一週間プロデュース~目指せパーフェクトコミュニケーション~   作:シンP@ナターリア担当

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レッツエンジョイもふもふフェスタ!~双子見極めの法則~

 

 突如登場した謎のきぐるみ。だが、彼女はそのきぐるみに見覚えがあった。というより、覚えてきた知識の中にしっかりと入っていたのだ。そしてそのきぐるみの後ろから入ってきた二人の男性と照らし合わせ、正体も間違いないと判断した。その間に、後ろの二人の男性も挨拶をする。

 

「おっす、おはよう。もう大分集まってるな」

「やぁ、皆おはよう。おっと、そちらの女性が、今回の企画のプロデューサーさん。かな?」

「はい。おはようございます。おっしゃるとおり、346プロから来たプロデューサーです。よろしくお願いしますね。鷹城恭二さんに、渡辺みのりさん。それに、このきぐるみの中のピエール君も、ね」

「すっごーい!!どうして分かったの!?ボク、まだ自己紹介してないのに!」

「ふふ、それはね、お姉さんが、君達のプロデューサーだからよ」

「ええ!?それだけで全部分かっちゃうの!?じゃあね、ボクの好きなもの、なんだか分かる?」

「それも簡単よ。『粉もの』でしょ?」

「うわーっ!!ねぇねぇみのり!恭二!この人すごいよ!!ボクのことなんでも知ってる!!」

「あぁ、本当にすごいね!俺もびっくりしたよ」

「結構知られてるところではあるけど……ま、しっかり覚えてきてくれたってのは嬉しいよな」

 

 名前を当てられたきぐるみは、ビックリして頭の部分を外して驚いている。中から現れたのは綺麗な金髪のショートヘアーに紫の瞳で、どう見ても日本人には見えない。では、ここで3人を紹介しよう。まずはそのままピエールと呼ばれたきぐるみの少年から。見た目は先ほどの通りで、服装はまだきぐるみのままなので分からない。名前の通り海外の出身のようだが、履歴書には『うみのむこう』としか書かれていない。これには深い事情があるが、話すと長いので割愛しよう。かなり流暢に日本語を喋り、元気いっぱいの男の子という印象だ。次に渡辺みのりと呼ばれた男性。こちらは濃い目のグレーくらいの髪色で、男性にしては少し長いかというくらいの髪をポニーテールのように後ろにまとめている。服装はピンクのシャツに青のジーンズ、手に提げた花柄のバッグには、同じく花柄のエプロンが見えている。とても物腰柔らかな口調で、優しいという言葉が何よりも似合う人だが、先ほどのように冗談にも乗ったりするちょっとお調子者な面もあるようだ。最後に鷹城恭二と呼ばれた男性。茶髪に頭頂部だけが黒くなっており、髪型はショートヘアー。服装は胸元に『RS』と書かれたグレーのパーカーを着ており、ズボンは普通のジーンズ。少し仏頂面といった感じだが、別に態度が悪かったりするわけでもなく、どちらかと言えば好青年といえるだろう。大きな特徴としては、右目が緑、左目が青と、目の色が左右で違う、いわゆるオッドアイと呼ばれるところだろうか。だが、本人は特に気にした様子もないようだ。今度は彼女から話し始める。

 

「それにしても、なんでピエール君はきぐるみで来たの?」

「えへへっ。今日から面白いコトするって聞いたから、ビックリさせようって思ってたんだ!」

「あっはは、確かにびっくりしたよ。僕たちは何にも考えずに来ちゃったもんね」

「そうじゃのう。逆にこっちが驚かされたぐらいじゃしな」

「……俺達らしい、かもね」

「んにゃっはっは~!まだまだ甘いでにゃんすね~!それならも~っと目立つくらいに……」

「ボーヤはいっつもやりすぎなのよ」

「場を収める我々の身にもなっていただきたいものです」

「俺達の場合は、相棒がそりゃあもう面白い反応をしてくれたからなぁ。な?相棒?」

「う、うっせぇな!お前だって、動物番組で猫と触れ合う時にめちゃくちゃな反応してたじゃねぇか!」

「なっ!?俺の場合はアレルギーなんだから仕方ないだろ!」

「はい、どうどう。ケンカするなら奥の部屋に行くか外にでも行こう。ただし、相手は俺がしてやるからな」

「せ、誠司のあにさん……い、いや!自分が悪かったっす!奥行って頭冷やしてきやす!」

「お、俺も!!」

「さすが誠司さん。まとめるのが上手いな」

「もう慣れっこだしな。さて、俺達も奥で休むとしようか。これ以上ここにいると、また龍が何かやるかもしれないしな」

「ちょ!誠司さん!その言い方はあんまりですよ!」

「ほんとに、今日は皆がいて楽しそうだね。こっちまで元気になって来るよ」

「少し、騒がしすぎる気もするけど。たまにはこういうのもいいな」

 

