一週間プロデュース~目指せパーフェクトコミュニケーション~   作:シンP@ナターリア担当

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お仕事を始めましょう~あっちとこっちとそっちも?~

 

 少女達の戦いは終わった……

 

『帰ってこられたんだね。またここに』

『えぇ……昔見た景色のままです』

 

 世界の為に戦い。そして世界を守り抜いた少女達……

 

『ねぇ、この花はなんて言うの?』

『えっと、これはチグリジアかな?確か花言葉は……』

 

 だが……

 

『司令部から全ヴァルキュリアに伝達!緊急事態です!都市中央部で大事故を確認!原因は……』

 

 蒔かれていた最後の悪が……

 

『どうして……どうしてなの?』

 

 今、芽吹いた。

 

『ユミちゃん!!』

 

 それは、起きてはならないはずの戦い。

 

『目を覚ましてください!ユミちゃん!』

『ダメです!このままじゃ都市が!!』

 

 ヴァルキュリアの次なる相手は……

 

『アッハハハハハハ!!』

『被害拡大!!都市機能7割が停止しています!」

 

 共に戦ってきた、ヴァルキュリア。

 

『皆さん……後は、お願いしますね』

『フミカさぁぁぁぁぁぁぁん!!!!』

 

 愛するモノを守るために。

 

『ユミちゃん相手に使いたくなんて無かった……でも!』

『ダメ!!アイコちゃん!!』

 

 愛する世界を守るために。

 

『サァ!決着ヲ付けヨウ?ワタシとアナタ、ドッチが最強ナノカ!』

『そっか……最初っから教えてくれてたのに、気付けなくてごめんね、ユミちゃん。でも、もう大丈夫だから……』

 

 愛する全てを守るために。

 

『『はあああああああああああ!!』』

 

 今、最後の戦いが幕を開ける!劇場版『生存本能ヴァルキュリア~約束の花言葉~』。大ヒット上映中!今、映画館へ行くと、スペシャルキーホルダーをプレゼント!

 

『ねぇ、もし私が敵になっちゃったら、どうする?』

『決まってるよ。絶対に……』

 

 

 346プロの事務所内のテレビで映画の告知CMが流れる。現在時刻は朝の7時30分を過ぎた頃。どうしてこんな時間かと言うと、昨日の段階で話して決定したライブのメンバー及び楽曲の組み合わせを、事務所の掲示板に貼っておくためだ。流石に女性アイドルの個人連絡先を聞くわけにもいかないので、このような形にしたのだろう。

 

「さて、ここなら全員見れるだろうし、大丈夫だろう。それより驚いたよ。まさかこんな時間なのにもう人がいるなんてね」

「私は、いつも一番早くに来ていますので……癖、というわけではありませんが、もう慣れてしまいましたので」

「アタシは昨日は最後になっちゃったから、今日はちゃんと来ないとってな!やる時はやるんだってとこ、見せとかないとだし」

「ふふ、奈緒ちゃんらしいですね。私はライブのことで頭がいっぱいで、わくわくして早くから起きちゃったんです」

「皆それぞれに理由があるんだな。でも、やる気があるのは何よりだ。っと、よし。もう見ていいよ。これが、今回のライブの組み合わせだ!」

 

 おおおお!と思いおもいに声を上げながら貼られた紙を見るアイドル達。中には「ええええええっ!!?」と、叫び声のようなものを上げる子もいたが、まぁ大丈夫だろう。今ここにいるのは、文香、奈緒、卯月、比奈、沙南、悠貴、そして彼の7名。文香は言ったとおり。悠貴は日課のランニングのついでに。残りの4人は、昨日遅くに来たのを気にしているのか、かなり早い内に来ていたようだ。

 

「ま、待ってくださいっス、プロデューサー!こ、この組み合わせには異議を申し立てるっス!」

「あぁ~。確かにこれは比奈さんには荷が重そうだな……。プロデューサーさん。なんでこんな組み合わせになったんだ?」

「そうだね。この中だと明らかに比奈さんだけ浮いてるけど、これに関してはしっかりとした理由はあるよ。だけど、それはまだ言えない」

「ちょ!どういうことっスか!理由があるにしたって、アタシがこんな中に入るなんて!」

「もう決定しちゃったんだし、変えるのは難しいんじゃない?どうなの?プロデューサー?」

「無理ではない。けど、私たちなりに考えを持って組み合わせを作ったから、出来ることならこの組み合わせのままで行きたい。理由に関しても、出来れば自分達で見つけてくれるのが一番いいと思ってる」

