暫くの時間が過ぎさり、アインズは村長の家の椅子に座っていた。救助作業があらかた終了したので、報酬の話をするために場所を変えたのだ。今は、死体の後片付けの時間だろう。これは家族や友人を亡くした者たちが、行うべき作業。自分たちができるのは死体を一か所に集めたりする手伝い程度である。だったら、自分は不要だ。
(そういえば、ネムの両親はどうなったか……それにしても母によく似ている)
アインズは少女の事を思い出してしまうが、今考えるべきことは別だと思い目の前の人物について観察する。
母と彼女は違う。違うが、もし最初に
村長の家の中は、可笑しいほど洗練されていない。一つも機械製品はないのだ。見た限り、大した技術もないのだろう。この村限定で今見た限り、と前置きがつくが。
今自分が座っている椅子はアインズの動きに比例して悲鳴を上げている。これも時代を表していると言えるが、下手な体重移動を行えば壊れるだろう。修理の手間をかけさせるわけには行かない。慎重に行動しなければならない。
「何か、お飲み物を用意しましょうか……いえ、用意してよろしいでしょうか? その……」
向かいに座った村長夫人が言い淀みながら話しかけてくる。隣には村長もいる。むしろ村長が主で夫人が副だろう。
(仮面があってよかった)
恐らく、自分は村長が目に入っていない。彼女に気づいてからほとんど、彼女の行動を追いかけてしまっている。仮面がなければ、間違いなくストーカーと疑われるほどに。
……軽く頭を振って、馬鹿な考えを振り払う。今から行われるのは交渉だ。浮かれた頭では失敗する。まずは夫人の質問に答えるべきだ。言葉に詰まったのは、アンデッドである自分に飲み物は失礼にあたるかもしれないと考えたからだろうか?
「いえ、見ての通り私はアンデッドです。なので、飲食は不要です。ご厚意ありがとうございます……後で時間が取れた時に、私の部下……アルベドに飲ませて頂ければ幸いです」
「……分かりました」
今は情報を集めるべきなのだから。まずはフレンドリーに呼んで貰うところから始めて距離を縮めてみよう。彼らも毎回フルネームで呼ぶのは疲れるだろう。
「それと毎回フルネームで呼ぶのは長いですし、アインズで結構ですよ。村長……それに奥様」
村長や夫人が少し戸惑いや困惑、そして不思議そうな顔をする。……また常識はずれな行動をしているのだろうか?
「……ゴウン様。誠に失礼なのですが、この周辺では目上の人等と話す時などは名字から呼ぶのです」
なるほど。西洋式の呼び方が一般的なのか。確かに村人全員は外人の様に見える。なら、基本的な食生活等の常識は西洋に準じていると考えていいのだろうか? 魔法がある異世界である以上、固定観念を持つのも危険か。
「構いませんよ。ある程度親しくなれたと私は考えているので、よろしければアインズと呼んでください。他の村人達にも伝えてください……奥様もそれでお願いします」
それに村長達が朗らかに笑う……何となくだが、自分との繋がりがあるように感じた。夫人ともだ。
「よろしいのですか、アインズ様?」
「構いません、それで……」
アインズは話を進めようとする。しかし話が進むことはなかった。村長たちが途中で口をはさんだからだ。
「アインズ様。帝国の騎士達の殺戮から助けて頂いただけでなく、救助作業までして頂きありがとうございます!」
「アインズ様。村の者達を助けて頂き、ありがとうございます」
村長達は先程の件を述べているのだろう。壊れた家等に押しつぶされた人たち。ただの村人では生きていても救助はできなかっただろう。その時役立ったのが
軽々と重い物を持ち上げ、生きている人を救い出した。また
自分は助けた人たちの治療に従事した。そこに夫人もいたのと、助け出された人たちの何人かは致命傷だったためポーションを使い治療するためだ。こんな事なら、プレアデスからルプスレギナも連れてくるべきだっただろうか? いや、人間にここまで、親しくしている姿を多くの者に見せるのはリスクがある。やはり来させたのはアルベドだけで正解だろう。
「貴重な薬まで使って頂き申し訳ありません……」
そしてこの場にいないアルベドにはポーションを幾つか預け治療を任せている。召喚した者達は現在もアルベドの指示の下、村人たちの手伝いをしているはずだ。それにしても、ここまで人間に肩入れしたことをどうごまかすのが正解だろう?