 バタバタと神速一魂とFLAMEの5人が奥へと退場し、今は彩、F-LAGS、そして新しく来た3人『Bite』に彼女を合わせ、10人となった。人数が増えたのに、暑苦しさは少し減った気がするのは気のせいではないのだろう。と、ここで誰かの携帯の着信音が鳴る。何人かが顔を見合わせ、自分では無いとアピールしている中、涼がさっと手を軽く挙げる。

 

「あ、すいません。僕みたいです。ちょっと、電話してきますね」

「うん。ゆっくりでいいからね」

「集合までには間に合いますから。失礼します。……あ、もしもし?僕だけど、急に……」

「……あの着信音、たまに聞くやつだ」

「おぉ、確かにそうじゃのう。あの着信音の時は、いっつも席を外して電話しよるんじゃ。大事な相手なんかもしれんのう」

「おやおや~?リョウ君も中々隅に置けないにゃんすね~」

「大事な相手の一人や二人、誰だっているもんさ。詮索するのは野暮ってもんだよ」

「ねぇねぇ、スミニオケナイって何?」

「意味としては、その人……この場合は涼さんが、想像していたよりも知識や経験なんかが豊富であり、油断ならない。簡単に言えば、すごいなと思い、つい見てしまう。そのような意味合いですかね」

「おお~流石クロークン!完璧でわかりやす~い説明でにゃんすね」

 

 涼が出て行って2分ほど雑談をしたところで、外からバタバタと足音が聞こえる。そしてそのすぐ後に、ノックが鳴らずに扉が勢いよく開かれ、一人の男性……もとい、一人の子どもが入ってきた。そして後ろから少し遅れて、同じ年頃の男の子が2人入ってくる。

 

「よっしゃーー!!オレがいっちばーーん!!」

「もう、しろうくん、事務所の中まで走っちゃだめだよ……」

「そうだよ。またみんなに怒られちゃうよ?」

「へへーん!負けたからって言い訳はなしだぜ!」

「こーら、あんたたち。また走ってきたのかい?危ないからダメだって教えたでしょ?」

「げ、しょうま。いいじゃんかよ~ちょっとくらいよ~」

「ダメなもんはダメだよ。あんたたちが怪我したりしたら、誰が悲しむと思ってるんだい?」

「まぁまぁ翔真、そのくらいでいいじゃないか。この子達だって、そのうち分かってくれるさ。今はまだ、ワンパク盛りの時期だ。見届けてあげるのだって大人の大事な仕事だよ」

「みのりさん、ごめんなさい。ボクとかのんくんは止めたんだけど……」

「あー!なお!自分達だけ逃げようとすんなよな!」

「でもほんとうのことだよ?しろうくんってば、いっつもそうなんだもん」

「はいはいケンカはそんへんにしとくにゃんす。怒ってばっかじゃ幸せさんがどこかに行っちゃうでにゃんすよ」

「幸せがどこかへ行くのは溜め息をついたら、ですね」

「細かいことは放っておくでにゃんす!そんにゃことよりこんにゃことより、おちびさん達が来てから喋ってないんじゃあないんですかいお姉さん?」

「あはは……喋るタイミングが無くって……」

「んあ?あんただれだ?」

「し、しろうくん!失礼だよ!!ごめんなさい!」

「あ、もしかしてお姉さんって、今日からプロデューサーの代わりになる人?」

「そうよ。よろしくね。橘志狼君に、岡村直央君、それから姫野かのん君」

 