「そ、そう言われちゃうと……なんか、上手く丸め込まれたって感じっス」

「頑張りましょうっ!比奈さんっ!」

「私たちも頑張りますから!」

「うっ……元気と笑顔が眩しいっス……」

 

 最初はかなり反対していたが、比奈もなんとか納得してくれたようだ。それもこれも組み合わせに問題があるのだが、反対も無くなった今、これ以上追及する必要も無いので割愛する。その後も組み合わせに関して様々な反応が出たが、比奈以外はどれも驚きや楽しみといった、プラス方向の反応だったので、どうやら組み合わせは全体的に見れば好印象のようだ。

 

「それにしても、こんな早い時間に来ちゃってどうしよっか?一応私と比奈さん、奈緒さんの3人は番組の収録があるんだけど、他の3人は違うでしょ?」

「そうですね。今日はオフの予定でしたので、私はこの発表を見て、自主レッスンなどをしようかと考えておりました」

「私は午後からレッスンなので、一回帰って汗を流しますっ!ちょうど別のプロジェクトにも参加させてもらってるんですっ!」

「たしか、13歳以下の子を対象にした、ジュニアアイドル部門でしたっけ?ふふっ、楽しそうですね」

「そういう卯月は、今日はニュージェネでの仕事じゃなかったか?」

「はい!久しぶりに凛ちゃんや未央ちゃんとのお仕事なので、楽しみです!」

「その仕事へは、渋谷さんのプロデューサーさんが同行されるそうなので、私は着いて行きませんが、大丈夫そうですか?」

「はい!凛ちゃんのプロデューサーさんとも、面識はありますし、ニュージェネの統括プロデューサーでもありますので」

「分かりました。では、皆さん仕事やレッスン等に備えて、各々準備をお願いしますね」

「「「「「「はい(っ)(っス)!」」」」」」

 

 全員の元気な返事が重なり、この場は一度解散となった。とは言うものの、先ほどの通り仕事の予定の3名はその場に残った。さらに時間が8時を過ぎた頃、場を離れた3名と入れ違いかのように、周子、フレデリカ、キャシーの3名が入ってきた。どうやら彼女達も今日は仕事の予定らしい。

 

「おはようさ~ん。う~ん。やっぱり普段は人が少なくて落ち着くなぁ~」

「おはよー!プロデューサーさん、今日も色男してるねぇ。まるで昔なつかし、葛飾は柴又の人気者みたいだ」

「この事務所でそれを分かる人が何人いると思ってるんだ。それに、褒められてるのか微妙だぞ?」

「大人気作品の俳優さんに似てるだなんて、褒め言葉に決まってるじゃああ~りませんか」

「どうだかな。とりあえず、3人ともおはよう。ところで、フレデリカはさっきから喋らないけど、何かあったのか?」

「よくぞ聞いてくれました!それがさ~、聞くも涙、語るも涙も出ないありふれた一日の始まりで、何も無くていつも通りなんだ~」

「プロデューサーさん。フレちゃんの話をちゃんと聞こうとするのは止めといたほうがいいよ。疲れてまうから」

「シューコちゃんひどーい。フレちゃんのナイロン製のハートが傷ついちゃった~」

「伸縮自在でちょっとやそっとじゃどうにもならなそうだな」

「わお!奈緒ちゃんがツッコミしてくれるなんて嬉しい~!お礼にチューしてあげちゃおっか?」

「わーっ!止めろって!!ちょっ!キャシーも悪乗りするな!!」

 

 たった3人。されど3人。人が3人変わっただけで、一気に騒がしくなる事務所内。最初は我関せずと静かにしていた比奈や沙南も、気付けば巻き込まれて、数分後にはワイワイと騒ぎあっている。だが、いつまでもこうして騒いでいても仕方ない。そう考えた彼はパンパンと手を叩き、全員の注目を集める。

 

「よし、それじゃあ確認だ。今日の仕事はこの6人で、比奈さん、奈緒、沙南の3人は番組の収録。フレデリカ、キャシー、周子の3人はロケの予定だ。間違いないな?」

「は~い。多分あってま~す」

「こっちも大丈夫っス」

「で、収録の現場が離れてるから、俺は片方にしか行けないんだが、今回は比奈達の方に行くことにする。局を使うことになるから、挨拶も必要だし、何より一番最年少の沙南もいるから、責任はしっかり持たないとな」

