一週間プロデュース~目指せパーフェクトコミュニケーション~   作:シンP@ナターリア担当

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和の心を広げましょう~六代目は花丸笑顔~

「おやおや~?皆さん元気がないでにゃんすね~?ほら、もう一回ご一緒に!せーの、おは……」

「はいはい。分かったから静かにしなさいって。皆元気がないんじゃなくて、ボーヤのテンションについていけなくて困ってるだけよ」

「朝からそのテンションなのは猫柳さんくらいですよ。皆様、おはようございます。今日もお元気そうですね」

「にゃっはは~!そう褒められると照れるぞなもし!およ?そこに見えるは見たことのないお嬢さん。あなたはもしや、ワガハイのふぁんでは!?」

「どうしてそうなるんだい。すまないねぇお嬢さん。うちの子がやかましくて」

「女性ということは、もしや此度の企画で来られたプロデューサーの方ではないですか?」

「はい。仰るとおり、今回346プロから来たプロデューサーです。よろしくお願いしますね。『彩』の皆さん」

 

 ここで、ようやく出番が回ってきたとばかりに話す彼女。先ほどからの流れの通り、どうやら最初に話した男がよく喋る人間らしく、このままでは入る隙も無かったかもしれない。『彩』と呼ばれた3人の男性の特徴は、これまた一人ひとり際立っているようだ。まずは最初に入った男を止めたオネエ口調な男。綺麗な金髪にウェーブがかかったロングヘアーだが、オールバックのようにしているので男性らしさも垣間見える。次にとても丁寧な言葉遣いの男性。こちらは他二人と違い、見た目もどこか落ち着いた感じで、年齢よりも大人びて見えるという感じだろう。最後に、最初に挨拶をした元気な男性……というよりもはや男の子、と呼んでもいいくらいだろうか。背は他二人から頭一つ分ほど小さく、髪は上が黄緑、下がピンクと、とんでもなく奇抜な色をしている。さらにそれが癖っ毛なのか、あちこちに跳ねていて、もはや目立つなというのが無理な見た目だろう。こんなバラバラな3人だが、共通点として、全員和服を着ている。どうやら名前や話し方の通り『和』をイメージしたユニットのようだ。

 

「おや?アタシたちを知っててくれるのかい?」

「むむ!ぴーんと来たでにゃんすよ!ずばり!そっちの事務所でワガハイが大人気になってて……」

「少し静かにしててくれませんか?それより、どうして我々のことを?大変失礼ですが、まだ名乗ってもいなかったのですが」

「ふふ、そちらのプロデューサーさんに情報をもらってただけですよ。それに、お三人はうちにも和風な子がいるから覚えやすかったのかもしれませんね。そちらの金髪にウェーブの貴方が華村翔真さん。元は歌舞伎の女形をされていたんでしたよね?そちらの少し緑かかったショートヘアーの貴方は清澄九郎さん。茶道の名家出身で、このユニットの実質的なまとめ役になってるみたいね。最後に一番元気で派手な髪の君が猫柳キリオ君。元は落語家で、アイドルを題材にした落語を思いついたから、それの勉強でアイドルになったとか。皆個性的ね」

「にゃんと!ワガハイ達のことをそこまで覚えていてくれるにゃんて!ワガハイ感激でにゃんす!」

「いやぁ。これはかなり嬉しいもんだねぇ。それによく見たら、プロデューサーちゃん、かなり美人じゃないかい。こりゃあさっきのお礼に、今度とびっきりのお化粧をしてあげようかね」

「うちのプロデューサーさんも、私達が円滑にコミュニケーションを取れるように計らってくれたんでしょう。今度お礼をしなくてはいけませんね」

 

 3人それぞれの名前や特徴、経歴などを覚えてきたのを披露し、しっかりと3人からの最初の信頼は得たようだ。これも彼から情報をもらってた賜物だろう。今度しっかりとしたお礼をしないと……。等と、彼女も同じようなことを考えていたりする。

