一週間プロデュース~目指せパーフェクトコミュニケーション~   作:シンP@ナターリア担当

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ガラスに映った華の彩り~華の浅草良い物探し~

 

「ん~!あんみつって美味しい~!」

「初めてのあんみつはお気に召したみたいだねぇ」

「あんみつにもいろいろあるけど、ここのんはシンプルで美味しいわ。後で紗枝はんにも教えてあげよ」

「んにゃにゃ!こっちのおせんべも負けてないでにゃんす!長年変わらぬ味加減に焼き加減。素晴らしいでにゃんすよ!」

「初めて食べたものをさも長年食べてきたように言えるのは貴方くらいですよ」

「え?こないだのライブ見てくれた?まいったな~。これでまた浅草でのあたしの評判が上がっちゃうよ~」

 

 自由っていうのを形にするとこうなるんだと言わんばかりの自由っぷりである。先ほどまでのやり取りなど無かったかのように各々が好きに動いている。カメラマンも誰を映せば良いのやらといった表情だ。それを少し離れた場所で見る彼女はというと、何故か満足げな表情をしている。きっとこの組み合わせにしたのは正解だったと思っているのだろう。名前の通り、苦労する者もいるが、それは必要経費とでも考えているのだろうか。

 

「さてさて、浅草ってのはこんなもんじゃあございやせん!あっちにもこっちにも、まだまだ見るとこ聞くとこ触るとこ!山のようにあるんでさぁ!」

「それじゃ、ここは一つキャシーちゃんに食べ物以外のオススメを紹介してもらおうじゃないさ」

「よし来た!それならまずは、浅草と言えばこれ!人力車で移動開始ってなもんよ!」

「おお~。フレちゃん人力車って初めて見る~。運転していい?」

「フレちゃん。人力車は乗っけてもろたら後は勝手にやってくれはるんやで」

「前に来たときも乗せていただきましたが、人が乗ったこのサイズの台車を引っ張る皆さん。本当にすごいですね」

「くろークンくらいならワガハイでも運べそうでにゃんすねぇ」

「ボウヤくらいなら、アタシも運べそうだけどね」

「じゃあ翔真さんはフレちゃんが~」

「いや無理やて」

「人力車を引いてくれるお兄さん達のあたたか~い笑顔ももらえた所で、さぁさぁ乗った乗った!」

「よろしくお願いします」

「よろしくでにゃんす~!」

「ねぇお兄さん、これって免許あったりするの?」

「いやさすがに無いでしょ」

「ありやすよ!」

「あんの!?」

「冗談です」

「嘘か~い!」

「ユーモアのあるお兄さんだねぇ。こっちも頼むよ、お兄さん」

「美人さん乗せりゃ体力なんざいくらでも沸いてきまさぁ!」

「おや、嬉しいねぇ。だけど残念、アタシは男だよ」

「えぇ!?うちのかみさんより綺麗だってのに!?やっぱ世の中わかんねぇことだらけだ」

 

 キャシーと女性カメラマン、周子とフレデリカ、九郎とキリオ、そして翔真と小柄な男性カメラマンという割り振りで人力車へと乗り込み、景色を眺めたり、いろんな場所の説明を受けながら次の場所へと移動していく。時折引いてる男性よりも詳しいことがキャシーから飛び出したり、キリオやフレデリカが勝手に下りようとしたりと大変ではあったが、揺られること15分で次の場所へと到着したようだ。と、到着した所で一度カットが入り、収録再開からようやくの小休止となった。

 

