一週間プロデュース~目指せパーフェクトコミュニケーション~   作:シンP@ナターリア担当

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ゲームで繋がるコミュニケーション~ドッキリ大成功?~

 

 現在地はテレビ局内の宛がわれた控え室。沙南、奈緒、比奈の3人と、Beitの3人、そしてプロデューサーが同じ部屋にいる。時間は先ほどから約20分経過しているが、番組の収録までにはまだ時間に余裕はある。先ほどのてんやわんやからなんとか落ち着きを取り戻し、全員が一息ついたタイミングで恭二が話を切り出した。

 

「さて、みのりさんも落ち着いたことだし、そろそろ説明してくれるか?プロデューサー」

「あはは……ごめんね。昨日ライブ見たばっかりだから興奮しちゃっててさ」

「ま、想定の範囲内でしたね。っと、それよりもこの状況の説明なんだけども、簡単に言えばこれが今回の企画のもう一つのメインなんだ」

「企画のメイン……?それにさっきからの口振りからすると、これは単なる偶然とかじゃないってことか?」

「あぁ。実はこの企画の期間の間……まぁ厳密には最初の顔合わせと、最終日のライブ以外の5日間なんだけど、とにかくこの期間の皆の仕事やレッスンは、可能な限りお互いの事務所のメンバーと被るように調整したんだ。っと言っても、社長やらが勝手に決めただけで、知らされたのはこの企画が決まった後だったんだけどな」

「うちの社長さんも対外ッスからねぇ……。で、今回のあたしらの仕事にバッティングしたのが、このBeitのお三方ってことッスか?」

「そういうことだ。ここを合わせた理由としては、お互いの事務所で同じ番組に何度も出てるメンバーってこともあってだな」

「やふー!一緒におしごと!たのしみ!」

「そっかー……へへっ。そうなんだー……」

「沙南?どうかしたのか?」

「なるほどな。そういうことだったか。こりゃ、腕が鳴るな」

「恭二?なんかいつになく楽しそうだけど?」

「そりゃあそうでしょうね。なんてったってあの二人、この中でもこの番組のゲスト参加回数は抜きに出てるし、毎回スコアとかも凄い記録出してるんだ。それなのにまだ一回も共演が無かったからね。お互い、かなりライバル視してるんじゃないかな?」

「「とーぜん!!」」

 

 二人が声を揃えて返事をし、お互いに睨み合う。だが、それは嫌悪感等のマイナスの感情が入ったものではなく、お互いに純粋に楽しみだったのが伺えるほどに、嬉々とした表情で睨み合っている。彼のライバル視しているという予想は見事に的中しており、お互いがお互いに、是非ともお互いに相手をしてみたかったと思っていたようだ。と、そのような事情説明が終わった所で外から声がする。

 

「すいませーん。346プロさんと315プロさーん。今日の打ち合わせしたいんですけど、今お時間大丈夫ですかー?」

「あ、はい!すぐ行きます!さ、ちょっと変則的ではあるけども、仕事は仕事だ。しっかりと話聞いて、ちゃんとやるんだぞ?」

「分かってるよ!どんなゲームでも、説明書を読むのは大事だもんね!」

「俺はどちらかと言えば説明書読まない派だけど……流石にこういうのはちゃんと聞かないとな」

「今回はどんなゲームなんだろうな~」

「たまには懐ゲーって言われるやつもやってみたいッスね~」

「なつげー?夏にやるゲーム?」

「違うよピエール。懐かしいゲームっていうの略して懐ゲーって言うんだ。少し古いゲームってことだね」

「すごい!みのり、物知り!」

「ほら、雑談は後あと。行くぞ」

 

