一週間プロデュース~目指せパーフェクトコミュニケーション~ 作:シンP@ナターリア担当
先ほどの全員のやっちゃった……から5分が経った。現在の状況はと言うと……
「……とありますが、何も海とは入ることだけが楽しみではありません。先ほど恭二が言ったように、見ることで癒しを得ることも多々あります。海とは全ての生物の生まれ故郷であり、全ての生物が必要とする水そのものです。なので、人は海を見ると、時には母に包まれたように落ち着き、またある時には童心に返るようにはしゃぐのです。そう、海とはまさに癒しの場そのものなのです!さらに言えば、今の季節だと……」
ご覧の有様である。全員の心が一つになるのもうなずけるというものだろうか。と、ここでようやく救いの手が差し伸べられる。
「古論、そろそろストップだ。そちらのお嬢さんが困惑してらっしゃるぞ」
「おや?これは失礼しました。海の話をされていたようですので、つい舞い上がってしまいまして」
「一人で舞い上がってたけど、周りはそれに着いていけてない感じだったけどね~」
「さて、お待たせしてすまんね、お嬢さん。って、普通に考えりゃ、こんだけアイドルがいる中で普通にしてるお嬢さんがいるわけないよな。ってことは、だ」
「流石、洞察力なんかはピカイチですね。申し遅れました。私が今回の企画でお世話になる346プロのプロデューサーです。よろしくお願いしますね、『Legenders』の皆さん」
「なんと。私たちをご存知でしたか?」
「嬉しきや 己知られる 顔合わせ プロデューサーさんからの入れ知恵もあるのかな?とりあえず、嬉しいことは確かですね~」
「同感だな。一人ひとりの自己紹介は必要かい?」
「自己紹介していただいてもいいですよ?葛乃葉雨彦さん?それに、古論クリスさんと、北村想楽さんも」
「必要なさそうだね~」
「そのようですね。いやはや、素晴らしい予習ですね」
「ふふっ、ありがとうございます」
止めに入った二人も含めて、今名前のあがった3人を紹介しよう。一人目は葛乃葉雨彦と呼ばれた男性。青、というよりは水色くらいだろうかという短めの髪をオールバックにしている。切れ長の目に白っぽい肌がとても綺麗な印象を与えている。服装は上下とも黒主体の服装で、襟元から見える上着の裏地は紫色で、何か模様のようなものが描かれている。首元にはネックレス……というより数珠のようなものが掛かっている。左手にも数珠をはめており、不思議な雰囲気を漂わせている。本人曰く元は掃除屋であり、ちょくちょく事務所内も掃除したりしているようだ。喋り方がどことなく古風なところがあり、たまにどういう掃除をしているのかが分からないとの噂もあるが、それに関しては本人しか知り得ないこともあるだろう。二人目は北村想楽と呼ばれた男性。髪色は毛先だけ黒く、それ以外の部分は白いというとても奇抜な髪色で、髪型オーソドックスな口元、首裏辺りまでのショートカット。服装はズボンは普通のジーパンに、腕の辺りに模様の入った薄茶色の上着、そして内側に、何故かそんなにかわいくない鳥の絵に『Chun-Chun』と描かれた白いシャツを着ている。何が気に入ったのだろうか……。少し間延びした声に、柔らかな物言いだが、たまーに強烈な毒が飛んでくるという、話しやすいのか話しにくいのか分かりにくいタイプ。このユニット『Lgenders』では、最年少でありながらも、他二人を上手くまとめたりするなど、頑張っているようだ。最後に古論クリスと呼ばれた男性。綺麗な銀色の髪を、肩甲骨を超えるくらい、前も胸元付近まで伸ばしており、雨彦とはまた違った綺麗さを感じる。が、問題は服装である。パッと見は普通の男性的な服装で、ズボンはデニム、上着はグレーで、内側は青系統の長袖の服装……に見える。だが、実際によく見ると、その内側の青い服は、ダイバー用のウェットスーツである。明らかに私服として着る物ではない。この服装と、先ほどの会話で分かるとおり、無類の海好きである。元は大学の海洋学の助教授を務めていたそうだが、それでは魅力を伝えきれないと判断し、アイドルになる決心をしたそうだ。それほどまでに、彼の海への愛は、広く、深いのだろう。このように、今までもそうだが、特に個性の強い3人となっているが、それもそのはず、彼らは一番新しく出来たユニットであり、新メンバー募集のオーディションを勝ち抜いた3人だからだ。と、ここで雨彦が口を開く。