「にゃっふふ~。人力車楽しいでにゃんすね~」

「急にドアを開けようとした時はどうなることかと思いましたがね」

「お兄さん慌てたはったなぁ。九郎さんが止めたからなんとかなったけど」

「ボウヤ。危ないことはあんまりしちゃダメよ?」

「うにゃ~。気をつけるでにゃんす」

「それでそれで?今度はどんな美味しいもののお店なの?」

「残念無念。美味しいもの以外と言われたから、次は食べ物じゃないんでさぁ」

「あ、ほんまに食べもんちゃうんや」

「あれ?信じられてなかったの?」

「はいはい。雑談は後にして。はい、飲み物」

「あら、ありがとうね、プロデューサーちゃん」

「ありがとうございます」

「なぁプロデューサーさん。さっきの勝負の話、どないすんの?」

「ん?そりゃあやるって言ったからにはやるよ?勿論公平を期すために私はなーんにも口出ししないけど」

「んにゃ~。美味しいものに素敵なもの、珍しいものでにゃんすよね~」

「言いだしっぺのキャシーちゃ~ん。なんかある~?」

「パッて思いつくのならいくつかあるんだけど、簡単に思いつけちゃうものじゃあなんかな~って」

「今から行く所の物はダメなんですか?」

「ダメってことも無いんだけど、一歩足らない気もするんだよねー」

「せっかくなら他に無いくらいのものにしたいものねぇ」

「ここまで浅草育ちをアピールしてきた身としては、勝たないわけにはいかんのですよ」

「それも大事だけど、今はまず収録の方も大事にしてよ?あなた達はゲストなんだから。自由に、とは言っても相手さんの迷惑になるような事じゃダメだからね」

「え~?フレちゃんそんなことしないよ~。3回に1回くらいしか」

「せやな。手前2回が大丈夫やった思うから今回が3回目やで」

「その情報は欲しくなかったですかね……」

「くろークンは心配性でにゃんすねぇ~。大丈夫でにゃんすよ!そんな時のためにワガハイがいるんぞなもし!」

「……」

「九郎さん、よう言うん我慢しはったな」

「いえ、慣れてますから」

「九郎ちゃんも気苦労が絶えないねぇ」

「他人事ですなぁ翔真さん」

「ふふっ、いざって時は助けてあげるつもりだけどね」

 

 彼ら彼女らの自由さにもそろそろ慣れてきたのか、周りのスタッフ達も笑いながらその会話を見ている。何人かはカメラも回し、メイキング映像に使えるシーンを逃さないようにしているようだ。このアットホーム感も撮影には大事であり、メンバーの緊張がほぐれたり、いい空気でスタッフ達も仕事ができるので、お互いに良いことばかりなのだ。時折肝を冷やす発言があったり、時間が押してしまったりすることもあるが、そこもまた自由だからこそのものだとある程度は割り切られているように思える。そんな良い空気の中、小休止も終わり撮影再開の流れとなる。再開は人力車を降りるシーンからなので、もう一度乗りなおし、すぐ様再開となった。

 

「はいはいとうちゃ~く!」

「お兄さんたち、ありがとうね」

「ありがとうございました」

「ん~!座りっぱなしで疲れちゃった。休んでいい?」

「座ってたんやから十分休めてるでしょ」

「さてさてキャシークン、ここはなんのお店なんぞな?」

「ふふふ、良くぞ聞いてくれました。こちらのお店はとんぼ玉の制作体験の出来るお店でごぜーやす!」

「とんぼ玉?」

「綺麗な模様を付けて、真ん中に穴を開けたガラス玉のことを、とんぼ玉と言います。はるか昔に海外から伝えられた技術ですね。主流なのは江戸とんぼ玉と呼ばれており、根付けやかんざしなんかの装飾品に付けられたりしています」

「さっすが九郎ちゃんだねぇ」

「それで、ここはそのとんぼ玉を自分で作れるってことなん?」

「まぁ体験教室ってやつだから、1から10までとは行かないけどねん」

「でもそれ面白そ~う。フレちゃん、自分の顔とか描いてみた~い」

「にゃかにゃかに難しそうでにゃんすけど、ワガハイも猫の顔を描いてみたいでにゃんす!」

「流石にそれは無理でしょうね。しかし、こういう体験ができるのは良いですね。是非やらせていただきましょう」

「んではでは!レッツゴー!」

 