 

「ねぇねぇショーマ!そのお化粧の時、私も一緒にいていい!?」

「あぁ、勿論だとも!しっかり勉強するんだよ?」

「ハーイ!」

「あはは……ま、まぁいいんだけど……」

「どうやらこっちの番長さんは流され体質らしいな。朱雀、お前も流れで肩とか組んだりしたら案外いけるんじゃねぇか?」

「ば、馬鹿やろう!向こうは流されても俺が流されねえよ!」

「大分賑やかになって来たね。これならいいBGMにしていい音楽が作れるかもしれない。少し隣の部屋に行くよ」

「あ、わたしも一緒に行きます!プロデューサー、少しの間失礼する」

「行ってらっしゃい。でも、無理はしないように……というか、させないように、かな?とにかく、都築さんのこと、よろしくね」

「うむ。貴殿も彼らの相手は大変だろうが、頑張ってくれ。では」

「さて、俺達もそろそろ動くか。勉強や打ち合わせをしてる皆に差し入れを用意しようじゃないか」

「って言っても、メインを作るのはうちなんですけど。まぁ、喜ぶ顔見るのは料理人の一番の楽しみやし、ええんやけどね」

「我も今は一時の間漆黒の羽を休め、次なる邂逅の時を待とう!次に見えしは我等が同胞が一同に集いし時よ!」

「え~っと……少しの間ゆっくりしてるから、次は皆揃ったら……みたいな感じか?」

「はい。正確には、僕も皆と一緒に休憩してくるから、また後で。皆が揃ったらまた集合しますね。って言ってます」

「ほんと、よくあれを翻訳できるよな……うちにいた趣味で暗号解読してるやつに興味本位でやってみてもらったけど無理だったぞ……」

「う~ん……アスランのは暗号なんかじゃないんだけどなぁ。まぁいっか。じゃ、俺も皆に荘一郎さんの作ったおやつ配ってきますね。あっ!荘一郎さん!俺にはプチケーキお願いします!」

「あ、ロール待ってよ~!じゃ、プロデューサー、また後でね~!」

 

 台風が過ぎ去ったような感覚だっただろうか。気が付けば残ったのは先ほどからいたFRAME、神速一魂、そして今来たばかりの彩だけとなった。なんとも纏まりの無い組み合わせである。

 

「いや~。皆様朝から騒がしいでにゃんすね~。もう少し落ち着いたほうがいいでにゃんすよ」

「キリオの言えることじゃないとは思うが……。だが、確かに今日は皆浮き足立ってるように感じるな。やはり今回のこの企画が一番の原因だとは思うが」

「そうだな。突然普段と違う環境になるってのは、どうにも慣れないもんだ。上手くやって行けるかの不安だったり、どんな風になるのかという楽しみだったり。人それぞれだろうけどな」

「俺は楽しみの方が大きかったかな!どうせ普段から不幸なことばっかりなんだから、もしかしたら一周回っていい事が起こるかもだし!」

「ふ~ん。それで、そのいい事ってのが、さっきのアレかしら?」

「いっ!いやっ!そういうことじゃなくて!いやいや、決してあれがいい事じゃなかったってわけじゃないんですけど!あの……」

「ちょっと龍ちゃん、落ち着きなさいって。何かあったのかしら?」

「いや~実はさっき……」

「だぁぁぁぁ!!もう止めてください!俺が悪かったですからぁ!」

「ふふっ、ごめんなさい。うちにも似たような不幸体質の子がいるんだけど、その子と違ってこっちはいじり甲斐があるから、ついね」

 

 よっぽど先ほどのことが恥ずかしかったのか、楽しそうに話そうとする彼女を全力で止める龍。勿論知られたくないというのはあるが、何よりもキリオみたいな喋ることが生きがいと言わんばかりのお喋りな人間にばれてしまっては、スピーカーで大声でその失態を暴露するようなものである。

 