「ところで、そろそろいい時間だと思うんだが、他の皆はもう集まってるのかい?」
「まだ見てない子達がもう一組いますね。それに、最初に会ったけど、出て行っちゃって、そのまま戻って来てない子達も」
「あら~。僕達よりもゆっくり来る人がいるんだね~」
「一度出てったっちゅうのは虎牙道のことかのう?あの3人なら、さっき車で向かう最中に見かけたけぇ、その内帰って来るじゃろう」
「……それじゃ、俺達は奥の皆を呼んで来ようか」
「そうだね。プロデューサーさん、この後の予定ってどうなってるんですか?」
「それなんだけど、お隣のジムのレッスン用の部屋を一日借りることになってるの。あそこなら全員入れるだろうし、今日の後の予定としてもちょうどいいしね」
「レッスン用の部屋ってことは、やっぱり何かのレッスンをするのかい?着替えなんかも必要そうだねぇ」
「あ、実際には身体は動かさないの。というより、一室を借りて、ちょっと皆に見てもらいたいものがあるのよね」
「見てもらいたいもの?う~む……気になるでにゃんすねぇ……」
「まぁ、考えても分からないものは分からないでしょう。では、我々も皆を呼びに行きましょうか」
「そうだねぇ。子供のお使いってわけでもないけど、あの人数を呼びに行くのに3人じゃあ少ないだろうしねぇ」
「やっぱりワガハイの力が必要でにゃんすよね!!仕方ないでにゃんす!!さぁ、行くでにゃんすよ!!」
「うふふ、お願いね、キリオ君」
「なぁなぁ。まだ来てないのって誰なんだ?」
「し、しろう君。そんな言い方失礼だよ!」
「大丈夫よ。いつも通りでいてちょうだい?で、まだ来てない子達なんだけど、私の記憶が確かなら、後は『Jupiter』の3人だけのはずね」
「あぁ~Jupiterの3人は昨日遅くまでラジオの仕事があったんじゃなかったっけ?」
「そうそう!そこから帰ってって考えると、やっぱきっついよねー」
どうやら最後の組はかなり遅くまで仕事をしていたらしく、睡眠時間の関係で少し初動が遅れているようだ。と、そんな話をしていると外から話し声が聞こえてくる。どうやらその最後の組が到着したようだ。そしてノックの後に扉が開かれる。
「おっす、おはようございまーす」
「おはよう皆。今日も一日よろしくね。チャオ」
「北斗君も、毎日そればっかりで飽きないよね~。あ、皆おっはよ~」
「あ、じゅぴたーの皆、おっはよ~!臨時のプロデューサーさん、もう来てるよ!」
「みたいだな。初めまして、俺・・・じゃねぇ、私は……」
「ふふ、いつも通りでいいですよ、天ヶ瀬冬馬君?それに、伊集院北斗君に、御手洗翔太君も、いつも通りでね?」
「おお!すごいや!僕達のこと知ってくれてるんだ!」
「こんな綺麗なレディに覚えてもらえるなんて、光栄だね」
「話に聞いたとおり、女性の扱いは得意みたいね。でも、そのカッコイイスマイルは、ファンの女性のために取っておいた方がいいんじゃない?」
「エンジェルちゃん達はエンジェルちゃん達、今目の前にいるのはこの麗しのレディだ。その時の最高の笑顔を見せなきゃ、かっこよくないじゃない?」
「北斗のそういうとこ、俺も見習うべき……なのか?」
「冬馬君は、今のままでいいんだよ」
「なんだよその言い方!」
「はいはい、着いて早々ケンカしないの。ところで、今の時間、分かってるかしら?」
「あ、あっはは~それは~その~……」
「す、すんません……で、でも!言い訳がましいっすけど、昨日は遅くまで……」
「冬馬、翔太、プロデューサーの顔、見てみな?」
「「え?」」
「くっふふ……」
「あーー!!ひっどい!!プロデューサー!知ってて言ってたの!?」
「ちっ!そりゃそうだよな!俺達の名前だってあいつから聞いたんだ!そりゃあ知ってるに決まってるよな!やられたぜ!!」
「ごめんごめん。ほら、機嫌直して」