「も~。プロデューサーってば気にしすぎだって!今回の番組は、何回もゲストで参加してる番組だからもう慣れてるのに~」

「いや~。世の中何が起こるかわかりゃあしませんぜ?例えば!突如ゲストの枠が増えて全く知らない人といきなり出演することになったりだとか!!」

「ま、そういう不足の事態もあるってことだ。さ、そうと決まればそろそろ準備しようか。今日のはかなり時間が掛かる収録だからな」

「確かに。毎度あそこの収録は時間掛かるんだよな~。なんせ大体がクリアするまで、とか、条件達成したら、とかの耐久レースみたいなもんだしな~」

「こっちはこっちで、いい画がいくつか取れるまで練り歩くことになるんだろうな~。帰ったら湿布貼ってすぐ寝なきゃかもやね~」

「ほら、文句で口ばっかり動かさないで手を動かす。比奈さん組は私が社用車で連れて行きます。周子達は8時半にはロケ地行きの社用車が出るから、それに乗ってくれ」

 

 テキパキとした指示をしながら、自分も手早く荷物をまとめる。と言ってもさほど大きな物も無いので、持ってきたカバンと少し出した筆記具程度だ。数分後には全員の準備も終わり、そのまま事務所を後にする。鍵はまた誰かが組み合わせの確認をするだろうと考えてそのまま開けておくこととなった。その旨をちひろに伝え、そのまま社用車の貸し出し口へと向かう。昨日見かけた係員とは別の人だったが、やはり問題なく手続きは終わった。どうやら彼の存在はしっかりと周知されているらしい。そのまま車を入り口へと回し、同行する3人を乗せる。助手席はどうやら沙南が座るようだ。

 

「それじゃ、お願いするッス」

「「お願いしま~す!」」

「はい、任されました。っと。それじゃあ、そっち3人も頼んだぞ。スタッフさんたちの指示にはちゃんと従うようにな!」

「分かってるって~。フレちゃん、外ではいい子にしてるんだよ~?」

「本音は?」

「やりたいようにやるのが一番だよね~」

「まぁまぁ、フレちゃんのことはこっちに任せといて」

「かの有名な戦艦大和に乗ったつもりで!」

「そりゃあ心強い。フレデリカっていう大砲が重過ぎて沈没しないように気をつけてな」

 

 もはや友達かと思えるような軽いやり取りをして、その場を車で去っていく。向かうのはここから数キロ離れたテレビ局で、少し先ほどの通り、番組の収録を行うようだ。車の中では、今回はなんだろうとか、難易度はどのくらいか、などと言った今回の仕事に関することを話している。そんな風に話すこと数十分。目的の場所に到着したようだ。関係者用の入り口に車を向け、入り口の警備員に社員章を見せる。

 

「えーっと、あぁ、346プロさんですね。いつもお世話になってます。どうぞ、お通りください」

「ありがとうございます。ご苦労様です」

 

 事務的なやり取りだが、こういう地味なやり取りも仕事においてはとても重要なことなのだ。そのまま車で奥へと向かい、関係者用の駐車スペースに停める。かなりの広さがあるが、まだ朝の早い時間のためか、停められている車はそう多くは無い。そのままゾロゾロと車を降り、局の中へと入る。その入り口でも先ほどと同じようなやり取りを行う。やはりこういう確認はとても大事な作業なのだろう。有事以外では警備員の仕事がそれしかないからやってる、というのもあるだろうが。

 

 そのまま通路を歩き、楽屋を目指す。その途中でも先ほどの続きのように話しているが、人間というのは何かをしながらの行動というのは注意力が散漫になるものだ。ふとした時。特に、曲がり角を曲がる時なんかは、特に反応が遅れてしまうものだろう。勿論彼女達も例外ではなかったようで、少し前を歩く沙南が角を曲がろうとした瞬間だった。

 

「わっ!ったた……」

「あ、すまない。大丈夫だったか……ですか?」

「あ、ヘーキです!こっちこそごめんなさい。余所見しちゃってて」

「あれ!?君、もしかしてアイドルの三好沙南ちゃん!?」

「え?あ、はい。そうですけど……」

「うわぁ!すごい偶然だよ!まさかこんなところで会えるなんて!」

「ところが、偶然じゃないんですよ、みのりさん」

「わふー!プロデューサー!!」

「っと、ピエールも元気そうだな。恭二も」

 

 彼女がぶつかった相手は、偶然なことに315プロのアイドル。Beitの高城恭二であり、その恭二がいるということは、他の二人、みのりとピエールも一緒にいたようだ。驚きながらもプロデューサーに会えたのが嬉しいのか、彼に飛び込むピエールに、沙南だけでなく、比奈、奈緒の二人も見つけ、興奮冷めやらぬといった状態のみのり。そして、何がなんだか分からず呆然とする他の4名。そう、ここからが、本当の合同企画の始まりなのだ。

 


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