(ここで、多くの情報を得るしかないな。そうすれば、自分の行動が正しかったと証明できるし)
人間に肩入れしたのが正解だったとアルベドに思わせるしかない。それでも、疑問を持つなら、先程アルベドに語った、たっち・みーの件で押し切ろう。これも本心なのだから。
それにしても、助けた人たちが感謝してくれるのは素直に嬉しい。しかし一方で、母に似た人に感謝されるのはくすぐったい。別人と分かっていてもやはり重ねているのだろう。
「構いませんよ。村長……それに奥様。私も無償で助けた訳ではないので。……報酬を期待してますよ?」
「責任重大ですが、しっかり
(まぁ個人的には十分頂いたと思うがな……それに、あの薬は
様々な事をアインズは質問していく。通貨の事や物価等、村人から当たり前と思われることにも村長は分かる範囲で説明した。ただただ時は過ぎていき、夫人は村人達を手伝うために途中で離席した――残念とは一つも思っていない――……そのため夫人がいては聞きにくい国の話に踏み込んだ。下手をしたら彼女を怒らせたり、悲しませたりしてまうかもしれないからだ。それは嫌だ。
「なぜ王国は村に兵士を派遣しなかったのですか? 民が襲われたら助けを出すのは当然だとおもいますが?」
アインズとて本気でそんな事を思ってるわけではない。リアルの世界でも、政府は弱者を助けてくれない。共通点であり、あまり口にしたくないことだ。が、次の話に繋げるために必要だから質問した。
「……王様が我々民を助けてくれることはありません。税は六割以上持っていかれ、毎年行われる帝国との戦争に若い男達は連れていかれます」
思った通り、気分を害してしまったようだ。やはり、夫人が居ないときに聞いてよかったと思いながら、次の疑問を口に出す。
「……これは失礼しました。しかし徴兵されるのであれば、多少武芸の心得がある者もいたのでは? それにこれだけの辺境の地なら、モンスター等から身を守る手段はあると思うのですが……私の思い違いでしょうか?」
それに村長が毎年のように戦争が起き始めたのはここ数年であり、自分は立場と年齢で徴兵されていないから、聞いた話になると前置きをしてから話し始める。徴兵された本人がいるなら、直接話を聞くべきなのだろうか? 後でアルベドに相談してみよう。
「……帝国の騎士達は戦いを専業にした兵士らしく、徴兵で訓練を受けた程度ではまともに戦えないらしいのです。モンスターに関しては……お恥ずかしい話ですが、我々は森の賢王様と言われる強い存在の縄張りの近くに村を作っております。そのため森の賢王様が防波堤の様になっておりまして、今までまともに魔物に襲われた経験もないのです。人間が襲ってくる事もなかったので、まったく警戒もしていなかったのです」
「……なるほど。確かにそれなら、油断をしていても仕方ないかもしれませんね」
彼らにとって、何も防衛手段を整えなくとも、安全と言うのが常識だったのだろう。しかし、人の悪意は容易く常識を壊す。たとえ、悪意がなかろうとも常識は崩れ去る。アインズとて何度も経験している。
彼らは運が良く、今まで常識が崩れなかっただけだ。そして、最悪の出来事で常識が崩れたのだ。人間に襲撃を受けて死人が出るという悲劇で。
「ですが、今回の事で自分達はただ言い訳をしていただけと思い知りました……我々も覚悟を決めて村を守るために努力したいと思います」
村長の目にはとても強い意志が存在した。たとえ命を賭してでも必ず子どもたちの未来を切り開くと。愛するものを守ると。
(ああ……死を覚悟の上で進むか……強い目だな。先程私に、ただ救われただけの村人とは思えない……憧れるよ)
もし仮に、自分が彼らの立場だったら、何もできなかっただろうと思いながら……
――余談だが…村長がここまで覚悟をしたのは
★ ★ ★
村長との話が終わり、村の広場に向かう。周囲を見渡すと夫人が、火を作り始めていた。近くに水があるのを見る以上、アルベドの飲み物を作ってくれているのだろう。
近くを見れば、多くの死体が存在した。アインズたちは尽力したが、やはり救えない人物は存在したのだ。特にアンデッドである自分を真っ先に受け入れてくれたネムの両親が亡くなっていたのは辛い。広場ではネムたちが両親の亡骸に縋りつき泣きついていた。アルベドが自分に付いて来るのを横目にアインズは少女たちに近づく。
「すまない。私がもう少し早く、行動していれば……」
思わず、謝罪の言葉を述べていた。そして、これは事実だ。
自分たちに気づいた二人は縋りついていた両親から手を放して立ち上がる。そして口々にお礼を言う涙を堪えるような仕草で。
「……アインズ様がいらっしゃなければ、二人とも、生きていませんでした」
「お姉ちゃんを助けてくれて、ありがとうございます」
(……強い、な。俺とは大違いだ)
何となく、慰めるつもりで二人の頭を撫でる。何故だろう? エンリは最初戸惑ってはいたようだが、拒絶はしていなかったと思う。しかし何故か顔を引きつかせ始めている。そんなに嫌だったのだろうか?