 彼の言葉に各々が返事をして、すぐに外に出る。いたのは局のロゴの入った帽子を被り、同じくロゴの入ったシャツを着た男性。似た格好の人が他にもうろついているのを見る限り、番組のADなのだろう。ADはおはよございますと挨拶をすると、そのまま7人を収録現場であるセットルームに案内した。そこはすでにセットが組まれており、ゲーム画面を映す用の大型のモニターと、それとは別のプレイヤー用のモニター、席が中央に2席と左右に3席ずつセットされている。全員がセットを見ていると、ADが説明に入った。

 

「見ていただいたとおり、今回は3対3の対戦形式で行われる予定です。ゲームの内容はその時まで秘密とのことです」

「なるほどね~。だから3人ずつってことか~」

「うわぁ、足引っ張らないようにしないとな……」

「あ、大丈夫だよ奈緒さん!勝ち負けは勿論大事だけど、それよりもやっぱり大事なことがあるから!」

「あぁ、ピエールやみのりさんも、気にしなくていいっすよ。だって……」

「「ゲームは楽しくやるのが一番だからね!(だしな!)」」

 

 お互いに言う事が分かっていたのか、顔を見合わせてニヤリと笑いあう。その姿はもはや通じ合った歴戦のライバルといった所だろうか。もう一度言うが、この二人は今回の共演が初めてであり、それ以外での交友も一切無かった。お互いのことを知ってるが、初対面である。

 

「恭二も沙南ちゃんも良い事言うね。そう、やっぱり楽しまないとだよね!」

「やふー!ボクもいっぱい楽しむ!」

「この調子でしたら大丈夫そうですね。あ、勿論八百長など一切無しの真剣勝負ですので、テレビ映えなんかは気にせずにやって欲しいとの上からの指示もありましたので、そこら辺も安心してくださいね」

「おお~。こういう番組にしては珍しいッスね」

「でも、確かに手を抜いたのが分かっちゃうと興ざめだもんな。そういうのって大事だよな~」

「なおさら楽しみになってきたな」

「あ、ところでさ、今日の司会って誰なの?」

「そういえばまだ聞いてなかったね。あの4人の中からで、しかも席が2つってことは、どっちかの組み合わせなのは分かるんだけど……」

「みのりさんはどっちでも良いんでしょ?」

「勿論!!むしろ一人だとしても十分に嬉しいよ!!なんてったってアイドルなんだからね!!」

「ははは……で、誰なんすか?」

「それなんですけど、今回は特別な回だから、それも直前まで秘密にして欲しいと上から……。すいません!」

「いえいえ、そういうことでしたら大丈夫ですよ。ありがとうございます」

「まぁ、そういうこと言うってことだし、大体察しはついちゃったんだけどね」

「だな。さて、どんな無茶振りが来てもいい覚悟だけはしとくか……」

「恭二、顔色よくない。大丈夫?」

「あはは。確かにあの二人は強烈ッスからね……アタシも2回目のゲストの時に原稿の調子はどうかとか聞かれて手元狂っちゃったッスから」

「あたしはフルボッコちゃんのフィギュアを目の前でちらつかせたり、声真似で寸劇されたりして大変だったっけ……」

 

 全員がいろんなことを思い出してるのか、どことなく浮かない表情でうなっているのを見て、ADやスタッフ達も苦笑いしている。きっとこの場にいるほぼ全員が被害にあったのだろう。他に特に質問が無ければ後は撮影開始まで待機とのことだったので、全員は一旦控え室に戻る事にした。

 

「さて、改めてだけど、今回の企画の一番の醍醐味としては、二つの事務所のメンバーが仲良くなることだ。これから先の仕事で、良き仲間として、そして良きライバルとして成長するには、こういう外からの刺激っていうのは大事だからね」