 突然名前を当てられて、それぞれビックリ、キョトン、ニコニコと、三者三様の顔をしている。まず一人目の橘志狼と呼ばれた子から。茶髪のショートヘアーを、かなり短いが後ろで結んで纏めている。服装は動きやすいノースリーブにベストに短パンと、元気な子どもセットといった感じだろうか。外見同様と言うべきか、中身もまさにワンパクな子どもを絵に描いたような子ども。だが、何でも一番を目指すその心意気は、このアイドルの世界では大きな武器になるだろう。次によく謝っている岡村直央と呼ばれた子。黒く短い髪を真ん中で分け、大きな丸眼鏡が特徴。服装はチェック柄のシャツに紺の上着、薄茶色のハーフパンツと、こちらは容姿と相まって勉強熱心な子どもと言った感じ。これまた中身も少し似ており、志狼のようにワンパクではなく、かなり大人しい子。ある意味この3人の中で一番常識的かもしれない。そして最後の姫野かのんと呼ばれた子。クリーム色のふわっとしたショートの癖っ毛。服装は白のシャツに軽めのベスト、胸元にはウサギのようなアップリケが付いており、ズボンは黄緑のハーフパンツと、他二人とは違ってどこかお洒落な感じになっている。年齢を考えればかなりませた感じに見えるが、やはり子どもは子どもである。カッコイイよりも、カワイイのが好きなようだ。この3人もまた同じユニットで、ユニット名は『もふもふえん』という、なんともかわいらしいユニットだ。ステージ衣装も動物モチーフで、かわいいものが好きな女性からの人気は他の追随を許さないほどに高いらしい。と、ここで志狼が声を上げた。

 

「すっげーーー!!なんでオレやなおの名前分かったんだ!?」

「ボクたちが名前で呼び合ってたから……?あ、でも苗字までは呼んでなかったよね?」

「さ~て、どうしてかな~?かのん君は分かる?」

「う~ん……かのんにもわかんないな~」

「ボク分かるよ!!あのね!この人が、ボクたちのプロデューサーだから!」

「そ、そうなのか!?」

「そうよ~。君達のことは、ちゃ~んと分かってるんだから」

「すごい……。あっ!そうだ!これから一週間、よろしくお願いします!これ、うちのお母さんからなんですけど、お世話になるから渡しておきなさいって」

「あら、お返しなんて用意してないのに……直央君、今度改めてお礼をしますって伝えてくれるかしら?」

「分かりました」

「えへへ、これからたのしみだね」

「おう!この一週間でおもいっきり成長して、あいつのことビックリさせてやるぜ!!」

「一週間じゃあそんなに変わらないと思うんだけど……」

「なんだよ!やってみなきゃわかんねぇだろ!!」

「うん、その通りよ。なんだってやってみなくちゃ分からないの。だから、一緒に頑張りましょう?直央君?」

「は、はい!!頑張ります!」

「あれ~?なお君照れてるの~?」

「だ、だって、こんな綺麗な女の人なんだもん……」

「ありがと。お世辞でも嬉しいよ」

「お~!直央君も中々やるでにゃんすね~。これぞまさに……」

「スミニオケナイ!だよね!」

「ありゃりゃ。ワガハイのセリフが取られちゃったでにゃんす」

 

 顔を赤らめて少し俯く直央だが、そんなやり取りや周りの笑顔を見て、自然と笑顔になっていた。このようなアットホーム感も、このプロダクションの大きな支えの一つなのかもしれない。そんな風に彼女が考える中、またもノックの音が鳴る。返事の後に入って来たのは、驚いたことに、ほとんど同じ顔をした二人の男だった。

 

「おっはよ~皆!今日も頑張っていこーぜ!」

「おっはよ~皆!今日も張り切っていこーぜ!」

「おう、二人ともおはよう」

「あれ?結構集まってるね。もしかしてオレ達が最後?」

「いや、まだ何人か来てないんじゃないかな?」

「そっか!なら大丈夫だね!あれ?このお姉さんは?」

「私は今回の企画で一週間お世話になる346プロのプロデューサーよ。よろしくね。蒼井悠介君に、蒼井亨介君」

「オレ達のこと知ってんの!?すげーじゃん!!」

「でもさ、どっちがどっちだか、分かってないんじゃない?」

「言ってくれるわね、亨介君。本当に分かってないと思うのかしら?」

「そりゃそうだって。身内以外で一発で見分けられるのなんて、監督……じゃ、わかんないか。プロデューサーくらいだぜ?」

「そうそう!少し違いとかもあるけど、ここまで一緒なんだし、すぐに分かるわけ無いって!」

「なぁ、気付いて無いと思いますか?」

「気付いて無いだろうね。あの様子を見る限りじゃ」

 