ネムはいつの間にか自分に抱き着きながら、涙を流しているのに。年齢のせいだろうか? それにしては、必死に何かを伝えようとしているように見えるが。
(うん? どうも必死に後ろを指さしているのか…………あ)
まずい。何がまずいって、アルベドだ。恐る恐る後ろを窺うと瘴気を纏っているように感じるアルベドがいる。と言うより、危機感が強い人たちは逃げ出しそうだ。
どうしよう。どうも、エンリと気持ちが通じ合ったようだ。やはり、自分が何とかしなければならないのだろう。正直逃げたい、逃げたいが逃げちゃ駄目だ。自分の不注意が招いたことだから。何かきっかけさえあれば、上手く話しかけられるのだが……どうやら、自分は運があるようだ。丁度、村長夫人がおどおどしながら大変そうに作ってくれていた飲み物を持って来てくれている。
「その、お飲み物をお持ちしました……アルベド様」
「アルベド。先程私に出そうとしてくれていたのだが、私は飲めないから断った。お前が私の代わりに好意を受けてくれ」
「…………畏まりました」
ネムに抱き着かれたまま、振り返り頼む。これがアルベドの不機嫌を治す、好機に代わってくれると信じて。
「ただの白湯じゃない……こんな物をアインズ様にお出ししようとしてたの? 失礼にも程があります」
「も、申し訳ありません。村ではこれが精一杯なんです」
「アルベド、失礼なことを言うな! 私もすべては見ていないが、火を起こすところから始めていた。大変な重労働に見えたぞ。部下が失礼な態度をとって申し訳ない」
「い、いえ、こちらこそ、申し訳ありません」
「いや、こちらこそ。アルベド、私にこれ以上恥をかかせるな」
「……申し訳ありません」
未だに、納得しきれてはいないようだが、不承不承と頷いて兜を外す。そして、今まで隠れていたアルベドの素顔が明らかになる。傾国の美女と言われても可笑しくはないほどの美貌を。どうやらこちらを注視していた全員がアルベドの素顔を凝視しているようだ。あるいは兜の中から出てきた、異様な角に驚いたのだろうか。泣いて自分に抱き着いていたネムも目をぱちくりさせながら、アルベドを見ている。
「きれい……もしかして、アインズ様のお嫁さんですか?」
「ええ、そうよ」「いや、違うぞ」
「「え」」
「?」
……アルベドの不機嫌が一応収まりを見せ、ネムが抱き着いていても文句を言わなくなったから良しとしよう。それにしても、自分はなぜこの少女にここまで優しくしているのだろうか? 自分に最初に感謝してくれたからだろうか? それもあるだろうが、何かが欠けている様に感じる。何か手掛かりになる物はないかと周りを見る。あるのは彼女たちの両親の遺体だけだ。
(ああ、そうか)
自分が母を失った時は丁度ネムと同じぐらいではなかっただろうか? 最低でも近い年齢だったはずだ。無意識のうちに重ねていたのかもしれない。境遇は大きく違う……それでも、理不尽に家族を奪われたことは一緒だ。
膝をついて、しっかりネムと目線を合わせる。
「いいか、ネム。君は一人じゃない。確かに、両親を失ったのは辛いだろう。だが、君にはまだ家族がいる。大切にするんだぞ?」
「……はい!」