「仲良く!!ボク、得意!さな!なお!ひな!もう友達!」

「へへっ、なんか照れくさいな……。でも、ありがとな、ピエール」

「年下の男の子からの呼び捨て……なるほど、これが……」

「比奈さん。その辺にしとかないと、顔にやけてきそうですよ」

「はっ!?あ、危なかったッス……こ、これが男の子パワー……」

「そう!本当にピエールのこのすぐに仲良くなろうとする所とか、笑顔ってすごいんだよ!」

「はいはい、みのりさんも落ち着いて」

「あ、ご、ごめん。ついね」

「ねぇねぇ恭二さん!今度一緒にオンラインゲームやろうよ!協力とか対戦とかいろいろさ!」

「おう、勿論だ!あ、やりやすい様に連絡先も交換しとこうか。あぁ~……でも、男アイドルが女性アイドルの連絡先を持つのって良くねぇよな」

「そんなの気にしなくても良いと思うんだけどな~」

「まぁ、友達としてなんだから、そのくらいは大丈夫さ」

「やったー!さっすがプロデューサーさん、話が分かる~!」

 

 そこからは、それぞれがそれぞれに楽しそうに話していた。だが、その時間も束の間で、どうやら撮影の準備が整ったようで、先ほどのADが呼びに来た。全員の準備も出来ていたようで、すぐに向かうこととなった。撮影スタジオは先ほどよりも少し豪勢になっており、これでようやく完成のようだ。しかし、相変わらず真ん中の2席は空いたままだ。

 

「346プロさんと315プロさん、入られましたー!席に着かれ次第撮影オッケーです!」

「「「はーい!!」」」

「それじゃあ、もう準備は出来てますんで、名前の書いてある席に着いてください。自己紹介とかもそのまま流れで行きますんで、考えといてもらったセリフ、お願いします!」

「分かりました。さぁ、行こうか!」

「はい!」

「じゃあ、ちゃんと見ててね、プロデューサーさん!」

「おう!期待してるからな!」

 

 そして、スタッフの案内の下、6人はそれぞれの席に着いた、向かって左から、奈緒、比奈、沙南、真ん中の空席二つを挟んで、恭二、みのり、ピエールの順に並んでいる。そして、中央に本来いるはずの司会がいない状態のまま、スタッフ達は撮影を開始する動きを見せる。いつもと違う開始にメンバー達も驚いているが、そのままではダメなので、なんとか普段どおりの表情をしている。そして……

 

「それでは、撮影始めまーす!カウント5秒前から!5!4!3!……」

 

 撮影スタッフの合図で、撮影が開始され、カメラは中央の空席部分を映す。相変わらずそこには誰もおらず、後ろの大きなモニターのみが映っている。と、開始して10秒ほどが経ったかという頃、どこからともなく、とても特徴的な笑い声が聞こえてくる。

 

「んっふっふっふ~。み~んな良い感じに混乱してるね~?」

「このか~んぺきなカモフラージュだもん。仕方ないよね~」

「さてさてさて、それじゃあそろそろ?」

「主役の登場のお時間ですかな?」

「いっくよ~?」

「せーっの」

「「ドーーーーーン!!!」」

 

 どこからともなく聞こえる声と同時に、突然後ろのモニターの中央部分がバリーン!と、紙が破れるような音を立てながら大きな穴が開き、そこから二人の少女が姿を現した。そっくりな背丈にそっくりな体型。そっくりな衣装にそっくりな顔。違うとすれば、髪型がそれぞれ違う方向に髪を結んでおり、片方はただ結んだだけ、片方はサイドポニーのようになっているところくらいだろうか。よく見ると、破壊されたと思われたモニターは、とても精巧に描かれた絵だったようで、それの後ろに隠れていたらしく、さらによく見ると奥にはしっかりと本物のモニターもある。主演者側のほぼ全員が驚いているのを見て満足したのか、二人はそのまま続ける。

 

「さぁさぁさぁ!今回の司会者は~~、この、双海亜美と!」

「この、双海真美がお送りするぜ~~!!」

「全国のにぃちゃんねぇちゃん?」

「はっちゃけちゃう準備はオッケーかな?」

「ゲームは一日好きなだけ!」

「大人も子どもも関係なし!」

「「765プロゲーム部活動記!2時間スペシャル!!はっじまるよー!」」

 

 


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