「龍のあにさんほどの不幸体質……そっちも大変なんっすね」

「違うとは、具体的にはどのように違うのです?」

「これに関しては、少し龍さんを見習ってもらわないとなんだけど、うちの子方は真逆ですごくネガティブな子なのよね。自分の不幸のせいで周りも不幸になる。周りの人の不幸は自分のせいで起きてる。ってね。たった13歳の女の子が、よ?」

「そいつはなかなか、重たいもんを背負っちまってるみてぇだな」

「全部自分のせいなんて、あるはずないのにな」

「今はそれでも大分マシになってるの。最初にうちの事務所に来たときは本当に見てられなかった。何かある度にずっとごめんなさい、ごめんなさいって」

「そのようなことがあったのですね……」

「番長さん、辛い話をさせてしまって申し訳ないっす」

「大丈夫よ。むしろいろんな人に知ってもらいたいって思ってるの。そんな子が今、前を向いてアイドルをしているんだって」

「確かに、その勇気と努力は、俺達も見習うべきかもしれないな。なぁ、龍。……龍?」

「あ、ごめんなさい!その子の話聞いて、同じ不幸な体質なのに、考え方ってこんなに違うんだなって、自分ながらに思っちゃって。 きっと、その子も俺とおんなじようにいろんな不幸な目にあってて、その度に自分のせいだって思ってたんだって考えたら、俺まで辛くなっちゃって」

「龍さん……」

 

 同じ体質だからこそ分かることもあるのだろう。龍がそんな言葉を口にし、場はどこかしんみりとした空気に包まれる……だが、それを壊したのは、やはり彼だった。

 

「うにゃあああ!!いい話はいい話だけど、こんなしんみりとした空気ばっかりは、ワガハイは耐えられないでにゃんす!どうせいい話なら面白い話。どうせ面白い話なら、思いっきり笑える話。どうせ笑える話なら、思いっきりばかばかしい話をするでにゃんす!おてんとさんが登りきる前から暗くなってたんじゃ、間違えてお月さんが登ってきちゃうでにゃんすよ!」

「そうね。確かにそれもそうかも。まだまだ一日が始まったばっかりなんだもの。最初っからこんなに暗いんじゃ、一日の元気なんて出るわけないわよね。ありがと、キリオ君!」

「にゃっはは~!綺麗なお姉さんにお礼を言われちゃうのは照れるでにゃんすね~!これはもう、プロデューサーさんもワガハイのふぁんになるしかにゃいのでは?」

「こら、調子に乗るんじゃないの。せっかく上がった評価がまた下がっちゃうわよ?」

「貴方はもう少し流れというのを読むべきです。自分でいい流れを気ってどうするんですか」

「ま、今回はその流れの読めなさに助けられたって感じだけどな」

 

 しんみりした空気はどこへやら、さっきまでの騒がしかった空間に元通りである。勿論時と場合というのは大事だが、彼のこういった場の空気を一気に変えてしまう力というのは、とても役に立つ。と、そんな風に空気が戻ったところで、またノックの音が鳴る。返事の後に入ってきたのは、これまた3人の男性だ。

 

「おはようございます!」

「おはよう……」

「おう、もう結構集まっとるようじゃのう!」

「お、3人ともおはよう」

「おはようございます、誠司さん。あれ?そちらの女性の方は……?」

「……見慣れない人」

「なんじゃ?どこぞの組の鉄砲玉か?にしちゃあずいぶんとヒョロイのう」

「初対面の子にいきなり鉄砲玉扱いされるのなんて初めてよ……。まぁいいわ、私は今回の企画でこっちでお世話になる346プロのプロデューサーよ。よろしくね、秋月涼君、九十九一希さん、それに兜大吾君」

「あ、そうだったんですね。こちらこそ、よろしくお願いします」

「……名前、どうして?」

「こっちのプロデューサーさんに情報をもらってたのよ。それに、この中の一人はこっち側に共通点があるからね」

「ん?共通点ってなんじゃ?」

「ワガハイが当ててしんぜよう!ずばり、共通点があるのはリョウ君でにゃんす!きっと、向こうには元は男装をしてた女性のアイドルが……」

「ボーヤのことは気にしなくていいから、続けてちょうだいな」

 