俺と違って、ネムにはまだ身近で愛してくれる人がいる。ネムを手放して、村人たちと共に遺体を村外れに運び出し葬儀に向かう。周辺で陣頭指揮をしていた村長は申し訳なさそうにしていたが、一度深々と頭を下げて、村人たちに続く。
そして、アインズは彼らが墓地の方向に向かうのを仮面越しに眺め続ける。
――通称、嫉妬マスク。聖夜の夜に一人身の者が一人身ではない者に対して、怒りや涙を現す象徴だ……だが今回嫉妬マスクは別の使われ方をした。アンデッドが人間達に存在する物に対して、自分に無い事に悲しみを表現する物として……もしかしたらこの使い方も正しいのかもしれない。だって嫉妬マスクは自分には存在しないものを表現する象徴でもあるのだから――
村人たちを見送った後、アインズ達は村外れに移動する。これから行われるのは死者の弔いだ。アンデッドである自分が葬儀に出席するのは、死者への冒涜になるかもしれない。
やるべきこともある。今まで得た情報を頭の中で整理することだ。村長と徴兵制の話になった時、気になったのが常備軍がいないかどうかだ。やはり、存在するらしい。徴兵制もある以上そこまで人数はいないだろうが。
特に、御前試合で優勝した王国戦士長とその直属の戦士たち。そして、
(それにしても本当に十分な
もし、ここで彼らを救えば、きっと自分の心はより満たされるだろう。だが死者蘇生を行う訳には行かない。
(情報が少なすぎる。止めるべきだ)
もしかしたら、この世界には死者蘇生の魔法は公に広まっていない、もしかしたら存在すらしないかもしれない。それなのに死者蘇生を行えば、必ず誰かが疑問に思う。
村人たちだけなら黙っているように説得できるかもしれないが、見逃した騎士たちがいる。そこから嘘が漏れる可能性が高い。やはり彼らは見逃すべきではなかったのかもしれない。だが、時間は戻らない。あるいは超位魔法を使えば時間を巻き戻すことも可能かもしれないが……確実に愚かな考えだ。
故にアインズに死者を蘇らせることはできない。
(それにも拘らず、私は亡くなった村人たちを蘇生させたいと考えている。だがこれ以上援助するのはまずい。情報も不足している……私は何だ。アインズ・ウール・ゴウンの名を背負う以上、ナザリックの利益を一番に考えるべきだ)
何よりもナザリックの安全のために。危険性が高い行為は慎むべきだ。もし仮に、ナザリックが存在しなければ、危険を冒してもよかった。だが、ナザリックは存在する。自分の宝物が、だ。
少し自虐しながら自分の心と向き合う……それでも、この村を守りたいと言う気持ち……自分に最初に感謝してくれた少女。母の面影がある人を見捨てたくない気持ちが、どうしても邪魔をするのだ。
彼女は母ではないのだ。割り切らなければならない。ネムだって十分幸せになれるはずだ。どこかで線引きは必要なのだ……愚かな思考のなか、アルベドから声がかかる。
「アインズ様。後詰の者が参りました」
どうやら、セバスに頼んでいた後詰が到着したようだ。隠密能力や透明化の特殊能力を所持しているものを送り込むように命令したはずだ。今からでも、騎士たちの後を追わせてみるか? ……世辞を言ってくるが遮る。早く後詰の部隊編成を把握しなければ。
「四百のシモベが到着しました。いつでも襲撃可能です」
……今こいつは何と言った? 自分に救いを与えてくれた者を襲う? ……母に似た人を殺すだと。俺はまた失うのか?