 九郎の説明を受けて興味が湧いたのもあり、一同はそのまま店の中へと入っていく。中には所狭しと様々な柄のとんぼ玉が並べられており、それぞれが惹かれる色のとんぼ玉の方に散っていく。九郎は緑を主体にしたとんぼ玉、フレデリカは黄色や金、翔真は赤、周子は青、キリオは色の混ざり合ったものを見ている。どれも素晴らしい出来であり、素人目にしてもいい品であるのが分かる。キャシーはというと、奥で店主と話しており、撮影の説明と、とんぼ玉の制作体験の受付をしている。スタッフ達もオンエア用にいろんな角度から並んでいるとんぼ玉を撮影しており、広い店内が少し手狭に感じるほどだ。だがそれも束の間、受付が終わったのかキャシーが皆の下へと戻る。

 

「はいは~い。とんぼ玉がどんなもんか確認できた~?」

「すごいもんやなぁ。こんなちっさいガラスにこんな綺麗に模様描けるもんなんやなぁ」

「ワガハイ猫ちゃんは諦めるでにゃんす……代わりに、ワガハイの髪の色で綺麗に塗るでにゃんす!」

「いいねぇ。アタシはどうしようかねぇ~」

「ねぇねぇ。フレちゃん良い事思いついちゃった~」

「どうしたんですか?」

「あのね。皆で3つずつくらい作って、それをぐるっとわっかに繋いで腕輪にしちゃうのどう?」

「あ、それええやん!」

「確かに、世界に一つだけのブレスレットですね」

「よっし!それなら善は急げだ!3つも作るなら早くやらないとね!」

「頑張るでにゃんす~!」

「ご指導、よろしくお願いします」

 

 そしてここでカットの声が飛ぶ。大丈夫だとは思うが、実際に3つを作るとなると時間も限られてくるので、それの確認をしたいらしい。スタッフ達は店主に確認を取っており、メンバー達はどんな柄にするのかを色々と話し合っている。作りたいものを、とは言ったものの、やはりそれで合作として一つの物を作るのなら、どこかしらに統一感があった方が見栄えは良いだろう。スタッフが持っていたメモ帳を使い、デザインや色合いの案を出し合ったり、繋げる時の順番なんかも話している。どうやらここに来たのは大正解だったようだ。スタッフ達の確認も終わり、撮影再開が近づいてくる。

 

「ワガハイの髪の毛の色で3つ作ったら、他の色合いも明るい色の方がいいでにゃんすかねぇ?」

「ん~。フレちゃん的には、反対側にそれとちょっと遠い色とかを置いたりするのも綺麗だと思うんだ~」

「そんじゃあうちが青と白で作ってもええ?頭ん中に出せてるんよ」

「いいんじゃないかい?アタシはそうだねぇ……ちょうど間、ってわけでもないけど、彩の紫に近い色で作ってみようかねぇ」

「綺麗なものに、仕上がると良いですね」

「あ、準備できた?はいは~い。さてさて皆の衆、準備の方が出来たみたいなので、奥の工房へレッツゴーでい」

「さて、私も……」

「あ、プロデューサーは、ダーメ」

「え?どうして?」

「これから作るブレスレット、765プロさんとの勝負の素敵な物の所に使おうと思っててねぇ」

「先に見てしもたら面白う無いやん?」

「てなわけでここからはワガハイたちとスタッフさんだけで行くでにゃんすよ~」

「む~……」

「ほらほら、むくれてちゃあせっかくのお顔が台無しだよ」

「別にいいですよ~だ」

「あ、拗ねてる」

「かわええとこあるやんか~」

「うっさい!さっさと行ってきたら良いでしょ!べ~っだ!」

「おへそがあっち向いちゃったでにゃんす」

「仕方ないね。んじゃ、気を取り直して頑張っていこーぜーい!」

「ごめんなさい、プロデューサーさん。出来るだけ早く戻りますから」

「ふふっ、ありがとね、九郎。でも大丈夫、こういう時間だって欲しかったの。考えないといけないことも多いからね」

「分かりました。それでは、また後で」

「うん。頑張ってらっしゃいね」

 

 そう声をかけ、全員が奥へと入って行ったのを見届けてから、同伴するスタッフに頭を下げ、短い間だけどあの子達をよろしくお願いしますと、丁寧に言葉を紡いでいた事を、6人は知らなかっただろう。

 


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