一週間プロデュース~目指せパーフェクトコミュニケーション~   作:シンP@ナターリア担当

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自由気ままに歩きましょう~ツッコミ役は修羅の道?~

 

「おんや~~?今どこからともなくちゃんと合わせにゃさいとのお声が届いたでにゃんすよ~?」

「そ~んなありがたい言葉をくれるカワイコちゃんたちは、どこのどなたなんだろうねぇ?」

「要約すると、本日のゲストの紹介コーナーです。それではどうぞ」

「はいは~い。今回のゲ・・・」

「あ、知らざぁ言ってきかせやしょう!!」

「え?」

「見た目はフランス、中身はハーフ、喋る姿はフレデリカ~。お茶の間のみ~んなに大好きになってもらいたいアイドルTOP30くらいには入ってると思うフレちゃんだよ~」

「ちょっとま・・・」

「生まれも育ちも葛飾柴又・・・人呼んでフーテンのキャシーってなぁ、オイラのことさ・・・ふっ、今日も浅草の風が呼んでるぜ・・・」

「いや、こんなん聞いて・・・」

「んでもって最後に我らがリーダー!」

「泣く子も笑うその美貌。とくとごろうじろ!」

「「どぅるるるるるるる・・・デン!!」」

「えっ・・・この流れでうち!?何なんこれ?」

「シューコちゃん、あれあれ」

「え?えっと・・・お里は違えど下町人情、うちら京都の十八番。聞いて驚き見て笑え?」

「三人合わせて~~」

「「メイド・イン・イタリアン!!」」

「いやイタリアどっから出てきたん!」

「お~!息ピッタリでにゃんす!」

「こりゃあこっちも負けてられないねぇ」

「はい。そろそろちゃんとやらないと監督さんに怒られちゃいますからね。それと、あんまりツッコミ役をいじめすぎると後が怖いですよ?」

「「は~い!」」

「え?ほんまになんやったん?台本もなんも無いからこんな感じでとしか言われて無かったんやけど?」

「実はさっきキャシーちゃんと一緒に考えたんだ~!面白いでしょ?」

「ねぇ九郎さん、うちら二人だけでデートしようや~。絶対その方が二人とも楽やと思うんやけど」

「気持ちは分かりますし、お誘いはとても嬉しいですけど、私達がいなくなった残りの皆さんがロケをすると考えてください」

「ごめん。うちが悪かったわ・・・」

「むっ!心外だねぇシューコちゃん!私達だってやりゃあ出来るとも!」

「そうでにゃんす!くろークンも酷い言い草でにゃんすよ!」

「「ちょっと静かにしててください(しとってな)」」

「息ピッタリだねぇ」

「それじゃ、フレちゃんご一行、しゅっぱ~~つ!」

 

 カット!と声が飛ぶ。その声を皮切りに、そこら中から大きな笑い声が上がる。勿論それは出演者や彼女も例外ではなく、一部の例外を除いて場の雰囲気はとても朗らかなものだ。逆にその除かれた一部は始まってすぐだというのに襲ってくる疲労感か、はたまたこの先の不安を感じてか、二人そろって大きなため息を吐いている。先ほどの周子の発言の通り、この番組には台本というものが存在しない。出演者達によって本当に気ままに気になった場所を見ていくという行き当たりばったりな番組だ。勿論先んじてスタッフが撮影場所を回り、撮影の許可を得ているが、この番組は隔週での放送でありながらかなりの人気を持っており、紹介されたお店や名所なんかは目に見えて人気が出るのだ。よっぽどが無ければ撮影を断れることも無いだろう。と、そんな裏話はさておいて、今はキャシー監修のもと、どういうルートで回るかを考えているようだ。

 

「確か前回は、この先の通りを右手に入って行ってましたね」

「その先に人形焼のお店を見つけちゃったんでにゃんすよね~」

「あぁ~あのお店の人形焼は美味しいからね~。外までいい匂いもするし、つい行っちゃうのも分かる分かる~」

「ほんじゃあ今回は逆に左の方に行く感じなん?」

「いやいや、ここはあえてもう一回右に行っちゃお~!」

「おや、その心は?」

「人形焼食べたーい!」

「キャシーさん、左にはどういうお店があるんですか?」

「えぇ~ん。くろちゃんが冷たいよネコちゃ~ん」

「くろークーン、女の子を泣かしちゃ~ダメでにゃんすよ~?」

「そうですなぁ・・・あっちの通りってなると・・・そうだ!今年で創業80年になる老舗のお煎餅屋さんがあるよ!」

「いいね~。けど、シューコちゃん的には甘いものも食べた~い」

「ふっふっふ。このキャシーさんの情報力を甘く見ちゃあいけやせんぜ。同じ通りにゃあ下町の甘いの筆頭。あんみつを売ってる甘味処がございやすぜ!」

「お~!あんみつ!!フレちゃん大好き~!食べたこと無いけど」

「それならここは行っとかないとねぇ。後はまたいつも通り、気になったところを見ていこうじゃないさ」

「あにゃ?今度はワガハイがしょぼんとしちゃうでにゃんすよ~?」

「はいはい。ちゃんと構ってあげますから、勝手にどこかいったりしないでくださいね」

「やっぱり最後にはちゃんと構ってくれるくろークン大好きでにゃんすよ~!」

「「「ひゅ~~お熱いね~!」」」

「スタッフさんたちも悪ノリは止めてください」

 

