成績だ。これでみのりは勝つためには全問正解か、9問正解してからのサドンデスに勝利するしかない。だが、問題傾向を見ていたみのりからは既に笑みが見えており、かなりの自信があるようだ。

 

「さてさて~?みのりにーちゃんのターンだけど、さっき緊張してたっぽかったけど、今は自信満々って感じだねぇ」

「まぁね。どういう範囲が出るのかが分かれば大丈夫。これなら勝てるよ」

「おお!勝てる発言とは本当に強気ですなぁ!これは期待できますな」

「みのり!頑張って!」

「任せて、ピエール!」

「これは、延長戦にかけるしか無さそうっスね」

「作戦の内だから平気だって。まぁここからは比奈さんがいかに頑張れるかってとこなんだけどね」

「沙南、それ比奈さんにめちゃくちゃプレッシャーかけてるから」

「おやおや、今度は比奈ねーちゃんがプレッシャーでバックバクのターンですかな?」

「その結果は神のみぞ……いや、みのりにーちゃんのみぞ知る!」

「「レッツゴーだよ!」」

 

 自信満々にスタートしたみのりだったが、5問目に差し掛かった所で解答の手が止まる。これはもしかして……?と全体に期待の空気が流れたが、その後すぐに淀みなく正解を選び、その自信は折れることなく全問正解へと到達した。現場の空気は良かったような残念なような、不思議な空気となっている。

 

「ん~。一部怪しいような感じだったけど、そこ以外完璧な解答でしたなぁ」

「んでもさ?あそこだけなんか変だったけど、なんだったの?」

「あの問題の写真に写ってたアイドル、俺の大好きなレジェンド級のアイドルなんだ。俺がまだ若かった頃、俺より年下なのに日本中……もしかしたら、世界にまで名を響かせたほどなんだ」

「そんなに凄い人だったのか」

「今はそのお子さんがアイドルとして活躍してるんだよ。そんな人のデビュー当時の写真なんて珍しいものを見れてさ、つい拝んじゃったんだ」

「にゃるほど。そういうことだったか~」

「まぁ、みのりにーちゃんに限って間違えるなんて無いよね~」

「ナチュラルに拝んだってのをスルーしちゃうんスね」

「「慣れてますから」」

「それで、予定通り追いつかれちゃったわけだけど、ここからが正念場!」

「説明してた通りここからはサドンデス!お互いにジャンルを一つずつ選んで勝負だよ!」

「もし正解数が並んじゃったら、今度はその相手の選んだジャンルも答えるのだ!3回引き分けたらまたジャンル変更だよん!」

「ちなみにこれも言ってた通り、ここまでの勝負で使ったジャンルはどれも使用不可!新しいのを選んでもらうよ~ん」

「そんじゃ最終戦に向けて」

「シンギングタイム」

「「スタート!!」」

「だから歌うなって」

 


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