一週間プロデュース~目指せパーフェクトコミュニケーション~   作:シンP@ナターリア担当

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そして歩き始めたシンデレラ達~New Game Start~

 

「わかるわ……。いい大人の朝一番の第一声がつまらないダジャレ。どう反応したらいいか分からないわよね……」

「楓さん……来る途中にずっと何か考えてるかと思ったら……」

「うふふ。やっぱり、インパクトは大事ですからね。あなたも、そう思いませんか?」

「あはは……話には聞いていましたが、まさか初っ端で見ることになるとは思いませんでしたね。いやはや、驚かされましたよ、高垣楓さん」

「あら。私のことを知ってくださってるのですか?ありがとうございます」

「346プロダクションの中で一番とも噂される歌姫なんです、彼女からの情報がなくても知っていますよ。っと、川島瑞樹さんと三船美優さんのお二人も、ご挨拶が送れて申し訳ありません。私が今回の企画で315プロから来たプロデューサーです。どうぞよろしくお願いします」

「これはご丁寧に……それに、名前まで覚えてくださって、ありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いしますね」

「これは中々好感の持てそうなプロデューサー君ね。一週間っていう短い期間だけど、よろしくね」

 

 先ほど凍った空気をなんとか融かし、無事に挨拶を済ませる。ここで入って来た3人を説明しよう。一人目は川島瑞樹と呼ばれた女性。少し赤みがかった茶髪を背中辺りまで伸ばし、それを一つに束ねている。服装は内側にピンクのシャツ、その上にブラウンの上着を着て、ズボンはピッチリとしたジーンズと、とてもカジュアルな服装。今回の企画で担当する面々の中での最年長者であり、基本的なまとめ役となっている。だが、本人も時にかなりはっちゃけるので、実はもっと苦労してる人がいるんだとか。そして、その苦労してる人こと二人目の、三船美優と呼ばれた女性。瑞樹と同じような色合いの髪だが、こちらは少し短く、肩と背中の間くらいの長さで、瑞樹と同じく後ろで一つに束ねている。服装は緑の薄手のワンピースに赤寄りのピンクのふわりとした上着と、こちらは瑞樹とは逆に全体的にふわっとした印象を受ける。瑞樹に次いでの今回の企画の年長者側。とても落ち着いた大人の女性という感じで、男性ファン、特に、20代後半~30代前半の男性に人気が高い。先ほど言ったとおり、一番の被害者となっている人かもしれない。そして最後に、高垣楓と呼ばれた女性。グレー、というよりは銀に近い髪は肩口までの長さでふわりとした印象。服装は下にキャミソールのようなものを着ているが、その上に袖口の広いタイプの紺のワンピースを着ている。何よりも特徴的なのは、やはり右目が緑、左目が青というオッドアイだろうか。その佇まいと柔らかな物腰の中にあるどこか凛とした雰囲気から、とてもミステリアスな美人というイメージだろう。だが、当の本人は先ほどの通り突拍子もなくダジャレを言ったりするような人間であり、その一面はすでにテレビなどに出しているので周知の事実である。と、ここで巴が喋りだす。

 

「さて、もう人数もかなり揃ってきた頃じゃろう。いっぺん全員を集めようかの」

「七海も呼んでくるれすよ!この事務所の中も広いれす!」

「じゃあ、私と藍子ちゃんは外に行った皆を呼びに行きましょうか」

「そうですね~。お散歩がてら、呼びに行きましょうか~」

「ふむ、では私たちも呼びに行った方がいいかな?」

「あいさん……?その達ってのはまさか私も含まれるので……?」

「いや、あいさん達には千川さんの所に行ってほしい。プロジェクターを使えて、全員が入れる大きめの部屋を、今日一日使えないか確認して欲しいんです。お願いできますか?」

「ぷ、プロデューサーさん?なぜ、あいさんたち、なんですか?」

「なるほど、承知した。彼女たちが外から集めたメンバーは直接そちらに行ってもらった方が良さそうだね」

「そうしてもらえる助かります」

「分かった。では行こうか。美しい女性に会いにな」

「い、いやだああああああああ!!ちひろさんはだめええええええええ!!!私のお山さんたちがあああああああああ!!」

「悲しき断末魔よのぉ……」

「諸行無常ってやつだねぇ……」

「ところでさ、なんでプロジェクターのある部屋なの?なんか見んの?」

「ま、それは後のお楽しみってことで。後来てないのは……3人か。もうすぐ時間なんだけども……」

「そういえば、なんで大人組の3人がこんなに遅かったんすか?特に美優さんとかはもっと早く来そうなイメージなんすけど」

 