 見ていただいて分かるとおり、こちらの番組もメインパーソナリティーである彩の3人と、スタッフ達の仲はとても良い。というのも、単純に彩の3人の、特にキリオの絡んだ掛け合いが面白いからというのが一つ。そして、収録中にスタッフに話を振ったり、美味しかったものをスタッフにもおすそ分けしたりと、普段から仲良くするようにしている。そのおかげというべきか、今のようにスタッフ側からも彩をいじるという事も多々有り、10回目記念の特典DVDでは、撮影の舞台裏を映したメイキング映像が付属され、その評判はかなりの物となり、次も是非メイキングをとの声が相次いだ程だ。と、またもや裏話になってしまったが、どうやらそろそろ撮影が再開されるようだ。

 

「それじゃ、そろそろ始めましょうかい?」

「そやね~。プロデューサーさんもワクワクしとるみたいやし」

「あ、ばれた?」

「プロデューサーからのあっつ~い視線でフレちゃん照れちゃう~」

「照れちゃうでにゃんす~」

「ちょっとおいで九郎ちゃん」

「なんです?」

「あ~内緒話なんてずる~い!」

「ほらほら、キャシーは説明のこと考えとかないとでしょ?」

「自由な喋りでこのキャシーちゃんが黙るとお思いで?」

「あら失礼。それで、そっち二人はいつまで内緒のお話してるのかしら?」

「ほらほら九郎ちゃん。言ったげな」

「な、なんで私がこんな・・・」

「ん~?九郎さんもじもじしてんね~」

「これは・・・面白いものが見れそうでにゃんすね?」

「はぁ・・・ぷ、プロデューサーさん!」

「ん~?なにかしら?」

「その、は、恥ずかしいので・・・あんまり見つめないで、くださいね?」

「っ!!!」

 

 普段は冷静なツッコミ役が、突然ボケるとどうなるか。面白ければそのまま笑いとなり、そうでなければ面白くないことをネタに笑いとなる。では、普段は色白の優男に見えるような男性が、突然頬を染めながら、小首を傾げて年上の女性にお願いをするとどうなるか。答え合わせをしよう。

 

「にゃっははははは!!くろークン最高でにゃんすよ!!」

「うっわ~。今のはプロデューサーさん効いたやろな~」

「あっはは~!プロデューサー顔真っ赤~!」

「ぐぬぬ・・・まさかこのキリの字以外にキャシーちゃん以上に目立てる相手がいようとは・・・侮れんですな・・・」

「いや~いい表情もらっちゃったよ、プロデューサーちゃん。そんな表情も出来るんじゃないか」

「さ、流石に今のは破壊力高すぎるんじゃないかなって・・・お姉さん思うな~。あはは・・・」

「あぁ・・・今すぐこの場から消え去りたい・・・」

「Foo!!」「もう一回!もう一回!」「録音オッケー!?」「バッチリっす!」「新たな世界が見えました」「九郎ちゃんのお姉さんになりたい・・・」

「スタッフさん?その録音とか映像をメイキングで使ったら、私この番組下りますからね?」

「「「サーイエッサー!!」」」

 

 答えは大騒ぎである。まぁそれも仕方ないだろうか。基本的にツッコミ役やら進行役をやることが多い九郎が、突然このようなことをすれば大騒ぎにもなるだろう。だが、騒いでばかりでは収録はいつまで経っても終わらない。ひとしきり騒ぎ終わると、全員が気持ちを切り替えて、改めて撮影開始となった。

 

「それにしても、前に来た時にも思ったけど、この辺の町並みは映画なんかで見そうなくらいに綺麗なもんだねぇ」

「さっすが旦那。目の付け所がいいですなぁ。それもそのはず、この浅草の通りは、時代劇に下町人情物語。果てはタイムスリップ映画と、た~っくさんの場所で本当に使われてるんですともさ」

「なるほど。実際の町並みを使ってるからこそ、いい映像が撮れるというわけですね」

「あ、そういえばシューコちゃんも結構前にこの辺でドラマの撮影してたわ~。他社の番宣になってまうからあんまり言えんのやけどね~」

「なんのなんの!細かいことは言いっこなしでにゃんすよ!そこはほら、あっちのおにーさまおねーさまの皆さんが、あそこの奥のほ~うにいるこわ~いおじさんにお願いしてくれるでにゃんすから。ね?」

(『止めて!!』というカンペが出る)

「ふむふむ、フレちゃんフランスっ子だから日本語わかんな~い。あれってオッケーってことでいいの?」

「もちろんでにゃんす!」

「やった~!スタッフさんたちだ~い好き。具体的にはこの前買った150円くらいのお菓子の次くらいに好き~」

「それあんまし高ぁ無いやん」

「スタッフさんいじりもそのくらいにしないと、また変な無茶振りが飛んできますからこの辺で」

「そろそろどっかのお店にでも寄りたいとこだけど・・・っと、良い所に良さそうなお店があるじゃないさ」

「ほほう、お目が高い。あちらは今年で創業80年にもなる老舗のお煎餅屋さんでございます。代々続く変わらぬ味で、ここらじゃ知らない人はいないってな程の名店ですなぁ」

「おお!おせんべいでにゃんすか!早速お邪魔するでにゃんす!」

 

 これがいつものこの番組の進み方だ。周りを見てゆっくりと歩き、気になるものがあればそこに行く。今回は事前情報を持つキャシーもいるお陰でスムーズに回れるので、さらに調子良く行くかもしれない。だが、いつもいつも、何も起きないままで終わらないのがこの番組が人気である所以なのだ。きっとまた、何かしら起きるのだろう。例えばそう・・・

 

「ごめんくださ・・・」

「んにゃーーー!!!だーからなーんで麗花ちゃんはいっつも茜ちゃんの食べる分を食べちゃうのーー!!」

「茜ちゃんの方に出てるあんみつさんが、私に食べて欲しそうにしてた気がするんだ~」

「理由になってにゃーーーい!!」

 

 本当に偶然に、別の旅番組とロケの場所とタイミングが被ってしまったりするかもしれない・・・。

 


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