一週間プロデュース~目指せパーフェクトコミュニケーション~ 作:シンP@ナターリア担当
「さーてさてさて真美さんや?」
「なーんでござろう亜美さんや?」
「さっきも言ったとおり、今回はすっぺしゃ~るってなわけで、超超超豪華なゲストさんが来てくれてるじゃああ~りませんか」
「お~!真美ともあろうものがうっかりしてたじゃあ~りませんか!ではではでは~?そろそろ、紹介コーナーの方、いっちゃいますか~?」
「いっちゃいましょ~!ってなわけで、最初のリアクションでいっちばんいい感じのリアクションをくれちゃったけど、絶賛待ちぼうけをくらって油断しちゃってる奈緒ねーちゃんからいってみよ~!」
「えぇ!?い、いや!台本だったら向こうからって・・・」
「ほっほぅ・・・さては奈緒ねーちゃん、トリになるからって、サイッコーに面白いネタを用意してくれちゃってるね~?」
「まっ・・・」
「な、なんだってー!も~、奈緒ねーちゃんってば、そんな大事なことはもっと早く言ってくれないとじゃ~ん。それなら、しっかりトリを務めてもらわないとだよね~」
「あの・・・」
「それじゃあ改めて、サイッコーに面白いネタを用意してくれてる奈緒ねーちゃんのために場を暖めてもらうべく、ピエるんから自己紹介、いってみよっか~!」
「やふー!ボク、ピエール!今日はBeitの二人も一緒!頑張る!」
「うんうん。やっぱりピエるんの元気いっぱいの自己紹介はいいですなぁ・・・これにはテレビの前のにーちゃんねーちゃん達もときめいちゃったんじゃな~い?」
「だ・け・ど!そ~んな中でもおねーさまがたの視線を奪っていっちゃうのがお次の王子様!実は収録のたんびにいろんなところでカットシーンを大量生産しちゃってるお茶目さん。みのりん、いっちゃって~!」
「あはは・・・その節は毎度スタッフさんありがとうございます・・・っと、改めまして、Beitの渡辺みのりです。今日は対戦形式というスペシャル回に呼んでもらえて光栄です。絶対勝つから、応援してくださいね」
「う~ん。こうやってさらっとアピールしちゃって、それなのに嫌味なところやあざとさがないのがみのりんの良さだよね~。おねえさまがたの声援はぜーんぶみのりんが独り占めかも?」
「そ~んな二人を率いるのは、ゲスト参戦回数1位タイ!もはや準レギュラー!いや・・・もしかするとレギュラーも狙ってるんじゃないかにゃ~?恭二にーちゃん、いってみよ~!」
「うっす、Beitの鷹城恭二だ。今日も全力で楽しませてもらうぜ。それから、レギュラーはマジで狙ってないからな。こういうのはゲストで入る方が自由にやれるから楽しいんだよ」
「な~るほど、司会だと見てるだけの時もありますからな~。真美も見ててたま~にそうじゃないよ~って言っちゃいそうになるんだよね~」
・・・いったいどこからこれだけの言葉が出てくるのだろうか・・・。見てる人からそんな感想も出てきそうな司会進行をしているこの双子こそ、765プロダクションに所属アイドル、双海亜美と双海真美である。自称元祖双子アイドルであり、自称アイドル1の物真似上手であり、自称妹にしたい双子ランキング1位である。とまぁそんな冗談はさておいて、開始早々のこのはっちゃけ具合を見ていただいて分かるとおり、まさにやりたい放題だ。これで何故怒られないかと言えば、この二人が自由にやればやるほど、不思議なことにこの番組の視聴率や評価率は上がっているのだ。まぁ何よりもスタッフ達もこういったノリが好きな人間が集まっているというのも少なからずあるのだが、それはそれである。と、ここで彼が全員のほうを順番に見ていると、明らかに一人、彼にヘルプのサインを送っている人物がいる。カメラに映っていないタイミングで必死に彼に助けを求めているが、この状況で彼に何が出来ようか・・・。そして彼は深く一度頷くと、彼女に向けてサインを返した・・・。手を握り、親指だけを伸ばし、それを天へと突き立てる。それは見事なグッドサインだった・・・。それを見た少女が口パクでバカと叫んだのは言うまでも無いだろう。
「んっふっふ~男性メンバーの紹介が終わって、次はテレビの前のにーちゃんお待ちかね、女性メンバーの紹介ターーン!まずは!恭二にーちゃんと同じくゲスト最多出場のさなさな~!」
「は~い!ゲーマーアイドルこと、三好沙南でーす!今日はチーム戦ってことらしいから、いっつもより気合入れて、頑張っちゃうよ~!」
「うむす!いつもどおり明るく元気でパーフェクトな挨拶ですな~。世のにーちゃん達は、もし町のゲーセンでさなさなを見かけても、自分から声かけたりしちゃだめだかんね~?」
「最近は登下校中の子に挨拶しただけで騒がれちゃう・・・なんとも悲しい世の中だねぇ・・・さてさて、そんな社会のグレーな部分を投げ捨てるために、こちらもグレーをぶつけようじゃあありませんか!ひなひな!挨拶れっつらごー!」
「誰がグレーな部分っスか。っと、申し送れたっス。自分は荒木比奈っていいます。沙南ちゃんの仲良しメンバーとして選ばれたみたいなんで、頑張っていくっスよ~」
「この無気力に見えて実は結構やる気満々とこ、嫌いじゃないぜ~?でもでも、そのやる気はもーっと別のところにも向けないとなんじゃ・・・あ、これ以上はダメ?も~しょうがないな~。ひなひなはちゃんと後で止めてくれたにーちゃんのお礼言わなきゃダメだよ~?」