子供をあやすような態度にさらにぶすっとした表情をする二人だが、このまま腹を立てても仕方ないと、なんとか機嫌を戻す。さて、最後に登場した3人を紹介したいと思う。一人目は天ヶ瀬冬馬と呼ばれた男性。少し赤みのある茶髪のショートヘアーで、頭のてっぺんにあるアホ毛が特徴。服装は白のシャツに赤のチェックの上着、ズボンは青のデニムと、いかにも若い子のファッションである。口調は『~だぜ』などの少し強気なことが多く、その理由の一つとしては、彼らの315プロダクションに来る前、961プロダクションで活躍していた時のキャラクターの影響が、少し残っているのかもしれない。勿論、それ抜きにしても強気な性格なのは間違いないのだが。二人目は伊集院北斗と呼ばれた男性。少し色の薄い金髪を、オールバックというほどではないが、前髪の部分を上に跳ね上げている。服装は白の薄手の長袖のシャツに、彼らのユニット『Jupiter』のロゴの入った緑ベースの上着、下は冬馬と同じく青のデニムである。冬馬と違い、こちらはチャラいというイメージ。どこかのホストと違和感は無いだろう。本人の性格、見た目ともにそのような感じだが、アイドルとしての彼の姿は女性だけでなく男性も引きつける。そこもまた、彼の魅力の一つだろう。最後に御手洗翔太と呼ばれた男性。というより彼は少年だろうか。緑色の少し癖のありそうな髪をカチューシャで止めてオールバックにしている。服装は薄手のボーダー柄の長袖の上に、黄緑の半袖の上着、ズボンはサスペンダー付きのズボンだが、片側だけ外しており、少しお洒落な中高生といった見た目だろうか。他二人と違い少し子供っぽく、その見た目や中身の通りこのユニットの最年少である。元気が特徴で、ユニット内だけでなく、315プロ全員の中でも、トップレベルのダンスパフォーマンスを見せる。彼らは前述した通り、元は961プロダクションという大手の事務所にいたが、考えの違いから袂を分かち、今は315プロダクションの看板アイドルとして頑張っている。と、ここで奥にいた他のメンバーもちらほらと戻って来始める。そこで、北斗が口を開く。
「そういえば、やっぱり俺達が最後ですか?」
「そうね。ただ、今はまだ虎牙道の皆が戻ってないのよね」
「あれ?どっか行っちゃったの?」
「実は一番最初に来てたんだけど、まだ時間あるからって走りに行っちゃってね。もうすぐ戻ると思うんだけど……」
「皆さんもう動き始めているようですし、書置きを残して先に向かいましょうか?」
「そうね。じゃあ、誰か書置きお願いできる?私はジムの人に今から使うって言いに行くから」
「うむ、任せたまえ」
「じゃあ、すぐにジムのほうに……」
「っ!危ない!!」
「へっ!?」
扉へと向かっていた彼女の体が不意に横に引っ張られ、バランスを崩して何かに倒れこむ。その直後、その扉がバン!と大きな音とともに開き、一人の男が駆け込んで来る。
「っしゃあああ!!やっぱりオレ様が一番だな!!!」
「お前、事務所の中まで走るなよ。あぶねぇだろ」
「あぁ?んなもん当たったやつがわりぃんだよ!!オレ様の邪魔をするやつなんざぶっ飛ばしてやらぁ!」
「いい加減にしないと怒るぞ?それに、本当に何かあったら……」
「事実何かある寸前だったんだけどな。お前さんたち、ちょっと気をつけねぇと流石に笑い事じゃないぜ?」
「雨彦さん。って師匠!?大丈夫っすか!?」
「う、うん。大丈夫だけど……」
「ほらみろ、言ったとおりじゃねぇか。すいません。うちの馬鹿が」
「べっつにいいじゃねぇか。結局何も無かったんだしよぉ」
「そういう問題じゃないだろ!」
「そうだな、流石に今のは危なかった。謝るのが筋ってもんじゃないかい?」
「っち!っせーなー!!はいはい!さーせんっしたー!これでいいかよ!」
「お前は本当に子供だな……いや、子供たちの方が素直に謝るんだ。子供以下だな」
「んだと!?」
「事実だろ」
「あ、あの……雨彦さん……助けてくれたのは嬉しいんですけど……」
「ん?どうかしたかい?」
「そ、そろそろ、離していただけたらな~と……」
「あぁ、悪いね。気付かなかった。女性に対してこりゃあ失礼をした」
「あはは……」
「カッコイイーーーー!!!アメヒコ!今の最高にかっこよかった!!女の子なら絶対ときめいちゃうって!!」
「ジェントルマンだね。僕も、負けてられないね」
「いつから勝負になったんだ?」
「ボクもお姫様守る役、やりたい!」