 その発言に、ビクッと3人の肩が動いたのを彼は見逃さなかった。おかげで大体想像はついたようだ。そして、その後に口を開いたのは、美優だった。

 

「その……とてもお恥ずかしい話ですが、昨日は我々3人でお酒を飲んでおりまして……」

「かなり遅くまで飲んじゃって、気付けば深夜の2時近く。で、ここから一番近い美優ちゃんのアパートに泊めてもらってたの」

「起きたら何度か見たことある天井で、すぐ近くに美優さんが寝ていて……ふふっ、なんだかドキドキしちゃいました」

「か、楓さん!!み、皆さん!違いますからね!私と川島さんもかなり限界だったので、家に着いて布団を用意したらすぐに寝てしまっただけで!!その!!」

「み、美優ちゃん落ち着いて。変に喋りすぎるとそれこそアウトよ」

「あ、あはは……まぁ、遅刻されてないので大丈夫ですが、無理はなさらないでくださいね?」

「う……はい……」

「ねぇねぇシューコちゃ~ん」

「なんだいフレちゃーん」

「これってなんかのフラグかな~?」

「かもしれないね~」

「こらそこ、物騒なこと言わない」

「「は~い」」

 

 そんなやり取りをすること数分。集合予定時刻まで後1分となった。これはもう間に合わないかと思い、そろそろ移動する準備をしようとするが、廊下からドタバタと走る音がする。どうやらなんとか間に合ったようだ。そして、ノックも無く勢いよくドアは開き、3人の女性(一人は少女と言うべきだろう)が飛び込んで来る。

 

「せ、セーーーーフ!!!」

「や、やばかったっす……オタクにこんな運動させちゃダメっすよ……」

「ギリギリだったね~!!ニューレコード更新!って感じ?」

「皆さん、おはようございます。大丈夫ですか?」

「あぁ、卯月。おはよう。なんとかギリギリって感じかな。たはは……」

「日本人は時間にうるさいんだから、もっとしっかりしなくちゃダメだよ~」

「あはは……中身日本人の外国人から言われると、その言葉の重さもひとしおっすね」

「まぁまぁ、間に合ったんだからオッケーじゃん?ね?プロデューサーちゃん?」

「え?プロデューサー?」

「おはようございます。今日から一週間、企画で君達のプロデューサーをさせてもらう者だ。時間ギリギリだけど、今回は大目に見よう。次は気をつけるようにね。神谷奈緒さんに荒木比奈さん。それに、三好沙南ちゃんも、ね」

「あれ?あたしたちまだ自己紹介してないのに……」

「分かった!プロデューサーさん、きっと私達の攻略本持ってるんだ!」

「う~ん。近いといえば近いかな?君達のプロデューサーさんから君達の情報を教えてもらったんだ」

「なるほど。それなら納得っすね」

 

 挨拶も一段落したところで、今回増えた最後のメンバーを紹介。一人目は神谷奈緒と呼ばれた女性。茶髪のかなり量の多い髪を、前髪はパッツンに、後ろは腰の手前辺りまで伸ばしており、それを後頭部辺りでお団子を作り、肩口辺りまでにしてある。服装は緑のシャツに青の薄手のジャケット、赤のデニムと、中々ボーイッシュな服装。最初に入って来た時からそうだが、とても表情豊かだが、本人は至ってクールを装っているつもりらしい。そんな彼女はこの事務所の中のいじられ役筆頭である。次は荒木比奈と呼ばれた女性。奈緒よりも明るめの茶髪だが、こちらは髪型など全然意識していないのか無造作に伸びて無造作に癖が付いている。服装もジャージと、明らかにアイドルと言っていいものでは無いと思われる。眼鏡の奥のけだるそうな目が、彼女の性格を物語っていると言っても過言ではない。そんな彼女の趣味は絵を描くことであるが、『お絵かき』などの優しいものではなく、『商業用』というものだ。深くは追求しない方が良いだろう。そして今回の企画の346プロ最後のメンバー、三好沙南と呼ばれた少女。黒寄りの群青色の髪を両サイドでおさげにし、前髪は髪留めで少し上の方に留めてある。服装は何かのゲームのデザインの入ったパーカーに、ハーフパンツと、どこか少年っぽさがある。先ほどの会話やパーカーの柄を見ての通り、ゲーム大好きっ子であり、仕事も専らゲーム関連が多くなってきているらしい。最新作から古き良きゲーム、果ては隠れた名作と呼ばれるゲームまで、ゲームというゲームはなんでもやりたがる貪欲な少女だ。だが、やはり精神年齢は歳相応であり、先ほどのようにすっとゲームのような感覚で話してしまうようだ。さて、そんな3人だが、ようやく走ってきたことによって荒れていた息も整ってきたようだ。

