西方の諸島における先住民の神秘的な生活とその文化について   作:悠里(Jurli)

1 / 4
Phil.805年8月12日

 ポケットに手帳があったから、取り出して書き出した。本当に奇妙なことだ。いつまでここに居なくてはならないのかは分からないが、そのうち忘れそうなのと、死んで骨を拾う者が私のことをちゃんと覚えていられるように書き留めておく。

 私の名前はイェクト・ユピュイーデャである。アドラバ貿易商社に努めている貴族の商人である。私は三日前からレアディオのグラルテゾ・グノガルドゥンからラネーメ共和国に向けて船で向かっていた。すると、大嵐がやって来て、船は操舵不能に陥ったのだ。私にとって始めてのこの状態には驚かされたものの航海士を船の中から見ていることしかできなかった。しばらくすると、地図の航路上には存在しないはずの陸地が見えた。その数秒後に我々の船であるアクルサー号は酷い揺れに襲われた。航海長によると座礁してしまった可能性が高いとのことであった。それから、我々の船は嵐に煽られて、船内には水が大量に入ってきた。座礁した船底は激しい嵐の影響でさらに削られ、私は海に投げ出された。最終的に船がどうなったかは私は知らない。粉々になって今頃木片になっているかもしれないし、今も座礁した位置に止まっているかもしれない。

 奇妙なことに私は助かっていた。目をあけると部屋の中に横にさせられていた。自分はてっきり助かってレアディオか少なくともリパラオネ人の国家に漂着したのだろうとぬか喜びをしていたのだがそうではなかった。

 私が起きると、すぐにラネーメ人のような人種の人間が私を見て驚いていた。何やら話しかけているようであるがまったく分からない。リパライン語も通じず、大学に通っていたときはラネーメ人の言語は少しばかり齧ったもののそれも通じなかった。相手方は非常に細かい音に切って喋っており吃音のようであったが、どうやらこの国は全体的にそうであるらしかった。服装はといえば文化的に貧弱なものであった。私が寝かせられていたときにすでにきていた服装はまさにそれでまるで麻袋で服を作ったかのようで繊維の色が完全には抜けていないものだ。自分の肌には馴染みそうもなかった。

 その屋外にでて始めて気づいた。皆この服装をしており、同じような言葉の喋りかたをしており、建設されている建造物も非常に粗悪で洗練されていないものに見える。屋外に出るとすぐに銀髪蒼目の顔立ちが違う私がよほど物珍しいのか市民たちが集まってきた。ここに住んでいる人たちは非常に好奇心が強いようにみえる。彼らにも出きるだけ分りやすい標準的なリパライン語で話しかけたがまったく理解してもらえている様子はなかった。

 外に出ていたのが分かったのか、その家の主である女性が自分を引き連れて部屋に戻した。言葉が通じるようすはなかったので、何かとジェスチャーすると怪訝な目で見られた。とにかく先ほどまで寝ていた場所を指差して何かいっている。多分、まだ寝ていた良いと言っているのであろう。確かに体中が痛んでいることにはこの時始めて気づいた。麗しい女主人に感謝して寝床につくことにした。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。