 話を遮られた当の本人は何やら叫んでいるが、こればかりは仕方ないだろう。ここで3人の容姿を紹介。一人目、秋月涼と呼ばれた男性だが、少し淡い黒髪のショートヘアーに眼鏡をかけた綺麗めの顔。言い方によっては童顔、女性っぽいといった表現も出来るだろうか。服装は緑の薄手の長袖の上に白の半そでの上着を着ていて、ズボンは普通のジーパン。言い方によってはどこにでもいそうな人と言えるだろう。だが、先ほどのキリオの発言の通り、彼は元は女装アイドルとして活躍していた過去を持っている。今でもたまにその当時の同期とは交流もあったりするようだ。次に、九十九一希と呼ばれた男性。キツネ色の髪で、後ろは長くないが、前髪がとても長く、片目は隠れ、口元近くまで伸びている。特徴的なグレーの服に、右手には薄手の指ぬきグローブをはめ、薄緑色のスカーフを巻いている。どこかミステリアスな雰囲気が漂う男性で、先ほどの喋り方を見るに、人と話すのが少し苦手なのかもしれない。最後に兜大吾と呼ばれた男性……というより男の子。癖の強そうなピンクの髪のショートヘアーで、服装は学ランに近い上着の下に、『6(roku)』と書かれた、なんとも面白いシャツを着ている。喋り方から見えるとおり出身は広島で、どうにも強い言葉遣いに感じるが、特に粗暴な性格をしているわけでもなく、訛りが抜けないのだろう。この3人もまたユニットを組んでおり、そのユニット名は『F-LAGS』。白、赤、青のトリコロールカラーのエンブレムが特徴のようだ。さてと、と女性が話を再開する。

 

「う~ん……まぁ言っちゃっても大丈夫よね?実は、共通点があるのって大吾君なんだけど、簡単に言っちゃうと、同家業の子がうちにもいるのよね」

「あ?そりゃあワシの家んこと知ってて言うとるじゃろうなぁ?」

「ちょ、大吾くん!落ち着いて!」

「そっちのプロデューサーさんにも確認したから間違いないわ。まぁ、その手の家業の子がうちにもいるってことなの」

「そうか、世間は狭いもんじゃなぁ……。そんで、そいつの名前はなんちゅうんじゃ?」

「同じ広島出身だからもしかしたら知ってるかもだけど、村上巴っていうんだけど……」

「なんじゃと!?」

「どわぁ!」

「ちょ、龍!びびったからってこっちに倒れ、ああ~!」

「あ、あにさん方!大丈夫っすか!?」

「もう~びっくりしたじゃないのさ」

「あ、すまんすまん。それにしてもそうか。あの巴がアイドルとはのう……ほんとに世間は狭いもんじゃ……」

「もしかして、仲悪いとか……?」

「いんや、同家業だけあってお互いよう知っとる仲じゃ。家同士も悪い中じゃないしの。ただ本当に驚いただけじゃ」

「……大吾、嬉しそうだね」

「あぁ!これでワシも頑張る気力が出るってもんじゃ!」

「ふぅ……一時はどうなるかと思ったよ……」

 

 途中で大声は出たものの、なんとか穏便に会話は進み、今回もまた打ち解けることには成功したようだ。彼女が、向こうでも同じようなやり取りをしたのかな~などと考えているちょうどその頃、本当に同じようなやり取りがあったというのを知るのはまた後の話。そんなこんなで話は盛り上がり、また賑わいだしてきた頃、ノックの音がまた響く。さて、今度は誰だろうと意気込む彼女の前に、扉を開けて入ってきたのは……

 

「わっふー!みんな、おっはよ~!」

 

 子どもくらいの大きさの、カエルの着ぐるみだった……。

 


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