 二人が分かってないだのなんだの言ってるうちに、二人を紹介しておこう。まずは片方、蒼井悠介。容姿は明るめの茶髪で、少しところどころが跳ねてるショートヘアー。頭頂部にピンと立った毛、通称アホ毛と呼ばれるような毛があるのが特徴。服装は普段は運動がてら走って来るのでユニフォームらしいが、今日は普通のシャツに上着、普通のハーフパンツと、どこにでもいる学生という感じだ。少し分かりにくいが、亨介よりも少しヤンチャな感じで、元気いっぱいといった印象を受ける。そして同じく片割れの蒼井亨介。外見は双子ということもあり、悠介とほぼ同じで、頭頂部のアホ毛もある。服装も今日は同じような服装になっており、普段のユニフォームでの見分け方ではどちらがどちらかは分からないだろう。ステージ上では色の濃いフレームの眼鏡を着けているので、すぐに違いは分かるようにしている。悠介と比べると、少し大人し目の印象を受ける。だが、やはり双子なのかテンションが上がった時は見分けは付けにくいだろう。この二人は双子でユニットを組んでおり、ユニット名は『W(ダブル)』。文字通りというところだろうか。さて、先ほどの続きだが、何人かは気付いたようだが、ここで彼女が『片方を向きながら』話し出す。

 

「ねぇ悠介君。もう一回聞くけど、本当に分かってないと思う?」

「だから、絶対わかんないって!!ファンの皆でも結構間違えたりするのにさぁ!」

「オレも一回、同じ衣装の時に、間違えて『悠介く~ん!』って声援もらって、ちょっと凹んだっけ……」

「ねぇ、プロデューサーさん今……」

「しっ、もう少し見てよう?」

「案外当人というのは。気付かないものなのですね」

「あれはプロデューサーちゃんが上手いのもあるだろうけどね」

「確かにそれはショックよね~。でもさ、それはそれで今後のネタに出来るからいいんじゃない?双子ならではってのはやっぱり強みになるだろうし。ね?」

「まぁそうなんだけどさ……。ま、でも今はそんなこと言ってても仕方ないよな!で、何の話だっけ?」

「あれ?えーっと……」

「私が二人のことを、どっちがどっちか分かるかって話よ」

「「そう!それ!」」

「ふふっ。ねぇ、気付かなかった?私が最初っから、悠介君と亨介君に、それぞれ話しかけてたの」

「えっ!?ほんとに!?」

「ほんとじゃ。最初に亨介が疑った時に、しっかりと亨介とよんどったぞ」

「……皆、気付いてたね」

「ってことは、プロデューサーさん、本当にオレ達がどっちがどっちか分かるの?」

「最初っからそう言ってるでしょ?」

「なぁ!!それももしかして!」

「ボクたちのプロデューサーだから!?」

「えぇ、勿論よ!」

「「スッゲーー!!(スッゴーーイ!!)」」

 

 純粋な子ども二人の驚きの声が響く中、どうやら蒼井兄弟は本当に驚いたようだ。それもそうだろう。今まで彼らを一回で見分けた人など全然いなかったのだから。実のところ、その見分けるための大きな目印になるのが、頭頂部のアホ毛なのである。そのアホ毛が、向かって右側(本人から見て左側)に曲がっているのが悠介、逆に向いているのが亨介となっている。皆が驚いたり笑ったりしている中、ガチャリと扉が開き、さっき出て行った涼が戻って来た。が、どうも表情が思わしくないように思える。

 

「お帰りなさい、涼君。……って、大丈夫?なんだか顔色がよくないみたいだけど……」

「あ、あぁ、いえ……大丈夫です。僕はなんとも」

「なんじゃ?電話の相手になんぞあったんか?」

「……相談、乗るよ?」

「ありがとう。でも、これは僕が……いや、本人が解決しなくちゃいけないことなんだ。それまでは、言えない」

「よっぽど大きな事情みたいだね。分かった。でも、無理はしないようにね。ここの皆は、君の味方なんだから、いつでも頼ってくれていいからね」

「みのりさん……ありがとうございます。あはは、なんか、変な空気にしちゃいましたね」

「そんなこと気にしないでいいんでにゃんすよ!毎日毎日同じ空気ばっかりじゃあ空気が足りなくなっちゃうでにゃんす!たまにはガラッと空気を入れ替えて、いろんな空気を吸ってみるもんでにゃんすよ!」

「あら、たまには良い事言うじゃないかい、うちのボーヤは。ボーヤの言うとおり、いろいろあってこその人生ってもんさ。無理をしないくらいにいろいろやるのがいいもんだよ」

「なんだったら、今度気晴らしに海にでも行くか?案外、ボーっと眺めたりするだけでも気は晴れるもんだ」

「海だったらオレも行きたい!!」

「オレはいっちばん高いとこから飛び込んでやるぜ!!」

「ふふ、皆ありがとう。じゃあ、また今度行こうね」

「いえ、今度と言わず、今から行くのはどうでしょうか!」

「いやいや、今からは流石に……」

 

 この時、この場合にいる全員の思考が一つになった。

 

(((やっちゃった……)))

 


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