――アインズは鈴木悟に戻り、ナザリックを共に築き上げた大切な者たちとの思い出が駆け巡る。そしてそれを失った時の記憶が次々とよみがえる。
多くの者達とまた遊ぶ約束をした。しかしその願いはほとんどかなえられなかった。リアルが大切なのだから仕方がない事だ。
しかし、寂しいのだ。ユグドラシル最終日でさえ、集まってくれたメンバーは極僅かである。それでも納得できたはずだった。たとえ、『アインズ・ウール・ゴウン』がただの残骸だったとしても。
だが、何の奇跡か気まぐれかは分からない……分からないが、確かなこともある。自分は望んでいた、ユグドラシルの続きをすることができるのだ。上手くいけば、仲間達との再会だってあるかもしれない。
いや、たとえ再会できないとしても、仲間たちが残していった
リアルでは得る事が出来なかった、温もりを与えられたのだ。手に入ることがないと諦めていた物を、だ。
正確には、鈴木悟にも温もりが存在した。自分を育ててくれた母だ。母は確実に自分を愛してくれていた。だからこそ、自分を育てるために過労死したのだ。
そして、断言できる。鈴木悟は母を愛していた。今までは決して面に出てこなかった感情だ。だが、母に似た人を見たせいで、思い出してしまったのだ。
それも当然だ。鈴木悟が手に入れた温もりは常に無情にも、その手をすり抜けて行ったのだから。自分の感情を守るためにも、心の奥底に押し込んでいたのだ。
鈴木悟にとって、温もりを得ることは一番嬉しいことだ。それと同時に常に失ってきた故にトラウマでもある――
感情を抑えきれない。アンデッドの特性で何度も沈静化が起きるが、無駄だ。この怒り、いや、この悲しみだけは止まらない。彼は正しく、トラウマを抉ったのだ。大切な人が自分の手から離れていくことの。
「私は、この村を、助けるために来たのだ! なぜそんな話になっている! ……止めてくれ、私からこれ以上大切な物を奪わないでく――」
「申し訳ありません! アインズ様、守護者統括である私のミスでございます!」
「………………いや、すまんな。どうかしている」
沈静化が追い付いたようだ。とはいえ、何かあれば直ぐに沸騰するだろう。先が思いやられる。どこかで区切りをつけなければならない。どれだけ似ていようとも、彼女は母ではないのだ。これ以上過去の幻想に振り回されるわけにいかない。
このままではナザリックを、『アインズ・ウール・ゴウン』を背負えないと自分に言い聞かせて。
★ ★ ★ 今日の守護者統括
モモンガが情報の収集をすることに対してアルベドは何も思うところはなかった。村人を助けるように命令されたことにも思うところは一つもなかった。
しかし、しかしだ。今のアルベドは苛だたしさを隠しきれなかった。何故か? 簡単だ。
モモンガが小娘二人の頭を撫でているからだ。さらに言えば、小さいほうはアインズに抱き着いていても咎められない。
(…………アインズ様。そんなに
抑えるべきだ。いや、もしかしたらこれこそ噂に聞く放置プレイだろうか? 昂った女性を放置して別の女性とイチャイチャする。
……私自身それでも構わないが、できれば、手を早く出してほしい。それとも、アンデッドだから性的な考えは抑圧されるのだろうか? しかし、同じアンデッドのシャルティアはそんなこと無かったはずだが……色々情報を集めるべきだ。
そんなことを思案していると一人の女が近づいてきている。手には飲み物を持って来ているようだ。アインズに出すためだろう。当然だ。遅いぐらいだ。
「その、お飲み物をお持ちしました……アルベド様」
「アルベド。先程私に出そうとしてくれていたのだが、私は飲めないから断った。お前が私の代わりに好意を受けてくれ」
どうやら、私に用意したようだ。つまり、どれほどの飲み物を出すか調べろという事だろうか? 調査の一環だろう。それとも、アインズだけが理解しているこの村特有の何かだろうか?
「…………畏まりました」
手を出して受け取り飲み物を見る。もし、これを本気でアインズに出そうとしていたのなら期待外れだ。
「ただの白湯じゃない……こんな物をアインズ様にお出ししようとしてたの? 失礼にも程があります」
「も、申し訳ありません。村ではこれが精一杯なんです」
「アルベド、失礼なことを言うな! 私もすべては見ていないが、火を起こすところから始めていた。大変な重労働に見えた。部下が失礼な態度をとって申し訳ない」
「い、いえ、こちらこそ、申し訳ありません」
「いや、こちらこそ。アルベド、私にこれ以上恥をかかせるな」
アインズに出すのにこんな粗末な飲み物を出すことは侮辱だ。しかし、主の言葉なら従おう。
「……申し訳ありません」
そして、飲むために兜を外す。どうやら、村人の多くが息を呑んだようだ。アインズのためにあるアルベドの美貌を見たからだろうか? 当然と言えば、当然だ。多少不機嫌そうな顔だとしてもだ……もっとも、不機嫌はすぐに吹き飛んだが。それも、一番アルベドを苛つかせていた小娘によって。
「きれい……もしかして、アインズ様のお嫁さんですか?」
「ええ、そうよ」「いや、違うぞ」
「「え」」
なぜ、否定されるのだろう。無性に悲しかった。
それとプロローグ(カルネ村編)を終えるまで、更新は遅くなると思います。
なぜ、作者は出来上がっていたもので満足せずに修正を繰り返しているんだろう?
早く、いちゃいちゃを描きたいです。
クリスマスとクリスマスイブ、どっちが最終話に相応しいですか?
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クリスマス
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クリスマスイブ