 

「ところで、3人はどうしてこんなギリギリになっちゃったのかしら?」

「いや~、実は昨日ここ3人で、名作のアニメ&ゲームを持ち寄って遊ぼうって企画をやってたんすよね。約束してたのもこの企画を聞かされるずっと前からだったんで、今さらずらすのもあれかなって思っちゃって」

「で、比奈さんの家に集まってアニメやらゲームやらで夜遅くまで遊んだ結果……」

「起きたのがギリッギリで、急いで走ってきたってわけなんだ」

「おお~!たっのしそ~!今度フレちゃんも混ぜてよ~!」

「フレちゃんはすぐに飽きちゃうって思うな~」

「そんなことないよ~」

「じゃあ今まで最初から最後まで見たアニメ全部あげてみ?」

「ん~とね~……なんにもないかも~」

「つまりそういうことなんだよ、フレちゃん」

「でもさ!お泊りするのって楽しそうじゃ~ん!今度皆でやろうよ~!」

「お泊り会!楽しそうですね!私もまた響子ちゃんや美穂ちゃんとやろうかな~」

「女子会ってやつね。わかるわ~」

「まぁ、私たちはつい昨日同じような感じになっちゃったんですけどね」

「あら、今度は昔の少女マンガでも持って行きましょうか?皆で集まって、漫画を読まんか?うふふ」

「おーう……これまたレベルの高いギャグだ……だがしかし、日本のお笑いで鍛えられたこのキャシーちゃんはその程度じゃあ負けませんぜ!」

「何と戦ってるっすか……っと、そろそろ移動した方がいいんじゃないっすか?」

「うん、確かにいい時間だね。じゃ、奥の皆を呼んできて……」

「せーんせぇっ!」

「うわっ!!」

 

 振り向こうとしたその時、彼の背中に思いっきり何かが飛び乗った。その正体は、奥の部屋から出てきた薫だったようだ。それを筆頭に、ゾロゾロと他のメンバー達も出てくる。

 

「薫ちゃん、危ないからそういうことしちゃだめだよ?」

「えっへへ~ごめんなさ~い」

「よいしょっと……さて、メンバーも揃ったみたいだから、さっき言ったとおり、今からちょっと大きめの部屋に移動するよ」

「ねぇねぇ!何するの~?皆で遊んだりとか!?」

「この全員で何かっていうには、ちょっと多すぎるんじゃない?」

「ま、それに関しては着いてからのお楽しみってことで。さ、勝手なことしてはぐれたりしないようにね~」

「「「は~~い!!!」」」

 

 ちびっ子達の元気な返事を合図に、移動を開始するメンバーたち、まずは1階に降りて、ちひろの元へと向かう。上がる時にはエレベータを使ったが、この人数では無理なので、階段を使うことに。だが、その最中でもやはり話というのは尽きないものである。

 

「ねぇねぇプロデューサーちゃん。プロデューサーちゃんの事務所って、どんな人たちがいるの?」

「さっきまでも結構話してたけど、そうだな~……特徴的なとこと言えば、あぁ、まだあいつの話をしてなかったな」

「あいつって?」

「うちの事務所の中でもとびっきりの変り種だ。なんてったって、もと女性アイドルとして活躍してた過去があるんだからな」

「え?でも、315プロって……」

「そう、男性アイドルのプロダクションだ。つまり……」

「女装してた……ってことかしら?」

「正解。女性アイドルって言ったけど、正確には女装アイドルだったってわけさ。今は元気に男性アイドルやってるけどね」

「あの……もしかしてそれって、秋月涼さん……っすか?」

「そうだけど……以外だね。比奈さんが知ってるなんて」

「い、いえ、ネットでいろいろ見て回ってる時に、たまたま見かけたページが女性アイドルの正体が男性だったって記事で、そのアイドルの名前が秋月涼さんだったんで、もしかしたらって思ったんっす」

