トールギスはビームサーベルを戻すとドバーガンを放ってくる。
俺はそれをスラスターを吹かすことで機体を動かし、回避する。
「俺を狙うか……!」
《貴様が一番、やりやすそうだからな!》
そういうとトールギスは連射する。が、レーアのエクシアが援護するようにGNライフルを放ってくれる。
エイナルはそれをブースターで機体を浮かばせて、回転しながら回避しつつ、ドバーガンを正確に俺とレーアに射撃してくる。
こいつもゲームじゃAIでお察しだったが設定ではエースパイロットだったな……!ゲームと現実の違いがここまで出るか!
本来ならここで俺は覚醒状態になっているはずだが、そのイベントはキャンセルになったからな。
トールギスは回転回避しつつ射撃をしているが、射撃の瞬間に足を一瞬止めている。その隙にカレヴィのウィングガンダムが肉薄しビームサーベルを振るう。
《ちぃ!外したか!》
《やるな、カレヴィ!》
ウィングガンダムのビームサーベルはすんでのところで接近に気づいたトールギスが回避行動をとり、避けられた。だかドバーガンを切り裂き、相手の射撃を封じた。
カレヴィは舌打ちをするとウィングガンダムはそのまま通り抜けて、後ろを取った。
そんなカレヴィの行動にエイナルは自分の知っているライバルが変わらない強さでうれしそうな声を上げている。
トールギスは周りを確認し、囲まれている状況を確認する。
《囲まれたか!》
《投降でもするか?》
《まさか!》
トールギスはビームサーベルを抜くとエイナルが決死の覚悟を決めた騎士のようなことを言っている。
だが、その戦闘も終わりを迎える。
《少尉!》
《チッ……!!時間か!》
副隊長が通信でエイナルに呼びかけるとエイナルは舌打ちをする。そういうとトールギスは急降下し、動かなくなった副隊長のGN-XⅢの腰を抱き上げる。
《勝負は預けるぞ!》
そしてこちらを見るとそのような捨て台詞を放って撤退していく。
そんなエイナルをカレヴィはため息をつく。
《勝負なんて言ってんなよ……恥ずかしい》
《どうするの?追う?》
《いや、やめておこう。さっきあいつらが時間だとか言っていたからな。なにがあるかわからん》
レーアはカレヴィに撤退したエイナルを追撃するかどうか聞くとカレヴィはそれは悪手かもしれないと止める。
まぁ、確かに何があるかわからないからな。
そんなことを話していると少しのノイズの後通信がくる。
《あーあー、聞こえてますか?こちらはアークエンジェルブリッジ、ルル・ルティエンス中佐です。現時刻を持ってアークエンジェル艦長代行に着任しました》
そう言うと画面に紫の色をした髪を持つ少女が映る。
ゲームでは確かこの子の名前は知っているけど年齢はわからなかったんだよな。
《そう言えば、輸送艦に人を寄越すって言っていたな。お早いお着きだが今までどちらに?》
カレヴィが思い出した様に言うと、これまで何処にいたのか聞く。するとルルは言いずらそうに口黙る。
だいたい察したカレヴィは肩をすくめる。
《捕虜になっていたと》
カレヴィが言葉にだすとルルはガクッと肩を落としてうぅ…と呻いていた。
すると今度は別の画面が開く。左目あたりに大きな傷跡が残っている人が映る。
《こちらは副官代行のマドック少佐だ。すまんがドックのハッチを開けて来てくれるか》
《了解した。っとおいハンヅキ》
確かこの人はルルのお目付け役の人だったけ。
俺がそんなことを考えいるとカレヴィからの通信で我に帰る。
「ん?なんだ」
《おまえは怪我の治療でもしてもらってろ。俺たちだけでハッチを開けてくっから》
ああ、そう言えば頭をぶつけた時に切っていたっけ。
大した怪我じゃないから別にいいんだが、その言葉に甘えよう。
「わかった」
《というわけだ。艦長代行殿、ハッチ開けてくれ》
それだ言うとカレヴィとレーアは奥へと進んで行った。
《は、ハッチオープンして下さい》
ルルがそう言うと、アークエンジェルの右側のハッチがオープンする。俺はビーコンに従いながら機体を着艦させる。
ふぅ、疲れた。
俺が一息ついていると外から声をかけられる。
「おーい、早く降りろー」
「あんたは?」
どうやら声をかけてきたのはいかにもベテラン整備士だっていう感じがする褐色の肌をしたガタイの良いおっさんだったらしい。俺は疑問に思ってだれか聞く。
「俺は一応この艦の臨時整備長クラーク・バリストンだ。そのガンダム・フレームの整備をしておけって命令なんだ。だから早く下りてくれ」
「了解」
俺はコックピットを開いて下りようとすると突然ドック内に警報が鳴り響く。その直後、大きな揺れが襲う。
「な、なんだぁ!?」
クラーク達や他の人たちの悲鳴が響く。
あー、そういえばガンブレ2のチュートリアルは少し長かったんだよな。俺は操縦桿を握って揺れを耐える。揺れが収まると体の重さがなくなったような感じがする。というか重力を感じない。
《こちらアークエンジェル、今の揺れは何なんですか?》
《アークエンジェルは無事だったか!》
さっきの揺れについてルルが通信で聞くとカレヴィは安心したような声を上げていた。だが戦闘音がそこから聞こえる。