「そ~んなひなひなと事は置いといて・・・さぁついに、お待ちかねの時間が来ましたな~」
「そうですな~・・・わざわざ流れを止めてまで最後がいいと言ったほどのサイッコーの自己紹介・・・見なくちゃ番組も始められないってなもんですよ」
「では・・・」
「では・・・」
「「ではではでは!」」
「奈緒ねーちゃん!」
「自己紹介!」
「「いっちゃってー!!」」
その言葉と共にセットの証明が暗くなり、奈緒にのみスポットライトが当てられる。何度も言うが、これは完全にあの双子のアドリブであり、今のこの状況は、完全にスタッフの悪ノリである。そして、そのスポットの中央で俯いている奈緒だったが、それもほんの3秒ほど、勢いよく上げた顔は、もはや何か吹っ切れたのか、普段では絶対に見ないような、少し悪戯っ子のような笑顔だった・・・。
「あ、あの・・・アタシ、神谷奈緒って言うんだけど・・・実は、ゲームってとっても苦手でさ・・・で、でも・・・みのりさんが、この空気の中でも全力の一発ギャグを見せてくれたら、頑張れる気がするんだ!だからみのりさん・・・アタシのために・・・一発ギャグ、して・・・ほしいな?」
「おーっと奈緒ねーちゃん!!ここでまさかの巻き込みだーー!!」
「対するみのりん!どうかえ・・・」
「喜んで!!!」
「即答!!男だぜみのりん!それじゃあみのりんのギャグまで3秒前!3、2、1、キュー!」
「ゲームの最高難易度をノーミスでクリアする瞬間と、それを見られてたのに気付かずに平静を装って挨拶をする恭二の物真似・・・『これ避けて、これで、ラスト!!・・・っし!!ったーーーー!!やっぱゲームなら俺天才だわ!!!次はどれを・・・みのりさん、おはざす。今日早いっすね』」
「っ!!」
「おおおお!!これはか~な~りレアなものが見れたんじゃあありませんかな~!?」
「さてさて、この件に関してはある方からお話を伺いたいと思うのですが・・・さっきのあれ、本当だったの?恭二にーちゃん?」
「っ!!みのりさん!!聞いてたんだったらなんで何にも言わなかったんすか!!あの後も普通だったから絶対聞かれてないって思ってたっすよ!」
「いやぁ、あんなレアな恭二を見れたし、言わなかったらまた別のタイミングで見れるかなって思って」
「う~む愉快愉快!奈緒ねーちゃんナイスキラーパス!この功績に免じて、自己紹介いじりは勘弁してしんぜよう!」
「はは~。ありがたき幸せ。なんてな。みのりさん、急に振っちゃってごめんなさい」
「大丈夫だよ。むしろご褒美だからね」
「すいませーん、ここカットお願いしまーす」
「みのり。嬉しそう!」
「このまんまじゃあみのりんがダメダメモードになっちゃいそうなので、ここらで自己紹介パートは終了のお時間。スタッフのにーちゃん達がセットを頑張ってくれてる間に、雑談タイムとしゃれこもうぜぃ!」
あわや大惨事というところだったが、どうやら無事に事なきを得たようだ。彼からも編集スタッフに先ほどのみのりのワンシーンをカットするようにお願いをして、彼自身はスタッフの邪魔にならない位置へと移動する。その間も撮影は続いており、セットの中では双子の二人が出演メンバーに今日の意気込みなんかを聞いている。相変わらずテンションははちゃめちゃなままだが、司会進行としてはいい仕事をしていると考えるべきだろうか。と、彼がそんな風に考えている間にセットの準備が完了したようで、早速一つ目のゲームが開始されるようだ。
「にーちゃん諸君ごくろー!頑張ってくれたおかげでひなひなの私生活の一部がばらされずに済んだところで、早速やっていっちゃうよ~!」
「今回はさっきも言ったとおり特別ルール!3人対3人でゲーム3本勝負!一つのゲームで代表者を一人出して、代表者同士でレッツらバトル!」
「実は裏で選出順を既に決めてるとか、どんなゲームをやるか最初から分かってるなんて事も無い完全なガチバトル!」
「さぁさぁまずは第一戦目!ゲーム内容は~こちら!!」
「「リズムゲームMAXコンボ対決~!!」」
「ルールはとーっても簡単。ゲームする人は、このリズムゲームから1曲好きな曲を選んでもらいまーす!」
「そして、実際にその曲をプレイしてもらって、できるだーけコンボ数を稼いでもらいまーす!」
「そしてお互いに1曲ずつプレイしたらMAXコンボ数を確認!勝っていた方が一本先取!」
「先に三本とった方の勝ち。ルールはたったのこれだけ!」
「楽にコンボ出来る曲を狙うもよし」
「難しい曲で大穴狙いもよし」
「戦いは数なんだよにーちゃんねーちゃん!」
「なんで君達の歳でそれを知ってるんスか・・・」
「ふっ・・・ボーヤだからさ・・・」
「このためだけにわざわざサングラスまで・・・」
「そんなニューパイプだかユーライクだかわかんないのは置いといて、そろそろ一人目、選んじゃいなYO!」
「シンギングターイム、スタート!」
「歌ってどうすんだ」
「「本日はみんなに~」」
「本当に歌うの!?」
「Foo!!」
「ふーー!」
「これ・・・無事に撮影終わんのか・・・?」
そんな奈緒の小さなぼやきは、こんな状況でもしっかりとカメラを回し続け、その場面をきっちり抑えたスタッフの手によってお茶の間に流れたのは、この収録のオンエアの日であった・・・。