「たしかに、その手の大きな事実は今のネットが流通した世界ではすぐに広まってしまいますからね」

「どんな形であれ、今あいつは男性アイドルとして頑張ってるんだ。私はそれを応援するだけだよ」

「ひゅーひゅー!プロデューサーさん、熱いねぇ!よっ!男前!」

「褒める気がないなら無理しなくて良いって。さて、ようやく着いたな……」

 

 話している内に1階到着。今度は先ほどの受付に行き、ちひろを探そうとするが、逆に向こうから見つけてくれたようだ。彼女が手を振りながら声をかかる。

 

「あ、プロデューサーさん。こちらです」

「千川さん。先ほどはありがとうございました。それで、東郷さんにお願いしていたと思うのですが……」

「はい、伺ってますよ。プロジェクターのある大きめの部屋で、一日使える部屋でしたよね?」

「はい。そうです。それから、ブルーレイレコーダーなんかもあればありがたいんですが……」

「はい、それもありますので、後で持って行きますね。部屋の鍵はもう東郷さんに渡してありますので、向かっていただいて大丈夫です。部屋はそのまま1階の突き当たり右側の第5会議室です」

「何から何までありがとうございます」

「いえ、これが仕事ですから。では、また後でお持ちしますね」

 

 自分の事務所の事務員に、この人の爪の垢を煎じて飲ませてやりたい。心の底からそう思う彼であったが、そんなことを今考えても仕方ないと、また動き始める。今度はそれほど距離も無かったので、すぐに到着した。ノックをすると、中からどうぞと、あいの声が返ってくる。その返事に続き、そのまま部屋へと入ると、奥の部屋にいなかったメンバー、要は外に行っていたメンバーが全員揃っている。

 

「やぁ、待たせてしまったかな?」

「いや、こちらも先ほど着いたところさ」

「や~ん。なんかデートの待ち合わせみた~い」

「茶化すんじゃありません。さてと、改めていろいろと確認しないとね。まずは……」

 

 そう言って彼はぐるっと全員を見る。

 緒方智絵里、鷺沢文香、佐城雪美、龍崎薫、佐々木千枝、橘ありす、城ヶ崎美嘉、速水奏、一ノ瀬志希、赤城みりあ、西園寺琴歌、二宮飛鳥、神崎蘭子、白菊ほたる、乙倉悠貴、依田芳乃、向井拓海、木村夏樹、喜多見柚、桃井あずき、工藤忍、綾瀬穂乃香、ライラ、ナターリア、輿水幸子、小早川紗枝、姫川友紀、南条光、小関麗菜、牧原志保、十時愛梨、椎名法子、棟方愛海、東郷あい、相葉夕美、高森藍子、村上巴、浅利七海、キャシーグラハム、宮本フレデリカ、大槻唯、塩見周子、島村卯月、吉岡沙紀、高垣楓、川島瑞樹、三船美優、神谷奈緒、荒木比奈、三好沙南

 総勢50人のメンバー。改めてその全員を一望し、このメンバーたちとやっていくのだと、再確認する。そして……

 

「さっき聞いた人もいるだろうし、まだ聞いていない人もいるだろうが、もう一度だけ聞いておく。これからの一週間、私からのプロデュースを受けるのが、少しでも嫌だと思う人は今名乗り出て欲しい。別に説教したいとかそういうのじゃない。まずは、知っておきたいんだ」

 

 彼の言葉に、何人か反応は見せるが、今度のこの問いかけに、手を上げるものはいなかった。

 

「ありがとう。これで遠慮なく。胸を張って言える。……これから一週間、俺が君達のプロデューサーだ!!よろしくな!!」

 

「「「「はい!」」」」

 

 こうして、50人のシンデレラと、それを導く一人の魔法使いの、長く短い一週間がスタートした。

 


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