突然入って来たのは漣。そして、彼女が倒れこんだ先は、彼女を引っ張った雨彦であった。が、そのまま会話が続き、その倒れこんだ状態のままで会話をされた彼女からすれば、男性達のど真ん中、それも子供から大人まで大勢いる中で、男性に抱きしめられるような状況なのだ。顔を赤くして恥ずかしくなるのも仕方の無いことだ。さらに言えば、先ほどの説明の通り、雨彦もとても端正な顔立ちをしているので、恥ずかしさもひとしおというものだろうか。そんな風に周りから茶化されながらも、なんとか状況も収まり、改めて隣へと向かうことになる。
「すいませーん。部屋を予約させていただいていた、315プロダクションの者なんですけど」
「あ、いつもご利用いただきましてありがとうございます?あら?初めて見ますけど、新しい事務の方ですか?」
「いえ、少し番組の企画でお世話になっている者です。まぁ、一週間だけなんですけどね」
「そうでしたか。男性の中に入るのは大変でしょうから、私でよければいつでもお話相手程度にはなりますので、いつでも来てくださいね」
「ふふ、ありがとうございます」
「それで、部屋の方ですが、このまま突き当たりまで進んでいただいて、左手の部屋になります。言われてましたとおり、大きめのモニターと、DVD、ブルーレイのプレイヤーも用意しておきましたので、ご自由に使ってくださいね」
「急なことだったのにすいません。それでは、失礼しますね」
「すっげぇ……大人の応対って感じだ……」
「そりゃあ大人なんだから当然でしょ」
「はいはい、話は後。動くわよー」
「あ、はい!」
事務の女性との軽い話も終わり、そのまま用意された部屋へと向かう。かなりの大人数になってしまったが、部屋に入るとかなり大きめの部屋になっており、十分に全員入れる大きさであった。そして、全員を集め、彼女は口を開く。
「さてと、今日もこれからいろいろあるし、話さないといけないこととか、決めなきゃいけないこともあるんだけど、まずは最初に、一番大事なことからね」
そう言って、全員を見渡す。
牙崎漣、大河タケル、円城寺道流、若里春名、榊夏木、秋山隼人、冬美旬、伊勢谷四季、硲道夫、山下次郎、舞田類、天道輝、桜庭薫、柏木翼、神谷幸広、東雲荘一郎、アスラン=BBⅡ世、卯月巻緒、水嶋咲、都築圭、神楽麗、木村龍、握野英雄、信玄誠司、紅井朱雀、黒野玄武、猫柳キリオ、華村翔真、清澄九郎、秋月涼、兜大吾、九十九一希、ピエール、鷹城恭二、渡辺みのり、橘志狼、岡村直央、姫野かのん、蒼井悠介、蒼井亨介、古論クリス、葛乃葉雨彦、北村想楽、天ヶ瀬冬馬、伊集院北斗、御手洗翔太
以上の合計46名。彼女の本来受け持っている50人よりも少ないが、男性と女性ではまた違うもの多いだろう。改めてそれを確認しながら、彼女はもう一度口を開く。
「今、ほんの少しでも、私からのプロデュースに不満や不安がある人は手を挙げてちょうだい。別にどうこうしようって話じゃなくて、まずは知っておきたいの」
そう問いかける彼女に対し、真っ先に動いた者がいた。それは漣だった。彼は勢いよくその手を挙げる。周りも多少ビックリしたのか彼を見るも、そのまま立ち上がり、言葉を発した。
「今のおめーになら不満はあるぜ。おめー最初にオレ様に言ったよな?オレ様たちを1段階、2段階レベルアップさせるってよ。そんなことを言ってた上に、オレ様に説教までしやがったやつが、今さら周りの顔色なんざ伺ってんじゃねぇよ!!」
「っ!」
「オレ様がやってやるって言った相手は、おめーみたいに弱気なこと言うやつじゃねぇ!もっと強気で、絶対に負けないって顔してるやつだよ!!今のお前の言葉なんて、なんにも聞こえねぇな!!」
「そうね。うん、私が悪かったわね。漣に教えられるなんて、私もまだまだね」
「オレ様なんだから当たり前だろうが!バーーカ!」
「漣、その辺にしとけ。せっかく上がった評価が落ちるぞ」
「あぁん?オレ様に命令すんじゃねぇよ!」
「はいはい、落ち着いた落ち着いた」
彼の言葉で気持ちが変わったのか、それとも初めからそのつもりだったのか。それは彼女にしか分からないが、彼女の目には炎が灯ってるように見える。
「いいわ!!そこまで言われちゃあやるしかないわね!!あなたたち全員!これから私が一週間面倒見ます!!ちゃんと着いて来なさいよ!?」
「「「「はい!!」」」」
こうしてまた、シンデレラ達と時を同じくして、一つの大きなストーリーが始まった。長く短い、一週間の物語が……。