《港のハッチはどうなりました?》
《その辺に浮いてるんじゃないか?!それよりこちらは敵と交戦中だ!アークエンジェルはそのまま隠れてろ!絶対に出てくるなよ!》
そしてそのまま戦闘音が響いてくる。
そんな中、ルル達の気の抜けた会話が聞こえてくる。
《副長代行、ハッチって浮くものなんですか?》
《古今東西ハッチは開くものです》
いっつも思うがルルは常識を知らなさすぎないか?もしくは天然なのか?まぁ、俺の疑問はどうでもいいか。
俺は開けたハッチを閉めてコックピットに座りバルバトスに熱を入れる。そしてクラークに声をかける。
「なぁ、なにか実弾兵器はないか?」
「あ?あるにはあるが……ってお前出る気か!?」
「このままでもいかんでしょ」
たしか今コロニーを強襲してきたのはルスランとデンドロビウムだ。
あの巨大な機体とそれを保護するIフィールドジェネレーターはあの二人には相性が悪い。エクシアは近接戦向きだし、ウィングガンダムのビルゴのプラネート・ディフェンサーすら貫通するバスターライフルですら恐らくはじくだろう。そして何よりも機動力と物量が違いすぎる。
だからこそ外にいる俺が強襲を仕掛けることができる。最低でもIフィールドジェネレーターを壊さないと。
「たっく……そりゃそうなんだけどな」
「整備長ー」
すると、整備士の一人がクラークに話しかけてきた。
「なんか、変な装備があるんですけど…」
「あん?なんだそりゃ、どこにある」
「あれですよ」
クラークが整備士の言った装備がどこにあるか聞くと整備士は指をさした。
そこにはなんと、バルバトス用のメイス、刀、そして滑空砲が存在していた。なんでこんなところにあるんだ!?まさかバルバトスをこの戦艦に乗せる予定だったのか?
クラークはそれらに近づいて装備の確認をするとどうやら気づいたらしい。
「こいつは……バルバトス用の装備か?」
「どうやらそうみたいですね」
「整備長、それをこのバルバトスにつけてくれ。ルル艦長、俺も援護に出ますわ」
《え?》
俺はクラークに武装の装備を頼むと、ルルに出撃の許可を取るために報告する。
ルルは面食らった声を上げる。なにも言わないルルの代わりにマドックが答える。
《大丈夫なのかね?》
「平気ですよ。というかここでじっとしていたら二人ともじり貧で負けますよ」
《じゃあ、艦で援護したほうがいいんじゃないんでしょうか?》
「ルル艦長、たぶん二人は大型の敵か大量の敵と戦っていると思う。そんなところにでかい的であるアークエンジェルが出てどうするんだ」
《そ、そうなんですか?というかなんでわかるんですか?》
俺が指摘するとなんでわかるのかと聞かれた。さてどうするか……まさか「ゲームで知っている」なんて言えないし……っとそこで俺はいい言い訳を思いついた。
「さっきあった振動、その後に重力が解除された。たぶんこのコロニーぶっ壊れたんじゃないか?カレヴィは通信でアークエンジェルの無事を確認した、そののちに戦闘、その上出てくるなと言われた。ということはコロニーを破壊するぐらいの数の大部隊か、巨大なMAと戦っているんだろう。と予想したんだが」
《アッハイ》
ルルはわかっているんだかわかっていないんだか疑いたくなるような返事をしてくる。
マドックはなにも言わずに俺の言い訳を聞いている。
《君の予想ではどちらだと思っているのかね》
「予想では敵は大型の敵だと思います。二人とも主武装がビーム兵器でここまで時間がかかっているということは恐らくは強力なIフィールドを持っているんでしょう」
《ふむ……どうしましょうか艦長代行》
マドックは俺に意見言わせると出撃させるかどうかの判断を代行とはいえ艦長であるルルに判断を任せる。
ルルはええ!?と驚いている。
《そうですね……わかりました、民間人であるあなたにお願いするのも心苦しいですがお願いします。えっと……ハンヅキ?さん》
「了解。あとハンヅキが呼びづらかったらリョウでもいいよ」
《あ、はい。ではリョウさん、準備ができたら出てください。でも一つだけお願いがあります》
なんだろうか?敬語を全く使ってなかったことに対しての注意だろうか。
ルルは真剣な顔をして言った。
《絶対に無事に帰ってきてください》
「……わかっているさ。俺もこんなわけのわからないところで死にたくないからな」
そしてしばらくすると左の背中の左アームに滑空砲、右アームに刀を装着。そして両手にメイスを装備して準備を完了する。正直メイスはいらない気がするが。
俺がハッチから出撃しようとするとマドックから通信が入る。
《ハンヅキくん、そこにあるスペースジャバーを使いたまえ。移動する際に役に立つはずだ》
「あ、ありがとうございます」
《私が用意したものではないがね》
俺はスペースジャバーに機体をうつぶせに寝かせ、レバーをつかむ。すると俺の意思の通りにエンジンに熱が入り、ブースターが火を吹いて前へと進む。
そういえば俺、宇宙空間にでるの初めてだった……どうしよう。
《ところでマドックさん、なんで彼は上半身裸なんでしょうか》
《それはわかりません》
そういえば説明してなかったなぁ。